[CSD]2008年3月2日号《ヘッドライン》

[CSD]2008年3月2日号《ヘッドライン》
 = 1面 ニュース=
◎基地ある限り悲劇続く——沖縄・女子中学生暴行事件に米国大使館前で抗議行動
★プロテスタント宣教150周年記念事業へ参加募る——発足人に峯野龍弘氏、渡辺信氏
★韓国に今も残る植民地時代——ハンセン病隔離政策の傷痕を映画化

 = 2 面 ニュース =
★在日韓国人宣教の拠点——在日大韓東京教会が100周年
◎朗読も聞ける音筆に対応——新共同訳聖書20周年に絵本シリーズ刊行
★スリランカ:牧師一家が銃撃される——福音の前進が地元の怒りに
★国際:WCCのコビア総幹事退任へ
★<落ち穂>VIPメンバーの強み

 = 3 面 教界ニュース =
★日本の土壌にうまく融合——パーオアス・ドリブン・チャーチの実践例:バプ連盟・長崎バプテスト教会 記・渡辺 聡
★<教会の実情を知る:集計データから>[4]専任牧師の有無と閉塞感のあるなし——後任牧師が不足している現状
★<オピニオン>ウィロークリーク教会を評価した理由 記・三谷 康人

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★「神を畏れる」証券マン——谷岡 昇一さん[上](投資コンサルタント)
★<コミュニケーションのヒント>[4]「情報爆発」とkミュニケーション速度 記・森宗秀敏

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★ラブ・ソナタ仙台パネルディスカッション[3]——人間関係も神様からの賜物
★<精神障害と教会>[21]「甘える」って何だろう? 記・向谷地 生良

 = 6・7 面 特集/神戸開港140周年=
★ミナト神戸が放つ信仰の光——プロテスタント宣教史における神戸の貢献と今後の課題
★小さな祈り会から強固な絆へ——神戸宣教協力会の歩み

 = 8 面 全面広告=
☆東京イースターのつどい——キリストの復活の良き知らせ
3月23日(日)午後3時30分開演 会場:淀橋教会
Tel.03-3291-5035

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『ウェストミンスター物語』鍋谷尭爾著(神戸バイブル・ハウス、1,575円税込)
★BOOK:『新 思い切ってしつけましょう』ジェームズ・C・ドブソン著(ファミリー・フォーラム・ジャパン、1,575円税込)
★CD:「His Grace」小坂 忠ほか(ミクタムレコード、3,000円税込)
★REVIEW:『中間時代のユダヤ世界』J・ジュリアス・スコット著(いのちのことば社、3,990円税込)

 = 10 面 関西だより =
★台湾チームが上演した「高山右近」——心に迫るキリシタン殉教者の信仰
★寒波の中で燃えた信仰——関西各地でケズィック開催
★キリストの愛実践するNPO介護事業を開始——オープンバイブル・神戸キリスト栄光教会
★<逝去>坂井節夫氏(元インドネシア医療宣教師、改革長老・東須磨教会長老)

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎日韓の隠れた悲劇を映画化——「ドンベク・アガシ」に描かれるハンセン病差別の現実
★クリスチャン向けSNS「Hosanna Japan」スタート

 = 12 面 ひと=
★ボクシング一筋からゴスペル一筋に——野田修司さん(ゴスペル・ミュージシャン)

◎基地ある限り悲劇続く−−沖縄・女子中学生暴行事件に米国大使館前で抗議行動=0803020101

 沖縄県北谷町で2月10日、在沖縄米海兵隊キャンプ・コートニー所属の海兵隊員に女子中学生(14)が暴行された事件に対し、キリスト教界からも抗議の声が相次いでいる。各教団・団体が抗議声明を採択し、2月21日には「平和をつくり出す宗教者ネット」(東京都渋谷区)が東京・港区のアメリカ大使館付近で抗議の祈念行動を展開した。

 「アメリカは被害少女の人権を守りなさい!」。「米軍は沖縄・日本から米国へお帰りください!」。アメリカ大使館付近に抗議の声がこだました。祈念行動には、日本山妙法寺、「平和をつくり出すキリスト者ネット」らが参加。「米軍はアメリカへ帰れ」、「武力で平和はつくれない」など書かれた横断幕やプラカードを掲げ、シュプレヒコールを上げた。
 また祈念行動の最後には、日本キリスト教協議会平和・核問題委員会(平良愛香委員長)及び女性委員会(丹野信子委員長)、キリスト者政治連盟、日本山妙法寺それぞれによる要請書を大使館に提出。「沖縄・世界からの米軍撤退」、「被害者少女への謝罪と補償、精神的ケア」、「再発防止策」、「加害米兵の処罰」などを強く求めた。

