
2016年4月14日21時26分の前震、16日1時25分の本震、と震度7を超える地震が相次いだ「熊本地震」から10年がたつ。1月末、「熊本バンド150周年」の行事(本紙2月15日号参照)にあわせ、記者は10年ぶりに熊本市と益城町を訪ねた。【高橋良知】
参照 【まとめ】熊本地震10年 教会はどう動いたか 当時をたどる

1月29日、熊本空港から市街へ向かう。バスは益城町を通る。幹線通りは賑やかだが、被災の激しかったエリアはどうだろう。訪問最終日に再び訪ねることになる。
熊本市街に入ると、熊本城に向かった。被災した天守閣は再建されたが、崩れた石垣、組み立て中の櫓(やぐら)など、再建途上だ。すべての再建にはさらに20年以上かかるとのことだ。


目次
100周年 九州ルーテル学院

市街北側の九州ルーテル学院では、法務事務局長の櫻井和夫さん、事務部長の西川毅さん、社会福祉学が専門の西章男准教授が迎えてくれた。10年前は4月末に訪ねたが、建物の損傷があり、各種対応に職員は追われていた。当時すでに保育園から、中高、大学を有していた同学院は、生徒、職員に人的被害はなかったものの、自宅被害などで、しばらく避難所、仮設住宅から通学する人たちがいた。16日には、グラウンドにテントを張り、近隣住民の避難を受け入れた。
学生が自発的に立ち上げたボランティアLINEグループはたちまち100人以上となった。学生生協や卒業生、保護者らから物資が集まり、炊き出しや物資救援、清掃活動などを展開した。特に高齢者や障害者には個別運搬した。4月中に活動は終了したが、学生リーダーからは「2週間、『ありがとう』の言葉の重みをたくさん感じた」、職員からは「『ありがとうのつながりがつないだ多くの命』があることを誇りに思う」という声が聞かれた。

震災の教訓は何だろうか。3人に聞いた。「普段からの訓練だと思う。忘れたころに災害はやってくる。全学ではないが、保育園、幼稚園では毎月訓練をしている。また備蓄が必要」。現在は地元町内会と協力して防災倉庫も設置予定。地域の運動会に学生も参加し、防災を意識した「防災リレー」などの種目を実施している。
九州女学院にルーツをもつ同学院は、今年10月に100周年を迎える。記念事業でエントランスほか、礼拝堂、体育館など設備を改修補強。24年にはインターナショナルスクール小学部を創設した。同じキャンパスで幼・小・中高・大学の交流があるようだ。
つなぐ 熊本YMCA

翌30日朝の「熊本バンド結盟150周年早天祈祷会」には、今回の訪問取材で出会った各所の人々も集まっていた。同集会の事務局を担う熊本YMCAを訪ねた。
同団体は県内に数多くの拠点・管理施設を有している。熊本地震の直後は、自らも被災しながら一部の施設を避難所として開放し、管理運営や被災者支援を担ったほか、各地へボランティアの派遣も行った。
当時について、副総主事の木村成寿さんは「私たち自身も被災しながらの活動だったが、全国のYMCAや様々なボランティア団体が駆けつけてくださったおかげで、支え合うことができた」と感謝を述べる。震災から10年を経て、「地域や防災におけるつながりは震災以前よりも強固になった。風化させないという思いを大切に活動を続けたい」と話す。
昨年総主事に就任した伊藤眞太郎さんが熊本YMCAに入職したのは、地震から3年後の2019年である。しかし、前職の盛岡YMCAでは東日本大震災を経験し、津波被害を受けた沿岸部で長期的な支援活動に従事していた。熊本地震直後の5月には先遣隊として熊本入りし、壊滅的な家屋の状況を目の当たりにしている。

伊藤総主事は「私たちの強みは、人と人とをつなぐこと。ハード面の復興以上に、心の痛みや葛藤を分かち合いながら、コミュニティーを再構築していくことを重視している。コロナ禍を経て人との関わりが希薄になり、コミュニケーションに悩む青年も増えているが、こうした課題に寄り添うことこそがYMCAの役割」と語る。
活動は多岐にわたるが、例えば専門学校熊本YMCA学院では留学生も積極的に受け入れ、YMCAが掲げる「地球市民」の理念を体現している。建築科の卒業生が地元の建築業界で数多く活躍している点では、インフラ面の復興も間接的に支えてきたといえる。
「2028年に熊本YMCAは創立80周年を迎える。使命(ミッション)に掲げる『熊本バンドの精神を受け継ぎ……』という言葉通り、先人が紡いだ歴史を大切にしたい。イエス・キリストの生き方に学び、人が人らしく関わり合って生きるために何ができるか。スタッフ、ボランティア、ワイズメンズクラブ、会員と心を一つに歩んでいきたい。日頃の礼拝や常任委員会、専門学校でのキリスト教教育などを通じ、地域の教会とも深く関わっていきたい」と話した。
敬天愛人 九州学院

今年創立115年となる九州学院。10年前は、被災しばらくだが校庭で部活の自主練をする生徒たちの姿があった。室永芳久校長は当時クラス担任を受け持っていた。「上級生はクラス替え、一年生は入学したばかり。生徒の安否確認は大変だった」と振り返る。心の面での後遺症があるのではないか、と生徒の様子を継続的に調査し続けた。被災で二号館、四号館は建て替えとなった。
10年がたち、コロナ禍の影響、猛暑対策の冷房施設の拡充など、新たな現実的課題にも直面している。キリスト教主義の学校への思いをこう語った。「中学・高校は、人生の通過点であるが、その学生生活を大事にしてほしい。本校の校訓でもある『敬天愛人』というキリスト教の理念に基づいて、自分と他者に対して誠実で、思いやりを持つことを大切にするのが本校の教育の根幹だ。それを前提にしながら、友人関係や学校行事、部活を頑張ってほしい。そのような生徒を育てたいと思っています」



近くには、キリスト教書店ハレルヤがある。明るい店内に信仰書、神学書、グッズ類が並んでいた。良質な信仰の言葉に出会う意義をスタッフは熱く語った・・・
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