[CSD]2012年11月25日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年11月25日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎「地を治めよ」慎み取り戻せ——「原発とキリスト者」主題に福音主義神学会東部部会が秋期研究会
★「信仰の発露が宣教の証しに」——「教会福音讃美歌」奉献礼拝

 = 2 面 ニュース=
◎父・朱基徹が遺した信仰——殉教者の息子の証言集 刊行
★福音功労賞に小林和夫、武田恒義、金山良雄の3氏
◎「問題を抱えた人たちとの出会いと交わりに支えられてきた」——同盟基督・那須高原教会&ハウスオブレスト30周年
★<落ち穂>日中関係の鍵を握る為政者のための祈り

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[36]人体は小宇宙 記・柏木哲夫
★JEAフォーラム仙台 発題から<要約>——地域の再生と福音の浸透
★<オピニオン>いじめ構造が巣くう教育現場の崩壊 記・
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 企画特集/愛のささべもの=
★受けるより、与えることが幸いなのです

 = 6 面 神学/歴史 =
★同情する苦しみ、また不正義との対決としての十字架?——東日本大震災 国際神学シンポジウムより
★<竜馬をめぐる人々>[85]坂本直寛の章:44——会津戦争の怨念を越えて 記・守部喜雅

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[32]JECA・つがる福音キリスト教会?——
★<神の宣教>神のことばを神の世界へ[9]—— クリストファー・ライト講演抄録

 = 8 面 レビュー =
★MOVIE:「愛について、ある土曜日の面会室」——人には愛という絆が必要(12月15日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開)
★BOOK:『一六時四〇分 がんになった臨床心理士のこころの記録』藤掛明著(キリスト新聞社、1,680円税込) 評・柏木哲夫
★BOOK:『ロイド・ジョーンズ ローマ書講解 7・1-8・4』ロイド・ジョーンズ著(いのちのことば社、4,200円税込) 評・山崎俊彦
★BOOK:『一キリスト者として東日本大震災を考える』関根義夫著(キリスト教図書出版、1,260円税込)
★BOOK:『イスラエル新発見の旅 政府公認ガイドがご案内します』柿内ルツ著(ミルトス、1,575円税込)
★BOOK:『古代シナゴーグ』F・G・ヒュッテンマイスター、H・ブレードホルン著(教文館、3,045円税込)
★BOOK:『ユダヤ人イエスの福音——ヘブライ的背景から読む』河合一充編著(ミルトス、2,100円税込)
★BOOK:『キリシタン殉教の道を辿る』田中菊太郎著(マルコーシュ・パブリケーション、1,995円税込)
★CD:『RECAPTURE』IN HIM Publication(全7曲、1,575円税込)



