◎古都に響く花の詩−−星野富弘さん10月に奈良で講演と詩画展=0809141001

 奈良県キリスト教連合会がオリンピックイヤーに開いている奈良県キリスト教連合会大会は今年、星野富弘さんを迎えて講演会と音楽の集会「2008 讃美のつどい」を開催する。星野さんの詩画展は10年前に奈良市で開かれて好評を博したが、星野さん自身が奈良を訪れるのは今回が初めて。新作も含めた「星野富弘花の詩画展in奈良~愛と祈りの賛歌~」(同実行委員会主催)も同時開催される。 
 「讃美のつどい」は10月25日(土)、奈良県文化会館・国際ホールで午後1時半から(要整理券)。星野さんは「ありがとう 私のいのち」をテーマに講演。奈良県キリスト教連合会聖歌隊「ならジュビリー」と、ソプラノ歌手の岡田由美子さんとピアノトリオ「音登夢」が賛美する。岡田さんは星野さんの詩「ルリヤナギの歌」を作曲して初披露する。テレビアニメ「日本昔ばなし」の声で有名な俳優の常田富士男さんが、星野さんの詩の朗読をする。
 昨年6月に星野さんが交通事故で負傷したときには、講演の実現が危ぶまれた。大会委員長で、「富弘美術館を囲む会」奈良県支部長でもある青木嘉子さん(日本聖公会・奈良キリスト教会員)は、2月に星野さんを訪問して、奈良行きに期待する星野さんの強い思いに打たれたという。
 「花の詩画展」は、同会館の2階展示室で同日の午前10時から11月3日(祝)まで。一般前売り500円(当日700円)中高生前売300円( 当日500円)。問い合わせは星野富弘花の詩画展奈良実行委員会事務局Tel.0744・60・1869。
 「2008 讃美のつどい」についての問い合わせは実行委員会(奈良キリスト教会内)Tel.0742・22・3818、Eメール=naracc2000@yahoo.co.jp

◎子どもの死をとおして生まれたストーリー−−小説『うりずんの風』映画化の動き=0809141101

 重い心臓病をもって生まれた子ども・ゆうな。その生死をかけた手術を前に、全信仰をかけて祈る主人公・紫帆子―。沖縄を舞台に、我が子の闘病と信仰のはざまで葛藤する夫婦たちの人間模様を描いた小説『うりずんの風』(作品社)のあらすじだ。9月25日から全国で開催予定の同著映画化推進プロモーション企画に先立ち、原作者の下田ひとみさん(日基教団・鎌倉雪ノ下教会員)を招いて東京・千代田区のお茶の水クリスチャンセンターで「音楽とあかしと朗読の夕べ」(同映画化企画委員、うりずんの会共催)が開催され、下田さんが作品誕生に至るまでの経緯について語った。

 「『うりずんの風』はフィクションですが、子どもを亡くしたという私自身の体験なくしては書けないものでした」。そう語る下田さん。
 下田さんは子どもを心臓病で亡くした経験をもつ。「初めての女の子でした」。ほかに5歳と3歳の男の子がおり、子育てに忙しい日々をおくっていた最中、生後2か月で迎えた死だった。深い悲しみと共に「これは耐え難い試練」と感じ、クリスチャンだった下田さんの信仰は揺らいだ。
 傷心癒えぬまま、一家はそれまで暮らしていた沖縄を離れ、神奈川県に引っ越すことに。
 もともと文章を書くことが好きだったという下田さん。子どもたちが成長し、1人の時間がもてるようになった頃から小説を書くようになった。子どもの死から3年ほど経った頃、教会を舞台にした小説を書き始めた。「死んでしまったあの子を、小説の中で生かそう」と、子どもを登場人物の1人として登場させた。
 「自分が作り手なのだから、ストーリーはどうにでもなったはず。でも、小説の中で赤ちゃんはやっぱり死んでしまうのです。かわいそうで、申し訳なくて、『ごめんね、ごめんね』と泣きながら書き上げました」
 その時、小説の「作り手」として、万物の「造り手」である神様を思った。「神様は私の子どもを生かすこともできたはず。でも、理由はわかりませんが、『亡くならなければならなかった』。それが『神様が造られたストーリー』と気づきました」。神様がどれほどその死を悲しんでいたか、辛い思いをされたことか…。そんな思いが慰めになったと言う。
 小説が完成した時、ある文芸評論家に作品を見せた。「子どもを亡くしたお母さんの個所がとても良く書けている。ここだけ抜き出し、新しい物語を完成させてみては」とアドバイスを受けたが、「それはとても辛い作業になるし、子どもを亡くしたことを売り物にしたくない」という思いから「できません」と答えた。しかし、その評論家は「子どもを亡くしたお母さんも、信仰によって立ち直ったお母さんも大勢いる。しかし書ける人はいない。あなたは書かなければなりませんよ」と励ました。そのことばに背中を押され、新たに書き始めた。
 祈りとは何か、信じるとは何か? それまで抱いた疑問や、苦しみの中からつかみ取ったものを胸に「全力で書き上げた」。
 完成後、いろいろな出版社を回るも、「キリスト教色が強すぎる」という理由で断られ続けた。それでも「周囲の人たちの応援に支えられ、本の予約を取り始めることに。個人で何十冊も注文してくださる方がいたり、ついには千冊の予約が集まりました。原稿を書き上げて1年半が経った頃、1人の編集者との出会いがきっかけとなり、出版が実現しました」

