佐世保小6女児殺害事件:市内の教会もショック−−「祈りの言葉出てこない」0406270101

 長崎県佐世保市の大久保小学校で起きた小6女児殺害事件。テレビ報道によると、加害者の女児は「神様はいるんですか…助けて」とチャットに書き込んでいたという。日本を騒然とさせた事件の発生から3週間あまり。地元の教会では「祈りの言葉さえ出てこない」と、とまどい、驚き、ショックが今も続いている。また、娘が被害者、加害者と同じクラスだった牧師もいるという。
 日本基督教団佐世保比良町教会(大田七千夫牧師)は、大久保小学校から歩いて10分。大田牧師の娘は、大久保小学校の1年生だ。大田牧師は、「近くだからこそ、互いの気持ちをより理解し合えるようにと祈っている」と語る。「自分もこの出来事を消化しきれていない。どう祈ればいいかわからず言葉にならない状況がある。娘にもこの事件をどう伝えていけばいいか迷っている」と語る。教会では「今まで子どものために真剣に祈ってきただろうか」という問いかけが起こっているという。
 日本バプテスト連盟佐世保キリスト教会の岩尾清志牧師は、「被害者と同じクラスだった知り合いの牧師の娘は、心的外傷後ストレス障がい(PTSD)の症状が出ている」。その牧師と接すると「どんな祈りの言葉も上っ面になってしまう」という。「『ありがたいけれど、通り一遍の言葉で祈ってほしくない。そっとしておいてほしい』という気持ちではないか。どう慰め、どう声をかけていいかわからない」
 「現実は本当に痛々しい。『被害者、加害者、事件に遭遇した家族の上に平安があるように』という祈りでいいのだろうかと考えさせられている」と岩尾牧師は述べた。
 日本基督教団佐世保教会の深澤奨牧師は「教会学校の子に大久保小学校の生徒がおり、被害者と同じクラスの子もいる。学校に行けず、勉強ができず、子どもたちは相当な傷を負っている。しかし、学校側ではそういう子の対応が十分できていない」と語る。  深澤牧師は「これは事件を起こした女の子だけの問題でなく、大人の責任でもある」と強調。「命を軽視する大人社会のゆがみが複合的に重なり、ああいう事件が起こったのだと思う。傷を負った子どもたちのため、また大人の社会が変えられるために祈る必要がある」と述べた。
 佐世保市内のカトリック、プロテスタント諸派の教会で作られている「佐世保キリスト教連合」会長の伊藤聡牧師(日本バプテスト連盟相浦光キリスト教会)は、「去年、長崎市内で起こった幼稚園児誘拐殺人事件の被害者が佐世保出身だった。同じことが2度と起こらないよう、何度も礼拝で祈っていた。その矢先のことで二重のショック」と語る。「神様はいるんですか…助けて」という言葉を見た時は、「その子にキリストを紹介できたらと思った」という。
 「娘が被害者と同級生だった牧師家族は、大変傷ついている。地元の教会が協力し何らかの取り組みが必要」だとし、「地元の教会が青少年に対する何らかの取り組みをしようと模索している」と語った。
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 兵庫県神戸市須磨区で起きた酒鬼薔薇事件を機にその地区の子どもたちに重荷をもち、事件の翌年、そこに移り住んで子どもや中高生を対象に開拓伝道を始めた谷口明法牧師(日本バプテスト連盟ユースハーベストチャーチ)は、「ついに女の子までが殺人を犯すようになったのか、という感じ。予備軍はいっぱいいるのでは」と語る。  特に事件のきっかけとなったチャットの世界にふれ、「子どもたちはあふれるような情報に接しているが、内面的な成長が遅れている。子どもたちに悪影響を与えている情報、雑誌、本、ビデオ、インターネット画像などに対し、教会がそろそろ対処を考え、立ち向かっていく必要があるのではと考えています」と述べた。
 