◎「地を治めよ」慎み取り戻せ−−「原発とキリスト者」主題に福音主義神学会東部部会が秋期研究会=121

 日本福音主義神学会東部部会(大坂太郎理事長)は11月12日、「原発とキリスト者」を主題に都内で秋期研究会を開いた。被災者が苦しむ問題で時代の破れ口に立ち、?神学する?という趣旨。日本福音同盟神学委員会でこの問題に取り組む関野祐二氏(聖契神学校校長)と、原発問題に理事会見解を出した日本同盟基督教団で発言を続けてきた水草修治氏(小海キリスト教会牧師)が講演した。
 関野氏は「『自然科学』から考える原発とキリスト教」と題し、キリスト教世界観の中から近代自然科学の営みは生まれ、
科学技術の進歩によって西洋キリスト教世界の中から原爆も原発も生まれたことに着目。自然観と自然科学の歴史、聖書の世界観との関係を概観し、
なぜそれが環境破壊を伴い暴走したのかを検証。聖書を読みキリスト教にも問いかけをした反核・反原発の市民科学者、木仁三郎の論考を軸に、キリスト者が本来持つべき自然観と自然理解、科学および科学技術のとるべき方向性、原発問題への姿勢を考察した。
 原発事故の問題は、収束までに要する年月の長さや放射性廃棄物の処理にかかる数万年もの時間、影響を及ぼす範囲の大きさや原発一基あたりの放射性物質の致死量など、人間の把握できる限界を超え、「地を治めよ」との主の委託命令の適用範囲をはるかに逸脱していると関野氏は見る。
 聖書の自然観は、自然を人間を除外した客観的領域とは見なさず、「神の支配の及ぶ人間を含めた被造物全体」のことだと指摘。西洋キリスト教こそ生態系破壊の元凶との批判を、「キリスト者は真摯に受け止め、本来的聖書的自然観を取り戻すべき」だとし、聖書に立ち戻り正しい釈義に基づく生態学的メッセージを受け取り直す、自然科学と技術の歴史を再検証しライフスタイルを見直す、罪と欲望の問題を問い直す、聖書的な自然との共生を追求するなど、「多岐にわたる作業が求められる」と総括した。
 水草氏は「聖書を眼鏡として原発問題を読む」と題し、創世記1~11章をアウトラインとして原発問題を考察した。「アダムは本来、神のしもべとしての慎みをもって、隣人を愛し被造物を世話する任務を負っていた。だが傲慢になり自ら神になろうとする罪を犯した。以来、人は神を憎み、隣人を貪る罪を持つ者となった」。そう位置づけた上で、技術の問題について次のように述べた。
 「カインにおいて、人は、諸技術によって神無しで生きる術を求めるようになった。技術は神の支配下で箱舟のように救済的に用いられるが、神の支配から離れると偶像的なものとなり、害となる。バベルの塔は権力と結びついた巨大技術の偶像性を示す。権力には剣と富が伴い、富には貪りと偽りが伴うゆえに、巨大科学技術である原発にもまた兵器と富と偽りと貪りが伴う」。そして「権力者が原発に拘ってきた理由は核兵器への希求である。また原発には被曝労働者の搾取と、政官財界マスメディアを巻き込んだ『原発安全神話』という偽りが伴っている。このように、原発は貪欲と偽りで塗り固められた電力と核兵器材料の製造装置である」と指摘した。
 「我々は、今回の事故が起こるまで、原発の問題性に薄々気づきながら目を閉ざして、安易に便利のみを貪り、その任務を怠ってきた。このことをまず神の前に悔い改めるべきである。そして、今後は、エネルギー政策において、原子力によらない社会が実現するように、祈り、発言し、行動するものでありたい」

◎父・朱基徹が遺した信仰−−“殉教者の息子”の証言集 刊行=1211250201

 日本による朝鮮半島植民地下の時代、最後まで神社参拝拒否を貫き拷問の末殉教した朱基徹牧師。その四男で昨年11月、79歳で亡くなった朱光朝氏が日本で講演した内容をまとめた証言集『岐路に立って 父・朱基徹が遺したもの』(野寺恵美訳、千470円税込)がこのほど、いのちのことば社から出版された。10月21日、その出版記念会を兼ね、「2012年・朱基徹牧師記念の集い 恵みの高き峰」(同準備委員会主催)が神奈川県横浜市神奈川区桐畑の横浜長老教会で開催された。

