残存する“天皇教” 法的根拠を超えて進んだ「代替わり」に 憲法学者横田氏

 大嘗祭など「天皇代替わり」儀式について政教分離違反を訴えてきた日本キリスト教協議会靖国神社問題委員会は、大嘗祭直前の11月11日に天皇代替わり問題連続講演会の第4回を東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開催した。

「政教分離の侵害を監視する全国会議」と共催。憲法学者の横田耕一氏が「天皇代替わりにみる『天皇教』の残存」と題して語った。【高橋良知

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 朝日新聞の世論調査(4月)で天皇に期待することとして上位に挙ったのは、被災地訪問、外国訪問、戦没者慰霊などだった。「これらは憲法に規定がない『公的行為』」と指摘した。また天皇退位の理由についても「多くの人は、『高齢で大変だ』と同情しただろう。だが当時82歳の前天皇は昭和天皇が82歳の時よりも国事行為は少ない。本来憲法上やらなくていい公的行為で忙しかったのだ」と述べた。

 退位のための特例法については、今まで公的行為を批判していた共産党も含め各党全会一致で可決したこと、法律文書でありながら「国民は・・・天皇陛下を深く敬愛し」などと書いてあることなどを問題視した。

 「日本国憲法第1条は天皇の象徴を言うが、重要なことは国民主権だ」と語る。「象徴とは、すでに国民が統合されていることの象徴。天皇が象徴として国民をまとめると解釈すべきではない。ハトを見ることで平和にならないのと同じだ。『国民の総意』も現在の人々の多数決ということではない。憲法制定をした人たちの総意と考えるのが憲法学者の通説。国民が天皇を規定したのだ。自民党改憲草案前文に言うように『天皇を戴く』のではない」と述べた。

 「『代替わり』は違憲のデパート」と言う。「天皇の代替わりで元号が変わるのは、天皇が時を支配することになる。一世一元制は明治になってできたものに過ぎない。大嘗祭という天皇の私的儀式を、宮内庁など国家機関が定めて発表している。現に行われている代替わり儀式は、天皇の正当性が天照大神の『神勅』にあることを示す明治に制定された登極令を踏襲しており、正当性は主権の存する国民の総意にあるとする現憲法に根本的に反している。大嘗宮の儀などの宗教儀式に公務員が深く関与しており、これは政教分離原則に反する」などの例を挙げた。

 「違憲訴訟は勝ちにくい状況」と語る。「国を相手とする訴訟では、国の行為によって、個人の具体的権利が侵害されていることの証明が必要。平成の代替わりでは、大阪高裁で敗訴はしたが、判決文で憲法違反の疑いが指摘された。本来は国会で議論されるべきことであり、世論を作らなくてはいけない。だが結局見過ごされた。明治に作られた天皇のイメージ、『天皇教』が今も残っている」と語った。

 「『国家神道』と呼ばれているものの主軸は『天皇教』だ。『国家神道』が意味する内容は曖昧。むしろ西欧の宗教の役割を天皇(皇室)に期待しているため、『天皇教』という言葉を使う。戦後も天皇への精神的な期待は根強かった。戦後国民に配布された憲法を解説する冊子では「天皇を中心として私たち国民が一つに結び合っているという国体はかわらない」(『新しい憲法 明るい生活』)「私たちは、天皇陛下を私たちのまん中にしっかりとお置きして」(『あたらしい憲法のはなし』)などと説明していました」

 キリスト者が訴える政教分離の課題についても述べた。「日本人は『多重信仰』であるが、自分たちに同調しない者は排除する傾向があり、偶像崇拝を拒否し異なる態度をとるキリスト者を排除しがち」と語った。

 質疑の中では、「私的宗教として『天皇教』をやるならばいいが、国家としての天皇制はやめたほうがいいと考える。天皇・皇族といった特権身分を認めることは華族などを禁じた現行憲法の精神に反する。日本の差別を本当になくすためには天皇制をどこかで止めていきたい」と語った。