<落穂抄>少年Aへの手紙

<落穂抄>

 神戸連続児童殺傷事件の加害者男性の審判を担当した神戸家裁の井垣康弘判事は、10日、「少年Aへの手紙」と題したメッセージを発表。判事は「君が一生、走り続ける姿を、これから生まれてくる子も含め何千万人もの子供たちやその親が見つめています。そのことは…決して忘れないで下さい」と記した◆メッセージは、加害者男性が医療少年院を仮退院したことを受け、公になったもので、「来年お正月までは実社会での練習コースです。保護監察官や保護司のコーチのもと、心身ともしっかり鍛錬を受けてください。私も一度は必ず練習風景を見に行きます」と続けている◆井垣判事は来年、少年Aが実社会に出たころ、定年を迎えるという。人生を長距離走に例え、「60キロは無理でも3分の1くらいは、付かず離れず伴走したい」と語り、「君が本当に地道な努力を積み上げていけば、きっと社会もそれに応えてくれます。そのことだけは固く信じてください」と祈るような言葉で締めくくっている◆ここには、裁く側と裁かれる側の本来、越えることのできない一線を飛び越えて、裁判官が被告と共に、心情的とは言え、共に生きていこうとする姿勢が見える。少年Aの仮退院に際し、被害者遺族の心情いかばかりかと思う一方、評論家の目でこの悲惨な事件を見てしまいがちな自らを反省した。