改正入管難民法成立 支援する牧師たちは? 「寄留者への愛」から大きく逸脱
6月9日に外国人の収容・送還のルールを見直す改正入管難民法が、参議院本会議で可決、成立した。難民申請中の強制送還停止を原則2回に制限する、収容長期化を防ぐため「監理措置」を設けるなど、難民申請者・仮放免者を支援してきた人たちにとっては今後、様々な困難が予想される。長年、入管施設訪問や仮放免者の保証人になるなどの支援をしてきた牧師たちに、これからの支援の在り方などについて質問した。
質問事項は⑴改正入管難民法成立を受けての感想、⑵支援が難しくなる点は?⑶今後、難民申請者(仮放免者)への支援はどう変わるか?⑷クリスチャンや教会ができることは?⑸祈りの課題。質問に応答したのは、柚之原寛史(長崎インターナショナル教会牧師)、渡辺聡(東京バプテスト教会牧師)、宮島牧人(日基教団・原町田教会牧師)の三氏。
柚之原氏は、「極めて残念な結果。まずは難民認定率を上げないと」と返答。「特に難民申請者の精神的な不安が増大し、自傷行為や自殺未遂など、収容中に様々な問題が起こる可能性が高くなった。今後、メンタル的な支援がより必要だ」と語る。
「監理措置制度導入で監視体制が強化されることにより、支援の幅が狭くなる」とも指摘。難民申請回数(3回)が限定されることで、難民として認められない人たちへの支援がさらに難しくなる」と危惧する。「クリスチャンは勇気を出して悩みを抱える収容者を訪ね、仮放免者を教会が受け入れてほしい。難民認定率が改善するように、新たな支援者(面会者)が起こされるように、現場で働く入管職員の救いのためにも祈ってほしい」と語った。
渡辺氏は、「寄留者を自分自身のように愛さなければならない」(レビ記19章33、34節参照)という御言葉を示し、「日本が、神の命じる愛の律法から大きく逸脱していく分岐点になったと感じている」と嘆く。「強制送還が進めば、支援したくても支援すべき人が日本にいなくなる。新しく創設される『監理人制度』が、仮放免者を支援するためでなく監視するための制度になってしまう可能性がある」と危惧する。
「基本的には、今までやってきたことを続けることになる」と渡辺氏。「クリスチャンや教会は、次の選挙では入管法改正に賛成した政党には投票しないことだ。法律の施行まで1年の猶予がある。それまでに日本国民の一人でも多くが入管問題を正しく認識し、それに対して正しく声を上げていくことができるように」と、祈りを呼び掛けた。
宮島氏は「非人道的な法案。この法案に賛成した人たちは難民申請者たちのいのちを奪う死刑執行ボタンを押すことになる」と憤る。
今後、支援が難しくなる点に関しては、「仮放免制度が限定され監理人制度が導入されることで監理人を担うことができない。仮放免の保証人はできていたが監理人になることは難しいと考える。長期に収容される人たちが増えるが、収容から解放されるための支援が限定される」などを挙げた。
それを踏まえ、支援も「入管の権限がより強くなり、難民申請者たちはより厳しい立場に立たされることになる。3回目以降の申請者たちの強制送還が可能になるためだ。これまで以上に支援する側も難民申請者たちも、厳しい現実を突きつけられることが想定される」と語る。
今後、クリスチャンや教会ができることは、「まずは入管の問題を知る、一人でも多くの人にこの問題を知らせる働きをする、御言葉が伝える通り寄留者の隣人となるための祈りと努力をする」ことだとし、「入管行政が一人ひとりの事情を考慮し、人道的な配慮を持ち、国際基準に則って在留資格を与える機関となりますように」と祈りを要請した。
(2023年06月25日号 01面掲載記事)