教会襲撃事件が投げかけたこと——私たちの信仰が問われる 山口登久

 消火器が教会に投げ込まれる事件は2年前、滋賀県の教会から始まったと聞いています。当時は誰もそれほど大きな出来事とは思っていませんでした。子どものいたずらぐらいに受け止めていたと思います。
 これはおかしいと感じ始めたのは、事件が京都で3回立て続けに起こった時からです。昨年から大阪北部で頻発するようになり、兵庫県東部地域に広がっていきました。いつもプロテスタント教会が狙われ、ほとんどが消火器を投げ込まれるというケースに特異性を感じました。
 やがて被害教会が50を超え、これは大変な問題だと思いました。私が知る限り、戦後、日本の教会が外部からこれほどの被害を受けたことはありません。近放伝の持つネットワークを通して事件の情報収集と助言ができたらと考え、510の近放伝協力教会に呼び掛け始めたのはその頃からです。
 被害が70件を超えたのは今年の4月です。被害届けを出していない教会もあるかもしれないので、実態はもっと多いのではと思います。70件あまりという数字は、滋賀、京都、大阪、兵庫のプロテスタント教会約千320の5・4パーセント。これは大変な被害です。
 犯人は意図的、計画的に、襲撃する教会を下見してやっていると感じられます。消火器は近くのアパートなどから盗んでくるようです。状況から、教会への知識を持ち、何らかの動機を持って襲撃しているように思えます。土曜夜に集中した時期もあり、礼拝を妨害しようとする悪質な意図を感じました。現在までの被害は物損ですが、突然襲撃されるという予想外の出来事は、牧師や信徒に大きな精神的ダメージを与えました。不安で眠れないとの声もあります。

犯人の行いは憎んでも
犯人も救われるべき

 近放伝では大阪府警からの助言を受けて、次のような自衛策を提示して教会に配布しました。
 ①門扉の施錠、②施設周辺に凶器となるものを放置しない、③窓ガラスに格子等を設置、④防犯灯、防犯カメラの設置、⑤不審者発見時には通報する、⑥事件発生時はただちに警察へ通報する。さらに、器物損壊も保障される保険に入ることも勧めました。
 この事件で分かったことの一つに、教会が危機管理に対応していなかったことです。「まさかこんなことが起こるとは…」という教会が多かったのです。これを機に教会の危機管理を考えてほしいと提案しました。
 また、教会は隔離された場所でなく、地域に存在を証ししてほしいと勧めました。最初に大手の新聞から取材を受けた時、なぜプロテスタントだけ被害を受けるのか、カトリックと対立しているのかと聞かれたのです。
 世の人はキリスト教会のことを少しも知らないのだとつくづく感じました。教会が独善的で排他的なので、懲らしめのため襲撃しているのでは、という中傷、意見もありました。襲撃される原因はそっちにあるという批判を受け、これは物的被害というよりも、私たちの信仰そのものが問われる事件だと思ったのです。
 私たちは福音さえ伝えていけばいいと思っていたのではないか。地域のために仕えていると思っていたが、地域の人は私たちが思っているほどには感じていない。それが分かった時、もっと教会は地域に積極的に証ししていかなければと、悔い改め反省したことでした。
 被害教会の中には、事件のことを公にしたくない、そっとしておいてほしい、というところもありましたが、大切なことはこの問題の本質をしっかり見抜き、外からの攻撃に対してどう対応するか、主体的に考えていくことだと思います。ある牧師は大手の新聞で報道され、ああ、ここにも教会があると、世の人が教会の存在を知ってくれただけでも伝道のチャンスと捉えたそうです。
 5月、防犯カメラに映った犯人らしきバイクの男の写真が新聞に載りました。それ以降、犯行がやんでいますが、警戒を怠ることはできません。また、犯人の罪の行いは憎んでも、犯人もまた救われなければならない魂です。
 さらに、地域に開かれた教会が、防犯のため門扉を固く閉ざしてしまうことにも問題があります。こうした課題に取り組むと共に、再発や模倣犯が出現しないよう祈り続けて行きたいと考えています。
(聞き書き=藤原とみこ)