[CSD]2013年2月3日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年2月3日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎「国旗・国家」私立校にも圧力 自主規制戦前と同じ——大阪市立校連合会 参加校に実施指示
★フィリピン:超大型台風で教会も被害甚大——JIFH:国際連携で被災者支援を継続

 = 2 面 ニュース=
★複数教会が協働 被災地愛し続けるシンボルに——石巻クリスチャンセンター建て替え開始
★同盟基督:総選挙の結果受け 祈りを要請——新政権の憲法改定、原発政策に危機感
★沖縄福音連盟30教会が合同聖餐式——違い超え協力して歩む証しに
★<落ち穂>「愛と赦し」の世界を描く
★<情報クリップ>催し情報

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[42]複雑な悲しみ 記・柏木哲夫
◎映画「東ベルリンから来た女」 二面性育成する監視社会の実像描く——クリスティアン・ペツォールト監督に聞く
★<オピニオン>教育再生実行会議の目指すもの 記・岡田 明
★<情報クリップ>放送伝道ハイライト

 = 4・5 面 2・11特集/憲法「改正」で信教の自由どうなる?=
★迫る「憲法改正」どこが危険か——戦前の歴史が語る信仰の危機
◎「戦争しない」憲法 脅かす改憲案——阻止のため敵意克服が責任課題 西川重則氏の講演から
★各地の2・11集会

 = 6 面 神学/平和 =
★日・中・韓・米・北朝鮮の神学者ら 和解のための協議会——緊張の北東アジアに平和づくり
★国際:宗教間・文化間対話センターがサウジ政府の後押しで始動

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>?寄り添う[37]JBBF・港北ニュータウン聖書バプテスト教会?——
★<神の宣教>神のことばを神の世界へ[15]—— クリストファー・ライト講演抄録

 = 8 面 レビュー =
★Movie:「いのちがいちばん輝く日~あるホスピス病棟の40日~」(2月2日より新宿K's cinemaほかで公開)
★Book:『キリスト教とモルモン教はどう違うのか』アンドリュー・ジャクソン著(いのちのことば社、1,575円税込) 評・ウリアム・ウッド
★Book:『原子力と私たちの未来 韓国キリスト教の視点から』「基督教思想」編(かんよう出版、1,890円税込) 評・水草修治
★Book:『南原繁の生涯 信仰・思想・業績』山口周三著(教文館、3,150円税込)
★Book:『神様から届けられたラブレター 心の傷、魂の傷が癒されるために』野口泰介著(文芸社、1,260円税込)
★Book:『こころのごはん~日々をささえる聖書のことば30』宮 葉子著(フォレストブックス、1,050円税込)
★Book:『自死と教会 第46回神学セミナー』関西学院大学神学部編(キリスト新聞社、1.575円税込)
★Book:『聖書とコーラン どこが同じで、どこが違うのか』J・グルニカ著(教文館、2,730円税込)
★CD:「WELCOME!」Cymbal([株]アサフ、全8曲、1,500円税込)





◎「国旗・国歌」私立校にも圧力 自主規制戦前と同じ−−大阪私立校連合会 参加校に実施指示=13020

 公立学校の卒業式・入学式などで「君が代・日の丸」の強要が問題化する中、私立学校にも「指導」の圧力がかかり、自主規制の動きが大阪で始まっていることが明らかになった。「日の丸・君が代」強制を憂慮する教会関係者やクリスチャン教員らに衝撃が広がっている。キリスト教主義学校の中には、戦前の軍国主義教育に加担した反省や信仰の見地から「国旗掲揚」「国歌斉唱」を実施しないところも少なくない。私立学校自らが権力の意向を忖度しそれに合わせていこうとすることは、戦前に教会や学校が国家主義にのみ込まれていった動きと同じで、関係者は危機感を募らせている。

