[CSD]2004年3月14日《ヘッドライン》

[CSD]2004年3月14日《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎なぜオウムにひかれたのか?——教祖判決の日に研究成果『オウムからの問い、オウムへの問い』を刊行
★「父として誠実に語ってほしかった」——被告の子らと近所づきあいの主婦語る
★「孤児の父」石井十次の映画化発表——「救いをうまく演じたい」と主役の松平健さん
★90年かけ1000号発行——点字月刊雑誌「信仰」
★<恵みのどんでん返し>聖書より求人欄に引き込まれた日々 記・柴田 正勝
★<落穂抄>塩狩峠アイスキャンドルの温もり

 = 2 面 =
★宗教法人の提出書類は原則不開示——鳥取県の情報公開で文化庁が確認
★WCCは気候変動問題会議——水没危機の南太平洋の教会とともに
★ケズィック大会でR・ブラウン氏語る——罪の赦しの力を強調
◎<緊急連載・心の監視はどこまで来たか>国歌斉唱「起立しないのは誰だ」
★<論説>思い込みは禁物——良い人間関係を築くために 記・内川 寿造
★いのちのことば社「復刊希望」キャンペーン——申込締切迫る
★<今週の本棚>『恵みの地』スティーブ・マクベイ著(ファミリー・ネットワーク、1,200円) 評・下川義明
<情報クリップ>催し情報ほか

 = 3 面 特集・聖書の世界を広げる=
◎カトリックでも盛り上がる聖書贈呈運動——聖書協会 協会案内付きカバーを用意
★これならギリシャ語で聖書が読める——『インターリニア新約聖書』全巻完成へ
★聖書の歴史を集成した『聖書の歴史図鑑』——波乱万丈の聖書変遷物語
★Niftyの聖書フォーラム「FBIBLE」——インターネット掲示板に衣替え
★ハンディで信徒向け『新共同訳 聖書辞典』——日本キリスト教団出版局から発売
★『総説 新約聖書』20年ぶり新版に

 = 4 面 ザ・対談=
★「あなたの人生に信望愛革命を」 永見憲吾氏(IGLグループ)Vs 中野雄一郎氏(マウントオリーブミニストリー伝道者)

 = 5 面 教会教育特集=
★チア・にっぽん夏期キャンプ報告:実践者ら集まり互いに励まし
★米国・教会夏期学校レポート:地域に手を伸ばす好機
★最近のキャンプ伝道は?——社会人にも焦点あて研修、セミナー型へ
★春のキャンプ情報

 = 6 面 特集・今に生きる賀川豊彦=
★貧者救援に身を投ず——全国に「神の国運動」展開
★「今の世に賀川精神を」——鳴門市賀川豊彦記念館で学習講座
★「瞑想」が思想の骨格——東京ミッション研究所主催「賀川豊彦の生涯と思想」
★蔵書、著書など5万冊——東京・世田谷の松沢資料館

 = 7 面 =
★交通事故・大やけど・奇跡の生還「今のこの姿でも、幸せ!」——韓国のベストセラー手記『チソン、愛してるよ。』邦訳出版
★若いお母さんに好評、信仰持つ人々が次々——夙川聖書教会の「生き方を学ぶ会」
★合唱団員募集:来春オラトリオ「エリヤ」を——グレイス合唱団(Tel.0424-25-3622)
★合唱団員募集:教会音楽家養成チャリティ・コンサートで——松田ウエストミンスター・教会音楽奨学金管理委員会(Tel.045-910-1811)
★<ひと>斎藤五十三氏——今春、TEAM台湾宣教師として赴任
★<CDの時間>「WITH YOU」西村あきこ(ライフ・ミュージック、2600円)

 = 8 面 家族のページ=
★パントマイムで神様伝えたい——夫婦2人でユニット組む
★<ちいろばの心>[7]罪の問題 大いに悩め 記・榎本保郎/榎本 恵
★<カウンセリングカフェ>[11]依存的な妻と独立型の夫  記・丸屋 真也
★<家族診断>[17]男の子らしく?、女の子らしく? 記・碓井 真史

