[CSD]2010年2月14日号《ヘッドライン》

[CSD]2010年2月14日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎偏見が塞ぐ遺族の声——当事者の立場に立った自殺予防・遺族支援を
★マレーシア:教会襲撃11件に

 = 2 面 ニュース =
★エジンバラ100周年記念世界東京大会——なぜ東京か? チョー準備委員長語る
★「変革期における使命」訴え——断食祈祷聖会
★米国:駐留米軍武器に聖書の刻印で物議を醸す
★<落ち穂>外の人を招こう

 = 3 面 教界ニュース =
◎韓国基督実業人会(CBMC)東京支会が発足——世の中を変えるのは信徒だ
★朝祷会年頭集会——高齢化、後継者難が課題
★<オピニオン>主の大宣教命令に立ち返ろう 記・小山 大三

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★篠田 裕司さん[上](OMMメディカルセンター内科部長)——「どんな人でも、いずれ死ぬ」
★<人生何とかなります>[3]失業者に対して実際的な助けを 記・佐藤 敏

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★真の権威とキリスト者の自由<後編>——ウィリアム・ウッド氏講演から
★牧師のケアに実効——牧会塾2年目へ
★<精神障害と教会>[68]自分の助け方(2)  記・向谷地 生良

 = 6・7 面 建築特集=
★余力のない教会の支援を夢に——寺田晶彦さん(ジョイ建築設計事務所)
★創立者の思い「残したい」——ホーリネス・東京中央教会の改修例
★教会員有志の力作で教室がカフェに——バプ連盟・札幌新生キリスト教会の改修例

 = 8 面 全面広告=
☆2010年 日韓連合宣教大会/日本大会 ARISE&SHINE
3月8日(月)~11日(木)会場:アルカスSASEBO、九十九島観光ホテル
公式ホームページ http://www.cbs-mission.com (韓国語)

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『いのちの豊かさ』柏木哲夫、柏木道子共著(いのちのことば社、840円税込)
★BOOK:『こともさんびか 手話で歌おう!』手話:原崎悦子、イラスト:石橋えり子共著(日本キリスト教団出版局、1,050円税込)
★BOOK:『リーダーシップを育てる76人の知恵』ビル・ハイベルズ著(いのちのことば社、1,890円税込)
★REVIEW:『あなたは愛されています』大塚野百合著(教文館、1,890円税込)評・柏木道子

 = 10 面 関西だより =
★『天国が見えるよ』大嶋常治説教集——救霊の情熱をペンに託して
★『永遠の手』向日かおり著——「希望失わず生きて」
★本物味わおう 過越しの祭を体験——3月に大阪クリスチャンセンターで
★賀川豊彦の「神の国」を考える
★3月2日中之島で大阪レディースランチョン

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎パレスチナを忘れない 空爆から1年ガザの人々は今——「私と同じ人間」共感と連帯を
核放棄は非暴力の第一歩——『キリスト教平和学事典』出版記念講演会でS・リーパー氏

 = 12 面 ひと=
★政教分離めぐる闘いを支える信仰——谷内榮さん(砂川政教分離訴訟原告代表)




◎偏見が塞ぐ遺族の声−−当事者の立場に立った自殺予防・遺族支援を=1002140101

 警察庁の発表によると、09年の自殺者数は3万2千753人にのぼり、12年連続3万人を超える結果となった。深刻な状況を重く見て、近年、「自殺対策基本法」の成立や「自殺総合対策会議」設置(いずれも06年)など、政府による対策が急速に進められている。一方で、自殺者・自殺未遂者とその家族に対する偏見は根強く、行政や周囲の心ない言葉、対応に二重に傷つけられる自殺未遂者・遺族は少なくない。精神科医の平山正実氏(北千住旭クリニック院長)は、「自死遺族の悲嘆が緩和されるためにも、自死者を偏見の目をもって見る風潮をなくさなければ」と訴える。