 国旗掲揚をしない私立学校があることについて、昨年10月15日の大阪府議会で議論された。これを受け、大阪私立中学校高等学校連合会の坪光正躬会長が同年11月22日付で、傘下の私立中学校・高等学校の理事長・校長宛てに、「入学式・卒業式等における国旗掲揚・国歌斉唱」について(配慮方お願い)とする文書を出した。学習指導要領で「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定されていることを指摘。「つきましては、学習指導要領の趣旨、大阪府の国旗掲揚・国歌斉唱に関する条例制定や府議会の議論等の状況を踏まえ、より一層のご配慮をお願い」する文面になっている。坪光氏は、カトリック系の大阪明星学園理事長・学園長。
 (別紙)には、2012年10月15日の大阪府議会で、維新の会の西野弘一議員(現在は衆議院議員)がした質問と、市橋康伸私学・大学課長の答弁が記されている。西野議員が「平成23年9月の教育常任委員会において、入学式や卒業式における国旗掲揚の実施状況についての質問をしたが、私立学校におけるその後の状況はどうなっているのか」と質問したのを受け、市橋課長は「平成24年5月に行った調査によると、入学式や卒業式で国旗の掲揚を行っている府内の私立高校は、中等教育学校の後期課程を含め78校で、全体の約76%となっており、昨年度と同じ実施状況となっている」と回答。それに対して西野議員は「全く状況が変わっていないということだが、これまでどのような指導を行ってきたのか。指導に従わない学校については、学校名について、公表すべきと考えるがどうか」とただした経緯が分かる。
 それに対し市橋課長は、これまでも学習指導要領の趣旨の徹底に努めてきたのに加えて、昨年度「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が制定されたことを踏まえ、適切に実施するよう文書通知するとともに、私学団体の校長会等において指導を行ったとして、「引き続き、学習指導要領の趣旨を踏まえ、適切に実施するよう強く求めていく」と説明。西
野議員は「学習指導要領を拒否している学校に対しては、補助金をカットすべきと私は考えている。府として厳しい措置を検討するよう要望しておく」と述べた。
 問題の府条例は公立校など自治体の施設が対象で、独自の教育を旨とする私立学校に学習指導要領の拘束力がどの程度及ぶかについても議論がある。そうした中で大阪私立校連合会の動きは、 戦前の教会やミッションスクールが自己防衛のため国策にすり寄り加担していった歴史を再現するものであり、見過ごせない。
 

◎映画「東ベルリンから来た女」 二面性育成する監視社会の実像描く−−クリスティアン・ペツォールト監督

 1月19日にドイツ映画「東ベルリンから来た女」が、東京、神奈川などで公開された。ベルリンの壁が崩壊する9年前の1980年夏、東ベルリンのエリート医師バルバラ(ニーナ・ホス)は恋人ヨルクがいる西側への移住を申請したことから反体制の嫌疑が掛かり、シュタージュ(国家公安局)の監視下に置かれバルト海を望む田舎町の病院へ左遷された。自由意思を圧迫し医師の能力だけを活かそうとする監視社会。その体制のなかで自己の確立を必死に守り維持しようとするバルバラの生き方は、ラストシーンで矯正労働所から逃亡してきた少女を救うため贖罪的な行為を決断する。この感動的な作品のクリスティアン・ペツォールト監督に話を聞いた。

自己確立と贖罪的
決断への心の道程
 ペツォールト監督は、あるインタビューで「本作品で表現したかったのは、人が自己を確立するのにどのような過程を経てきたかという点です」と答えている。国の体制側からの監視の中での生活。周囲の人々への猜疑心が生まれ、何を信じればよいのか。自分の心の自由と意志をどう守っていけばよいのか。屈辱的な身体検査やあからさまな監視は、心に屈折した二面性をも芽生えさせていく。自ら孤立を選択した葛藤の中で、病院の同僚医師アンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)の誠実な医療活動と人柄にバルバラの気持ちが開かれていく。「この映画に出てくるバルバラもアンドレも、他人の目を気にして、良く思ってもらおうとして生きているのではない。その2人が惹かれ合うのです。彼らの美しさ、互いに示す誠実さ、真面目さは、彼らの内側からにじみ出てくるのです。国家はそういうものを決して壊すことはできません」
 バルバラは、西側に住む恋人ヨルクと亡命の準備を進めていた。ヨルクから届けられた逃走資金は、バルト海を望む海岸路傍に立つ十字架の下に隠される。「あのシーンは海の直ぐ近くですが、音がするだけで海を見ることはできません。十字架は船が難破した場所に、亡くなった船乗りのために立てられたのです。東独にもまだ教会はありました。当時、教会は反体制派のたまり場でした。私は、お金を隠す場所をどこにするか考えた時、海と関連する場所で、同時に反体制派の居場所として教会とも関係するところを探しました」
 当時の教会は社会的に抑圧されていた存在ではあったが、70年代後半の教会内部では、信徒を中心に新しい社会運動のテーマを議論し、活動をリードしていく素地が備わりつつあり、80年代初頭には信徒以外の市民層も参加する広がりを見せていく。そのような時代背景を彷彿とさせられるシーンは、何気ない描写だが、ストーリー展開の中でも印象的だ。
 知識階級出身のバルバラは、人民や体制からの抑圧に対抗するかのように、人民とは一線を画す生き方と態度をとる。だが、医師としてのプライドと使命感は、彼女を患者を癒す行為へと寄り添わせていく。恋人ヨルクが、自分の内面と医師としての実力に関心が薄いことを感じたバルバラは、矯正労働所を逃亡し自分を頼ってきた少女ステラを助ける決断をする。一面、使命に生きる医師としては寄り添えても、心情的には人民を見下してきたことへの贖罪意識だろうか。バルバラの自由な意志で決断するこのラストシーンは、自分が何者であるかを悟ったような温もりのある美しさと静謐な感性に包まれている。

