[CSD]2004年2月15日《ヘッドライン》

[CSD]2004年2月15日《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎若者伝道はショー形式?——日本人が見たアーバナ
★東京を「ホーリー・シティ」に——韓国での聖市化運動を日本でも
★<恵みのどんでん返し>安心して悩める。「信友」がいるから 記・小澤 由紀恵
★<落穂抄>「犠牲の論理」のからくり

 = 2 面 =
★「教会と国家」を神学的に検討——JEA神学委員会がパンフレット発行
◎アメリカ公立学校での「忠誠の宣誓」とは——「神のもと」での統合のシンボルなのか
★「キリスト者と戦争」——JEA信教の自由セミナー報告書を発行
★米国:連邦最高裁が「忠誠の宣誓」を憲法判断へ
★<論説>「婦人会」が成り立たない——ライフスタイル多様化に配慮を 記・杉本 玲子
★<今週の本棚>『卓上語録』M・ルター著(教文館、3,000円) 評・石居正巳
★<今週の本棚>『賛美と神の国』パクチョンガン著(小牧者出版、800円)
★<今週の本棚>『銀色のあしあと』三浦綾子・星野富弘著(フォレストブックス、1,300円)
<情報クリップ>催し情報ほか

 = 3 面 =
★日露神学校のかけ橋に——日本海はさみ極東で宣教共有 記・中村 敏
☆写真で見る「アーバナ03」
☆働くことの苦しみと喜び——この不況の時代に・・・労働の意味を考える

 = 4 面 特集・墓石デザインと信仰=
★卒業制作は教会の墓石づくり——高島有紗さん・藝大油絵科なのになぜ…
★「お墓が励ましになった」——19歳少女の死を契機に建立 復活社(有)
★墓石選びのポイントは——石のサンプルもらうこと
★「クリスチャンの墓はモニュメント」——依頼者のイメージを具現化 (株)石俊 山本石材店
★天国の階段をイメージした墓 ハーベストチャペルみもみキリスト教会
★雪国に十字架の墓——共同墓地に目を引く無言の証し 秋田県二ツ井町

 = 5 面 =
◎共感が真実に触れ、物語生んだ——明学高校生らがイラクへ贈ったサッカーボール、その後

★「不良牧師」(アーサー・ホーランド)が写真集に——「彼の後ろにいるジーザスを撮りたい」
★体動かしリフレッシュ!——関西の神学校が交流スポーツ大会
★英国:モスクへの出席者が英国国教会を上回る
★捨てないで!ハガキ1枚でできる国際支援——基督教児童福祉会が呼び掛け
★<召天>唐沢 豊氏(日本ミッション伝道者、77歳)

 = 6 面 ビジネスのページ=
★<信仰人スピリッツ>神様に喜ばれるフリーペーパーを——?ワイズ・ファクトリー代表取締役・野上義久さん
★<ミッションと起業>老夫婦からキリストの愛にふれる——森永製菓・森永乳業(株)創業者 森永 太一郎 記・杉山康夫
★<ブックレビュー>『今日からはじめる幸せレッスン』永見 憲吾著 評・中野 雄一郎(ザメディアジョン、1,600円)
★<私の信仰とビジネス>[18]営利企業から見た非営利団体——ヤマト福祉財団理事長・小倉 昌男


