家族問題への取り組み急務 いのちの電話相談員不足

今年2月に逝去した齋藤友紀雄さん(訃報記事参照)が尽力した「いのちの電話」。日本社会は、孤独・孤立化も進み、人々の深刻な悩みは絶えない。その「声」を聴く相談員の減少という課題もある。齋藤さんとも長年働き、「東京いのちの電話」を担う末松渉さん(社会法人 いのちの電話理事長)らに聞いた。【高橋良知】
「愛の具体的実践と知って」末松理事長

齋藤さんが事務局長時代、末松さんは、ディレクターとして働きを支えた。「齋藤さんは、相談員を大事にしていた。深夜のシフト明けの相談員にコーヒーを出して、語り合い、とてもうれしそうだった。仲間を支えるため、外部の仕事も積極的に引き受け、国内外と交流していた」と振り返る。「今後も電話相談は、良い聴き手、というだけでなく、思いやる心を大事にしていきたい。今必要に感じるのは自死遺族や引きこもり家族など、家族の悩みに直接働きかけることです」
同事務局の郡山直さんは、いのちの電話の現状について、「相談者も相談員も高齢化している。最も多い40~50代の悩みは、子どもの引きこもり、親の認知症、自分の仕事のことなど、家族問題が多い」と話す。
4月からは、全国のいのちの電話と協力して、インターネット相談を一本化する。こちらは若者からの相談も多いが年齢層は上がっている。今後の幅広い世代の受け皿になると思われる。
相談員の魅力について、末松さんと郡山さんはこう話す。「相談員は共通して『得難い仲間を得た。活動を通して人生が豊かになった』と言う。また、相談回数を重ねると、自分自身の家族との関係も変わってくるようです」
今年度も相談員を募集している(募集期間4月30日まで。詳細はURLindt.jp)。合格者は10月から1年間毎週土曜午後に研修を受ける。郡山さんは「研修の特徴は、まず自分自身のことから話すということ。そのことで信頼関係が密になる。相談員になってからも月一回の研修でサポートして、至らなかったという思いも共有し、先輩のアドバイスを受け、自分を客観的に見つめる機会になる。専門家との面談もでき、サポートする」と言う。
末松さんは、クリスチャンに向けて、いのちの電話の働きの意義をこう語った。「神の愛を、言葉だけで伝えるのではなく、具体的に社会の必要に応え、実践していく働き。いのちの電話には、たくさんの必要がある。実際のかかわりの中で、クリスチャンの働きとしての意味も思い出していただければ幸いです」
(2025年04月06日号 02面掲載記事)