『岐路に立って 父・朱基徹が遺したもの』は、日本の警察による非道な拷問を受け続け殉教した父・朱基徹の姿を描く。その光景は目撃した幼い光朝氏が3、4年間、失語症に陥るほどの凄惨なものだった。命がけで信仰を貫いた朱基徹牧師は戦後、「偉大な殉教者」として韓国の人々から称賛される。だが光朝氏は「父を助けてほしい」と祈り続けたのに神は答えてくれなかったことに反発し、約10年間教会を離れ、祈らない生活を送る。
 父・朱基徹の殉教、光朝氏自身のその後の歩みと心の葛藤だけでなく、母・呉貞模の信仰、兄・朱寧震の生涯と殉教についても触れており、息子でなければ語れない貴重な目撃証言集だ。
 さらに「日本のキリスト者に贈るメッセージ」も収録。日本のクリスチャンは少ないけれども、ギデオンの300人の勇士のようだと語り、「みなさんの祈りとイエスさまに向けたその熱い思いが、大きな奇跡となって、いつか豊かな実を結ぶことができると信じています」と励ましている。
 記念の集いでは、光朝氏が教会に戻るきっかけとなった妻の具貴鶴氏が「今日、この本を手にして主人の願いが叶えられ感動している」と挨拶。「主人は思春期にいろいろな苦しみを通り、神様から離れていた時期もあったが、朱基徹牧師の信仰を受け継ごうと真剣に努力した人だった。主人は日本のために真剣に祈っていた。日本で証言集会に参加し韓国に戻って来くると、いつも満足した表情で明るかった」と思い出を語った。
 渡辺信夫氏(元日キ教会・東京告白教会牧師)は「朱光朝長老の証言から日本の教会が学ぶべきこと」について講演。「朱長老の訃報を聞いて『しまった!』と思った。彼に聞いておきたいことがたくさんあった」と残念がった。渡辺氏は、「ソウルと日本で朱長老の講演を聞いたが、日本での講演はソウルの講演とは比較にならないほど深いものだった」と語る。その時、浮かんだ思いは、光朝氏が日本の聴衆のためになぜあれだけ力を込めて準備し、情熱を注いで話をしてくれたのか、だったという。
 その上で、「これは私の想像だが」と断りつつ、「彼が日本のクリスチャンを自分の仲間と受け入れ、かつて韓国で起きたキリスト者の戦いと同じ戦いが、やがて日本でも起こるという確信に立ち、その戦いに挑む日本の兄弟姉妹に向けて熱意を込めて語った。これがこの講演の熱さの源泉であったのでは。今となっては本人に確かめようもないが、私の想像は間違っていないと確信している」と力を込めた。

◎「問題を抱えら人たちとの出会いと交わりに支えられてきた」−−同盟基督・那須高原教会&ハウスオブレス

 全国で最初の禁酒禁煙ペンションとして話題になった那須高原ハウスオブレストを併設する同盟基督・那須高原教会(那須郡那須町高久乙586ノ889)の30周年記念祝会と礼拝が、10月27日、28日に行われた。ペンションのオーナーであり同教会牧師の近藤秀夫・葉子夫妻は、松原湖バイブルキャンプでのキャンプ伝道をとおして1982年4月、栃木県那須でのペンション伝道と教会形成にチャレンジした。「ここにクリスチャン村をつくりたい」という近藤夫妻の幻は、別荘に定住したクリスチャンや信仰決心者らが起こされ、着実に実現しつつある。
 ハウスオブレストと那須高原教会の働きは、ペンションと教会という目に見える違いはあるが、実態は区分できるものではない。27日のハウスオブレスト感謝会には、クロスロード振興会を起ち上げたころからの友人でもある高久勝那須町長も駆けつけ、「この地域にペンションが建ち始めた時期の先駆けでもあり、オーナーとして地域の観光を何とかしようと那須ナンバーや那須検定など積極的に提案してこられた」と、地域と共に根を下ろしていく姿を語った。
 感謝会では、松原湖バイブルキャンプの開拓者ともいえるTEAM元宣教師のジョン・R・ショーンさんとF・チェンバレン・ガイスラーさんらの自宅にインターネット電話の画像で交信。日本の懐かしい人たちとあいさつを交わしていた。翌28日の記念礼拝では岡村直樹氏(東京基督教大学教授)が申命記32・709節から、記念を設けることで、神は恵みを忘れないよう私たちに配慮してくださっていると語り、昼食の感謝会では教会の人たち始めお祝いに駆けつけた人たちと恵みと出会いの感謝を語り合った。
 30年間の歩みには様々な出会いがあり、中には家出してきて5年3か月住みついた女性など悩みを問題を持ってくる人もいる。「ここは問題を抱えた人たちによって支えられてきた所だと思います。問題抱えた方たちと共に生活することは確かに大変ですが、それを神さまが喜びに代えてくださる」と葉子さんは語っていた。近藤牧師も、「私の特技は忘れること。神様は明日何をさせたいのかなぁ。そんな思いでやって来た30年でした。ですから、明日もこのハウスオブレストと教会があると思わないでください。神様が、明日やることを教えてくださらなければ、ここはありませんので」と語り、集った人たちの40周年への期待と応援を受け止めていた。