2000年3月26日号《ヘッドライン》

2000年3月26日号
《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎人の目より造り主の評価——絵本「たいせつなきみ」一般書店でも売れ筋
◎聖書の価値観で「家族のあり方」——J・ドブソン氏の新番組が信越放送ラジオで開始
★地下鉄日比谷線脱線で襲った突然の死——新任長老の事故死に教会員ら「奉仕者の自覚」新たに
★バチカン:教皇、過ちに赦し請う——ユダヤ人迫害、十字軍、異端審問など
★<21世紀への対話>ペンテコステと福音派(10)万代栄嗣・内田和彦
★<落穂抄>厳寒のモンゴルに最悪の寒波襲う
 = 2 面 =
◎<日の丸・君が代問題>卒業式での「国歌斉唱」回避——「日の丸・君が代」強制反対ネット実例報告
★<日の丸・君が代問題>ホーリネス教団:良心的な判断をパンフで応援
★<日の丸・君が代問題>聖公会新聞に反対意見広告
★<日の丸・君が代問題>高木寛牧師、国歌斉唱中の着席理由を謝辞で弁明
★JEMA:新会長にポール・パイク氏就任
★東京基督神学校:4月より音楽科を開設
★ベトナム:AOG最後の会堂破壊、跡地は公認教会が占有
★<世界の出来事フラッシュ>スーダン、インドネシア、ギリシャ、米国
★<論説>時のしるしを見分ける
★<逆転の信仰経営>(42)生まれ変わったビジネスマン<25> 三谷康人回顧録
 = 3 面 全面広告=
★「クリスチャン情報ブック2001」アンケート調査開始のお願い
 = 4・5 面 宿泊特集=
★国際性豊かな施設、信徒聖書学校を5月開校——トーチベアラーズ山中湖
★個人から林間学校まで対応——ホテル箱根アカデミー
★軽井沢でファミリーキャンプ——恵みシャレー軽井沢
★大小4つのチャペルが魅力——天城山荘=0003260502= ★日本発の組織キャンプ場は全館バリアフリー——東京YMCA山中湖センター
 = 5 面 日本宣教のパイオニア(3)=
★中田 重治:20世紀初めから活躍したホーリネス教会の指導者
 = 6面 =
★中田 重治:20世紀初めから活躍したホーリネス教会の指導者
 = 7面 建築特集=
★長老は「一粒の麦」になった——地下鉄日比谷線脱線で亡くなった藤井新也さん
★今は神に「熱中」の私——ミッキー・マッケンジーさん自伝を出版
★<召天>日野綾子氏(捜真学院理事長・院長)
★<召天>園部順夫氏(パイプアルガン奏者、日本聖書神学校講師・評議員)
★米国:進化論と創造論どちらも学校で教えたら?
★スペイン:教会の屋根がコウノトリの巣につぶされる
★<声なき叫びが聞こえますか=42>現実の課題に働かれる主を待ち望む 記・岡本富郎
 = 8 面 関西だより=
★<聖書66巻>箴言(1)主を恐れることは知恵の初め 記・世良田 湧侍
★<書評>「生きる権利 死ぬ権利」ジョン・B・カブJr著
★<新刊書紹介>「散策の小径」川中子善勝著
★<新刊書紹介>「第一コリント?」田中剛二著
★<情報クリップ>催し情報ほか      
 

