結婚や終活についてのセミナーや出版など、信徒・教職者が人生について考える助けとなる活動をしてきた、牧師の水野健氏。昨年11月には『キリスト教の終活のおはなし』を出版した。前著『キリスト教の終活・エンディングノート』に引き続き、信仰生活における終活の勧めや、自分の葬儀の考え方などについて、自身の経験も交えて伝える。


『キリスト教の終活のおはなし』水野健 著、いのちのことば社、A5判、660円税込


『キリスト教の終活・エンディングノート』
水野健 著、いのちのことば社、B5変、1,980円税込

 水野氏は、自身が行う終活セミナーの狙いをこう話す。「人生の幸福度は年齢とともに下がる、と一般的には言われる。でも私は、むしろ充実した人生になっていく、と考えている。多くの人が、仕事上の立場などについて『登って終わる』と思っていて、降りられなくなる。私の終活セミナーには年輩の方が多く、60代の方は少ないです。でも60代では、定年を迎える方もいて、価値観や考え方を変える必要に迫られる。そこで私たちクリスチャンは、人生において『下る』とは悪いことではない、今までとは違う役割がある、という考え方をしたい」

妻を亡くした後に始めた趣味の山登りに例えて、こう語った。「一生懸命登ると達成感がありますが、その後の下り坂も、とても幸せなことなんです。山登りの下りというのは、素晴らしい景色が見え、仲間といろんなことを話し合うことができる。登ってくる人を励ますことができる。登りとは全く違う、幸いな情景、幸いな機会なんです」
水野氏のセミナーは、「もう終わりだ、残り少ない」と悲しみ諦めるのではなく、「今は人生で一番素晴らしい時、楽しい時、幸いな時」という考え方を持つところからスタートする。

そして、自分の歩んできた人生を振り返ることは、恵みの経験だという。「60歳くらいの時には、人生を統合する力が身についてきているもの。ふつう、人生を振り返ると、失敗や挫折も振り返らなければいけない。それは怖いことだが、聖書には、神は全てのことを働かせて益としてくださる、という素晴らしい約束がある。神様は、失敗や挫折さえも素晴らしいものに変えてくださり、宝になっていくのです」
人生を統合する力とは、習慣から身についていくものだ、と勧めた。「エンディングノートの大事なところは、振り返るということ。人生を振り返って、自分が受けた多くの愛を掘り起こし、それをまた味わう、というのが、振り返りの醍醐味(だいごみ)だと思うんです。若い時からも、振り返ること、味わうことを練習しておくことが大事。これから起こることを将来、反芻(はんすう)できるようになると思うんです」

水野氏は、自身の役割についてこう語る。「死期に際している人のところに元気な人が行って『死の準備をしましょう』とは言えない、、、、、

2025年03月16日号 05面掲載記事)