衆院選と宗教の公共的役割 高市政権と「中道」 稲垣氏寄稿

衆院選と宗教の公共的役割 高市政権と「中道」 稲垣氏寄稿

2026年に入り、衆議院選挙が急ピッチで進められた。経済、安全保障、外国人問題など、様々な論点が出ている。同時に、野党は、創価学会を支持基盤にする公明党と立憲民主党が新たに「中道」(中道改革連合)を立ち上げた。世界的にも米国トランプ政権の影響力、東アジア、中東情勢など、時局はめまぐるしい。政治と宗教の関係も問われている。キリスト者はどのように見るか。公共神学を提唱し続ける稲垣久和氏(東京基督教大学名誉教授、日本キリスト教教育センター常務理事)が寄稿した。

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パフォーマンス型「劇場国家」の精神的危機

1月23日の衆議院解散によって異例ずくめの選挙戦に突入している。どのメデイアの調査でも解散に「反対」の世論が「賛成」を超えていた。「選挙のプロ」にすらも予想しがたい今回の突然の事態に、筆者のような人間が結果を予測することは不可能である。そこで最近のパフォーマンス型「劇場国家」の精神的危機について述べることにする。

新年の国会召集日の冒頭での解散、内閣不信任ではなく7条の“首相の専権事項”と呼ばれ根拠のよく分からない理由によった。単なる権力者の権謀術策ではない。今回は「高市早苗が日本の首相でいいのか、それとも野田首相か斉藤首相か…」という、まるで個人の信認を問うものであった。“推し活選挙”という言葉も聞かれ、完全にポピュリズムに堕した手法だ。大統領制(首相公選制)ではなく議員内閣制をうたった日本の国政のあり方を踏みにじるやり方であるだけではない。成立2か月半しても内閣支持率が70%という“国民人気の高い時”に解散して、権力基盤を強固にしたいというエゴイズムそのものであった。今後の「国論を二分する政策」にフリーハンドで臨みたいということなのだろう。いったいどんな政策を秘めているというのか。この超右寄りの傾向を帯びた内閣成立に、まず公明党が離れた。これまで自民党と26年間も連立を組んでいて一応は「平和の党」と自称していた政党だ。

「中道」は歯止めになるか 

しかもさらに異例であったのはこの事態への政治力学的反作用ともいうべきか、解散の前日、多党化時代にばらばらであった野党側がある塊を作るべく、中道改革連合(中道)という名の新党を立憲民主党と公明党が立ち上げた。2月8日投票日という、戦後最短の16日の短期間での突然の総選挙に果たして備えられるのか。

また解散の2日前の1月21日には、安倍晋三元首相銃撃殺害事件の山上徹也被告が奈良地裁で無期懲役の判決を言い渡された。その安倍政治のスピリットを継承すると自負するのが高市氏であった。高市氏を支えるコアとなるグループは何だろうか。

それは旧統一協会(その犠牲者が山上被告である)という宗教団体であり、日本の革新的右派の神道政治連盟や日本会議というこれまた宗教性が強い団体である。

高市政権は核保有と改憲問題という、戦後80年間タブー視され封印されてきた政治問題を日程に出してきていて、国民の「信認を得た」とばかりにフリーハンドで進めたいようだ(党首討論にもその兆候が出ていた)。いまさら核抑止力などありえないだけではなく、そもそも原発を50基も抱えた日本はもはや戦争などやりたくてもやれない位置にある。「敵基地攻撃能力」どころの話ではない、逆に、原発を狙われたら日本文明そのものが終焉(しゅうえん)する 。

そういう意味で「中道」のすべきことは、「安全保障と原発再稼働」についての歯止めをかけることである。今後の伸びいかんによっては超右派勢力暴走への牽(けん)制にはなるだろう。「中道」が伸びなければ逆の事態になるだろう。

宗教の公共的な「善意」とは

 個人レベルの善意の信仰を、超リヴァイアサンとなってしまった今日の国家間政治に適用することは危険である。トランプ大統領の国際法も道義もない力の支配の無法ぶり、この強力支援グループになってしまった米国の“福音派”を見れば明らかだ。日本は米国ともっと対等となり、中国ともっと友好になり得る地理的・歴史的位置にあるはずだ。

防衛(軍事)予算を12兆円、18兆円、24兆円と増額していく分の1%ずつでも医療、福祉、教育、環境に充てるだけでこの国の国民の幸福度は格段に上がるであろう。しかしその前に「心の幸福度」が上がらなければ、国民はもはやそのような自明の思考回路すら取り戻せない。「心の幸福」を国民に語るミッションを帯びて遣わされているのは誰なのか。それを真に語れる人々が国民の1%でもいれば、その数は問題ではない。

「平和をつくる者は幸いです。その人たちは神の子どもと呼ばれるからです」(マタイ5・9)という教えに立って「光の子」として「この世の子ら」(ルカ16:8)と対話しつつ各自の持ち場で、祈り深く生きることである。神の恵みは非キリスト教国の日本にも確実に働いている。ただし歴史に根ざした確固たる公共神学がなければ、今の時代にとても対処できないだろう。新たな軍国主義と国家主義が響き始めた時代に、南原繁の次の言葉が新たに心に響いてくる。

「かくのごとき(筆者註、戦争放棄と平和国家の宣言)は、その精神において、実にわが国有史以来の敗戦により払った犠牲の血の教訓である。今次の大戦において日本が学びえたものは、実に『剣をとって起つ者は剣によって滅びる』ということである。いまやわれわれは過去の軍国主義と極端な国家主義の信条を完全に払拭しなければならない。それは、今次わが不法の戦争において犯した過誤と害悪に対する国民的贖罪たるのみならず、進んで諸国民と協力して、世界恒久平和という人類永遠の理想実現へのわが民族の積極的努力に対する決意の表白である」(1946年11月3日「新憲法公布の日」)。

稲垣氏は日本キリスト教教育センターで、公共神学について様々な論稿を発信している。https://jcec2.org

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