[CSD]2009年2月8日号《ヘッドライン》

[CSD]2009年2月8日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎在留許可求め再審請願中のイラン人男性「収容所」で受洗——「主のほか恐れるものはない」
★祖国民主化願い一つに——在日ミャンマー人 民族・宗教超えて祈りの集会

 = 2 面 ニュース=
★またも牧師のセクハラ——「小牧者訓練会」創始者ビュン氏は否認、だが小牧者出版社は決別宣言
★早く悔い改めて償いを——在日韓国基督教総協議会がビュン氏との断絶声明を公表
★リーダーのあり方厳しく点検を——JEAが加盟教団・団体代表に要請に
★アッセンブリー:「宣教」焦点に体質改善——60周年で初の宣教大会
★<落ち穂>琉球伝道とベッテルハイム

 = 3 面 =
★熱く歌って いのちの灯火守れ——ゴスペル・リンキング・フェスタ Vol.2
★日基教団兵庫教区:ガザに祈り込めて声明——「被災の痛み見過ごせない」
★英国:国教会が女性主教を正式認知へ
★米国:聖公会保守派が新「管区」分立
★<取材こぼれ話>リック・ウォレン牧師の大統領就任式祈祷全文和訳
★<オピニオン>主にある聖家族(ファミリー)を目指して 記・榎本 恵

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★学園紛争で採用取消に——浜島 敏さん(四国学院大学名誉教授)
★<つながりのデザイン>[最終回]環境問題の本当の元凶とは? 記・小川 巧記

 = 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『夢を解き放つリーダーになる招待状』ウェイン・コデイロ著(ニューホーム東京リソース、1,575円税込)
★CD:「コヴェントリーキャロル」西村光世(TwyTwy、2,625円税込)
★BOOK:『マイ・バイブル・ノート』本田栄一監修(日本キリスト教団出版局、525円税込)
★REVIEW:『ゲノムと聖書』フランシス・コリンズ著(NTT出版社、2,730円税込)評・中山良男

 = 6・7 面 特集/開拓伝道 =
★福島から7つの教会を——巡回教区方式で人件費軽減へ
★現代に合う開拓伝道を——伝道者同士励まし合う関係大切 記・嵐 時雄
★新拠点で仕切り直し——バプ連盟新潟地域協働プロジェクト

 = 8・9 面 2・11特集 =
◎いま公教育に襲いかかりつつある荒波とは——急激に進む体制への迎合憂う 記・石黒イサク
★教育への政治介入許さない——「改正」教育基本法に市民が違憲訴訟
★2・11関連集会

 = 10 面 教会学校 =
★<教会学校の実情を探る>地域でCS分校60年——IGM・インマヌエル船橋キリスト教会
★<CSもうひと味>風船バレーボール

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎「つながり」が再建の力に——火事に遭った精神障害者共同作業所コイノニア
★米国:キリスト教映画祭最優秀賞に「ファイアー・プルーフ」
★<痛みの中に生きる人たち>子育て編[3]「道徳授業の現場から」