人の目より造り主の評価−−絵本「たいせつなきみ」一般書店でも売れ筋

「初めて絵本を読んで泣きました」「子どもたちのためにと思って買いましたが読んでいるうちに私自身、温かい優しい存在に包まれていることを実感しました」「子どもが思い通りにならないと育児に悩んでいるお母さんに読ませてあげたい」——一昨年10月にフォレストブックス(いのちのことば社出版部内)から出版された絵本『たいせつなきみ』(マックス・ルケード作、1600円税別)が、最近の絵本ばやりも手伝って街の書店で順調な売れ行きを見せ、読者の大きな共感を呼んでいる。
「エッセ」「詩とメルヘン」「コスモポリタン」などの雑誌や、「目覚ましテレビ」「王様のブランチ」などテレビ番組でも紹介された。
日本では福音文書が一般書店で売れることはまれな中で、文書伝道の可能性が広がる一歩かもしれない。
「大切なのは人の目から見たレッテルではなく、自分を造った人の評価」——人形を主人公にそんなメッセージを伝えるこの本は、3月の第7刷で2万7000部が出た。
近年キリスト教書は初版で3000部出れば良い方。
一般書店向けを指向したフォレストブックスでも、これまでに「よく売れた」絵本で6000部。
取り次ぎを通しての一般書店への配本はなく、足で売り込んだ。
また、一般書を含めて多くの本の返品率が50パーセントと言われる中で、『たいせつなきみ』は10パーセント以下という数字も出ている。
「平均して1日1冊売れる本は少ない。
しかしこの本はその部類」と紀伊国屋新宿南店では言う。
読者は子どもよりも母親や学生が多い。
大人が、物語の伝えようとしているメッセージを深いところで理解して感動を受けていることが、読者カードから分かる。
出版を担当したいのちのことば社の結城絵美子さんは「いま社会には飢え渇きがあり、『いやし系』が求められている。
でも、ただの『いやし系』で終わるのではなく、自分の知らなかった考え方、価値観を知ってもらいたい」。
この本には直接「福音」は語られていないが、作者が牧師と明記してあることから、キリスト教の価値観であることが理解できる。
フォレストブックスは、『たいせつなきみ』の出版が企画される少し前に、いのちのことば社が一般の人の心に届く本を提供しようと併設した版元名。
出版社、新聞社など44社に紹介を依頼するなど、積極的に一般社会へ普及するための働きかけをしている。
今月も絵本の新作として、マックス・ルケードの次作『そのままのきみがすき』(1600円税別)と、さかもとふぁみ『ちいさなリース』(1500円税別)が発売された。
『ちいさなリース』は、両親を殺されたルーマニアの少女の実話をもとに、赦しをテーマにした絵本で、聖書からの引用もある。
さらにどんな反響があるか、注目される。
●ストーリー『たいせつなきみ』は米国で「クリスチャンブック・ベスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞したマックス・ルケード氏の作品。
ディズニーなどの出版社と仕事をしてきたセルジオ・マルティネス氏が絵を描いた。
エリに作られた木のこびとたちは、互いに評価し合い、「きんぴかシール」と「灰色シール」を付けあっていた。
醜く何の特技もないパンネリオは、灰色のシールしか付いていない。
ある日、シールがくっつかないルシアというこびとに会い、「エリのところに行けばシールはつかない」と聞く。
パンネリオはエリに会いに行き、自分がエリにとっては大切だと信じた。
そのとき、彼の体から一つの灰色シールが落ちた。

聖書の価値観で「家族のあり方」−−J・ドブソン氏の新番組が信越放送ラジオで開始

「何でも簡単に手に入る世の中で、親が子どもに『だめ』と言うことは易しいことではありません。
こんにちは、ジェームス・ドブソンです」||こんな語り口の番組「Dr.ドブソンのファミリー・コラム」が4月3日から信越放送(SBC)ラジオで放送されることが決まった。
放送時間は90秒。
日本人の声優がドブソン氏の声を吹き替えて、リスナーに家族のあり方を語りかける。
ドブソン氏は米国のキリスト教団体フォーカス・オン・ザ・ファミリー代表。
児童発達心理学の専門家で『思い切ってしつけましょう』(いのちのことば社)などの著書もある。
カウンセリングの豊富な経験と聖書的な価値観に基づき、様々な家庭問題に対し実践的なアドバイスをすることで知られる。
米国で実施されたインターネットアンケートでは、「20世紀に最も影響力のあったクリスチャン」の神学・教育部門で1位に選ばれている。
ドブソン氏のラジオ番組は1977年に米国で始まり、今ではロシアや中国を含め世界約70か国で放送されている。
日本でも96年に英語で放送されたが、日本語での放送は今回が初めて。
番組制作を担当したファミリー・フォーカス・ジャパンの代表・金子耕弐氏は「家庭崩壊が進む中、日本でも聖書の価値観に基づく健全で幸福な家庭を築くための手伝いをしたい」という。
要望があれば全国展開も考えている。
放送は月曜から金曜の午後1時10分から「ラジオどんぶり」というワイド番組の中で、CMも含めて2分半。
周波数は長野市・飯田市・伊那市1098KHz、上田市1062KHz、軽井沢町・佐久市1485KHz、諏訪市1197KHz、松本市864KHz。
長野県外でカセットテープで聞けるための準備もしている。
スポンサーは斑尾高原農場が1日。
あとの4日は米国のフォーカス・オン・ザ・ファミリーが支援しているが、日本でのスポンサーをファミリー・フォーカス・ジャパンでは募集している。
TEL045・972・3971。

