[CSD]2011年10月23日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年10月23日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎EMF:被災地で身体も心も医療支援——地域連帯だけでは癒されない霊的必用
★親子で走って、跳んで、汗流し——チア・にっぽんオリンピック

 = 2 面 ニュース=
◎無牧でも被災者に奉仕——被災地支援の牧師らも教派超えて応援
★地域との距離縮まった——一致祈祷会でWEA特使も激励
★バチカン:パレスチナ・イスラエル両立を主張
★国際:リベリア内戦終息でノーベル平和賞
★<落ち穂>ローマ教皇のエアフルト訪問

 = 3 面 =
★<竜馬をめぐる人々>[63]坂本直寛の章:22——妻亡き後に新たな人生模索 記・守部喜雅
★<オピニオン>牧師のモラル・ハザードと教会の責任 記・後藤 喜良
★集会・イベント情報

 = 4・5 面 三浦綾子特集=
★罪、苦難のテーマ 伝道に——森下辰衛さん 三浦綾子読書会代表に就任
★綾子さんは人と人を出会わせる名人——光綾の会代表 松下光雄さん
★いのちを尊ぶ『母』に学べ——三浦綾子読書会全国大会講演会
★書評:『銃口』上下——国民に銃口を向ける教育 評・正田眞次
★書評:『泥流地帯』正・続——再起の原動力となるもの 評・土屋浩志
★綾子さんの本で被災地に希望を——文学館・読書会が共同で計画

 = 6 面 関西だより=
★市も後援 ゴスペルフェスティバル——南大阪聖書教会企画の震災復興支援コンサート
★日本人に夢と希望与えるキリスト教を提示——民福協 初フォーラムで日本宣教を展望
◎聖書が結ぶ教会の一致——神戸バイブル・ハウスで聖書リレー朗読会
★奇跡の声 ベー・チェチョル・リサイタル

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★ケープタウン決意表明(3)——私たちが愛する主のために
★<小さき人々のパラダイス>[3]協働学舎の挑戦?——その日、働くのも休むのも自由選択 記・佐原俊幸

 = 8 面 ひと・証し =
★白岩正明さん(希望聖書教会牧師)——震災が日本人への思い強くした



◎EMF:被災地で身体も心も医療支援−−地域連帯だけでは癒されない霊的必用=1110230101


 東日本大震災後、各地の医師や看護師が診療支援をした。今後は長期的な心のケアが必要とされる。福音主義医療関係者協議会(EMF)は、有志で3月末から約2か月、福島県いわき市で医療支援を行った。各病院、医師会などを通じて救援活動を行った人もいる。9月19日に福島県いわき市の保守バプ・いわき希望教会で開催されたEMF主催の震災シンポジウム「『来た』『見た』『聴いた』」で支援参加者が報告と今後の課題を話した。

 「たった1%の、私たちクリスチャンが祈らず、だれが祈るのか。今この日本の危機の時こそ精神面、スピリチュアルな支援が必要です」。武知由佳子氏(いきいきクリニック院長)は3月16日から、EMFのメーリングリスト(ML)で祈りと支援を呼びかけた。いつもと変わらぬMLのやり取りに、「もう少し危機感を持って私たちができることは何かと議論できるようなMLになって欲しい」。
そう投げかけた。
 所属する同盟基督・招待キリスト教会の支援活動を通じて、3月末からいわき市の同・勿来キリスト福音教会で無料診療を始めた。現地の教会の名前と、「福音主義医療関係者協議会」の名で活動した。 
 清水清美氏(上中居こどもクリニック院長)は、「祈りで終わらず、具体的に動きたい」という思いがあった。武知氏のMLを見て活動に参加した。EMFの医療支援者は続々と集まり、現地の保健師を助けながら支援を継続した。救援を通して信仰決心をした人は「どうして教会にはこんなにたくさんの医師や看護師がいるのだ」と驚いていた。
 猪狩友行氏(袖ヶ浦さつき台病院、リハビリ科)は東北の人を「我慢強いが、悩みを言語化できなかったり、酒に頼り依存症になることが憂慮される。地域の連帯はあるが、それだけで癒されない虚無感など霊的必要がある」と分析する。谷井久志氏(三重大学附属病院精神科)は「阪神大震災では、心のケアのピークは3年後だった。岩手では学校敷地に仮設住宅があり、子どもたちは震災を忘れられない」と報告。小林朋子氏(東京都、呼吸器内科医師)は「癒しには時間がかかる。『ただ聞いて欲しい』と願う人がいる。専門的な医療に従事するEMFが役に立つのでは」と意義を語った。
 阪神大震災も経験した石丸直人氏(筑波大学付属病院総合診療グループ)はいわき市で、避難するかどうか家族で対立し、深刻に悩み不安発作を繰り返している女性を診療した。1回でどれだけ精神的サポートができるか不安だったが「最後に一緒に祈ると彼女から不安や緊張がとれていった。普段、患者と祈ることは、自分の立場を考え難しいと考えていたが、人の限界を超えて働く神様の力を知った」と語る。
 「現地で援助し続けている支援者の側のケアも必要」と、埼玉県の保健師・鈴木栄氏は力説。栗林理人氏(青森県立つくしが丘病院)は、「キリストの土台にあるクリスチャンが安心を与える」とし、「教会の群れを牧し、踏みとどまる使命を持った牧師のサポートが必要」と話した。中村充氏(駒木野病院精神科診療部)は「教職者やリーダーたちのために被災地宣教リトリートなど開けないか」と提案した。
 報告会の最後に福嶌知恵子氏(日本ナース・クリスチャン・フェローシップ=JCFN)は「信仰と実践を統合する。心を一つにすれば神様がことを動かす」と、EMFの継続した支援活動を呼びかけた。
 同シンポジウムのきっかけは、会場教会牧師で医師の伊藤順造氏が「EMF会員の活動を共有できれば」と思ったことによる。伊藤氏は「自分の用意した資料を全く発表しなくて済むくらい、皆様の発表が充実していました」と感謝した。報告の間にはトリオ・グラシアによるソプラノ、チェロ、ピアノの演奏があり、最後に同教会信徒を囲み震災復興を祈った。

