コロナ禍で路上生活者支援  足立愛の教会給食伝道「給付金」も

炊き出しで。順番に並んで牛丼を受け取る

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。1月6日、新規感染者は日本全国で6千人超、東京も千500人超と、1日の感染者数の最多を更新。神奈川、千葉、埼玉など首都圏三県でも感染者数が激増している。国は一都三県知事からの要請を受け7日、一都三県に対し緊急事態宣言を発令した。一方、コロナ禍でも感染予防対策をしながら、ホームレスの人々にメッセージと食事を提供し続けている首都圏の教会、クリスチャン有志の超教派ネットワークがある。昨年末、その現場を追った。

 

足立愛の教会給食伝道「給付金」も

東京・足立区梅島の同盟基督・足立愛の教会(曺光勲〔チョ・クァンフン〕牧師)は、東京・墨田区の大韓イエス・エデン教会(金永権〔キム・ヨンゴン〕牧師)と協力し、ホームレスの人たちなどに対し週一回、炊き出しと防寒着などを届ける支援活動「向島給食伝道」を続けている。

礼拝の様子。当日は約100人集まった

記者が訪れたのは2020年12月22日。足立愛の教会に集合し、炊き出しのご飯や汁物、衣類、お菓子などをバンに積んで、車で約20分の白髭橋(墨田区)近くの隅田川河岸の首都高速高架下へ。現場に到着すると、すでに路上生活者や生活保護を受けている人たち約100人が到着を待ちわびていた。
正午から礼拝がスタート。クリスマスの時期ということもあり、クリスマスキャロルを数曲みんなで歌った後、エデン教会の金牧師がクリスマスメッセージ。「イエス様は馬小屋の飼い葉桶で生まれたが、宿屋には空いている部屋はなかった。皆さんの心にはイエスをお入れする部屋はあるか。クリスマスのこの時、どうか心を開いてイエス様を心に迎えてほしい」と語りかけた。

卵焼きと紅ショウガが載った牛丼がふるまわれた

メッセージの後は炊き出し。当日は同年最後というのもあって、温かい牛丼と紅ショウガ、卵焼きと豪華メニューだ。食欲をそそる牛丼のおいしい香りが漂ってくる。
集った人たちは順序良く並んで食事を受け取り、ある人は立って、ある人は階段に座って、おいしそうに食べていた。温かいコーヒーもふるまわれた。クリスマスということで、クリスマスカードとチョコレート、また一つ千円はする魔法瓶も配られた。
集った人に聞いてみた。葛西から自転車で来ているというAさんは常連で、聖書にも興味を示す。これまで創世記から列王記まで書き写したと語る。「緊急事態宣言が出ていた2020年4月頃は仕事がなく、収入がなくて大変だった。今は大丈夫です」。山谷の「ドヤ街」で暮らすBさんは「床掃除や工事現場の仕事をして収入を得ていたが、仕事が減った」と嘆く。かつて米ロサンゼルスやハワイで寿司屋を営んでいたというCさんは、「働きたいのに仕事がない。人の税金で飯食っている奴らに腹が立つ」と憤る。

教会から支給された給付金の袋とマスクとバック

向島給食伝道は20年になる。初代牧師の朴永基(パク・ヨンギ)氏(現同盟基督・新札幌教会牧師)が始め、二代目の金煥(キム・ファン)氏(現南アフリカ宣教師)が引き継ぎ、そして三代目の曺牧師へと引き継がれてきた。曺牧師は「半分は路上生活者で、半分は生活保護を受けている人たち。毎週100人前後が来る。ご飯目的もいるが、御言葉に興味を持ってくるひともいる。リーダー格のアサさん(愛称)から『そのメッセージ聞いたことがある』と言われたことがあり、以来、同じメッセージができなくなった」と笑う。
緊急事態宣言中の20年4月頃は、1か月間給食を休んだが、6月から再開。その頃、「日本で生活する外国人ももらえるのに、最も必要な彼らがもらえないのはかわいそう」と、給付金がもらえない路上生活者に心を痛める信徒たちがおり、「何とかできないか」という話になった。そんな中、曺牧師を派遣する宣教団体本部などから献金があったこともあり、7月、路上生活者対象に教会から「給付金」を渡すことに。「名前を記入してくれた人に、最初は5千円、二度目は2千円を手渡した。とてもうれしそうだった。そのお金で、ある人は自転車のパンクを直したりしていた。金額より、自分たちのことを考えてくれている、という気持ちが伝わったようです」
向島給食伝道は22日を最後に1か月休み、2月から予定通り再開する。