世界で3.8億人が迫害下 オープン・ドアーズが報告
国際的な宣教団体「オープン・ドアーズ」が、世界のキリスト教徒への迫害状況を調査した報告書「ワールド・ウォッチ・リスト2025」を公表した。世界中で3億8千万人以上がその信仰によって迫害され、その8割以上が、迫害の激しい上位50か国で起きているという。その報告書から、概要と状況を抜粋する。
暴力、追放、潜行……
【オープン・ドアーズ】今回の調査によると、世界中で3億8千万人を超えるキリスト教徒が、信仰を理由に高いレベルの迫害や差別に直面し、国民として平等な保護を与えられるどころか、信仰に敵対する社会で基本的な法的権利を否定されていることがあまりにも多い。
内戦と反乱
暴力による混乱は、迫害の隠れみのとなり続けている。ミャンマー、イエメン、スーダンなどの国では、内戦がキリスト教徒を標的とした攻撃の温床となっている。中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、マリ、ブルキナファソ、ニジェールなどの他の地域では、イスラム教徒の反乱により、過激派が何の刑罰を受ける恐れもなく、キリスト教徒を標的にし、神の民のコミュニティーを攻撃し、追い出すことができる環境が作り出されている。
4,476人が殺害
ナイジェリアでは昨年に比べると信仰のために殺害されたキリスト教徒の数は減少しているが、それでもキリスト教徒の死亡者数は不釣り合いに多く、3,100人が信仰のために犠牲となった。悲しいことに、ナイジェリア国外で殺害されたキリスト教徒の数は増加しており、その多くはコンゴ民主共和国、ブルキナファソ、カメルーン、ニジェールなど、サハラ以南のアフリカ諸国で発生した。
4,774人が拘留、投獄
キリスト教徒は、イエスへの信仰故に、裁判もなしに拘留され、逮捕され、有罪判決を受け、投獄され続けている。インドだけでも千629人が裁判もなしに拘留され、547人が投獄された。信仰を理由に投獄される事例は、エリトリア、バングラデシュ、イランなどでも起きている。
世界中で暴力が横行
キリスト教徒に対する暴力は増加している。厳しく統制された独裁国家、または弱体化した政府や内戦により不安定な国など、状況はさまざまだが、同様の結果が起きている。つまり、キリスト教徒のコミュニティーが標的にされ、人命、家屋、教会が破壊され、信者に多大な圧力がかかっている。
サハラ以南で続く暴力
アフリカのサハラ以南の複数の国で、キリスト教徒に対する暴力が増加している。現在、キリスト教徒にとって最も迫害の激しい上位10か国のうち8か国がサハラ以南にあり、そのすべての国(ナイジェリアを除く)で、前年の調査よりも、信仰に基づく殺人が増えている。
政府の慢性的な不安定さにより、キリスト教徒が標的にされ、イスラム過激派がその混乱を隠れみのにしてキリスト教徒を攻撃できる環境が生まれている。
多くのキリスト教徒が家を追われている。サハラ以南全域で避難を強いられた3千450万人のうち、約1,620万人がキリスト教徒である。
教会は追い出されるか、地下にもぐる
中東に限らず、迫害の激しいさらに多くの国々で、キリスト教徒は地下に追いやられている。キリスト教徒の孤立と教会の衰退は、いくつもの国で繰り返されるパターンだ。
10年以上にわたる戦争、災害、容赦ない危機を経て、シリアの教会は大幅に減少した。国外への移民によって教会の様相は大きく変化しつつある。古くは、少数民族とはいえ大規模だった集団から、はるかに小規模で、より危機に瀕(ひん)したキリスト教コミュニティーへと変化しているのだ。
イスラエルとハマスの戦争の後、ガザ地区とヨルダン川西岸地区のキリスト教コミュニティーは消滅の危機に瀕している。ガザ地区では少なくとも33人のキリスト教徒が殺害され、暴力行為でほとんどの家屋が破壊された。多くのキリスト教徒の家族がすでに海外に移住したか、移住しようとしている。
アフガニスタンの教会は完全に地下に潜っている。目に見える形でキリスト教を表すものはほぼ無いので、タリバン当局は取り締まる対象がない。
アルジェリアのすべてのプロテスタント教会は閉鎖を余儀なくされ、閉鎖の対象となる教会は残っていない。
中国では、かつては容認されていた非公認教会が、規制強化により現在では違法とみなされている。公認教会はより強い思想的圧力にさらされており、新しい法律は牧師たちに教化セッションを課し、それに従った説教をするよう促している。小規模な会衆は、管理が容易な大規模教会に合併するか、孤立した家の教会で隠れて信徒の集まりをするかの、いずれかを余儀なくされている。
(2025年02月02日号 01面掲載記事)