(C) Les Films Pelleas 2008

幼い息子エンゾと母ニーナが寝場所を探し求めるシーンから映画は始まる。出生証がなく、満足な福祉保障も受けられないまま、転々と過ごす日々。ある日、ヴェルサイユ宮殿のはずれの森で2人はダミアンという男と出会う。彼は森の中の小屋に住むアウトサイダーだ。一晩過ごし、目覚めるとニーナの姿はない。 ダミアンはやがてエンゾを連れて実家へと帰り、エンゾの「父」として出生届けを出して小学校へ通わせる。しかしその「安定」はダミアンにとっての「不安定」であった。再び彼は家を出る。一方母のニーナは再びエンゾと暮らすために福祉施設で働いていた。

映画で描かれる3人は様々な思いを抱え、それは絶えず変化する。それは時に社会からはみ出すこともある。制度と規律の中にある社会はこのずれに不寛容だ。しかし、秩序の中だけが社会なのか。社会とは、生きるとは。現代に鋭く突きつける作品だ。【奥】

5/2(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。配給=ザジフィルムズ

公式サイト http://www.zaziefilms.com/versailles/