多くの末期がん患者に現場で携わり、緩和ケアの啓発、普及に取り組み、牧師として福音宣教に従事した、下稲葉康之(しもいなば・やすゆき)氏が9月2日、慢性腎不全のため、自ら名誉ホスピス長を務めた福岡市の栄光病院で亡くなった。82歳だった。4日に家族葬が香住丘キリスト福音教会において、同教会牧師の野村幸生氏の司式によって行われた。喪主は長男で栄光病院ホスピス長の順一氏。

1938年、鹿児島県に生まれる。リウマチの急性発作に苦しむ実姉の姿を見て、経済学部志望から一転、医師になることを志す。九州大学医学部在学中、ドイツ人宣教師との出会いを契機にクリスチャンとなる。67年、病院勤務をしつつ福岡市に香住丘キリスト福音教会を創設し、伝道者として奉仕。80年、県内の亀山病院(後の栄光病院)勤務となり、末期医療(ホスピス)を担当。末期患者のQOL(生活と命の質)の向上を目指して緩和ケアの現場に関わるとともに、その啓発、普及に取り組んだ。2019年には、日本福音振興会より福音功労賞を授与され、その顕彰式の挨拶の中で、「栄光病院のホスピス抜きに自分の人生を語ることはできない。今まで関わった1万人近い患者に『こちらこそありがとうございました』と言いたい」と語った。

2019年11月に行われた、福音功労賞顕彰式で

栄光会グループ会長、社会医療法人栄光会、栄光病院名誉ホスピス長、社会福祉法人栄光会理事長、NPO法人栄光ホスピスセンター理事長、香住丘キリスト福音教会協力牧師。著書に、『いのちの質を求めて』、『癒し癒されて』、『幸福な死を迎えたい』、『ホスピスわが人生道場』など。