「基地集中は私たちの責任」 沖縄米軍基地「引き取り論」が問うこと 本土各地のグループメンバーが証言

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 沖縄県に集中する在日米軍基地の問題を、本土でも「自分事」にとらえ議論しようと、全国で沖縄の米軍基地を引き取るグループが設立されている。沖縄の基地を引き取る会・東京(引き取る会・東京)主催のシンポジウム「私たちはなぜ沖縄の基地を引き取るのか」が、7月8日、新宿区の日本キリスト教会館で開かれた。大阪、福岡、新潟、東京のメンバーらが、この問題に取り組んだ経緯や思いを証言した。

 基地問題については、座り込み運動、沖縄県民集会、政府会談、訴訟、独立論、米国でのロビー活動など様々な提案、方法が模索されてきた。「引き取り論」は、どのような問題を提示しているか、耳を傾けたい。

      【髙橋良知

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 世論調査によると、日米安保を支持する国民は8割に上る。一方、日米安保を前提とする米軍基地の75%が沖縄県に集中する。この差別状況に目を向け、本土の人々に当事者意識をもたらすのが「引き取り論」だ。『沖縄の米軍基地「県外移設」を考える』(集英社新書)の著者で、哲学者の髙橋哲哉さんらがその理論をまとめている。

 同シンポで司会者を務めた、引き取る会・東京共同代表であり、日本基督教団の牧師でもある飯島信さんは、初めて「引き取り論」を聞いた衝撃をこう振り返った。「基地の抱える深刻な問題をどこまで理解しての発言なのだろうかと思った。でも、考えて行くうちに、深刻な問題であるからこそ、引き取らなければならないと思うようになった。このまま押し付けを続けることは許されないと思えたからです」。すでに各地で設立していた「引き取る会」を今年東京でも立ち上げた。

 シンポ登壇者もそれぞれ、「引き取り論」に出合った驚きと戸惑いを語った。学生時代から基地反対運動に取り組んでいた松本亜季さん(沖縄差別を解消するために沖縄の米軍基地を大阪に引き取る行動)は、「引き取り論」について、「そんなものは運動にはならない。基地はどこにもいらない」と抵抗していた。ところが近年、基地問題が悪化する状態に無力感を抱く中、「沖縄の基地集中という不平等を変えたい」と運動を始めた原点を確認。基地反対運動の仲間とも議論を重ね、全国初の「引き取る会」を大阪で立ち上げた。

 里村和歌子さん(本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会[FIRBO])は、大学院で、『無意識の植民地主義 日本人の米軍基地と沖縄人』の著者、野村浩也さんに出会い、「沖縄を犠牲にして利益を得てきた自らの差別性」に直面した。具体的に何をしたらいいか悩む中で、高橋氏の講演を聞き、「こんな方法でできるんだ」と驚き、福岡でのグループ立ち上げに参加した。

 新潟で基地反対運動に取り組んでいた福本圭介さん(沖縄に応答する会@新潟)は、主催したシンポジウムで、「基地を引き取れるか」と問われ、「実は自らが基地を沖縄に押しつけている側にいた」ことを痛感。引き取り運動に参加した。

 大野史裕さん(引き取る会・東京)は、ニュースで沖縄基地問題が登場するたびに、「何とかならないか」と不条理を感じていたが、ニュースが下火になると忘れていた。日米安保についても、「安全保障を考えたとき、他に良い案がない。そのような日本人は多いのでは」と消極的に容認する立場だ。ところがある時、沖縄の人に「本土で引き取ってほしい」と迫られた。「一市民に言われても」と困惑したが、沖縄基地問題について調べるうちに、「安保がほしい、と言いながら沖縄に基地を押しつけていていいのか」と問題意識をもった。そのような中で引き取る会・東京を知り参加した。

  「沖縄の不平等な状況の解決、本土の人々の当事者意識の自覚」が登壇者に共通した思いだ。「人口比1%の沖縄県民がどれだけ反対しても、99%の本土人が反対しなければ何も変わらない」(松本)、「『基地はどこにもいらない』と訴えることで、沖縄に集中する基地を移設する現実的な解答を遠ざけてしまっていた」(里村)、「本土の人間が作った問題を、本土の人間が解決しようとするのは当たり前」(福本)、「安保賛成、反対にせよ、まず自らが差別していたことに気づき、その差別をやめないといけない」(大野)とそれぞれ語った。

 大阪では、空港敷地など具体的な基地移設候補地を挙げるなど問題を身近に感じさせている。街頭で「基地を大阪に」とアピールした際、「バッシングを受けるかと恐々としたが、単に『基地建設反対』を訴えるよりも多くの人たちが振り向き、『その通り』と言ってくれる人たちもいた」と手応えを感じた。福岡では、当初は移設候補地探しに労力をかけたため、基地反対派の人たちが離れた。現在は啓発活動を中心に活動をし、元議員、建築家、安保反対派、容認派など多様な人たちが集う。新潟について、福本さんは「『引き取り』だけが唯一の解決ではない。引き取りを考えると同時に『あなたはどうする』ということを問いかけていきたい」と述べた。東京は勉強会を重ね、今後小冊子作成や講演会開催を準備している。

   「引き取り論」については、「権力に利用される」「安保問題が問われない」「基地で事件が起きたらどうする」「本当に移設できるか」などの批判もある。登壇者らは「『続けることに意義がある』という運動ではなく、一刻も早く不平等をやめるための運動。思考停止や無関心になるのではなく、常に議論は止めない。届く言葉を模索するが、議論を起こすこともしていきたい」と語った。