[CSD]2004年4月25日《ヘッドライン》

[CSD]2004年4月25日《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎「イルカ」と泳ぎたい 難病児の夢かなえる——ボランティア団体MAW事務局長・大野寿子さん
★「振り返ってみればすべて神様のご計画」と中島律子さん——沖縄で『ロープ』出版記念感謝会
★イラクで日本人3人誘拐——自衛隊即時撤退を
★<恵みのどんでん返し>3歳の長男失い、わかったイエスの涙 記・海老原 直宏
★<落穂抄>映画「パッション」に描かれる人間の悲しみの現実

 = 2 面 =
★北東アジア平和実現へ行動案——日韓キリスト者・市民連帯セミナー
★「共に生きるホーリネス」目指す——ウェスレアン・ホーリネス教団が宣言文採択
★<聖書訳語の最前線>[2]神の「かたちとして」 記・津村俊夫
★<教界の動き>中央聖書神学校(校長就任)、JECA・首里福音教会(牧師異動)
★<提言>イラク戦争から1年に思う 記・渡部 敬直
★<今週の本棚>『何という愛』コーリー・テン・ブーム著(いのちのことば社、1,260円) 評・鈴木やす子
★<今週の本棚>『新しい追悼施設は必要か』国際宗教研究所編(ぺりかん社、2,730円)
★<今週の本棚>『み言葉のわかちあい』グスタボ・グティエレス著(日本キリスト教団出版局、3,780円)
<情報クリップ>催し情報ほか

 = 3 面 =
★首相の靖国神社参拝「違憲」福岡地裁判決の意味と要点:違憲判断は「責務」 記・藤田英彦
★首相の靖国神社参拝「違憲」福岡地裁判決の意味と要点:小泉首相の反応とキリスト者の対応 記・櫻井圀郎
★映画館で信仰の招きも——映画「パッション」活用する米国教会 記・渡部 聡
★教会員が切符買い、友人誘う——15館満席700人決心

 = 4 面 医療特集=
★経済効率の優先が感染を助長した——下内 昭
★教会は感染症患者を受け入れる場に——小林 宣道
★エイズは大流行前夜「価値」が性教育の根幹——富永 國比古
◎性問題を考えるネットワーク作りを——第1回キリスト者医療・教育関係者・聖職者の集い

 = 5 面 =
★歌ってイースター:演奏と映像で日本語の合唱、心打つ——大和カルバリーチャペル
★歌ってイースター:商店街はゴスペル一色、初の路上ライブJSC——練馬グレースチャペル
◎<北から南から>新潟:キリスト教書店の灯消せないと教会が支援委員会立ち上げ
★<ひと>マイク・イーバートさん(ライフマップコンサルティング社長)人材育成ビジネスにキャリアチェンジ
★<CDの時間>「the JMMS」ジャパン・ミッション・ミュージック・スクール(JMMS、1,000円)
★<笑顔の力>[2] 作・田島直秀(ペンライト賞佳作)

 = 6 面 教会学校教師のひろば=
★平日、子どもが教会に続々——慕われる「おじさん」牧師 同盟基督・尾崎キリスト教会
★<先生 キラッ>茂木幸雄さん(同盟基督・尾崎キリスト教会)
★<ゆっくり行こう!CS教師>[20]教案誌を助けにとことん面倒を 記・福井 誠
★<オッフーの神様と出会っていますか?>[8]神様を義としなさい 記・藤田 桂子
★<まいまいのちょっと愛デア>[8]好評 みことば歯ブラシ 記・永井 真衣子