 = 12 面 教会 =
★手作りの温かさと共に福音を——単立・ふじみ野キリスト教会

◎在留許可求め再審請願中のイラン人男性「収容所」で受洗−−「主のほか恐れるものはない」=090208

 イスラムから改宗したらリンチや死刑が待っている…。イラン人男性のナーイフさん(仮名)は、そんな危険に晒されながら受洗を決意した。12月24日、洗礼を受けたのは大村入国管理センターの面会室。昨年8月に出入国管理法違反で強制退去令が出され、収容されているためだ。
 入管の長期収容者を支援している長崎インターナショナル教会の柚之原寛史牧師は、活動を通してナーイフさんに出会った。ナーイフさんが収容された直後の8月から毎週面会をしている。ナーイフさんは1989年に初来日し、日本人女性と出会い結婚。その後イランへ帰国し生活していたが、00年に妻と子どもと共に再び来日。溶接工やトラックの運転手などをしていた。若い頃からキリスト教に興味があったものの、イラン人同士のコミュニティーの中で教会に行く機会はなかったという。
 「彼と面会してキリスト教の話をするうち、10月頃に『聖書を読みたい、ほしい』と頼まれました」。柚之原牧師はすぐにペルシャ語の聖書を購入、ナーイフさんに差し入れた。毎日聖書を読むうち、罪の告白やキリストへの信仰を表して、受洗したいと願うようになったという。その頃から徐々にナーイフさんは体調を崩し、発熱や体の痛み、不眠を訴えるようになった。柚之原牧師は入管に何度も診察を頼んだが、「入管の医師がいるから大丈夫」と聞かなかったという。診察もまともに受けないまま悪化する症状の中でも、ナーイフさんの信仰はますます強められ、クリスマスに受洗する準備を始めた。
 「イランに帰ったら殺される可能性が非常にあります。日本にとどまるめども立たない中で、公にキリストを主と表すことのリスクを何度も確認しましたが、彼の意思は堅くて一刻も早く受洗したいというものでした」。 洗礼をしたいということを柚之原牧師が入管の看守に告げたところ、「場所を提供することも、洗礼を受けることも認められない」と断られた。信教の自由に反するこの判断に、「主の救いは律法を超える」と祈り導かれた柚之原牧師とナーイフさんは、クリスマス前夜、面会室でひそかに洗礼式を行った。「突然の流れに、看守が事務所に通報するなど、騒然としていましたが、主がおられることを強く確信し、私たちは平安でした」と柚之原牧師は振り返る。
 数日後、容体の悪化したナーイフさんは、市内の総合病院で検査を受け、バセドー病と診断されたが、現在も市販薬を含めた20錠ほどの薬が手渡されるだけで、積極的な治療は施されていない。眼球突出、脱毛などの症状も現れ、歩くのもやっとの状態だという。
 「ナーイフさんは離ればなれになった家族が日本におり、このままイランに返されてしまうと半永久的に会えません。また、クリスチャンであるため今帰ったら、殺されに帰るのも同然です。家族と暮らすためにも日本に在留できるよう『再審情願』を粘り強く出すことが必要」と柚之原牧師は語る。明日にでもイランに強制退去させられるか分からない状況下、署名活動などを早急に進めている。 問い合わせ=Tel&Fax0957・52・3140。

◎いま公教育に襲いかかりつつある荒波とは−−急激に進む体制への迎合憂う 記・石黒イサク=090208

 日の丸・君が代斉唱を厳しく指導する教育委員会の動向、チラシ配布や路上パフォーマンスなどに自粛を促すかのような判決や無言の圧力。思想・信条・表現の自由が重苦しい空気に包み込まれてゆく中で、公教育現場での一例を石黒イサク氏にレポートしてもらった。

 いま、この国の過去と現在をきっちりと見て、この時代に生かされている証人としての立場を自覚しているキリスト者はどれぐらいあるのでしょう。1999年の国旗・国歌法強行成立以来、急激に進んでいる右旋回の中で、いま学校教育が、子どもたち・若者たちを取りまく環境が危機を迎えています。近年は公立学校だけではなく、ミッションスクールまでもが、体制に迎合する方向に進んでいくのを目にするのは残念でなりません。
 1929年縲33年にかけて、私たち美濃ミッションの先輩が神社参拝を拒否して迫害されたことは、すでに聞かれたことがあり、ご存じの方もおられると思います(注1)。
 では当時の状況と、現在がすべての点で酷似していることはご存じでしょうか? 神道教育を学校教育に盛り込み、公教育の場で皇国史観を植え付けていった時代は、経済的には世界大恐慌の時であり、国内では五・一五事件(32年=昭和7)、二・二六事件(36年=昭和11)などが起こり軍部の勢力が増大した時でもあるのです。治安維持法(25年制定、28年勅令により中改正、41年全面改正)が制定されて国民を監視し、民衆の口を封じて軍事態勢に進んでいった恐ろしい時代だったのです。
 昨今の出来事は、実に恐ろしいほど当時と同じ流れになってきていることを証明しています。すでに触れた国旗・国歌法制定、2006年に教育基本法改悪以降の教育界の変貌は、最初のアラームでありました。昨年、田母神発言で暴露された自衛隊内での偏向した歴史教育が、次世代の自衛官幹部候補生に浸透していることは、実に由々しきことです。加えて密かに進んでいる「共謀罪」成立の動きはまさに戦慄ものであります。そこへ昨秋起こった急激な世界同時不況は、景気対策から進められるナショナリズムの勃興を予測させます。民衆の期待するヒーロー、ヒトラーごときリーダーの出現があったならば……どうなるのでしょう。