若者伝道はショー形式?−−日本人が見たアーバナ0402150101

 約1万9千人の参加者が集まり、昨年末、米国イリノイ州で開催された宣教大会「URBANA(アーバナ)03」。北米の大学生を対象にした宣教大会だが、日本人も多数参加した。日本における超教派の高校生伝道の草分けとして活動してきたhi-b.a.(高校生聖書伝道協会)のスタッフらも同大会に参加。日本の宣教団体スタッフは「アーバナ」でいったい何を感じ、何を持ち帰ってきたのだろうか。(3面に関連記事)
 「神様は大きかった」と語るのはスズキ知恵子さん。スズキさんは現在、高校生のための集会を週に2日担当している。これまで高校生に、「神様は大きな方だよ」と語ってきたが、大会で「さまざまな背景をもつ2万人の人たちと、同じ神様を賛美していることにその大きさ」を改めて感じた。 大会から帰ってきてから1か月。アーバナでの経験をニュースレターにまとめて支援者に送ったり、自分の担当以外の集会を回って高校生に報告したりしている。「自分で消化しきっているのか」と自問する日々だという。
 大会中、さまざまな宣教団体のブースを回り、「日本で高校生伝道をしている」と話すと、驚かれたという。中には、日本にいた引退宣教師に会い、「日本のために祈っているよ」と言われ励まされた。
 アーバナでもっとも印象深かったのは「スタイルにとらわれない」ことだと語る。「講師のメッセージが集会のメインでないことも。寸劇や詩の朗読、ラップ、アカペラなどを通して聖書のことばを伝えていて、わくわくさせられた」という。それらをhi-b.a.でどのように生かしていくか課題だ。
 同時に、アーバナの集会のスタイルに少し違和感ももった。「『ショースタイル』を意識しすぎているのかなと思った。参加者がどれだけ参加できているのだろうか」。スズキさんは日ごろ、高校生と対話しながら、集会を進めていくことをモットーにしている。そんなスズキさんには、「見せる人と見ている人」のスタイルは考えさせられることだった。「今の若者は『ショーを見る』ことの方があっているのかな」。スズキさんは今も考え中だ。

アメリカ公立学校での「忠誠の宣誓」とは−−「神のもと」での統合のシンボルなのか0402150202

 児童生徒が起立して右手を胸にあて、星条旗に向かって合衆国への忠誠を誓う--そんな「忠誠の宣誓」が、幼稚園から高校までアメリカの公教育では毎日のように行われている。自由の国アメリカでなぜこのような宣誓が続けられてきたのか。このテーマを、財団法人日本キリスト教教育センターが1月17日、定例公開研究会で取り上げた。この問題を研究している新井元・放送大学非常勤講師が「忠誠の宣誓」の役割をめぐって発題した。
 新井氏は、「忠誠の宣誓」の歴史的な背景を概観するとともに、米国の公教育においてキリスト教原理がどのように機能しているかを考察。同時に、米国でキリスト教がどのようにナショナリズムと独特な形で結びついているかを探った。
 「忠誠の宣誓」はコロンブスのアメリカ大陸到達400周年を記念する行事のため1892年に作られた。1940年代までに公教育の普及とともに全米規模で行われるようになったが、これまでに2度改訂され、文言に「神のもと」が入ったのは1954年に連邦議会が決議してからだ。
 「忠誠の宣誓」は、多民族・多文化で構成される国家としてのアメリカ合衆国に独特な、「アメリカ型ナショナリズム」の発現の典型である、と新井氏は仮説を立てる。宣誓が作られ普及していった19世紀末から20世紀初頭は、南北戦争と新移民の流入により国家分裂の危機が危惧された時代であり、教育目標として国家統合のシンボルを必要としていた、と見る。
 54年改訂で「神のもと」が入った裏には、東西冷戦の中で、モスクワの唯物論者も共和国(英語では米国も共和国)に忠誠を誓う、といった旧ソ連に対抗する論調があったことが、当時の牧師の説教や新聞記事、アイゼンハワー大統領の声明に見受けられることを指摘した。「『神のもと』という言葉を入れることによって、唯物史観に代表される非宗教的、特に非キリスト教的な国の有り様を牽制する意味合いが強かった」。  同時多発テロ後、ブッシュ大統領は児童と共に「忠誠の宣誓」を行った。「忠誠の宣誓」はその時々の為政者によって様々な意味を付与されてきた。新井氏は「同様の問題は日本にも増えてくるはず」として、「忠誠の宣誓」を通して見えてきたアメリカ史が参考になるのでは、と言う。 「忠誠の宣誓」
 アメリカ合衆国国旗と、神のもと、一体不可分の一つの国家であり、すべての人々に自由と正義をもたらす共和国に、私は忠誠を誓う。(連邦議会1954年)

