[CSD]2010年10月10日号《ヘッドライン》

[CSD]2010年10月10日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎「みんなで生きる」世界目指し――JOCS創立50周年
★81歳足取り軽く峠越え――今年は「Walk with Jeses 中山峠」

 = 2 面 ニュース=
★伝道スピリット継承――日本福音自由教会60周年
★テゼ共同体70周年 広く評価
★郷里沖縄で「音楽と交流の夕べ」――普天間の虚脱感から戦ない「神の国」を
★国際生物多様性年で教会も「警告の鐘」
★<落ち穂>福音を証する阪神マートン選手

 = 3 面 =
★<竜馬をめぐる人々>[25]勝海舟の章:5——本邦初の賛美歌翻訳 記・守部善雅
★「自活伝道者の系譜」で講演と討論——自給・自活伝道連絡協議会
★<オピニオン>地域に根ざし、地域を越える 記・山口 陽一

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★荘 明義さん[下]([株]大龍 特別顧問)——食事を通じて神様の話したい 記・清水茂則
★<働く人の境界線>[12]終わらせるに時あり(上) 記・中村佐知

 = 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★TRACT:「聖書ってこんな本」(全国家庭文書伝道協会、105円税込)
★CD:「Hula Grace」ハワイアンでゴスペルを(ライフ・クリエイション、2,310円税込)
★BOOK:『ここが知りたいキリスト教』関川泰寛著(教文館、1,890円税込)
★REVIEW:『おセイさんの泣いて笑って、また、あした』俣木聖子著(やすらぎの介護シャローム、1,050円税込)評・大谷美和子

 = 6・7 面 特集 =
★<新会堂建築シリーズ 144>光と風を生かした教会堂――胡屋バプテスト教会

 = 8 面 全面広告 =
☆お茶の水聖書学院(OBI)創立20周年——新しい時代の信徒奉仕者・教師・伝道者を育成するOBI
ホームページ http://www.obi-net.com/

 = 9 面 特集 =
◎<教会学校の実情を探る>信徒、牧師の子に目を向ける――日本ナザレン教団青葉台教会
★<CSもうひと味>クリスチャン限定の会――友達同士が誘い合う

 = 10 面 関西だより =
★「イエスは私の力、希望、道標」――マット・マートン選手力強く証し
★牧師夫人の明るい奮闘記――坂直子さん『空がほほ笑むから』出版感謝会
★河内キリシタンを探る――近放伝

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎Watotoチルドレンズ・クワイア「希望のコンサート」2010開催――元気な賛美の裏に壮絶経験
★Movies「ブロンド少女は過激に美しく」――歯車はいつから狂っていたのか

 = 12 面 ひと =
★小林廣美さん(ワトト新宿コンサート実行委員長)——「ねっ、いいでしょ!」が皆に伝染



◎「みんなで生きる」世界目指し――JOCS創立50周年=1010100101

 「貧しく、小さくされた者と共に生きる」理念のもと、活動を続ける日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)=小島莊明会長=が、開始から50年の節目を迎え、これまでの活動を神様と支援者に感謝する礼拝を9月23日に東京・四ッ谷の幼きイエス会・ニコラバレ修道院と大阪・梅田の大阪聖パウロ教会で開催、計約300人が出席した。

 JOCSの組織は1960年に誕生したが、その萌芽はアジア・太平洋戦中の38年に遡る。日本軍侵攻により、難民となった中国人救済のために牧師の呼びかけで9人の医師や看護師らが医療奉仕活動を行い、後の49年に日本キリスト者医科連盟(JCMA)が設立された。58年に香港で開かれた東アジアキリスト者医療従事者会議にJCMA代表が出席したが、そこで言われたのは、「医師養成のトレーニングをしてほしい」という要請だった。アジア諸国の人々を傷つけた日本であるにもかかわらず、再び関係を築こうとしてくれる姿勢、要請に、「神の前でひざまずく気持ちと共に、贖罪としてぜひ協力させていただきたい」との思いから、JOCSが設立された。以来、のべ70人あまりの医療保健ワーカーを、インドネシア、ネパール、台湾、タイ、カンボジア、バングラデシュ、パキスタンなどアジア各国に派遣してきた。また、近年ではウガンダやタンザニアなどアフリカ諸国へも派遣している。
 「JOCSが派遣するのは人だけです。お金や医療機材、設備を送らないというポリシーで50年続けてきました。また、要請があった国へワーカーを派遣しますが、互いに理解し合い、JOCSのそのような理念をわかっていただくために現地の教会、受け入れ団体と何度も話し合い、祈り合って派遣が決まります」と小島氏は語る。また、現地の医師や看護師など医療保健従事者の育成が働きの根幹にある。なぜなら「医療の根本問題は人の問題」だからだ。「解決の手がかりを共に探り求めるというのが私たちのスタンスです」。そして現在、7人のワーカーが派遣されている。
 また、今後はさらに広がりをもった働きを進めていきたいというビジョンも抱く。「要請された病院や施設に赴くだけでなく、医療保健分野でもっと地域の人々に仕えていく積極的な関係を築きたいと考えています」。そのために、「これまで医療保健という点の働きになりがちだったものを、その地域の抱える飢餓や差別、貧困問題の解決のために働くNGOやJOCS奨学生たちとの協働の中で面の働きにしていきたい」と語る。
 今年からバングラデシュでは現地のNGOや小学校とも協力し、保健教育を学校を基点に進める「プロジェクトりとる」の働きも始まった。「子どもは未来の世界を担う希望です。まず教師たちに保健衛生の基礎をわかっていただくことが大切で、子どもたちに親しみやすい教科書作りをするとか、子どもたちの知恵を生かして描かれた絵やデモンストレーションを通して、五感で覚えるようプログラムを工夫すると、子どもたちからその家族にメッセージが伝わるようにもなります」
 「女性、こどもや貧困、差別の中で小さくされた人々と共に生きること、そのような人々と共にいてくださるイエス様に仕え、キリストの愛が私たちを通して実現するように願う姿勢は今後も変わらないですが、違いや他のNGOの働きの違いを超えて幅広く協力していきたいと願っています」
 51年目に向かってJOCSの歩みが始まっている。

