6月25日号紙面:語るべきことが語られているか 小平牧生牧師説教集出版 『有能であるよりも有益であることを』
2017年6月25日号6面
兵庫県西宮市の基督兄弟団・西宮教会(ニューコミュニティ)主任牧師、小平牧生さんの説教集『有能であるよりも有益であることを』(いのちのことば社・千26円税込)が、5月に出版された。昨年行われた日本ナザレン教団連合壮年会主催・全国壮年大会、「日本福音連盟」第49回総会東京大会、日本聖化協力会「ジョン・ウェスレーに学ぶ会」第64回大会で語られた計5回の説教をまとめた。
基督兄弟団理事長も務める小平さんは、日本福音同盟副理事長、第6回日本伝道会議(JCE6)プログラム局長、アジアン・アクセス・ジャパン副理事長などを歴任してきた。牧師家庭に生まれて「牧師だけは勘弁して」と思っていたが、青山学院大学時代に献身を決意、30代を目前に牧師の道を歩み始めた。父の照夫牧師が開拓した西宮教会を牽引してきた若手のホープも、今や50代の後半を迎えた。
「自分の説教を形にする責任を感じています。しかし、限られた場や教会の中だけではなく、顔の見えないたくさんの人に伝えることも、牧師の務めかなと思っています。説教はみことばがしっかりと語られなければなりません。ゴールはひとつ。でも、神様の導かれる歩みは多様です。様々な通り道がある。語る者の証しを通して、それを伝えることができたらと思うのです」
振り返れば、神様は10年ごとに人生の節目を与えられたと語る。10代の終わりに上京して献身に導かれ、20代の終わりに牧師となり、結婚もした。30代の終わりに体験した阪神淡路大震災は、人生のターニングポイントになった。
「震災は価値観をも揺さぶるできごとでした。それまでは、きちんと積み上げていけば人生も教会も成長していくのだと思っていたのです。それが、いとも簡単に崩れ去るということを、身をもって体験しました」
節目節目のできごとを通して、常に神様は新たな歩みと働きへと押し出してくださったと、小平さんは後書きに述べている。それらの体験が反映されたメッセージは、クリスチャンはもちろん、そうでない人の魂にも温かく深く語りかけてくる。
タイトルになった説教はテモテⅡ2:21から。社会も教会でさえも有能であることが求められる時代に「主はご自分にとって有益なものを求めておられる」ことを、マルコの生涯から説く。
「説教は人の人生を変えることもあります。神様は人を用いて伝えられるのです。若い頃はちゃんと評価されるメッセージをしようと思っていましたが、今はどう評価されようが、語るべきことが語られているかということの方が大事になりました」
父の照夫牧師は90歳になった今も、年に数回講壇に立つ。精魂込めて説教作りに取り組む父の姿をずっと見てきた。
「90歳でなければできない説教がある。そんな父にはどんなに頑張っても太刀打ちできません」
今は50代の説教に、誠心誠意取り組んでいきたいと、物静かな中に熱意を燃やす。【藤原とみこ】