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現在神学校で学び、伝道師として韓国で奉仕するA氏は40歳。16歳でリム氏と出会った。両親を亡くし、弟を餓死で亡くしていた。脱北を試み、3回捕まって北に送還された経験を持つ。次のように語った。
─私には3人の「弟」がいた。血はつながっていないが、愛し合い、深い絆を結ぶ人生そのもののような弟だった。そんな彼らを「苦難の行軍」(※)で奪われた。餓死だった。孤児院では、60から70人の子どもが死に、地に葬らなければならなかった。9歳からあちらこちらをさまよい、生きる希望が無かった。

証しをするリム氏(右)。左は通訳の坂本兵部氏

統一のために主の心であわれむ人を備える

やっとの思いで脱出した中国で宣教師に会い福音を聞き、救われた。しかし、信じても決して楽ではなかったし、痛みや絶望の中で、身もだえして生きてきた。今振り返れば、苦しみが私をよりイエスに近づけた、そんな人生だったと告白する。
北朝鮮との統一の日のために今一番しなければならないのは、人を備えること。それはもちろん神の業だが、人を通してなされる。北の人々を主の心であわれみ、抱くことができる人が備えられなければならない、、、、、、、、

※1990年代に多数の餓死者が出たとみられる深刻な食糧危機に際して北朝鮮国内で使われたスローガン。朝鮮戦争休戦後最大規模となる飢饉と、経済政策の失敗が、食糧危機の原因とされる。

2023年02月05日号07面掲載記事)