真実を知りたい遺族のために「交通事故対策マニュアル」作成--息子を亡くした児島早苗さん

<「真実を知りたい」 遺族のために><「交通対策マニュアル」作成><息子を亡くした 児島早苗さん>

 交通事故被害者遺族らで作る「KENTは今も私たちの中に生きる会」(代表・児島早苗さん=生駒聖書学院教会)が、昨年12月、念願だった 『遺族のための交通事故対策マニュアルKENT 真相究明はじめの第一歩』を出版=写真左下=。児島さんは00年5月、国立奈良高等専門学校4年在学中だった長男健仁さんを通学途中の交通事故で失った。被害者であっても警察・検察庁の情報は入手できず、年間約100万件の交通事故の内 裁判されるのは約1%、大多数の被害者が真実を知ることなく泣き寝入りである現状を、児島さんは骨身に沁みて味わわなければならなかった。
 「真実を知りたい」との児島さんの悲願に共鳴した健仁さんのクラスメートや恩師らが現場検証や署名に協力し、刑事裁判が決定したのは02年2月だった。現在20回目の公判が終了したところだという。この長い闘いの中で児島さんが切実に感じたことは、多くの経験や前例、マニュアルを持つ警察や検察、企業などの組織の強権、圧力に対抗できる被害者側のマニュアルの必要性だった。
 マニュアル作成に協力してくれたのは、やはり健仁さんのクラスメートら若者と会員、支援者ら。冊子作りのポイントを 「子供から年寄まで見てわかりやすいもの、どん底にいる遺族が少しでも明るくなってもらえるもの、読んだとき自分もやってみようと思ってもらえるもの、勇気と希望を伝えるもの」とした。作成の中心となった若者たちは、児島さんら遺族の意図を十二分に汲み取ってくれた。児島さんの経験を土台に完成したカラー刷りイラスト入りのマニュアルは、随所に遺族への配慮がしのばれるが、決して感情的ではなく、複雑な実務への対応や手順を細かくわかりやすく記述している。難しい法律用語の説明も加えた。後半のページにつづられた健仁さんの友人の手紙には、マニュアル作成の意図と願いが凝縮されていて胸を打つ。
 冊子は一般紙やテレビでも紹介され、被害者遺族や法律関係、被害者支援団体、教育機関などからの要請で、千部の冊子がまたたくまに残り200部 になった。無料配布としたため、増刷費用のための募金も行った。今後弁護士事務所や保険会社、病院、警察、検察庁など事故にかかわるすべての場所に設置できたらと願う。今年1年は不慮の事故への関心や意識の高い幼稚園の保護者へ向けて啓発したいと、児島さんは考えている。児島さんが代表となり、情報発信と冊子頒布のためのNPO法人の立ち上げも決定した。「ここまで来るのにはすべて祈りが支えてくれました。人間の思いで進むと道がはずれてもわからなくなってしまいます。1日に何度も祈りました。祈ることで、枝葉にとらわれることなく、迷い込むこともなく進めたのです」
 健仁さんのために真実を追い求めた児島さんの愛が、大きな波となってうねり始めている。冊子希望者の連絡先は〒631-0831奈良県奈良市西大寺宝ケ丘7ノ29(橋本千恵子)。ホームページhttp:
//members.at.infoseek.cojp/atti0416/、Eメール[email protected]。  【藤原富子】