◎無牧でも被災者に奉仕−−被災地支援の牧師らも教派超えて応援=1110230201


 今回の東日本大震災では、被災地にある教会の牧師の中で、地震の揺れ、津波による直接的な被害による死者はいなかった。だが、地震が引き金になってその後、亡くなった牧師がいた。
 岩手県盛岡市月が丘の日本ルーテル同胞・盛岡月が丘キリスト教会の宮川正雄牧師は、00年10月に血液のがんである多発性骨髄腫瘍を医師より告知され、以後、がんと闘かってきた。そんな中、3月11日に東日本大震災が発生。宮川牧師一家は震災後の数日間、牧師館が住めない状態だったため、避難してきた近隣の人たちと共に教会堂で寝泊まりをしていたが、様々な物資が不足する中で宮川牧師は急速に食欲を無くし入院。1か月後の4月10日、眠るように息を引き取った。59歳だった。葬儀では集まったクリスチャンたちや近隣の人々が、多くの賛美をもって宮川牧師の天への凱旋を見送った。
 妻の弘子さんは、こう語る。「夫は生前から葬儀の準備をしていたので、亡くなった事実は受け止められました。でも、まだ亡くなるとは思っていなかったのに眠るように逝ってしまったのがショックでした。きっと神様が、『地上での奉仕はもういいよ。天国にいらっしゃい』と迎え入れてくれたのだなあと思いました」
 盛岡月が丘キリスト教会は現在無牧だが、同じ市内同盟基督・盛岡みなみ教会の大塚史明牧師や、37年間を主に東北で過ごし現在、被災地応援に来ているラジャー・オルソン宣教師、盛岡出身の米内宏明牧師(バプ教会連合・国分寺バプテスト教会)ら多くの牧師、宣教師がサポートしている。「どの先生方も率先して協力を申し出てくださり、本当にうれしかった。私たちには力がないけれど、すでに神様が私たちの教会のために前もって先生方を用意してくださいました。神様は私たちの教会に本当によくしてくださいました」と弘子さんは感謝する。
 同教会は牧師不在にもかかわらず、被災した人々の支援にも携わってきた。信徒の中に大船渡市や陸前高田市など、大きな被害を受けた沿岸部に親戚や知人がいるためだ。現在、同教会の信徒らは、沿岸部にいる人々に物資を届けるなど日々のサポートをし、震災で親を失った子どもたちのケアにも心を配っている。
 今、陸前高田市からひと家族3人が同教会に避難している。母親はクリスチャンだったが、教会生活から離れていた。だが「教会なら助けてくれるにちがいない」と盛岡にやってきたという。

◎聖書が結ぶ教会の一致−−神戸バイブル・ハウスで聖書リレー朗読会=1110230603


 クリスチャンセンター神戸バイブル・ハウス(KBH)主催の第5回「聖書リレー朗読会」が9月7日から15日まで、神戸市中央区の同所で開かれた。初日に開会礼拝が開かれ、その後朗読がスタートした。
 参加者延べ約400人によって創世記から黙示録まで、週日朝から夜まで約100時間かけて読み継いでいくこのリレー朗読会は、2003年にKBHが復活を遂げて以来、隔年に開催されて好評を得てきた。参加教会は毎回80余り。「聖書を読み、神の言葉を聴く」という信仰の原点に立ち、さらに聖書全巻を読み続けることで「神の救済の歴史を追体験する」という大きな意義を持っている。同時に教派の枠にとらわれないエキュメニカルな働きとしての意義も大きい。
クリスチャンはもちろん、信仰を持たない人も参加して感動を覚えて帰るというこの催しの発端は、95年の阪神大震災の傷の残る01年に開催した「神戸聖書展」に遡る。大きな反響を呼んだ聖書展の2年後に、戦前まで「聖書の紹介と普及」の拠点だったKBHが、さらに宣教の拠点としての役割も担った復活を遂げた。聖書こそKBHの礎であり、さまざまな活動、催しはこの聖書を中心に行われてきた。リレー朗読会もそのひとつだ。聖書を介して「キリストに在ってひとつ」になることを体験し、教会の一致と協力が強められ、宣教が前進することを願って開かれている。
 2013年に復活バイブル・ハウスは、創立10周年を迎える。来年1年かけて準備をし、10周年では第6回のリレー朗読会をする予定だ。