 今回、「映画化したい」と申し出てきた(株)タイムズイン21代表取締役の齋藤佳雄さんも、同著を読んで感動した中の1人だ。「『うりずん』とは、沖縄の言葉で『春』の意味。この小説の映画化をぜひ実現させ、多くの人に『うりずんの風』に吹かれてほしい」と語った。

[CSD]2008年9月21日号《ヘッドライン》

[CSD]2008年9月21日号《ヘッドライン》
 = 1面 ニュース=
◎自給伝道セミナー:各個教会の自立が鍵?——教会の「内向き体質」に警鐘
★アブラハムの時代の文字は——聖書考古学資料館「聖書の世界と文字」展開催

 = 2 面 ニュース =
★崔昌華氏の「戦い」に焦点——関東大震災・朝鮮人虐殺85周年
★国際:世界教会協議会が創立60周年
★<教会の実情を知る:ルポ>[24]無牧状態で新来者もなく——所属教団も牧師を派遣できず
★<落ち穂>地震被災地教会の福祉事業

 = 3 面 教界ニュース =
★韓尚東牧師の信仰を紹介——2008朱基徹記念の集い
★1千万救霊の具体的な取り組みは——第40回「日本伝道の幻を語る会」
★自給伝道セミナー:牧師給と会堂確保が課題——自給自活は解消策の一つ
★<オピニオン>宣教150年に真の平和を問う教会 記・友納 靖史

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★「主よ、あなたがオーナーです」——荒井 孝喜さん[下](レストラン「みくに」創業者)
★<信仰の中の日本語>[2]わたしをだれだと言いますか? 記・尾崎 善光

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★戦没者記念碑の十字架——米国加州連邦地裁が宗教性否定の合憲判決で論議 記・櫻井圀郎
★<精神障害と教会>[35]当事者も抱える苛立ち  記・向谷地 生良

 = 6・7 面 地域宣教座談会:東北・青森 =
★社会の縮図が教会にも浸透——孤立しやすい地方の教会

 = 8 面 全面広告=
☆こんどの情報ブックはパソコンで見る——1冊まるごとPDFファイルになった
「クリスチャン情報ブック2009」[CD-ROM版] 9月15日発売(4,725円税込)
ホームページhttp://jpnews.org/databook/2009/
 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★GOODS:カレンダー「きょうも猫晴れ」(CR企画、1,050円税込)
★BOOK:『ペドロ岐部カスイ』五野井隆史著(教文館、1,995円税込)
★BOOK:『これでスッキリ、18の疑問』山下正雄著(いのちのことば社、525円税込)
★REVIEW:『人生の秋を生きる』工藤信夫著(いのちのことば社、945円税込)評・堀 肇