◎「戦争しない」憲法 脅かす改憲案−−阻止のため“敵意”克服が責任課題 西川重則氏の講演から=130

 昨年末、発足した第2次安倍晋三内閣は早期の憲法改正を目指して動き出している。10年以上国会を傍聴し続け、聖書に次いで日本国憲法を毎日読むという西川重則氏(平和遺族会全国連絡会代表)は自民党憲法改正草案を「改悪」として警鐘を鳴らす。
 1月12日、東京・文京区の本郷文化フォーラムで開かれた講座「安倍内閣の発足と私たちの課題|『改憲阻止をめざして』訴えたいこと」(本郷文化フォーラムワーカーズスクール[HOWS]主催)で自民党の改憲論の問題を語った。また反対運動の連帯のために共通の理論を構築すること、憲法を学ぶ重要性を強調した。以下は講演の要約。
      ◇
 自由民主党は、1955年の結党時から憲法自主改正を目的とする。日本国憲法がGHQによる押しつけだったという見解を持ったためだ。特に安倍氏は早期の改憲実現を目指している。第1次安倍内閣(2006~2007年)では、愛国心を盛り込んだ改正教育基本法、「日本国憲法の改正手続きに関する法律」(国民投票法)を成立させた。
 退陣後も安倍氏は改憲に動いた。神社神道を母体とする政治・宗教団体、神道政治連盟の国会議員懇談会会長に就任。改憲派の学者から意見を集め、日本史の中で天皇が何よりも大事という立場を強めた。「英霊にこたえる会」・「日本会議」共催で昨年も靖国神社で大集会を開き、首相の靖国神社参拝の再開と定着、天皇の靖国神社参拝、憲法改正の実現を主張したが、この集会に安倍氏も参加していた。
 第2次安倍内閣が昨年末発足したが、首相の閣僚人選には驚きを禁じ得ない。憲法99条にある、憲法政治を行う義務を果たさなかった。政府は良い手本として憲法政治をしっかりやってほしい。
 自民党の「日本国憲法改正草案」は国家と宗教の分離(政教分離)の原則が脅かされるひどい内容だ。自民党が勝手に判断した憲法改正草案ではなく、21世紀に普遍的で、国境を越えても納得できる憲法改正草案でなくてはならない。
 現行憲法前文が主張していることは国民主権、平和主義、国際協調主義だ。前文には普遍的な価値がある。国民主権は私たちがどういう政治をしたいかだ。国際協調は外交の問題。平和主義はアジアの視点に立つことだ。戦時中アジアに何をしてきたか具体的な歴史事実を学ぶ必要がある。
 私は何が何でも護憲という訳ではない。象徴天皇制も問題は多い。憲法学者の佐藤功氏は、「民主国家に天皇制は原則的になじまない。構造的に差別は否定できない」と主張する。憲法改正草案では天皇を「元首」とする。これは大変なことだ。
 第2次安倍内閣発足時の特別国会の昨年12月27日に衆院憲法審査会が開かれた。第1次安倍内閣の時に設置された憲法改正案を審査する超党派の会だ。会長は中立であるべきだが、自民党新憲法制定推進本部長の保利耕輔氏が就任した。50人の定員のうち、政権交代前は護憲派は共産党、社民党の2人がいたが、共産党の1人になった。  
 いかに改憲を阻止できるか。まず、憲法を改めて徹底的に学ぶことが大事だ。憲法の形成過程を知る必要がある。いかなる戦争もしない決意と具体化を可能にするためには、運動論が必要だ。多くの人と共通の認識を持てる論理の構築をしなければならない。
 意見の違いがあるのは当然であり、言論の自由がある。日本と中国、韓国なども問題はあるのだが、敵意があれば問題は深刻だ。戦争は敵意がある限りありうる。政府が和解しても、民衆に敵意がなくならないと戦争は起こりうる。どうしたら敵意をなくするかは歴史的・民族的課題である。
 日本国憲法は普遍的な価値を持ち、戦争をしない憲法だ。よくできているのに、なぜ敵意が残るのか。日本政府始め私たちの責任課題だ。
 9条は戦争できる仕組みを否定する。問題は政府がそれを守らないことだ。多くの国民も不安定な政府の現状を追認している。
 国内で改憲に反対しても改憲派が多数だ。国境を越えた国と国との民衆で、世界平和のために努力する必要がある。世界の民衆が反対すれば戦争はできない。9条の会や様々な団体が「自分たちの会こそ」という考えではなく、学びを一緒にできるようになればいい。それぞれの持ち味を生かし国家権力に共に警告できる仕組みをつくらなくてはならない。