<日の丸・君が代問題>卒業式での「国歌斉唱」回避−−「日の丸・君が代」強制反対ネット実例報告

「国旗・国歌法」制定後初めての卒業式シーズンが到来した。
3月10日、「日の丸・君が代」の強制に反対するキリスト者教師・生徒・市民のネットワークが都内の日基教団・信濃町教会で開いた学習会では、教育委員会から圧力を受けた校長らが式で「国歌斉唱」をなんとしてでも押し切ろうとする実態と、そうした中でねばり強い交渉によって良心の自由を確保しようと苦闘する実践例が報告された。
神奈川のある県立高校では、昨年の入学式で初めて「君が代」の斉唱が式に導入された。
教職員らには反対が強く職員会議は当日まで紛糾したが、校長は「私はリベラリスト。
歌うかどうかは個人の自由。
しかし学校としてはやります」と押し切った。
だが、さらに「自由なら自由と言ってほしい」と交渉した結果、校長はアナウンスで「趣旨にご賛同の方はご起立、ご斉唱下さい」の一言を入れることに同意した。
新1年生の保護者・生徒はだれも歌わなかったという。
卒業式に初めて「国歌」が入った今回は、卒業生に事前に、歌うかどうかは自由であることを説明するように求めた。
自民党の県議が国旗・国歌の実施を確認するため公立学校の卒業式に出席の意向を示していたため、校長は「趣旨にご賛同の方は…」のアナウンスを入れることを渋ったが、ねばり強く交渉し、昨年の入学式と同じ条件を承諾。
社民党系の婦人団体や日本基督教団神奈川教区社会委員会が自民党に対し教育に政治介入しないよう申し入れ、自民県議は結局、卒業式への出席を断念した。 交渉ねばり/「歌うかは自由」引き出す 都立高校は「君が代」実施率が全国で2番目に低く、今年は特に都教委から都立高校長らに強い圧力がかかった。
そうした中で、昨年初めて卒業式に「君が代」を入れようとして混乱したある高校では今回、教職員と校長との交渉で「私だって護憲派」という校長に、「それなら内心の自由を守るとはどういうことなのかはっきりしてほしい」とねばった。
その結果、式次第に「国歌斉唱」の文言は入るが、アナウンスでは全員が歌うことを求める「斉唱」は言わず、代わりに「歌われる方はお立ち下さい」と言うことで妥結。
式開始前に、「本日の式次第の中に『国歌斉唱』があります。
本校の卒業式でも内心の自由は尊重されております。
起立する・しない、歌う・歌わないは参加者個人の判断に任せられております」と断りを放送することも実現した。
当日は2年生全員が「国歌」のときに座り、1年生と3年生は一部が立った。
保護者は半分が座った。
生徒たちに「在日や国籍の違う生徒もいる中で、一律に君が代を歌わせることに先生たちは反対している」と説明すると、涙ぐんで聞く生徒もいたという。 悩む校長らを支え、味方に 一方、小中学校では10年ほど前から君が代・日の丸が実施され、高校のような校長との交渉の場はすでにないのが実情。
「国歌斉唱」で立たないことは、処分に直結する。
そうした中でもキリスト者教師らはねばり強く校長と話し合い、せめて「斉唱」を取るように説得している。
座るなら大きな問題になる、と処分せざるをえない苦しい立場を吐露する中学校長に対し、この教師は「校長が(「斉唱」を取ることを)決断するなら支えていきたい」と、立つが歌わないという条件交渉をしている。
強制反対ネット世話人の公立中学校教師、飯島信さん(日基教団・新松戸幸谷教会員)は、「校長も上からの圧力と現場との狭間で悩んでいる。
反対する教職員は校長と対峙しがちだが、管理職や教育委員にも良心的な人はいるはず。
職務の壁を突き破って語り合い、校長を味方につける取り組み取りが必要」と話している。
次回の学習会は4月28日夜7時から同会場で。
2000年の卒業式と入学式を終えての総括をし、今後の運動を考える。