(C)Praxis Films (C)Laura Poitras
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2013年6月、アメリカ中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン(1983年生まれ)が、米国の国家安全保障局(NSA)が、米アップルや米グーグル、米フェイスブック、米マイクロソフトなど大手IT企業が提供するネットサービスのサーバーに直接アクセスして、ユーザーのデータを収集する極秘監視・情報収集システム“PRISM”を実行していると大手メディアを通じて告発した。このスノーデン事件が、なぜ、どのようにして報道メディアに報じられたのか。そのプロセスを同時進行で記録したドキュメンタリー。命の危険を覚悟しつつ“自由な社会”を希求するうめきがリアルに伝わってくる。

【あらすじ】
イラク戦争に焦点を当てた“My Country My Country”(2006年・日本未公開)、グアンタナモ収容所を題材にした“The Oath”(2010年・日本未公開)などの作品でドキュメンタリー映画監督として高い評価と信頼を得ていたローラ・ポイトラスは、ハンドルネーム“シチズンフォー(Citizen Four)”と名乗る男からの暗号化されたメールを受け取るようになる。彼からのメールの内容は、それは、国家安全保障局(NSA)がアメリカの一般市民を対象に膨大な通信データを秘密裏に収集し、違法なプライバシー侵害行為をかつてない規模で行っている、という衝撃的な告発だった。

“シチズンフォー”と名乗る男の名は、エドワード・スノーデン(当時29歳)。NSAや国家中央情報局(CIA)でシニア・アドバイザーも務めたコンピューター・セキュリティ関連のエキスパート。ローラは、スノーデンの求めに応じて2013年6月3日、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドとともに香港のホテルへ向かった。

スノーデンは、グリーンウォルドに語り始める。NSAや他国の機関がどのような仕組みを使い、テロや犯罪への関与と無関係にあらゆる国民の電話の会話、メールの内容からインタネーットで検索した言葉まで、すべての通信記録を収集・分析しているのか。アメリカ政府は、グーグル、ヤフーなどIT企業のサーバーにアクセスし一般市民はもちろん外国の要人や個人情報も監視できるという。ローラは、スノーデンの語る一部始終をカメラで記録する。

(C)Praxis Films (C)Laura Poitras
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6月5日、グレンが英国紙ガーディアンに最初の記事を掲載する。そのスクープはたちまち大反響を巻き起こした。さらに6月10日、スノーデンは、内部告発者として自ら名乗り出た…。

【みどころ・エピソード】
高揚した感じはなくクールに話すスノーデン。ごく普通のノートパソコン一台あれば、アメリカ政府が使用しているドローンの監視映像を見ることもできる。ホテルの部屋の電話を使用しないときは盗聴されないため電源を切る注意深さ。派手なアクションやエンターテイメントな演出はない。それ自体、個人の自由意志と尊厳を脅かすネットによる監視の実態を告発する緊迫感と捜査の手が迫っている危機感をリアルに実感させられる。

スノーデンがメディアを通じて国家による個人情報の監視を告発する以前にも、組織内部で侵害の危険に警鐘を発するする人間はいた。だが、その警鐘は生かされることなく、退職へと追い込まれている。無差別テロを防ぐためという名目で、すべての個人がクレジットカード、電話での会話、メールでの更新を記録されなければならないものだろうか。エドワード・スノーデンはいう「自分の言うこと、すること、話す相手、創造や愛、友情の表現、そのすべてが記録される世界に僕は住みたくない。」 【遠山清一】

監督:ローラ・ポイトラス 2014年/ドイツ=アメリカ/英語・ポルトガル語・ドイツ語/114分/原題:Citizenfour 配給:ギャガ 2016年6月11日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー。
公式サイト http://gaga.ne.jp/citizenfour/
Facebook https://www.facebook.com/gagaeizou

*AWARDS*
2015年:第87回アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞作。女性映画ジャーナリスト同盟映画賞ドキュメンタリー賞・アイコン賞受賞。第65回ドイツ映画賞長編ドキュメンタリー映画賞受賞。 2014年:第80回ニューヨーク映画批評家協会賞ノンフィクション映画賞受賞。第40回ロサンゼルス映画批評家協会賞ドキュメンタリー映画賞受賞ほか多数。