 交通機関や不動産業者からの賠償請求、精神的苦痛への慰謝料請求。「故意の死である」と判断され、生命保険の支払いを受けられない。宗教者から浴びせられた「成仏していない」、「神から授かった身体を殺めるのは罪」などの言葉。警察や行政機関による侮辱的な対応・発言、マスコミの踏み込んだ報道…。
 これらは、実際に遺族が体験した二次被害の数々だ。「日本ではまだ、自死は『公認されざる死』であると言えます。昔から日本の伝統や文化の中で、自死は命の定めに逆らうこと、という考えが行き渡っていたからでは。それに加え、現代の競争社会では、『自死した人は負け犬だ、人生の敗北者だ』というような勝手な理由をつける人が出てきて、差別や偏見が生まれてくる」。そうした風潮に対し、平山氏は疑問を呈する。「世界保健機関の統計によると、自死した人の7~9割が、何らかの精神疾患に罹患していたとされています。自殺は『みずから』選択した死ではなく、社会環境や病気によって、自分の意志に反して『おのずから』死なざるを得なかった、というべきでは」
 「自殺」でなく「自死」という言葉を使うのも、そのためだ。
 昨年、平山氏ら遺族を支援する専門家は「自死者の名誉回復宣言」をまとめた。自死をいたずらに推奨・美化しない。しかし、自死者は命を絶たざるを得ない状況に追い込まれたのであり、いわれなき偏見に反対すると共に、自死者の思いに寄り添う、と宣言するもの。
 同12月には、「自殺者及び自殺未遂者並びにそれらの者の親族の二次被害者保護法」(仮称)の制定を目指し、シンポジウム「自殺予防と自死遺族支援の現状と課題」(聖学院大学大学院総合研究所、国立精神・神経センター、自殺予防総合対策センター主催)を開催。自死遺族や有識者の発題により、「心のケアだけに偏りがち」、「『支援する側』の立場で考えられた施策」など、実態に即していない行政による支援活動の問題点が指摘された。また、自死遺族支援の場で、二次被害にあうことも少なくないという。
 平山氏は「自死がいまだ『公認されざる死』であるがゆえに、自死で亡くなったことを公表する遺族は少数。そのため、自死遺族を支援しようと志す援助者たちから『自死遺族との接点が得られない』、『理解し合うことが難しい』という声も聞きます。遺族は、その死に方の特殊性のゆえ、固有の深い悲しみと向き合わなければなりません。援助に携わる者は細心の配慮を払いつつ接し、二次被害を与えないよう注意する必要がある」と語る。
 ある遺族は言う。「私たちが味わった二次被害的な傷はもうたくさんです。亡くなった人のために涙が流せ、穏やかに悲しみに向き合える支援をしてください。心が病まない対策、病んだときに助ける医療対策を講じなければ自死は増え続け、遺族は広がります。国民一人ひとりが今よりほんの少しの思いやりをもてたら、日本は変わります」
 ◎第2回「自殺予防と自死遺族支援の現状と課題—自殺未遂者とその家族、及び自死遺族をどのように支援するか—」

 【主催】聖学院大学総合研究所死生学研究会 【日時】3月20日(土)午後2時~。【場所】大宮ソニックシティ601会議室【講師】斉藤友紀雄氏(日本いのちの電話連盟常務理事)、江頭俊吾氏(NHK首都圏放送センター記者)、明 英彦氏(自死遺族とうきょう自助グループみずべの会)、平山正実氏(聖学院大学大学院総合研究所教授) 【定員】60人 【参加費】無料 【問い合わせ】Tel.048・725・5524、Fax.048・781・0421。

◎韓国基督実業人会(CBMC)東京支会が発足−−世の中を変えるのは信徒だ=1002140301

 社団法人韓国基督実業人会(韓国CBMC)東京支会が1月28日、創立した。当日は創立記念聖会・晩餐会(同準備委員会主催)を東京・千代田区猿楽町の在日本韓国YMCAで開催。船出を祝うため、韓国からも含めて200人以上が参加。河用祚氏(ソウル・オンヌリ教会主任牧師)が説教し、権哲賢(駐日大韓民国大使)、金秀雄(韓国CBMC会長)、土肥隆一(衆議院議員)の各氏が祝辞を述べた。
 韓国CBMC東京支会は、在日韓国人クリスチャン実業人が社団法人韓国CBMCの理念に基づき、イエス・キリストにあって親しい交わりと信仰の成長を共にし、企業と職業を通した伝道事業を目的とする。初代会長には、(株)永明代表取締役社長の呉永錫氏が就任した。
 河氏はイザヤ書60章1節「起きよ、光を放て」からメッセージ。「この言葉は、捕囚生活を送り絶望しているイスラエルの民に向かって、神が語られた言葉で、今の時代にも当てはまる光はすでに私たちのところに来ている。聖霊様は人々を通して光を放とうとしている」と語った。
 世の中を変えるには、Man(人)、Messege(メッセージ)、Method(方法)、Meet(出会い)、Money(金)の5つのMが必要だと河氏。「世の中に影響を与えるのは牧師ではなく、毎日クリスチャンでない人たちと出会っている信徒。過去にとらわれずに起き上がり、皆様が属している社会に光を放ち、この5つのMを用いて社会を変えてほしい」と述べ、「CBMCが沖縄から北海道まで広がるように」と祝福した。
 権氏は「私は日本で伝道することがどんなに大変かを知っている。しかし、神様が必ず背後におられる。東京支会が多くの団体から賞賛される団体になり、日韓の架け橋の役割を果たしてほしいと願う」と語った。
 金氏は「CBMCを通し1億3千万人の日本人の魂に福音が届き、何とかクリスチャン人口10%になればいいと思う。お金を使うところは使い、日本、世界宣教のための小さな炎、祝福のツールになってほしい」と励ました。
 土肥氏は「ビジネスはツー・クライスト、イエス・キリストにささげるもの。その目的がはっきりしないから、日本のビジネスマンは元気がない。どうか、皆さんが日本のビジネスマンを励まして欲しい」と語った。
 同創立聖会では、会長、副会長、書記などの新任役員の紹介があり、東京支会の旗の伝達式、バッジの贈呈式が執り行われた。会長就任挨拶で呉氏は「韓国人としての自尊心をもち、右手に聖書、左手にビジネス鞄を持ちながら、互いに助け合い、一生懸命していきたい。応援お願いします」と決意を述べた。