 各団体からの声明では、東京地方バプテスト教会連合社会委員会(城倉啓委員長)が、抗議声明及び「日米両政府による非暴力実践の要求」をジョージ・ブッシュ米大統領、福田康夫首相にて送付。「米軍基地・自衛隊基地をもつ町において、今に至るまで一度も平和憲法は実現しておらず、そのことが、今回のような事件が繰り返される構造的原因」。「軍隊は住民を守らず、むしろ軍隊自身を守るために住民を監視し抑圧する」と批判し、日米両政府に対し・日米安全保障条約の廃棄と米軍基地撤退、・日米地位協定を改訂し、被疑者を日本の国内法によって厳重に処すること、また日本政府に対し・日本国憲法9条の遵守、・自衛隊の武装解除を求めた。
 また日本基督教団(山北宣久総会議長)は18日に採択した抗議声明で、「憤りを込めて」強く抗議し、「被害を受けた中学生の癒しを祈ると共に、根にある基地の撤去のために、沖縄に住む人々と力を合わせていくことをもって痛みの共有とします」と結んだ。

 沖縄・名護市辺野古で、非暴力で基地建設阻止運動に取り組む平良夏芽氏(日本キリスト教団うふざと伝道所牧師。沖縄平和市民連絡会共同代表)の話
 犯人に対して憤りは感じるが、犯人個人を責めて終わる問題ではない。軍隊が沖縄に駐留し続ける以上、こういった危険性は留まり続ける。少女たちを危険にさらしているのは政府であり、「日米安保条約のためには軍隊が必要だ」と言っているすべての人。軍隊と決別するという生き方を日本政府が選び取らない限り、悲劇は繰り返される。『許せない』という声を上げることは必要だが、具体的に何をしていくかが大切。声を上げ、そしてもう一歩踏み込んで問題解決に乗り出していかなければ。

◎朗読も聞ける音筆に対応−−新共同訳聖書20周年に絵本シリーズ刊行=0803020202

 財団法人日本聖書協会(JBS、渡部信総主事)は『聖書 新共同訳』発刊20周年を記念し、4月から「みんなの聖書・絵本シリーズ」を毎月1冊ずつ、3年にわたり頒布を開始する。それに伴い2月16日、東京・中央区銀座の教文館9階ウェンライト・ホールで「みんなの聖書・絵本シリーズ発刊発表記者会見・原画展」が行われた。

 同シリーズはJBSの「プロジェクト21」5か年計画の1つとしてスタート。「輸入ものの絵本の翻訳でなく、日本人の手により、オリジナルで聖書に忠実なものを目指すべきでは」との提案があり、コンセプトを「日本人クリスチャン画家の絵で伝えるJBS初のオリジナル絵本シリーズ」に。旧約を藤本四郎氏、新約を杉田幸子氏(共に日本児童出版美術家連盟会員)に依頼した。
 絵本は旧約、新約と毎月交互に頒布。4月に旧約「せかいのはじまり」、5月に新約「少年イエスと洗礼者ヨハネ」の頒布を始める。10年3月までには旧約聖書17巻、新約聖書19巻の計36巻を頒布し終える計画だ。
 1冊に絵12枚を使用。物語は新共同訳聖書に準拠し、親が子どもへの読み聞かせを意識し、小学校低学年の子どもにも分かる易しい言葉で表現。巻末に各場面に対応した新共同訳聖書の個所を参照できるようにしている。また、解説のページも。地図や表、写真などから、それぞれの物語の歴史的背景、その時代の文化や習慣、言葉の意味を知ることができる。
 さらに絵本にタッチするだけでそのページの朗読を聞ける「音筆」にも対応。字が読めない子でも一人で絵本を楽しめる。音筆は別売(1万5千750円税込)で、初年度12巻分の音声を内蔵。朗読を久米小百合氏(教会音楽家、JBS親善大使)がしている。渡部氏によれば「絵本での音筆は世界初ではないか」と言う。
 藤本氏は「親子で楽しめる聖書絵本が出版されるのは本当にうれしい」と語る。「主観でなく、そこで語られるメッセージをどう絵で表現するか、ある程度考古学、歴史も踏まえながら、想像力も働かせて描いていきたい」と述べた。
 杉田氏は「作者に選ばれたことは光栄。今までの絵の仕事が評価された」と喜ぶと共に、「当時の人たちがどんなふうに生活していたのか、と考えながら心を込めて描いていきたい。これは自分一人の力ではできない仕事なので、皆さんのお祈りによって描かせていただきたい」と述べた。
 値段は1冊千円(税込み)だが、08年5月末まで年間購読(12冊分)一時払い場合1万2千円のところ特別特価9千800円で頒布。聖書キャラクターのオリジナルカレンダーも付く。問い合わせはTel03・3567・1987(JBS)。ホームページhttp://www.bible.or.jp
 並行して「みんなの聖書・マンガシリーズ」(新約2巻、旧約3巻)も発行していく。2月には『新約聖書・ 救世主』(原案・熊井秀憲、画・ケリー篠沢、千50円税込)が発売された。

