2024年11月10日号1面:衆院選 と未来 主の道整える「合意形成型社会」を 寄稿 城倉啓
10月27日午後8時、開票速報時点で与党過半数割れが予想された
石破茂氏が内閣総理大臣就任後、戦後最短の8日で衆議院解散となっての「第50回衆議院選挙」が10月27日に投開票され、自民公明与党が過半数割れという結果になった。「統一協会問題」、「裏金問題」経済、社会、国際情勢にまつわる様々な論点があったが、投票率は戦後3番目の低さの53・85%にとどまった。地域市民とともに草の根からの新しい選挙制度つくりに取り組む城倉啓氏(バプ連盟・泉バプテスト教会牧師)が今回の選挙戦と、選挙制度の課題を振り返った。
キリスト者の視点で今回の衆議院総選挙を考えるときに、制度の公正や人間の平等というものが大切であると思う。
自公連立政権に対して有権者が大きな憤りをもっていたことは事実である。その憤りは目に見える大きな運動ではなかった(たとえば2015年の安保法制反対デモのような)。自公過半数割れは、政策や主義主張以前の問題に対する、いわば共通の基盤をゆるがせにしたことへの憤りの結果である。おごり高ぶり、予め自らが設けた「ルールの抜け道」を確信犯的に悪用し続け、悪事が明るみに出た後もなお「何が悪いか」と開き直る世襲議員たちは、真摯に悔い改めるべきなのだ。このままでは身分制社会。抽選で国会議員を決めた方が公正であろうし、くじを引くことは聖書的でさえある。
政治資金規正法がザル法であることや(政党支部を経由した政治家個人への献金可)、政党交付金導入と共に廃止されるはずだった企業団体献金がいまだに存置されていること、政党交付金の使途を不問にしていること、政治資金収支報告書の事後修正が認められていること等の問題性が今般周知された。どの政権の枠組みとなろうとも共通のルール改善に全政党が協力すべきだ。その上で選挙制度の改善も提起したい。
自民191 立憲148 維新38 国民28 公明24 れいわ9 共産8 参政3 社民1 無所属・諸派15
今回のこの議席配分は果たして公正か。小選挙区部分が289議席と、比例代表部分176議席に比べて多いという歪みが現行制度にある。小選挙区は死票が多く投票のやりがいを削ぐ。区割りが頻繁に変わる。大政党に有利で2割の得票でさえも8割の議席を獲得しうる。比例代表部分が小さすぎて結果が比例的でない。小政党は切り捨てられる。さらにドント式という議席配分方法を用いているために大政党に有利だ。重複立候補という落選者への救済措置も投票のやりがいを削いでいる。
二大政党制という目的で現行制度は導入されたが、結果として二大政党制はいまだに成立していない。自民一強・安定政権による安定した腐敗政治が続いてきた。自民党と統一協会との癒着も政教分離原則をゆるがせにする腐敗の一つだ。 この際に、衆議院をすべて比例代表制にしてはどうかと思う。そうすれば一票の格差の問題も解消する。天地創造の神を信じているキリスト者らしく世界を見渡そう。各国で比例代表制はより公正で平等な社会体制として用いられ鍛えられている。一票の格差の課題も同時に解消される。
たとえば全国一区の比例代表制とし、議席配分方法にヘア=ニーマイヤー式(ドイツやスイス)を用いた場合、今回の選挙結果は次のようになる。この結果は各政党の得票率とほぼ同じであり、わたしたちの生活実感とも重なる。身の回りの人々の政治的立場の分布も大体このような分布だろう。
自民124 立憲99 維新43 国民53 公明51 れいわ32 共産29 参政16 社民8 保守10
「小政党の乱立によって政権が安定しない」という批判が比例代表制には常につきまとう。果たしてそうか。10ぐらいの政党が、熟議によって政策合意をし、右寄り/中道/左寄りの政策グループを結成することは極めて民主的な営みであり、その丁寧な過程を喜ぶことが民主政治というものだ。この過程に「わたしの一票」は確実に生きているからだ。異見同士の牽制には、政治腐敗も防ぐ自浄性も期待できる。有権者も政治家も官僚も話し合いの混乱に耐える精神性を持てば、政治権力は安定する。わたしたちがどのような社会を希求するかが重要だ。神の国が来るまでに「合意形成型の社会」を目指すことが、主の道を整えることと信じる。
もう一つ重要なことは結果の平等という視点だ。意思決定機関に女性が少ないことは国連からも指摘されている日本社会の課題だ。機会の平等だけでは差別は解消されない。性の違いだけではなく、民族、年齢、年収などに応じた「割当(Quota)制」の導入も検討すべきだろう。
参照:公正・平等な選挙改革にとりくむプロジェクトURLtoripuro.jimdoweb.com/
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