ヘッドライン
[CSD]2009年7月12日号《ヘッドライン》
[CSD]2009年7月12日号《ヘッドライン》= 1面 ニュース=
◎日本宣教学界:21世紀での世界宣教の優先課題とは——ダグ・バーゼル氏6つの視点から講演
★米国:南部バプテスト連盟、教勢減退への対応が焦点に
★Photo:「弾けると楽しいね」——教会でバイオリン教える木下ラファエルさん
= 2 面 ニュース=
★廃材使いみんなで建てたベツレヘム祈祷院——単立・カナン・キリスト教会
★「日本の温暖化被害500億円支援など無意味」——太平洋教会協議会テヴィ総幹事が発言
◎日本宣教の一粒の麦となった李恩植さんを記念し——福岡CCC福音センターに憩いの「サランバン」開設
★霊感商法で統一協会員の容疑者社長ら逮捕起訴
★<落ち穂>フルベッキ夫妻の悲嘆
= 3 面 =
★講演から:日本教会史の検証 上中 栄氏<前編>ホーリネス史と日本宣教——公権力と教会
★バチカン:パウロの遺骨発見?
★検証:「ピースリボン」裁判から何を学ぶか——被告視聴の力も及ばない権力
★<オピニオン>危機の時代に「和解の福音」を実現する 記・岡山 英雄
= 4 面 ビジネスパーソン=
★「PHPの牧師になってくれ」——岩井 虔さん[上](PHP総合研究所参与)
★<未来を拓くNPO>[5]主体的価値観と人間の絆回復促す 記・島田 恒
= 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『夕べになっても光がある』宍戸好子著(日本キリスト教団出版局、1,470円税込)
★CD:「Opposite Way」LEELAND(ライフミュージック、2,079円税込)
★BOOK:『人生は「一緒」の方がいい!』リック・ウォレン著(パーパス・ドリブン・ジャパン、1,680円税込)
★REVIEW:『福音のためのインサイダー』J・ピーターセン、M・シェイミィ著(国際ナビゲーター、1,790円税込)評・福田 充男
= 6・7 面 横浜特集 日本宣教150年 その原点を抱く街=
★横浜指路教会——へボンの志受け継ぎ創立へ
★横浜海岸教会——日本最初のプロテスタント教会
★横浜各所に残る宣教師らの軌跡
★捜真女学校——神からの「宝物」を引き出す
★横浜英和学院——神を畏れ、人に仕える人間の育成
★ファリス女学院——「他人のため」生きる女性の育成目指す
★横浜共立学園——「無条件の愛」教育の根底に
= 8・9 面 特集/創造論研究会 =
☆環境破壊は創造主が原因?——創造主無視の罪こそ環境破壊の根源
= 10 面 教会学校 =
★<教会学校の実情を探る>商店街の子どもスポット——改革派・横浜中央教会
★<CSもうひと味>子ども教理問答——1問1答で聖書を理解
= 11 面 クリスチャンライフ =
★伝えるのは「神の愛」——Donnie Mclurkin
★「神の存在」にボーダーなし——LEELAND
★<痛みに中に生きる>[22]子育て編 「母子加算廃止」に揺れるシングル家庭
= 12 面 教会 =
◎賛美の合奏で異文化を一つに——JBBF・めぐみバプテスト・テンプル
◎日本宣教学界:21世紀での世界宣教の優先課題とは−−ダグ・バーゼル氏6つの視点から講演=09071
来年2010年は、20世紀の世界宣教とエキュメニカル(世界教会一致)運動に多大な影響を与えた英国エジンバラでの世界宣教会議から100年。同時に来年10月には、20世紀後半の世界宣教とホーリスティック(包括的)な福音理解に大きな影響を与えたローザンヌ運動が南アフリカ・ケープタウンで第3回ローザンヌ世界宣教会議を開く。その議長でローザンヌ世界宣教委員会総裁のダグ・バーザル氏が6月27日、東京の日本聖書神学校であった日本宣教学会(東條隆進理事長)の第4回全国研究会で「21世紀における世界宣教の優先課題」について基調講演し、エジンバラ会議のインパクトにも言及した。74年「ローザンヌ誓約」はエジンバラ会議を、エキュメニカル派と福音派の対極化が生じた「分岐点」と捉えた。しかしバーザル氏は、「エジンバラ会議の衝撃的な影響」という表現で、「福音理解を豊かにされた」とローザンヌ会議に対するその感化を重視。来年の第3回ローザンヌ会議では「1910年(エジンバラ)、74年(ローザンヌ)、89年(マニラ=第2回ローザンヌ)各会議の偏り、欠けを補いたい」との考えを表した。