 愛国心教育と
 「こころの日」運動
 現在、学校では日の丸・君が代の強制と「心のノート」をセットにした愛国心教育により、ダブルで児童・生徒たちがマインド・コントロールされています。社会では式典や行事で国旗・国歌が常用され、皇族がスター扱いされ、オリンピックやWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は天皇のため、日の丸のためとして若者たちを駆り立てています。残念ながら子どもたちは正しい歴史教育も、憲法・人権教育も受けていません。なんと自衛官の多くでさえ、日本がアジア・アメリカ・ヨーロッパと戦争したことを知らない世代が増えていると聞きます。小さい時から、テレビやインターネットやゲームで、性風俗の乱れや虐待・殺人を溺れるほど見せられ、その一方で真の意味でのいのちの大切さ、人に対する愛や思いやりについては、学ぶ機会も体験することも希有になっています。
 先日、私が牧会する教会に「こころの日」推進運動をしている人が訪れました。じつは岐阜県は05年から毎月8日を「こころの日」と決めて、日本の美風・真の心を育てる運動として毎年1回県民大会を開催しているのです。政界、経済界、教育界、宗教界を巻き込んで、岐阜から全国へと意気込んでいます。現在、まだキリスト教会で同調しているところはありません。今後も絶対に同調しないことを望みます。
 「こころの日」の内容を少し紹介しますと、1月8日「敬う心を育てよう」、2月8日「国を愛する心を育てよう」、3月8日「父母を大切にする心を育てよう」、4月8日「生命を大切にする心を育てよう」、5月8日「家庭を大切にする心を育てよう」、6月8日「環境を守る心を育てよう」、7月8日「祖先を敬うやさしい心を育てよう」、8月8日「平和を願う心を育てよう」、9月8日「人のために尽くす心を育てよう」、10月8日「きまりを守る心を育てよう」、11月8日「文化遺産を大切にする心を育てよう」、12月8日「人権を大切にする心を育てよう」というものです。現在彼らは、文科大臣をはじめ有名人を起用し、大々的にポスターやステッカーを配布しています。この運動の推進役が教育委員会と神社庁であることを看過できません。実はこの「こころの日」キャンペーンも「心のノート」と同様、現在は空白にしているところに、天皇や神社がうまく収まるようにセットされているからです。

 キリスト者の
 社会での責任
 最近の日本では「伝統」、「愛」、「こころ」ということばが多用されています。その一方で多くの弱い人たちが切り捨てられ、無視され、差別され、苦しんでいます。経済状況が逼迫する中で軍備は増強され、福祉は切り捨てられていきます。信教の自由や人権の保持も風前の灯火となりつつあります。
 真の神様を礼拝して福音を宣べ伝えている私たちキリスト者は、聖書の真理を語るとともに、社会に対する大切な責任も担っています。まず自分の家族、近所、教会に通う子どもたち・若者たちのために祈り、彼らの今と将来のために、正しい歴史と歩むべき方向を伝える責任をもちましょう。そして邪悪な社会や罪悪に対して、小さいながらも「おかしい」「間違っている」と、はっきり口を開くことができる子ども・若者たちを養育して、社会に送り出していきたいと願っています。
 (いしぐろ・いさく 美濃ミッション代表、大垣聖書教会牧師)