 = 10 面 関西だより =
◎古都に響く花の詩——星野富弘さん10月に奈良で講演と詩画展
★イスラエルのために祈れ——B.F.P.Japan 若者による賛美と祈り
★神戸ラブソナタ09年4月開催へ
★<提言>脱・閉塞感[4] 「ダビデの幕屋」めざし信徒の心癒す教会形成 宮谷 泉氏

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎子どもの死をとおして生まれたストーリー——小説『うりずんの風』映画化の動き
★米国:がん患者の6割が祈りなど代替医療も
★<弱い私の自慢ばなし>[最終回]子どもとの境界線 記・斎藤 望

 = 12 面 ひと=
★神様と出会い 事業は更に発展——呉 振權さん([株]イヤギインヌンウェシクコンガン代表理事)

 = ?—? 面 別刷・クリスチャンライフガイド =
★教育に求められる多様性——「全入時代」に新学部急増
★少子高齢社会 心ある専門職を育成——聖学院・山下研一氏
★「個」を探求し問題解決を探る——青山学院大学・伊藤定良氏
★平和を愛し、いのちをいつくしむ教育——恵泉女学園大学・木村利人氏
★「全天候型」の人材を育てる——国際基督教大学・大西直樹氏

◎自給伝道セミナー:各個教会の自立が鍵?−−教会の「内向き体質」に警鐘=0809140101

 牧師が社会で何らかの職業をもちながら、自給で伝道活動をする自給伝道。その神学的意味づけとネットワークの形成・育成、同労者の発掘・励ましを目的に8月25日、東京都文京区の日基教団・上富坂教会(山口智子牧師)で第1回「日本宣教のこれから」(自給・自活伝道連絡協議会主催)が開催された。(関連記事3面)

 午前の講演で、斎藤篤美氏(同盟基督・衣笠中央教会牧師)、山口勝政氏(JECA・八郷キリスト教会牧師)は共に現代日本の教会の課題を歴史的観点から考察し、自給伝道の意義について提言した。午後には、渡辺純子氏(シオン・キリスト・石岡シオンキリスト教会牧師、保健師)、鄭ダニエル氏(UBF宣教師、東京韓国学校教師)、笹岡靖氏(ARKクリスチャン・フェローシップ牧師、翻訳家)、臼井勲氏(NSKK・平塚聖契キリスト教会伝道師、理容師)、飯沼和正氏(横・横信徒有志協議会代表)の5人によるパネルディスカッションを行った。

 斎藤氏は、「戦後、日本宣教のメインラインを担おうという勢いがあった福音派が今ではその勢いを失い、攻めの時代から守りの時代に入った」とし、その要因として「牧師・信徒の高齢化」、「若い牧師が教会内部の体制づくりに奔走してしまうことなどによる『内向き体質』」を挙げた。「各教会が弱体化している中で各個教会の自立の必要が出てきた」。各教会の自立のために「信徒中心に考える」、「女性が力を発揮できるよう助ける」などと共に「牧師のテントメイキング(自給伝道)の意義の再考」の必要を挙げた。「これらをどう神学的に裏付けていけるかなど、この集いを好機ととらえてしっかりと掘り下げることが課題」と語った。
 「世俗化の波の中で福音派は冬の時代に入るという危惧と同時に、これは今後どうあるべきかを考えるチャンスと考えている」とも。
 山口氏は、「有給牧師制度は日本では機能しない場合が多い。特に地方ではそう。そのため、多くの地方伝道は実質的に自給伝道といえる」と地方伝道の現状を紹介。
 プロテスタントの歴史において牧師の専門職化と共に、「1教会1牧師制を置いたことが教職のヒエラルキー化を生んだ」とし、これによって、「家庭集会が家庭集会を生むという本来の姿から変質し、信徒が受け身になり、牧会に参画しなくなり、献身観の欠落を生み、教会が内向きになった。そして教会は霊的ダイナミズムを失っていった」と語る。また、有給牧師制度により、ある教会では多額の献金をした信徒の中に「牧師を雇っているという意識が生まれている」と指摘した。
 「他者に依存しない自給伝道は霊的刷新、霊的緊張感をもたらすことが期待できる。多くの地方教会が閉鎖している現状の中で、自給伝道を見直すことは日本伝道の盲点を取り繕うものとなり得る」と語った。