◎<教会学校の実情を探る>信徒、牧師の子に目を向ける――日本ナザレン教団青葉台教会=10101009

 「教会に子どもが来てもしばらくすると離れてしまう」。そのような悩みを抱える教会が多くある。ナザレン・青葉台教会(江上環牧師)でも「教会学校(CS)に子どもが来ても中学に入ると離れてしまう。青年会は休会状態」が続いていた。 10年前、江上牧師が同教会に着任し、この状態を何とか打破しようと提案したのは、「クリスチャン家庭の子どもを救いに導くことに集中する」ことだった。「当時はクリスチャン家庭の子どももそうでない子も一括りでCSをしていました。信徒の子はどうしても後回しになりがちで、彼らの信仰のケアができていないことを課題に感じていた」からだ。また、「後回しにされた子どもたちが教会にいい思い出がないまま中学へあがり、部活などを理由に教会から離れていく。これまでの牧会経験からそのようなケースをたくさん見てきたので、子どもたちが6年生になるまでに信仰告白に至るようにとの思いもありました」
 「子どもは皆平等に扱うべき」、「まだ小学生で受洗は早いのでは?」という親の声もあったが「クリスチャン家庭の子どもは生まれる前から祈られ、家でも聖書を開いたり、神様の話を聞いて育てられている。そうでない子どもとの違いは大きい」こと、「教会と親が皆で彼らの信仰を育てていくことがもっと大切」だと何度も話し合って理解してもらった。
 同時に、子を持つ親への伝道、悩みを語り合う場として、2、3歳の親の「子育てママの会」、小学生の親の「キッズママの会」、中高生の親の「ティーンエイジを持つ親の会」をそれぞれ月に1~2回のペースで始めた。「教会員に誘われてきたことをきっかけに信仰をもったお母さんもいます」。子どもと母親が教会につながることで父親も教会に通い始め、家族で教会につながったケースも多い。

 この10年で35人が受洗に至った。部活動が忙しい中高生も、9割が教会から離れずにいる。そのための工夫の1つが、夏期キャンプでの一対一の面談だ。「クリスチャンでない子には福音を伝え、クリスチャンの子には信仰面での悩みなどを聞きます」。子どもたちは個人的に福音を語られる経験を通して洗礼を受けることや教会生活を守ることを自然と意識するようになるという。もう一つ、洗礼を受けた子どもたちだけが入れる「Jesus friendの会」では「同じ信仰をもつ仲間」として一緒にご飯を食べ、遊び、楽しい時間を共有する。「この会のために教会で予算をとり、時間をかけてとにかく一緒に過ごして彼らが教会に愛されている存在だと感じるようにかかわります」
 スタッフも教会学校教師たちが担い、一緒にトラクト配布やキャンプをして伝道すること、交わることの喜びを共に味わう。
 10年前になかった青年会は今細々と次世代からの参加を願い交わりを続けています。「種をまくことはできても、芽を出させ、育ててくださるのは神様です。しかし、CS教師や親たちの祈り、魂に関わる働きなくして救いはないと思います。子どもたちが集まっていることに安心するのでなく、救いに至るようにとの希望をもって子どもたちと日々関わることが必要」と語る。
 昨年から月に一度、ユース礼拝をスタートさせた。「いずれは毎週やりたいですし、ユースパスターも起こされるようにと祈っています」

