[CSD]2009年8月23日号《ヘッドライン》

[CSD]2009年8月23日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎総選挙前「国のために祈る夕べ」——病める高齢社会に焦点0908230101
★東海道53次を歩いて伝道——Walk With Jesus 8月3日にスタート

 = 2 面 ニュース=
◎8・6広島:平和への願い新たに——心の傷は今なお癒されず0908230201
★同盟基督平和祈祷会:抵抗権は「神の秩序維持」と渡辺信夫氏
★JECA平和祈祷会:教会は「国家の良心」に——政府に反対意見を言う自由必要
★<落ち穂>韓国教会の世界宣教ヴィジョン

 = 3 面 =
★もう限界だった、と知った——牧師の本音を出せる「牧会塾」後期へ
★米国聖公会:同性愛主教の叙階解禁——世界の聖公会に衝撃
★<オピニオン>衆議院選を控えてキリスト者の政治参加を考える 記・朝岡 勝

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★受変電設備機器リース業展開——菅原 進さん[上](菅原電機産業[株]代表取締役社長)
★<未来を拓くNPO>[7]社会から支持を得てきたキリスト教系NPO 記・島田 恒

 = 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★CD:「あなたがいてくださるから」中野博誉ピアノソロ(ゴスペル・ライト・ストア取り扱い、2,100円税込)
★BOOK:『マザーテレサの冒険』アン・パオロ・チェゼラーニ文、ピエロ・ベントゥーラ絵(女子パウロ会、1,575円税込)
★BOOK:『信じる力』右近勝吉著(いのちのことば社、1,000円税込)
★REVIEW:『有事法制下の靖国神社』西川重則著(梨の木舎、2,100円税込)評・高倉謙次

 = 6・7 面 特集/ビジネスパーソン伝道 =
★ビジョン・パッション・ミッションで開拓——カナン・ミッションセンター始動
★教会で始まった異業種交流——広島「積極人間のつどい」
★書類と共に伝道文書携行——会話でのチャンスに証しと手渡し
★ビジネスパーソン向け伝道ツール

 = 8・9 面 医療特集 =
★臓器移植法改正を巡って<現状と課題>——不十分な議論 山積する課題
★私はこう考える:脳死は人の死?——回復例あり 脳死は未解明
★移植経験者の立場から:臓器移植は命のバトンタッチ
★私はこう考える:友人が移植手術——命受け隣人のため生かす
★私はこう考える:当人の意思 尊重すべき——身体の所有権は神に
★私はこう考える:子どもの脳死判定——誰が一番弱い立場か

 = 10 面 教会学校 =
★<教会学校の実情を探る>文庫活動で子どもの心耕す——日本キリスト教会・大阪姫松教会
★<CSもうひと味>「教会」は得たいが知れない?

 = 11 面 クリスチャンライフ =
★音楽伝道が日本宣教の文化に——ユーオディアが社団法人へ
◎<痛みに中に生きる>[27]若者編 些細なことでも深く傷つきひきこもりに0908231102

 = 12 面 教会 =
★台湾人が建てた日本語教会——台湾基督長老教会・国際日本語教会

◎総選挙前「国のために祈る夕べ」−−病める高齢社会に焦点=0908230101

 8月15日を覚えて祖国のために祈ろうと、01年から毎夏開催されている「国のために祈る夕べ」(全日本宣教祈祷運動主催)が8月11日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターであった。第9回を迎えた今年は、「政権選択選挙」と言われる8月30日の衆議院総選挙を目前に控え、「御心が地になるように」(マタイ6・10)をテーマに、「大きな曲がり角に直面している政治が、神の御心にかなった方向に転換するように」などの祈祷課題を筆頭に、10項目を挙げて祈った。