「イルカ」と泳ぎたい 難病児の夢かなえる−−ボランティア団体MAW事務局長・大野寿子さん040425

 「2週間遅かったよ。高知にいる兄弟に会いたい、会いたいと言って2週間前に亡くなったんだよ」。94年、ボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン(MAW)」の事務局長大野寿子さん=日基教団・浦安教会員=が国立がんセンターに行った時、医師から返された言葉だ。MAWは80年にアメリカで始まった国際的なボランティア団体。難病と闘う子どもたちの夢や願いをかなえる活動をしている。「どんなに会いたかっただろう。もし、この子が私たちの団体のことを知っていれば…」。この体験が、大野さんがMAWの活動をする上での原点となった。
 「亡くなった子の両親はどんなにやるせなかっただろう。一生重い十字架を背負っていく。日本中の難病と闘っている子どもにこの活動を知らせたいと思いました」
 1951年、高松生まれ。明治42年創業の薩摩揚げ屋の娘。小学生の時クリスマス集会に誘われ、初めて教会に行った。宣教師の醸し出す異文化にひかれ日曜学校に通い始めたが、中学で離れた。
 大学進学で上京。芝居に関心をもち、劇団「四季」の演劇研究所に入った。卒業後も芝居に明け暮れるが、そのころ知り合った商社マンと23歳で結婚。4人の男の子に恵まれた。結婚後、現在の教会に通い始め、27歳で受洗。「学生時代、勉強もせず恥多い生活をしてました。そんな生活をしていた自分が結婚をして幸せな家庭を営めるなんて、神様の恵みでしかないと思ったんです」
 89年に、夫の転勤でアメリカ・サンフランシスコ郊外へ引っ越した。しかし、幸せな暮らしは長く続かなかった。夫がギャンブルにのめり込み、家庭が崩壊したのだ。
  「どれだけ努力しても、壊れていく家庭を回復できない。自分ではどうすることもできないことがあると知りました」
 91年、15年間の結婚生活にピリオドを打ち、4人の子どもをつれて帰国。友人が経営するブティックに雇ってもらった。「失敗の連続。あまりに無能な自分の姿にがく然としました。自分が全く無能であると初めて気づきました。その時本当にクリスチャンになったんですね」  同時に「神様、なぜですか」と問い続けた。「今まで『いい奥さん』として一生懸命がんばってきた。なぜ自分がこんな目に」と。母子家庭は経済的には苦しかった。その生活の中で大野さんは、生きていく上での大切な3つのことを学んだという。?家族が支え合うこと?明るいということ?友人の支え、だ。「隣人を通して神様が働かれているのが実感できました。神様がこのような私をも愛し、負えないほどの重荷を負わせられないと確信しました」
 お金、地位、財産、ブランド、目に見えるものよりも、支え合う家族や友人、それを通して働かれる神様としっかり手をつなぐことの大切さを知った。野の花を見ても、空が青いことですら涙が出るほどうれしかった。
 94年、同じ教会員で、交通事故で妻を亡くした現在の夫と再婚。「お金も何もない、こぶが4つもついたおばさんとの結婚(笑)。これは神様からの一方的な恵みだと思いました。それならば、これからは自分や家族のためだけでなく、多くの人と手をつなぎあうことにエネルギーを使いたいと思いました」   ちょうどそのころ、MAWの活動を教会で知る。MAWは世界27か国に支部を持つボランティア団体。「夢を実現することによって、病気と立ち向かう勇気や、前向きに生きる力をつけてほしい」。この願いが理解され、夢を実現させた子どもの数はのべ13万人にのぼる。日本では92年末に、沖縄在住のスーザン・アルブライトさんによって支部が誕生。94年に事務所が東京に移転したのを機に、大野さんがスタッフとして参加した。机1つ、電話1本からのスタートだった。活動を理解してもらうため様々な病院を回った。冒頭の体験はその時のことだ。98年には事務局長に就任。「野生のイルカと泳ぎたい」「X JAPANのHIDEに会いたい」「フロリダのディズニーワールドに行きたい」など、日本では現在まで約600人の子どもたちの願いをかなえてきた。
 MAWの活動の中で、「神様なぜですか」という問いの答えがわかってきたと大野さんは言う。「かつての私だったら病気の子どもの横に立つ時、かわいそうな子、助けてあげる自分という関係があったと思います。でも、たまたまこの子は病気だけれど、それによって家族が一つになり、何倍もの密度の濃い幸せな時を過ごしているかもしれない。そう思えるようになりました」。離婚というつらい体験を通らなければ理解できなかったことかもしれない。  難病を抱えながら、夢を思い描くことができる。この明るい気持ちが、子どもたちの日々のくらしを変えていく。本人と家族だけが病気と闘っているのではなく、周りに応援してくれる人もいる。それが苦しい時に子どもたちを奮い立たせるかもしれない。大野さんは、MAWの活動をこう考えるようになる。
 「その時、ジグソーパズルのピースがピタッと入った気がしました。私にとって離婚は、神様に文句の言いたいピースでした。でもそのピースがあったおかげでこのようなすばらしい絵ができている。神様の技は不思議です。無駄なものは1つもありません」    【藤岡竜志】