◎Watotoチルドレンズ・クワイア「希望のコンサート」2010開催――元気な賛美の裏に壮絶経験=1

 「パキワース!」弾けるような歌声がホールいっぱいに響く。9月10日から10月1日までの日程で東海、関東、北陸、東北、北海道を回り、全国ツアーを行ったワトト・チルドレンズ・クワイアの歌声だ。ワトトとはスワヒリ語で「子どもたち」の意。今回、来日した6歳から14歳までの22人の子どもたちは「元気いっぱいの笑顔」で賛美を歌うが、それぞれ、笑顔の裏に想像を絶する苦難の道を通ってきた。


 「ワトト」は1992年にウガンダの首都カンパラ市にある、ワトトチャーチの主任牧師ゲアリー・スキナー牧師によって始まった。きっかけは捨てられた赤ちゃんを保護したことだ。アフリカには「子どもを育てるには村が必要」ということわざがあるという。
 親を失った大勢の子どもたちを愛情たっぷりの家庭の中で育てなさいと神様に語られ、救出された子どもたちが安心して生活し、学べる共同体「ワトト子ども村」を設立した。ここには住居、学校も病院も図書館も設備されている。
 ワトト村に迎えられる子どもは、エイズや内戦で親を失った孤児や捨て子、虐待など精神的にも身体的にも深い傷を負っている。村に来る前は学校に行くことができなかった子ばかりで、ワトト村に入っても、心の傷が深いため十分なメンタルケアを必要とするケースも多いという。
 村では一軒の家にお母さんが1人と子ども8人が暮らし、2歳児から自立するまでここで生活する。その家族は一生の家族となる。男女も年齢も様々。ワトトのお母さんと、兄弟姉妹という、新しい家族と共に暮らし、その家から学校や教会に通う。母となる女性もまた、夫を亡くしたり、虐げられた経験をもつ女性たちだ。ワトトの母親になる条件は、新生したクリスチャンであることと、牧師の推薦があること。一定期間のトレーニングとお試し期間を経て母となる。それは女性たちにとっても自立の一歩だ。 
 「各家庭で毎日の祈りと賛美の時間、家族礼拝があります。ここに来たときには、キリストを知らない子どもばかりですが、キリストが今も生きておられるという徹底した教育やお母さんや兄弟の信仰やキリストの愛を見て、ほぼ100%の子どもが信仰をもつようになります」とワトトジャパン事務局の林桃子さんは語る。

 ワトト村には現在、約2千人の子どもがこの村で「家族」と共に暮らす。赤ちゃんたちが住むベイビーワトトには、200人以上の0歳~24か月の赤ちゃんが養われている。
 今回来日したチルドレンズ・クワイアのメンバーもワトト村で暮らす子どもたちだ。生涯で一度のワトト・チルドレンズ・クワイア海外ツアーメンバーになるために、オーディションを受け、出発前5か月間は9時~17時まで毎日、勉強をしながら歌と踊りの練習をこなしてきた。一曲一曲、言葉の意味の説明を受け、賛美の言葉を心深くに感じられるまで何度も歌い、心と頭を使って賛美を体に染み込ませる。大きな笑顔や元気な賛美は、神様への信仰と希望が根底にある。
 「世界各地にクワイアチームが巡回していますが、次に日本に来るチームは、今、ウガンダにいる少年少女たちです。ツアー経験を通して異文化に触れ、お互いの違いを受け入れることを学びます。コミュニケーション能力も養われ、メンバーたちは人間的に大きく成長します。その経験を一人でも多くの子どもに体験させられるように」との思いがこのプロジェクトにはある。
 ワトトでは08年から夫を亡くした女性やHIVキャリアの女性や母親の支援「リビングホープ」も開始した。医療支援、トラウマカウンセリングなどを施し、女性の自尊心や品性を回復し、生活の自立を促すために技術訓練を行う自立支援プロジェクトだ。開始から2年。すでに多くの女性が技術を習得し、グッズが商品化されており、女性の自立を実現させて生きる希望にもなっている。また、07年からは「プロジェクト グル」で少年、少女兵として殺人兵器にされた青年たちが精神的、肉体的ケアを受け、社会復帰できるよう支援が始まり、現在8千人以上の少年少女がトラウマカウンセリング治療と教育を受けている。
 「これまで数千人の人がワトト村を通して保護されたり援助を受けてきましたが、まだウガンダ国内には援助を必要としている人がたくさんいます。HIVキャリアも千700万人いるといわれ、200万人の子どもたちがいのちの危険にさらされています。ワトトでは23年までに1万人の子どもたちを救うことを目標にしています」と林さん。

 「問題はたくさんある。でも、問題より可能性を見るのです。アフリカの将来のリーダーとして彼らを育てたい」
 ゲアリー牧師の言葉は「希望」という言葉に象徴されるワトト村全体に行き渡っている。www.watoto.jp