 救世軍ケアハウスいずみ主任相談員の村上真氏が、高齢者福祉の「現場からの声」を報告、日本キングス・ガーデン連合会長で先頃、著書『キリスト教倫理』が出版された泉田昭氏がメッセージをした。
 村上氏は、65歳以上人口が22%で近く4人に1人になるという日本の実情を「高齢化社会は半端じゃない勢いで進んでいる。世界のどこも経験したことがない状態」と危機感をあらわにした。「療養型病棟の廃止が決まっているが、その受け皿になる特別養護老人ホームの数は、増え続ける介護ニーズに追いついていない。福祉を担う人材は慢性的に不足し、職員が定着しない。若者の福祉離れで、福祉系の学校では定員割れが起きている」。そうした中でキリスト教高齢者施設は、一般の施設が避ける死の問題に対応するターミナルケアや葬儀にも取り組んでいることを紹介し、「私たちの最大の使命は、長い地上の人生をどのように締めくくるかお手伝いすること。実情を覚えて祈ってほしい」と呼びかけた。
 泉田氏は・テモテ2・1~3からメッセージ。
中学生の頃に広島で原爆を目撃し、敗戦とそれに伴う価値観の激変にショックを受け、悩んだ中でクリスチャンになった自身の経験を振り返り、「8月というと、国というものが何であるのか、本当に重い存在であると思わされている」と述べた。パウロが「穏やかで静かな生活を過ごすため」に、すべての人のため、特にすべての指導的な地位にある人のために、願いと祈りと執り成しと感謝をささげるように求めていることを指摘。高齢者・精神障害者福祉に携わってきた経験から、「今、日本は非常に不安で複雑な時代。少子高齢化や心の病の問題など、あらゆる分野において、日本という国は今まで経験したことのない深刻な問題に直面している。まさに病んでいる時代にあって、祈って全力を尽くしていく必要がある」と、身近な課題だけでなく国家と国の指導者のために祈るべきことを訴えた。
 三森春生実行委員長の指導で、政治、外交、司法、行政、経済、教育、医療・福祉、マスコミの8項目について祈祷課題を挙げた。また、それらあらゆる分野に置かれているクリスチャンが地の塩・世の光の役割を果たすことができるように、キリスト教会が日本という国に存在する意義を問い直し、「御心が地になるように」信徒を証し人としてそれぞれの社会に力強く派遣することができるように、と祈りを合わせた。

◎8・6広島:平和への願い新たに−−心の傷は今なお癒されず=0908230201

 被爆64年目を迎えた8月6日、広島では今年も、キリスト者による平和の集いが開かれた。今年は米国のオバマ大統領が4月、チェコ共和国の首都プラハで「核兵器を使った唯一の国として、核兵器のない世界を実現する道義的責任がある」と明言したことを受け、核兵器廃絶への期待が高まる中での開催となった。

 中区上幟町の日基教団・広島流川教会では、「8・6キリスト者平和の祈り」(日本キリスト教団広島西分区、カトリック広島司教区、広島市キリスト教会連盟主催)が開かれ、金信煥氏(在日大韓・広島教会名誉牧師)が「最も小さい者は一人でも」と題して語った。
 金氏は「イエス・キリストの愛は、いと小さき者一人ひとりを具体的に愛する愛。この愛を受けた者は一様に心に感謝と喜びが満ちあふれ、希望の光をもつようになる」とし、「小さき者」を在韓被爆者と重ねた。
 在韓被爆者とは、広島、長崎で被爆した韓国朝鮮人のことで、約5万人のうち3万人が死亡。生き残った2万人のうち5千人が日本に残り、1万5千人が祖国に戻った。みな後遺症と戦っているが外国人には原爆手帳が交付されない、国外にいる被爆者には原爆医療法が適用されないなどの理由で治療が受けられず、病苦、生活苦に加え原爆後障害に対する日韓両政府の無理解、差別に苦しんできた人たちだ。
 そんな在韓被爆者に身をもって愛を示した人物として、ケイト・K・クーパー宣教師、河村虎太郎医師を挙げる。「クーパー先生は、民族差別にさらされ心傷ついた在韓被爆者を捜しては『アンニョンハセヨ、イエス様を信じましょう』と言って回っていた。広島教会にはクーパー先生の愛にふれ、導かれた在韓被爆者が20人ほどいた。その一人、宋年順さんは『戦争は人殺し、罪。原爆でひどい目に遭うのは私たちで終わりにしてほしい』と語っていた」
 「河村先生は71年、謝罪治療医師団団長として韓国各地を訪れ、在韓被爆者を診て回った。同じ原爆被害者なのに、日本と韓国では治療に雲泥の差があることが分かり、医療に恵まれない重症の被爆者を日本に招き、無料で治療を行った。さらに河村先生の呼びかけで在韓被爆者渡日治療広島委員会が発足。広島、長崎でも在韓被爆者支援が広がり、外国人被爆者にも原爆手帳が交付されるよう政府に働きかけた」
 金氏は「被爆者援護は、反核平和運動の重要な柱」という河村医師の言葉を引用し、「私たちはイエスにならい、体と共に心を病み、常にガンの不安を抱えている被爆者と共に生きる者になりたい」と結んだ。
 また同集会では、前航空幕僚長の田母神俊雄氏が同日、広島市内で「ヒロシマの平和を疑う」と題して講演することに対し、司会者が遺憾の意を表した。
    ◇ 
 広島市中区の平和記念公園内にある原爆供養塔前では、早朝にキリスト教、仏教、神道の各宗教合同による「原爆死没者慰霊行事」(広島戦災供養会主催)が、夜には「キリスト者平和の集い」(広島市キリスト教会連盟主催)が開かれた。
 「キリスト者平和の集い」では、木村弘美さん(日基教団・広島牛田教会伝道師)が被爆体験を証しした。7歳の時、爆心地から2キロの所で被爆。建物疎開の勤労奉仕に出かけていた父と妹は1キロの所で被爆した。「突然、ピカッと光り、全身が熱気に包まれ、ドーンという地響きが起こった。その時、女性の『助けてー』と叫ぶ声が聞こえた。私は防空壕目指して駆け出した」
 翌日、父と妹のいる所へ。全身火傷を負った父と妹が部屋の片隅に横たわっていた。駆け寄ろうとしたが、ひどい悪臭で中に入れなかった。「父は黙ったまま目だけクリクリと動かしていた」という。その後、父と妹は1週間のうちに相次いで死亡。家族を失い、孤児となった。
 この体験は64年たった今も大きな心の傷として残っていると言う。「被爆の体験は、何かの折りに忌まわしい体験としてフラッシュバックしてくる。特に、父と妹が横たわっていた部屋の中の悪臭が残っている。またあの時、すぐに父の側に駆け寄って『お父さん、痛い?』と言えなかったのが悔やまれてならない」
 「私は60年間、殻に閉じこもっていた。被爆体験など怖くて話す勇気がなかった」と木村さん。同じように、精神的外傷という心の傷、自分だけ生き残ったという罪意識を抱え、癒されることなく生きてきた被爆者が多いと語る。「だからこそ、被爆者にも心のケアが必要。このような惨状を忘れずに語り続けることによって、今後、絶対に核爆弾を使ってはならないという声を挙げていってほしい」と訴えた。