◎パレスチナを忘れない 空爆から1年ガザの人々は今−−「私と同じ人間」共感と連帯を=10021411

 08年12月27日から約3週間にわたって続いたイスラエル軍によるガザ空爆。今パレスチナはどのような状況になっているのか。日本キリスト教婦人矯風会国際協力部では、「パレスチナを忘れない|今のガザを知る|映像とお話」と題して1月28日、都内で講演会を開いた。講師は、NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン事務局長の田中好子さん。

 同団体は、パレスチナ自治区のガザでろう学校支援や子どもセンターを、ヨルダン川西岸で母子カウンセリングや子ども歯科などを運営してパレスチナの子どもと女性を中心に支援活動をしている。昨年末にガザへ入り、空爆から1年後の姿を見てきた。
 「ガザでは約4千軒が家屋破壊に遭い、1万7千軒が半壊した。今もがれきはほとんど撤去されていない状態」だという。その大きな理由は、「封鎖が続き、重機が入れられないために、手作業の撤去を余儀なくされていること」だ。セメントや鉄、ブロック、ガラス、ビニールパイプなどの建材も搬入禁止項目のため、がれきを砕いてブロックを作り、鉄も再利用して新たな家屋建築をしている。復興の進まないガザで変化があったのは子どもを取り巻く状況だ。
 「アラブ圏では、子どもへの教育はとても熱心。しかし、大人の失職や、病気やけがが癒えずに働けない状況が広がり、子どもが働くしかなくなっている。プラスチックや鉄を一日中集めて一家を支えているのが現状」。それでも、少女の姿はない。「一家を支えるのは男」という価値観は、まだ失われていないからだ。
 また、経済が壊滅状態のガザでは、食料、生活物資は支援に頼らざるを得ない。「家父長制の強いアラブ社会では一家を支えられない男性のフラストレーションは、想像以上。女性や子どもにはけ口が向かいます。空爆のショックだけでなく、次のステップに進めない閉塞感がある」ので精神的にも不安定な状況だ。
 同団体では、女性への経済的支援として種子バンクを立ち上げた。 「イスラエル軍の戦車で畑が荒らされましたが、もう一度ガザを立て直すために自給率を上げ、食糧の確保が急務とわかり、在来種の野菜の種子を自家採種する『種子バンク』の支援を始めました」。女性を中心に在来種の野菜の種を自家採種して、保存している。「収穫」という先への希望が生まれるだけでなく、ガザの土地を有効活用し、自立する一歩ともなる。
 一方、着実に復興への歩みも始まっている。同団体が開校したアトファルナろう学校では、約300人の聴覚障がいをもつ生徒が通っており、授業も再開された。「空爆時は、音声からの情報が頼り。停電で暗いと夜は手話も見えない。ろうの生徒たちは情報が届かず、非常な恐怖を味わった」という。今も子どもたちの描く絵はミサイルや戦車が攻撃している絵だ。それでも周囲の人々のサポートによって元気を取り戻しつつある子どもたちは、日本の子どもたちから届いた明るい絵手紙に大喜びしているという。
 一方、田中さんは、パレスチナ問題について、「決して宗教戦争ではない」と強調する。「場所がイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の聖地だが、この60年、宗教的原因で争っていたのではないし、政治的にも曲折しながら推移してきた。今は、イスラエルが右派政権で、パレスチナも過激なハマスが指導者。困難でも、各国がこの問題を投げ出さず対話のテーブルに着くよう、もっと積極的に働きかける必要がある。そこに未来への希望があります」
 ガザの市民についても「東京の山手線内側ほどの広さに150万人が暮らし、自由に外出できないでいる。無力感や苦しさは深刻。しかし、閉塞感の中でも、子どもの将来や家族のことなど抱える悩みは私たちと変わらない。特殊な状況でも、私と同じ人間だと共感できるかどうかが大切です」
 また、宗教界の役割として、ここ20年ほどでパレスチナ難民支援をするキリスト教会が増えていることに触れ、「宗教戦争を笠に着た、政治の争いでもあるとの認識も広まった。日本国内でも宗教界が協力して問題に立ち向かう動きがある。横の繋がりを強めて、政府に働きかけていきたい」と連帯の必要性を説く。
◇ 
 今回の講演の主催者で企画した国際協力部部長の今橋宣子さんは、「家を奪われ、故郷を追われて60年も帰れないパレスチナ難民が『パレスチナを忘れない。必ず帰る』と、希望を抱いている。イスラエルの中にもまた、多くの傷がある。身につまされる思いがする。キリスト者として、平和や和解を祈りつつ、引き続き、この問題に取り組んでいきたい」と語った。