共感が真実に触れ、物語生んだ−−明学高校生らがイラクへ贈ったサッカーボール、その後040215050

 東京・港区白金台にある明治学院高等学校の生徒らの募金活動でまかなわれたサッカーボール30個が昨年10月、イラク・バグダッドに住む子どもたちに贈られた。手渡したのは昨年3、4月、アメリカのイラク攻撃の最中、戦争を阻止するため「人間の盾」としてイラクに留まった木村公一さん(バプ連盟・伊都キリスト教会協力牧師)だ。その木村さんは1月21日、明治学院高校の生徒たちが主催するチャペルの講師として招かれた。木村さんは「イラクの子どもたちと出会って」という題で講演し、募金活動によってイラクの子どもたちにサッカーボールが贈られた意味について語った。
      ◇
 サッカーボールがイラクの子どもに手渡された経過はこうだ。木村さんが「人間の盾」としてバグダッド北部の変電所に滞在中、その敷地内に住むフセン君と「サッカーボールを持ってくる」と約束。この話を聞いた小暮修也さん(明治学院高校教諭)は「イラクの子に何かできないか」と考え、児童労働の廃絶などを目指した国際ネットワーク「フリー・ザ・チルドレン」の活動を続ける同校生徒に話を持ちかけた。
 生徒からは「人ごととは思えない」「サッカーボールを贈る運動をしよう」との声が上がり、昨年6月、7月に2度品川駅前で街頭募金をした。そこで集まった募金で30個のサッカーボール、空気入れなどをまかない、メッセージを添えて木村さんに託した。
 この一連の動きを木村さんは、ヨハネの福音書6章の「5つのパンと2匹の魚」のたとえ話になぞらえ、こう語った。「少年はイエス様に何気なく5つのパンと2匹の魚を差し出した。イエス様はそれを祝され、5つのパンと2匹の魚で5千人の空腹を満たしました。明治学院高校の皆さんの行動は、この少年の行動に似ています・」  フセン君の何気ない言葉、その言葉に耳を傾けた木村さん、木村さんの話を聞いた小暮さん、小暮さんからその話を受け止めた明治学院高校の生徒たち、そして彼らの訴えに共感した品川駅前を歩いていた人々。こうして「人々の真実にふれた物語は出来上がった」と。
 一方、自衛隊がイラクの人々にサッカーボールを届けることにもふれ、同校生徒が届けたサッカーボールとの違いについても語った。「自衛隊が届けるサッカーボールには、プレゼントする愛の平和のメッセージがありません。明確な送り手、受け手もいません。また、 使命もないのです。自衛隊の目的は戦闘です。そういう人たちがサッカーボールを持っていっても、狼が羊の皮をかぶっているに等しい」
 「紛争を解決し、平和を作り出すには、その紛争地域の人々の声を聞くべきです。これをしないで、紛争解決はありえません。紛争を生む温床が何なのかを見極める目が必要です」
  木村さんは「愛と共感がふれ合う時、そこが奇跡の場所になる。そのことにあずかれた私は幸せな牧師です」と同校生徒たちに感謝の意を表した。
 話を聞いた生徒のひとり、吉原瑛美さんは「日本政府はもっとイラクの人たちの声を聞くべき」、広原成さんは「僕たちの贈ったサッカーボールには、日本の市民の気持ちが込められている」、渡辺彩佳さんは「私が思う平和とは表面的でなくて、世界の人と心がつながること。もっとつながっていったらいい」と感想を述べた。
 同校生徒たちは2月6日、再び品川駅前の街頭に立ち、イラクの子どもたちにサッカーボールを贈ったことを知らせるとともに、「イラクの知的障がい者の施設に車を贈る運動」とフィリピンの知的障がい者施設「リトルステップ・デイケアセンター」への援助のため、募金活動をした。
 木村公一牧師講演会(日本聖書神学校学生自治会主催)が2月16日午後6時半から、東京・新宿下落合の同神学校で開催される。テーマは「イラク戦争の現場から考える」。参加費500円。問い合わせはTel:03-3951-1101。
       【中田 朗】