◎「つながり」が再建の力に−−火事に遭った精神障害者共同作業所コイノニア=0902081101

 東京都東久留米市で16年にわたり地域に貢献、親しまれてきたNPO法人「精神障害者共同作業所コイノニア」(佐原眞所長)が昨年12月23日未明、火事に遭い、2階部分などを焼失した。一部とはいえ、焼けたのは事務所として使用していた、いわば「心臓部」。作業に使う大型の機械なども焼け残りはしたものの、水をかぶったり熱で曲がるなど、復旧には時間がかかるという。しかし佐原さんは、少しもうちひしがれてはいない。多くの支援に支えられ、「こういう非常事態の時こそ、めげないで、希望をもって頑張ろう」と再建を誓い合っている。

 23日午前3時頃、佐原さん宅の電話が突然鳴り出した。火事との知らせに驚いて車を飛ばすと、現場には既に数台の消防車が。1階裏口から中に入ると部屋中に煙が充満しており、消防士に促され外に出た。あとは、消火活動を見守るほかなかった。「2階作業所の中央部からもうもうと煙が立ちこめ、時折炎が見えました」と佐原さんは振り返る。出火から2時間20分後、ようやく鎮火したが、2階手前の事務所は焼失し、1、2階奥の工場部分も水浸しになっていた。

 コイノニアに通所するメンバーは、同じ建物内にある製果・製パン業「株式会社メルヘン」(佐原誠一社長)でのパン・お菓子作りや、箱詰め、発送作業に携わってきた。
 「メルヘン」は、佐原眞さんが1972年に創業。「若い頃から健康に恵まれず、多くの人の好意の中で生かされてきたこと、そしてクリスチャンの家庭に育ったこと」から、いずれは「心に病をもつ人たちの憩いの場、社会復帰の架け橋となる場を」と願ってきた佐原さんは、地域の養護学校から実習生を受け入れるようになり、やがて92年に「コイノニア」を設立した。
 この度の火事によるメルヘン・コイノニア関係者の衝撃は大きく、40縲50人の登録メンバーの行き先も危ぶまれた。しかし翌日、佐原さんの兄が経営する向かいの文具店の2階を、新しい事務所として、またメンバーの居場所として借りることができた。当面は同所を中心に、キリスト教視聴覚センター(AVACO)から委託されたイースターシールの仕事を行うが、「あくまでお菓子作りの再開を目指す」と佐原さん。「福祉作業所というと、袋貼りなどの内職が多いのですが、自分が何をしているのかが見えにくい。一方お菓子作りは、自分の作ったものが見えるし、何より楽しいんです」
 業務再開には、建物の修繕や機械の買い換え・修理が不可欠だ。焼失した印刷機や包装機、サブレ製造機器など、被害額は数千万円にも上るが、それでも「最小限の被害で済んだ」と佐原さんは言う。「1階の窯やミキサーなど、水濡れ程度で使える機械もありました。また、あと10分発見が遅かったら、2階が焼け落ちていただろうとのことです。神様の大きな恵みです」。不審火かとも思われたが、現場検証によりコンセントからの発火が判明したこと、けが人がいなかったこと、両隣への類焼を免れたことも、「不幸中の幸い」だった。
 何より「コイノニア」関係者を勇気づけたのは、各方面からの支援・励ましだった。支援団体「メルヘン・コイノニアを支える会」の会員を始め、多くの教会、地域から支援金が寄せられた。「深い交わりを重ねてきたわけではない、思いがけない方からも支援の申し出をいただきました」と佐原さん。「こういう時こそ、人とのつながりの大切さを強く感じ、互いに愛し合うよう言われたイエス様の言葉を実感します。今後も、心に病をもつ人たちと地域とのつながりの場となることを目指し、再建を図っていきたい」
 支援は「メルヘン・コイノニアを支える会」=郵便振替00140・3・581862へ。
 「コイノニア」=〒203-0033東京都東久留米市滝山5ノ1ノ16、Tel.042・470・9009。