特に、その後のローザンヌ運動の失速を招いた89年マニラ会議については「神学の点で十分な取り扱いが行われなかった。第3ミレニアムの到来という節目を前に、20世紀末までにいくつかの宣教のタスクを終えようとして浮き足立ってしまった。絵に描いたトラだった」と厳しく評価。「21年たって行われる今度の会議は、全く新しい状況に置かれていると認識している」と述べた。
第3回ローザンヌ世界宣教会議のテーマは、「神はキリストにあって世と和解しておられる」。宣教に関する高い見識で話題の書 The Mission of God:Unlocking the Bible's Grand Narativeの著者で神学者のクリストファー・ライト氏を神学委員長に、過去数年にわたり討議を重ね、世界が抱える宣教課題を次の6点に絞ったという。
・真理とは何かを捉え直す。福音派は聖書という共通の権威の下にあるが、21世紀はこの権威に挑戦が投げかけられている。特に同時多発テロ以降、世界の知識層は「真理」を主張する宗教を問題視する。ポストモダンの時代に「絶対的真理」が攻撃されている。
・痛み・苦しみについて神学を捉え直す。福音が急速に進展していると見られる中に、権力や財を手に入れて今この世で最高の人生を楽しむことができると教える異端的な「繁栄の神学」がはびこっている。それは世界に存在する痛み・苦しみに対する感覚を麻痺させてしまう危険がある。
・教会のあり方について預言者的・建設的な批判をする。今日、宣教を困難にしている状況の一つが教会にあることは確か。100年前には取るに足らない存在だった福音派は無視できないまでになったが、高慢や分裂・分派、不健全な支配的体質が入り込んでいる。
・グローバルな世界の均衡。この100年で世界のリーダシップや立場が西欧から非西欧へ、北から南へ移ったにもかかわらず、富や教育などはそれにふさわしい均衡になっていない。
・宗教における原理主義的傾向。1910年の時点では、キリスト教宣教が進むにつれて他宗教は衰退していくだろうと楽観的に考えていた。74年当時には世俗化が問題だった。しかし現在は、ナショナリスティックな原理主義運動がそこかしこに起こり、それがグローバル社会の脅威につながっている。その中で、どのように「主」を証ししていくのか。
・将来の課題の優先順位を見極める。
日本宣教学会では、昨年はNCC(エキュメニカル)ラインの講師が基調講演をし、今年は福音派から、来年はカトリックから主講師を立てる。前年の研究発表や書評、世界の宣教ニュースなどを収録した『宣教学ジャーナル』を発行、このたび第3号が出された。会員に配られるほか2千円(税別)で頒布している。問い合わせは事務局=〒141- 8642東京都品川区東五反田3ノ16ノ21、清泉女子大学、塩谷研究室内、Tel&Fax.03・5421・3245、Email j-shioya@seisen-u.ac.jp
◎日本宣教の一粒の麦となった李恩植さんを記念し−−福岡CCC福音センターに憩いの「サランバン」開設=
福岡市博多区の福岡C・C・C福音センター(具元俊代表)1階に、韓国式マッサージなどを提供する憩いのスペース「恩植サランバン(居間)」がオープンした。5月5日にオープン礼拝が行われ、韓国や東京、大阪から約100人が参加して喜びを共にした。「恩植サランバン」は98年夏、日本短期宣教活動中に事故死した李恩植さんを記念するものだ。恩植さんは、韓国キャンパス・クルセード(K・C・C・C)が進めていたニューライフ宣教の働きの中で殉教した。彼の遺した信仰と日本への愛が、この場所を訪れる人々のために生かされる。
礼拝ではK・C・C・C代表の朴盛敏牧師がメッセージ。恩植さんの両親で韓国コリョン第一教会の長老イ・クムサム夫妻や同教会のイム・ジョンヒョン牧師、ニューライフ宣教の日本側の働きを進めてきた神田宏大牧師(単立・野崎キリスト教会)、鈴木義明牧師(上田福音自由教会)らが恩植さんを偲び、宣教の思いを新たにした。
鈴木牧師は祝辞の中で「恩植兄弟の召天は日本宣教の一粒の麦であって、その大きな犠牲を無駄にしてはならない。さらなる宣教の前進に生かさなければならない」と、語った。