◎日韓の隠れた悲劇を映画化−−「ドンベク・アガシ」に描かれるハンセン病差別の現実=080302110

 海と森林の美しい場所として知られる韓国・ソロクト。この島の中に、日本が植民地時代にハンセン病患者を「強制収容」した施設がある。戦後もハンセン病の偏見と差別に苦しめられてきた患者が、今なおここで暮らしている。「ドンベク・アガシ」(椿姫)は、ハンセン病患者の一人、さんの人生を中心に描かれたドキュメンタリー映画だ。この映画の監督朴貞淑さんに、李さんとの出会いや映画について、インタビューした。

 2002年、夏期休暇でソロクトを訪れた朴さんが見た光景は、「指先のないおばあさんが、一生懸命仕事をする姿」だった。ショックで、頭から離れなかったという。ソロクトを舞台にした映画を撮る決意をし、主人公を探していた。そんな矢先、映画スタッフの一人が、ソロクトに帰省していた李さんの息子と知り合いになったことをきっかけに、李さんを主役にすることが決まった。映画を撮る上で一番苦労したのは「ソロクトに住む人たちの心を開くことだった」という。植民地時代の隔離政策でソロクトに連行され、暮らしている住民は、独立後も差別され続け、深い傷をもつ。「遺伝するとの偏見からハンセン病患者の子どもは学校から追い出されたり、仕事を失ったり、様々な差別、苦渋をたくさん体験しています」と朴さん。
 その苦労を如実に物語っているのが李さんの妊娠、出産だ。独立して20年以上たっていたが、「ハンセン病患者は子を産むべからず」の悪習から、妊娠を隠し、更にお産の際も声を出せず、想像を絶する苦しみの中での出産だった。命がけで生んだ子どもが施設の事務員に見つかり、子どもはに預けることに。朴さんと李さんが出会うきっかけとなったその息子は、今も両親の存在を隠して生きている。

 撮影中に妊娠、出産し、2児の母でもある朴さんは「他人事と思えない衝撃的な話だった」という。「女性であり母である」共感が、心の距離を縮めたのだろう。「両親の存在を隠して生きなければならない差別の現実を伝えなければならないと強く感じた」と言う。

 現在、夫と2人暮らしの李さんは、敬虔なカトリック信徒でもある。毎朝5時に起き、祈祷から一日が始まる。家の中には李さんが大切にしている幼い頃の息子さんの写真とともに、十字架が飾られていた。映画の中で「教会で150人分の料理をふるまったこともある」と李さんが語るように、ソロクトには教会もあり、8割がキリスト教信徒だ。
 映画では、05年の「ソロクト・楽生院訴訟」の様子も描かれている。原告の一人である李さんも来日し、証言に立った。結果は敗訴。原告団の多くが高齢者ということもあり、裁判後、既に20人近くが亡くなったが、今も訴訟は終わっていない。撮影当初、裁判の予定はなかったが、「国を超えて共にできることがあると確信し、裁判に関する出来事も撮影することにした」と語る。韓国の映画祭などで上映された同映画。朴さん同様、ハンセン病患者の歴史を知らなかった人たちも多く、「なぜ学校では教えてくれないのか」と語った中学生の感想が印象深いという。
 日本での上映は、「裁判で共に闘ってくれた日本人に見てほしい。また、同じ苦しみを歩んできた日本の患者や家族やこの事実をまだ知らない日本人に伝えたい」との思いから自主的に行ったものだ。今後の上映について今のところ未定だが、「もっと多くの日本人に見てほしい。上映機会を積極的につくっていきたい」と最後に語った。