<寄稿>監視、逮捕…日本は今戦時中 記・関口 美樹

<提言><監視、逮捕…日本は今戦時中>

 今年2月、東京・立川市で市民運動の仲間3人が突然逮捕されました。長年自衛隊や米軍基地に申し入れ行動をしている「立川自衛隊監視テント村」の3人で、自衛隊官舎に「イラク派兵反対。一緒に考え、反対の声を上げよう」と書いたビラをポスティングしたところ、「住居不法侵入」で逮捕されたのです。 
 今が「戦争中」なのだということをつくづく感じました。外には武装した自衛隊を派兵し、内には反対者に弾圧を加える、これが戦時体制なのだと思います。市民の数少ない情報伝達手段であるビラまきがこのような弾圧を受けることは、表現の自由に対する重大な侵害です。
 こうした中で今、「警察の民衆化、民衆の警察化」が言われ始めています。大日方純夫著『警察の社会史』によると、「警察の民衆化」とは警察活動の基盤を民衆の中に広げる試みです。大正時代に交通安全のPRから市町村長や学校長と警察が緊密な連絡を取り、警察が市民生活の中に深く入り込んでいきました。
 「民衆の警察化」とは民衆の中に「自警自衛」の観念を注入していく試みで、民衆の中に警察的秩序をつくり警察を支持、支援する民衆をつくるということです。民衆自らが警察と協力して「公安」を維持しようとする傾向をつくれ、と当時の内務大臣が警察部長会で訓示をしたそうです。民衆は自警団を地域に組織し、関東大震災のおり関東地域には3千689もの自警団がありました。震災時、「朝鮮人が放火を企てたり井戸に毒薬を投じたりしている」とのデマにより、自警団が凶器を持って通行人を検問し、朝鮮人の疑いがあれば連行したり殺害したりしたことが記録されています。この後、戦争に突入する1930年代から、東京市が町内会の整備、強化に乗り出し、町内会が行政の下部組織に組み込まれていきました。町内会を毛細血管として全地域に民衆相互の監視体制をつくり上げ、戦争とファシズムの下で日本全国が「警察化」していったのです。
 今、私たちの社会は監視社会です。何の規制もなく監視カメラがいたるところに設置され、誰もその数を把握していません。撮られた映像がどこでどのように使われているか分からない状態です。「生活安全条例」やそれに類する条例が、全国約3千のうち約千400の自治体で制定されています。現在も多くの自治体で検討され、まだ増えそうです。大正時代の「交通安全」PRから民衆の中に警察が深く入り込んでいったように、この条例の問題点は、監視カメラの導入、また行政と警察との緊密な連携をうたっていることです。
 国分寺市が検討している「つきまとい勧誘行為の防止および路上宣伝行為等の適正化に関する条例」では、いわゆる客引きと宣伝行為の取り締まりのために警察と協力して行うということです。行政が警察の導入を安易に図ることがあってはなりません。市民のビラ配りも規制の対象であり、市は、ビラ配りは事前に警察の許可を取るようにといいます。憲法の表現の自由や思想信条の自由に抵触し、市民活動の足かせになり委縮を招く恐れがあります。
 今国会では国民保護法を含む有事関連7法案が可決されました。報道では、町内会の自主防衛組織に戦時の役割を期待しているとしていますが、戦前の「隣組」の復活につながらないか危惧します。多くの自治会ですでに「自警団」の活動も始まっています。自民党憲法調査会の保岡会長は、憲法改正案に「国民は国家防衛の義務を負う」ことを明記したいと述べています。
 このような歴史と現実を知り、市民運動が後退しないこと、多くの仲間と連帯することが大切だと思います。