◎<痛みに中に生きる>[27]若者編 些細なことでも深く傷つきひきこもりに=0908231102

 マレーシア出身のロザリン・ヨンさんは、日本のひきこもりの研究者だ。きっかけは、フルゴスペル教団の「Heart 4Japan Ministry」で日本のために祈り、働くネットワークに関わったことから。3年前「日本のために祈るには、日本の問題を知らなくては」と示され、若者の抱える課題とは何かを調べているうちに行き当たったのが「ひきこもり」だったという。
 「最初は情報が少なく、調べるのが大変でした。香港で研究を進めていました」。ネット自殺やひきこもりの長期化の背景には複雑な問題があると感じたという。大学院では「公衆衛生学」の観点から研究を続けていくうちに、中国や韓国、オーストリアなどにもひきこもりがいるとわかった。
 ロザリンさんは、「グランデッドセオリー」という手法を使って調査を重ねてきた。インタビューや観察などを行い、得られた結果をまず文章化し、特徴的な単語などをコード化した。データを分類し分析する。最終目的は、社会現象を説明するための実証分析で役立つような、明確な理論を作ることだ。また、ひきこもりのイメージやカテゴリーの固定化を回避できるという。
 これまでネットや文献を通しての研究だったが、この春、日本に初来日し、ひきこもりの人とひざを交えて話した。「ある女性は、小学生の時に、友だちに『変な顔』と言われて学校に行けなくなってしまった。それ以来、10年以上ひきこもっていました。また、43歳のひきこもりの女性は、一流大学に進学し、実家を離れて生活していましたが、それまで住み慣れた土地のペースでは普通なのに『やることが遅い、のろい』と周囲の人に言われて自信をなくして以来、ひきこもりを続けています。いじめられてリストカットしている人は、『リスカは痛くない。投げつけられた言葉が今も傷になっている』と言っていました」

 ロザリンさんは、何年も家の外に出られない人とネットなどを通して知り合い、今回の訪問に至った。「多くの場合、いじめや何気ない言葉に傷ついてひきこもってしまいますが、それが解決すればひきこもりが解決するわけではない。複雑な問題。自分の価値や生きている『よさ』を実感できずに、周囲の人の言葉や判断に流されてしまっている」と分析する。一方で、「ひきこもりの定義が広くなりすぎて、深刻なケースも気分の落ち込みも一様にひきこもりと言うことは危険」と指摘する。しかし、「いつひきこもりになるかわからない若者が、日本だけなく世界中に多くいる時代であることは事実」とも。だからこそ、「神様が無条件に愛してくださっていることを伝える必要が緊急にあると思う。祈り、神様が導いてくださること、自分の存在の大切さを知って」と語る。
 ひきこもりの人を助けることは急務で、ミニストリーの大切な役割だと感じているという。「ひきこもると教会に行けなくなってしまう人がいることも知ってショックでした。教会がその人その人の心の状態を大切に扱い、本人や家族と共に歩み、寄り添う必要がある。時間をかけて対話して欲しいです」