君の味方になるよ−−仙台・はあとランド相談室&学習室0406270502

 不登校、家出、リストカット…。心の問題が深刻になってきている今日、特に若年層の間で問題行動が目につく。そんな中、幅広い年齢層のカウンセリングと中高生の学習指導を通して、若者の心の問題に真正面から取り組む牧師がいる。今年4月、日本ルーテル同胞教団・仙台新生キリスト教会の佐藤弘司牧師らは、「はあとランド相談室&学習室」を仙台市泉区の泉中央に開設した。佐藤牧師は、これまでも2年半の間、自宅を開放してフリースクール(不登校児の居場所)活動を行ってきたが、自宅の開放だけでは限界があったため、新たに場所を借りて開設に踏み切ったという。多様化する問題に、牧師が何を考え、どう挑むのだろうか。
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 佐藤牧師が心の問題に取り組むようになったのは、6年前、万引きで補導された1人の少年の相談を依頼されたことがきっかけだった。「僕は君の味方になるよ」。その一言で、それまで壁をつくり、佐藤牧師の語りかけをかたくなに拒んでいた少年の態度に変化が表れた。「彼にとって必要なのは、理解者、弁護者、味方だったことが私によく分かってきました。その時、親以外のそういった存在の必要性を強く感じたのでした」。その後佐藤牧師は、葛藤や傷を抱える子どもたちと「向き合う大人」になろうと、カウンセリングや不登校の活動を本格的に始めていくことになった。
 佐藤牧師の役割は、相談者の「気づき」の手伝いをすることだ。解決のために指示をすることはめったになく、あくまでも本人の「気づき」を一番大事にしている。これは一見遠回りのように見えるが、その方が確実に解決につながっていくのだという。
 あるうつ病の女性から相談があったときのことだ。結婚以来苦労が続き、ずっと感情を抑えて自分を殺してきたというその女性に、佐藤牧師は「子どもに戻ったつもりで童謡を歌ってみませんか」と勧めた。いっしょに歌っているうちに、それまで泣きたくても泣けなかったという女性の目から涙が出始めたという。しばらく泣き声だけが続いた後、「ずっと感情を押し殺してきたことが、自分を追いつめてしまったんですね」と、女性は自分の心の洞察をすることができた。
 相談室を訪れるのは、親だけというケースがほとんどだ。子どもはそういった場に来ることを嫌う。そこで学習室という大義名分をつくり、子どものフォローにあたっている。一人ひとり丁寧に指導するが、成績ではなくむしろ安心やゆとりを与え、自信をもたせるような指導を心がけている。「はあとランド」では、これまで通ってきたすべての子どもが再登校できるようになった。「私たちは何をするわけでもありませんが、とにかく子どもたちに安心できる雰囲気を提供してきました。それが子どもたちにとって自信を回復したり、自分を許せる材料となったようです」と佐藤牧師は語る。
 「吐き出せなかった気持ちを告白し、聞いてもらうこと。それが癒しにつながります。どんな人でも癒されない人はいません。私たちは立ち直りを信じています」。
 相談室では通常、佐藤牧師が教会員の協力を受けながら、妻の美代子さんと活動しているが、ボランティアも募集中だ。問い合わせはTel:022・218・9397。   【藤野多恵】

心と体 わくわく体験−−アッセンブリー・浜松キリスト教会 浜松ロイヤルレンジャー0406270601

 静岡県浜松市にある日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団浜松キリスト教会(菊地和博牧師)では、日曜学校の働きの一環として、キャンプやハイキングなど、様々な体験を通し知的、身体的、社会的、霊的成長を目指す「浜松ロイヤルレンジャー(浜松RR)」の活動をしている。コマンダー(RRでは、隊長のことをコマンダーと呼ぶ)の松澤昭志さん(74)にリポートしてもらった。
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 米国RR活動の生みの親ジョニー・バーンズ氏が1982年9月1日に浜松教会を訪れ、日本にもこの活動を開始するように説いていかれました。「少年たちをキリストに導く」を目指し、日曜学校だけでは不足しがちな面を強化し、少年たちの心と体にわくわくするような感動を与えるプログラムを計画するということでした。キャンプ、ゲーム、工作、救急法、自然観察などボーイスカウトとほぼ同様の活動をしますが、ロイヤル・レンジャーはあくまでキリストに属する教会活動の一端です。
 翌々年、1984年に浜松RRの第1回ミーティングが開かれました。以来20年間、ほぼ毎月2回、第2と第4日曜日午後、約2時間のミーティングをしてきました。ただし、途中2年間休止期間をとり、それまでの活動を反省し、リーダー研修を行って再出発しました。  RRのプログラムを成功させるには、まず良いリーダーが絶対に必要です。十分に整えられた献身的なリーダーです。牧師をはじめ教会全体の支援協力も必要です。この点、浜松教会は幸いでした。
 現在、菊地牧師がチャプレンとなり、ほかに3人のリーダーが与えられています。浜松教会が行っているのは、9歳から11歳の少年を対象としたプログラムですが、日本では15歳の高校生も含んでいます。現在、隊員は8人、みな日曜学校の生徒でもあります。
 当初は、アメリカ的色彩の濃いプログラムが果たして日本の事情に合うかと心配な点もありましたが、よく計画し、よく準備して実行すれば、意外にうまくいくことがわかりました。
 近くに山あり、川あり、海あり、湖あり、林あり、実に多彩な環境が待っていました。たえず次のミーティングに備えて準備をし、下見をしますが、それも苦にならず楽しみです。隊員とともにリーダーも楽しむことが成功の秘訣と考えています。
 普段は、月2回のミーティングのうち1回は教会で、もう1回は外で行います。開会では賛美を歌い、誓いをし、祈ります。健康状態はどうか、ユニフォームはきちんと着ているかなども点検します。学習や訓練を重んじますが、同時に無理なく過ごせるよう安全に注意します。休憩をとり、おやつも出ます。最後に必ずコマンダーによる礼拝があって閉会になります。
 「少年たちをキリストに導く」RRのプログラムを忠実、適切に実行していく時、主は必ず報いてくださり、祝福してくださることを知ることができました。主イエスを信じて洗礼を受ける隊員が次々に起こされました。この春、4月11日のイースターに2人の隊員が受洗し、ついに隊員全員がクリスチャンとなりました。すべては主の恵みであり、私たちはただ主に信頼して従っただけです。  浜松RRの活動はしっかり根付いたなどとはとても言えません。今、「立っていると思う者は、倒れないように気をつけなさい」(?コリント10・12)とあります。でも、主は真実な方です。今、日本の各地で進められているRR活動をも主は導き、祝福してくださることを信じて祈っています。ホームページ
http://homepage1.nifty.com/hamamatsu-AG/rr.htm。