映画「サン・オブ・ゴッド」――イエスとその時代を新解釈で描く

© 2014 LightWorkers Media Inc. and Hearst Productions Inc. All Rights Reserved.

‘神の子’イエス・キリストの誕生から十字架刑での受難と復活、昇天までを聖書のストーリーに沿って描かれている。「初めに言(ことば)があった。言は神と共にあった。言は神であった。」という新約聖書ヨハネの福音書1章1節の聖句が、天地創造からイエス・キリストが誕生する前の歴史と、キリストの生涯を結び合わせる結ぶキーワード。オープニングから天地創造、ノアの時代の洪水そしてキリスト降誕までのシーンをフラッシュバックし、引き付ける。キリストの生涯を記した新約聖書の福音書記者は、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4人いるが、ラストシーンに年老いたヨハネが登場することから、イエス(ディオゴ・モルガド)に愛された弟子ヨハネ(セバスチャン・ナップ)を語り部にしていることがわかる。

漁師ペテロ(ダーウィン・ショウ)を弟子にするエピソードをはじめ山上での説教、5000人に2匹のパンと5つのパンで食事を与えたこと、死んで葬られてから4日経っているラザロを甦らせたことなど、イエス・キリストが行なった奇跡の数々は、いたずらにドラマチックな演出はせずに端的ながらも丁寧に描かれていく。本作でイエスを演じたディオゴ・モルガドは、「脚本は、キリストのストーリーの良しあしの選り好みをせずに、旧約聖書と新約聖書の言葉が持つ、愛や同情など、われわれにも共感できるメッセージを伝えることに専念している。」と、取材に応えている(シネマトゥデイ 2014年3月11日)。
そのような、現代人に理解しやすい方向性は、描かれているキリストの言葉や奇跡の描き方にも新しい解釈として表現されている。例えば、ペトロの出会いのシークエンスでイエスは、「(私に)ついて来なさい。世界を変える」とペトロに告げる。
この’世界を変える”新しい世界’と語るキリストの言葉は、当時の政治状況や律法学者ら宗教家らとイエスの関係を描く上でもキーワードにして演出されている。それは、本作が現代人に広く普遍性をもって理解されるように当時の時代性とキリスト像を新しい解釈で提示しているとも言える。

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米国では、ケーブルTVヒストリー・チャンネルで好評を博したシリーズの制作者、主要スタッフ、出演者らが、丹念に映画化し、評価も興行面でも成功をおさめた作品。大げさなドラマに仕上げず、キリストが背負った十字架への道を淡々と描かれているだけに、聖書を読み、キリストが語った言葉を読みみ返すアプローチにはよく整理されている作品といえるだろう。 【遠山清一】

監督:クリストファー・スペンサー 2014年/アメリカ/138分/原題:SON OF GOD 配給:ブロードメディア・スタジオ 2015年1月10日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国公開。
公式サイト:http://sonofgod.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画サン・オブ・ゴッド/280667962141051