性問題を考えるネットワーク作りを−−第1回キリスト者医療・教育関係者・聖職者の集い040425040

 性感染症のまん延、セックス依存症、小児性愛、性的虐待の増加など、今日本では、性を取り巻く環境がますます深刻化してきている。この現状に危機感を覚えたクリスチャンの医療関係者を中心に「第1回キリスト者医療・教育関係者・聖職者の集い・若者たちを性感染症から守るために」が3月25日、東京・文京区本郷の順天堂大学医学部で開かれた。呼びかけ人はNPO法人ACTS理事長、ロマリンダクリニック院長の富永國比古氏。
 集会にはプロテスタント、カトリックの医師、教師、牧師、神父、シスターなど52人が参加。10代の若者の間に広がる性感染症の実態が報告されるとともに、この事態にクリスチャンはどう対処すればいいか、意見を交換した。
 集いでは、医師、教師、議員など、様々な立場からの発題があった。国際地域保健学専門の若井晋氏(東京大学大学院教授)は「エイズ患者が今世界に4千万人いる」とし、その背景には富と貧困の不平等があると指摘。「当然、そこに性暴力、性的搾取が生まれる。特に深刻なのは少女売春。性的搾取を受けている子どもは世界に1千万人はいるだろう」と述べた。
 町田健一氏(国際キリスト教大学教授)は01年度に行った国際キリスト教大学の性教育の実践を報告。「かなりの学生が、今までの自分の軽率な行動、複数の異性との性体験、妊娠・中絶・援助交際を反省という態度変容、付き合っていた異性と真剣に話し合うという行動変容が見られた」と語った。
 ポルノ・買春問題を始め、セクシュアリティをめぐるさまざまな問題を研究している中里見博氏(福島大学助教授)は、「ポルノの制作現場は合法的に性暴力を行う場となっている」と警鐘を鳴らした。
 児童精神科医の星野仁彦氏(福島学院大学教授)は「性非行少女のほとんどが児童虐待の被害者」と指摘。  これらの発題、発言を受け、参加者からは性の問題が緊急を要する問題と受け止め、社会に働きかけるためのネットワーク作りが必要だとの意見が相次いだ。
 元衆議院議員の山谷えり子氏は「私は出会い系サイト規制に1人で走り回ったが、やはりネットワークを作って事実をきちんと提示し、『おかしい、間違っている』という声を上げる塊を作らないといけない」、竹内正哉氏(東京カトリック医師会会長)は「今日ここに集まっている方々は、それぞれが考えをもっているが、一つの声を発するまでに至っていない。そういう意味で、第1回のこの集いが開かれたことは非常に大きな意義があると思う」と語った。辻岡健象氏(小さないのちを守る会代表)は「内部を固めるとともに、外部に働きかける必要がある」とし、「動いていかないと法律ができていかない」と述べた。
 最後に富永氏は「予想外にいろいろな人が関心をもち、危機感を感じながら参加していた。年内に第2回を開きたい。この動きが教会の中にも広がっていき、社会を動かすムーブメントになっていってほしい」と感想を述べた。  【中田 朗】

<北から南から>新潟:キリスト教書店の灯消せないと教会が支援委員会立ち上げ0404250503

 景気の回復がみられるというが、相変わらず小売店の売り上げは厳しいまま。キリスト教書店も苦しい経営状況だ。ライフセンター新潟書店(永井美智代店長)もその1つだ。
 同書店は2、3年前から売り上げが落ち、このままでは存続が難しいと、閉店の可能性も検討された。しかし、キリスト教書店は地域の教会、クリスチャンにとって30年近く重要な存在になってきた。地域教会の牧師や信徒らが中心になって、支援体制を整えようと、このたびライフセンター支援委員会(本間進委員長)が発足した。現在、全国にいのちのことば社直営店は14店舗あるが、このような支援委員会発足は初めてだ。同書店はこれまでも存続の危機があり、その度に教会の協力があったが支援体制がこれで整った。
 支援委員会では、会議を開催し、新潟書店の支援策を協議。同書店の主体性を重んじながら、販売や諸活動に協力支援するという。本間委員長は「地域の各教会の委員や図書係がパイプ役になり、ライフセンターからの情報を提供していくようにする。教会と書店が2人3脚の形で協力する。書店の灯を消してはならない」と語る。  同書店の永井店長は、「地域教会が自分たちのこととして受けとめ、ライフセンターを必要としてくださり感謝です。今後、書店に入ってくる情報を通りよく伝えていきたい」と話す。
 6月には作家の故三浦綾子さんの夫、光世さんを招いて講演会を開催する予定。地域のクリスチャンにより親しまれる書店を目指す。