なぜオウムにひかれたのか?−−教祖判決の日に研究成果『オウムからの問い、オウムへの問い』を刊行040

 サリン事件などで死者27人を出し殺人罪などに問われたオウム真理教元代表・松本智津夫=麻原彰晃=被告(48)に対し、東京地裁は2月27日、求刑通り死刑判決を言い渡した。日本の犯罪史上例のない宗教団体によるテロは大きな衝撃を与え、様々な議論を巻き起こした。既成宗教では若者が減る中でなぜオウムに多くの若者が引きつけられるのか、信教の自由とカルトの破壊的活動の規制、「ハルマゲドン」など聖書の用語を使った破滅的な終末論など、キリスト者にも見過ごせない問いを投げかけた。NCC(日本キリスト教協議会)宗教問題研究所と富坂キリスト教センターは3年間にわたる共同研究をまとめ、同日付で論集『あなたはどんな修行をしたのですか? オウムからの問い、オウムへの問い』(新教出版社、2千円+税)を出版した。
 この本では、精神医学者、ジャーナリスト、仏教心理学者、牧師、宗教学者、弁護士、インド哲学者、神学者、東洋学者など、日本人のほかロシア人、ドイツ人も交え12人が論じている。
 幸日出男・NCC宗教問題研究所所長によると、かつて新宗教に入るのは貧しい人だと言われたが、飽食の時代で物があふれている中でふと感じるものたりなさから人生の意味や目的を考えるようになる青年たちに、既成の宗教は答えを用意していないか、正しく提示できないでいる。オウムの修行は物のあふれた生活の中に見いだしえなかった「意味」がそこにあるように感じ取られたようだ、と幸氏は見る。
 信教の自由については「公権力が手をつけることはできない」ことを明確にし、法による規制ではなく市民的批判の道が大切であると説く。そして脱会者をケアするネットワークの必要性を訴え、信者全員を「犯罪者」と同一視してはならないとして、マインド・コントロールをいかにして解くかに論を進める。
 「社会は、オウムの会員たちを被害者としてみるように努めなければならない」が、この被害者は「自分が麻原教祖の被害者だということを自覚するのでなければならない」。この点で幸氏は、かつての「大日本帝国」を天皇絶対という一種の「宗教」にマインド・コントロールされていた閉鎖集団と位置づけ、「第二次大戦後の日本において、自分たちがだれのために被害者となったのかということがあいまいなままにされた。そのことがいまだに尾をひいている」と指摘した。
 中部学院大学短期大学部宗教主事の志村真氏は、オウム信者の家族の悩みに対する牧会カウンセリングの実践を報告した。オウム事件を機に、どこへ相談していいか分からないオウム信者の家族から、キリスト教会の牧師に相談が持ち込まれることが多くなった。教義の背景が仏教であるオウムの場合、「牧師と仏教の僧侶が連帯して関わりを持ち、心理療法家や法律家とも連帯してきたことのエキュメニカルな意義は、世界的に見てもまれ」であり、統一協会関係の相談を数多く受けていた牧師たちの経験的知見が生かされた、と志村氏は述べる。
 オウムという大事件を起こした団体に自分たちの家族が入っていることを知った人々の心の状況は「悲嘆反応」「喪失体験」。さらに親たちは報道や周囲からの非難を受け、人間不信に陥っている。志村氏は「本人のみならず、その家族たちも『脱会後』の精神的・心理的支援が必要」と指摘する。そして、そのような家族との「出会いを用意され、同行を導かれた方が背後におられると信じる」と告白している。
 西南学院大学神学部教授の寺園喜基氏は、オウムの終末論を神学の視点から論じた。オウムの原点は脱現世的な瞑想修行であり、麻原が語る理想郷は、世直し論から世界の滅亡預言、オウムによる世界の救済の必要へと自己絶対化してゆく。これに対して聖書の終末論は、事物の終わりのみでなく万物の新創造を語る。寺園氏は「キリスト教の終末論は十字架につけられたキリストのよみがえりを想起する希望である。…終末は希望なき大破局へと解消されるべきではない」と注意を促した。 オウム事件が投げかけた重い問いを受け止め、教会・キリスト者としての答えを模索するとき、この本は問題の整理と思索の助けとなろう。   【根田祥一】