神田牧師は「恩植サランバンは恩植さんとニューライフの働きの記念となる。ニューライフは普通のクリスチャンが献身的に働いてきたものであり、伝道は信徒がするものであるということを定着させたと思う」と、ニューライフ宣教の意義に触れた。「血が流され、涙が流されたこの働きの中で、韓国との教会協力が定着した。恩植さんはその先兵としての役割を果たしたと思います」
センターの「恩植サランバン」担当者である林美景幹事は「ここでは毎日、日本人の足を洗う洗足式が行われます」と話している。宣教師による施術は無料。
▽福岡福音センター=〒816-0051福岡市博多区青木1ノ19ノ1ノ107 、Tel&Fax.092・612・6993、Email koo9090@yahoo.com
◎賛美の合奏で異文化を一つに−−JBBF・めぐみバプテスト・テンプル=0907121201
群馬県邑楽郡大泉町。日系外国人比率が日本一高いといわれるこの町の教会から、夕方になるとバイオリンの音色が聞こえてくる。JBBF・めぐみバプテスト・テンプル(澤愛作牧師)を会場に同教会の教会員の木下ラファエルさんが、子どもたちにバイオリンを教えているのだ。きっかけは昨年4月、群馬ジュニアオーケストラのインターナショナル部門でラファエルさんがバイオリン指導を始めたことに遡る。それからまもなく、5月頃から不況による影響で習えない子が続出した。不況のあおりは真っ先に日系人労働者に押し寄せた。「辛いときでも音楽は人の心を慰めてくれる。子どもたちにはぜひとも音楽を続けて欲しい」
それは、ラファエルさん自身の経験でもある。中学時代、共にバイオリンを習っていた友人が、音楽から離れてしまった時期を境に非行に走り、今も刑務所に収容されている。「ポルトガル語を話す両親の元で育ち、日本の公立小学校に入っても日本語がうまく話せず、勉強についていけなくなります。なので日本人の友だちもできにくいです。高校進学も難しくて、どんどんと落ちこぼれになってしまう」。そんな日系人の現状は、小学時代、初めてラファエルさんが日本に来た15年前とほとんど変わっていない。
「どこかただで場所を貸してくれるところないかなあ」。ある日、澤牧師にラファエルさんがぼやいた。子どもたちに音楽を続けてもらうために、バイオリンをボランティアで教えられたらと考えていたのだ。「じゃあ、礼拝堂使えば?」。澤牧師のひと言で決まった。次の問題は貸し出す楽器だった。「成長に合わせてバイオリンは8段階くらい楽器の大きさが変わります。それらを揃えるのにお金がかかるので、どうしようかなと」
知り合いから譲ってもらって少し揃ったが、まだ足りない。「そんなとき、たまたま朝日新聞や地元新聞、日系人ならみんなが見るテレビの取材を相次いで受けて、見ず知らずの人が『眠ってる楽器を使ってください』とプレゼントしてくれました」
バイオリンだけでなくビオラ、チェロ、コントラバスも寄贈された。「弦楽器が揃い、弦楽四重奏も夢ではなくなりました」。加えて、ヨーヨー・マなど世界的アーティストの楽器の調律師もボランティアで調律をしてくれることに。
昨年11月から始めた教室には、今30人の子どもが通う。日本人、日系ブラジル人、ペルー人と様々いるが、教室は言葉が違っても「音楽で心が合わさる」ことを子どもたちは五感で知っている。練習についていけない子には、個人指導もしているが、1日12時間労働をしているラファエルさんにとって体力的に厳しいことも確かだ。「でも、できるようになると子どもはすごく喜びますから」
「一流のバイオリニストに育てる」ことよりも、「身近なお兄ちゃん、遊び相手」になっていることも、30人の子どもたちに元気を与えている。
教会が教室になってから、礼拝にも変化が生まれた。「今までは、ギターとドラムの賛美、それにピアノの奏楽でしたが、今ではバイオリンが献奏する時間があり、礼拝の賛美がぐっと豊かになりました」と澤牧師。
礼拝出席者のほとんどは日系外国人だ。「僕はポルトガル語が話せないので、日本語で説教し、ラファエルのいとこが通訳してくれます。気持ちを通わせる難しさ、文化の違いも感じています。だからこそ、音楽で神を賛美する礼拝で、一体感を皆でもてることは感謝ですし、貴重ですね」
今日も、教会から温かなバイオリンのハーモニーが流れている。
〒370- 0517群馬県邑楽郡大泉町冨3ノ13ノ1 Tel.0276・62・5446。