<緊急連載・心の監視はどこまで来たか>国歌斉唱「起立しないのは誰だ」0403147020

 舞台壇上正面に向かって左に「国旗」、右には都旗。式典では「国歌斉唱」の発声とともに起立を促される。教職員は指定の席で国旗に向かって起立し、音楽科教員のピアノ伴奏で国歌を斉唱。教職員席の近くに都教育委員会の来賓席が設けられ、教職員の座席表が配られた。君が代斉唱時には都教委職員が、起立しない教職員がいないかどうか座席表と照らし合わせて監視。起立しなかった教職員は式典後、都教委職員に取り囲まれ、「起立しませんでしたね」「都教委として現認しました」と詰問された。都教委人事部職員課の者もおり、処分を前提にするかのような恫喝ととれる発言もあった。さらに後日、事情聴取に応じるよう校長から職務命令が出され、都教委職員による事情聴取に応じることを強制された。
 ——これは戦前の光景ではない。昨年暮れ、創立記念行事が行われた都立高校で実際に起きた出来事である。教育の場であるはずの学校にこのような異常な監視体制が敷かれた背景には、昨年10月23日に東京都教育長の名で全都立高校の校長と都立盲・ろう・養護学校長あてに出された通達があった。
 「入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」と題したこの通達は、前述のような式典の方法を詳細にわたって一律に指示したほか、会場設営についても、舞台壇上に演台を置き卒業証書を授与すること、式典会場は児童・生徒が正面を向いて着席するように設営することなどを明記している。養護学校では、車いすの子も姿勢や行動を制御するのが困難な子も、例外なく壇上に上げることを意味する。
 99年、「国旗国歌法」の審議過程で政府は、「法制化に伴い学校教育における国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるものではない」「法案は国旗・国歌の根拠について慣習であるものを成文法として明確に位置づけるものであり、国旗・国歌の指導にかかわる教員の職務上の責務について変更を加えるものではない」旨の答弁を繰り返した。
 あれから4年余り。実際の教育現場とのギャップは誰の目にも明らかになってきている。  【根田祥一】

カトリックでも盛り上がる聖書贈呈運動−−聖書協会 協会案内付きカバーを用意0403147030

 聖書の無料贈呈といえばプロテスタントでは国際ギデオン協会の働きが日本でも活発だが、昨年のクリスマスイブに都内のカトリック教会で初めて、クリスマスミサに訪れた市民に新約聖書が配られた。カトリック教会では聖書を配布する習慣がなかったが、「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ」との御言葉に励まされた1人の信徒の提案を教会が受け入れ、クリスマスミサに来場する人への宣教活動として800冊を手渡した。
 提案したのは会社社長で、カトリック関口教会(=東京カテドラル聖マリア大聖堂、東京都文京区関口)信徒の蒲池明憲さん。同教会のクリスマスミサには毎年、数千人が参加する。かねてからギデオン協会の働きを知っていた蒲池さんが、多くの一般市民が教会に足を運ぶクリスマスの機会を生かして聖書を渡せないかと発案。プロテスタントとカトリックが協力して開催した東京大聖書展を機に知り合った日本聖書協会(JBS)関係者にこの企画を相談したところ、聖書協会も協力を惜しまないとしてクリスマス週報用紙のデザインを活用したカバー(ジャケット)を実費で製作する話がまとまった。
 関口教会のクリスマス実行委員会ではこれを含め、「開かれた教会」をテーマとして、過去の経緯にとらわれずに様々な新しい企画を取り入れ、クリスチャンでない来場者への配慮をした。
 配布した聖書は新共同訳の新約聖書で、虹のような表紙デザインの文庫版「レインボー聖書」(180円・税別)。専用ジャケットの実費を含め1冊200円(税別)で提供した。ジャケットの折り返し部分には、教会の写真と集会の時間など案内の概要と、一般にも知られた聖書の言葉から当該の個所を引ける項目別簡易索引を印刷した。
 クリスマスイブの当日、関口教会には夜7時、9時、11時の3回のミサに合わせて約4千500人が来場し、そのうちクリスチャン以外は約2千500人。800冊の聖書は希望者に手渡した。
 受け取った人々からは「聖書を無料でいただけるのですか」「夫婦で読みたいので2冊いただけないですか」などと好評。カトリックのシスターからも「カトリックも聖書を配布するようになったのですね」と好意的な声が寄せられたという。
 イブの夜の聖書配布は宣教活動として確かな手応えを感じたという蒲池さんは、「聖書配布でまかれた信仰の種が、いつかは神との出会いに結びつくことを祈りつつ配りました。聖書との出会いにより、カトリック、プロテスタントを問わずどこの教会の門をたたくか分かりませんが、温かく迎えてほしい」。今年のクリスマスイブにはさらに多くの教会に広げて配布したいと願っている。
 JBSでは、こうした新しい聖書配布の機会を評価し、クリスマス用に限らず、教会配布用に案内を刷り込んだジャケットを実費で提供することにしている。問い合わせはTel:03・3567・1990、JBS。