ヘッドライン
[CSD]2011年10月30日号《ヘッドライン》
[CSD]2011年10月30日号《ヘッドライン》= 1面 ニュース=
◎「それでも希望」 歌で——大震災被災者に寄り添うクリスチャンシンガーたち
= 2 面 ニュース =
◎マハカリミッション:陸前高田市に総合福祉センターを——比人ら雇用し高齢者介護再生
★全世界の基地撤廃を——沖縄で第3回九条アジア宗教者会議
★「皆さんと一緒に働けて感謝です」——羽鳥明元代表90歳 PBA60周年記念式典で
★<落ち穂>伝道雑誌今昔
= 3 面 教界ニュース =
★<竜馬をめぐる人々>[64]坂本直寛の章:23——北海道開拓事業への思い 記・守部喜雅
★「きれいごと言えない」 不器用な思いを歌に託して——クリスチャンアーティストら津波で流失した四倉駅頭で賛美コンサート
★<オピニオン>どのようなときも友を愛すれば 記・榎本 恵
= 4・5 面 特集/いのちありがとうの会=
★日本の4か所で韓東セミナー——いのちありがとうの会が主催
★北海道:科学は創造を説明する——札幌キリスト福音館
★米沢:金総長、玄博士の足どり——恵泉キリスト教会
★千葉:ヒョン博士講演「生命の起源と知的設計」——東京基督教大学
★東京:金総長、2度目の日本へ——淀橋教会
◎創造を土台としてビジョンに生きる——第1回Vision & Creation Camp in 韓東大学校
★バイブル・アンド・クリエーションの働き
★いのちありがとうの会
= 6 面 神学・歴史=
★関東大震災を宗教者はどう受け止めたか[下]——朝鮮人虐殺に「天を畏れよ」「殺す勿れ」
★関東大震災と賀川豊彦——「善悪の判断は神の職分]互助へ邁進
= 7 面 伝道・牧会を考える =
★ケープタウン決意表明(4)——私たちが愛する主のために?
★解説:宗教的多元主義の時代とキリストの独自性
★<小さき人々のパラダイス>[4]共働学舎の挑戦?——社会にとっての「炭鉱のカナリヤ」 記・佐原俊幸
= 8 面 インサイド・ニュース=
★世界から福音の全体像を学ぶ——国際福音主義学生連盟(IFES)世界大会
★解説:IFESとKGK(キリスト者学生会)の交流
◎「それでも希望」 歌で−−大震災被災者に寄り添うクリスチャンシンガーたち=1110300101
「歌ってくれてありがとう。元気をもらったよ…」。震災から半年が過ぎ、落ち着きを取り戻しつつあるように見える被災地。だが、人々の心は今も多くの傷を抱えている。そんな被災地の人々に、歌を通して寄り添いたいと、多くのクリスチャンアーティストたち(敬称略)が、被災地への特別な思いを抱きながら現地に赴き、歌っている。
福島第一原発から約30キロにある相馬市の柚木仮設住宅南集会所で開かれたコンサート。森祐理が唱歌や歌謡曲を歌い阪神大震災で弟を亡くした体験を語り出すと、会場は涙で溢れた。「男性も女性もみな涙を拭きながら聴いてくれた。最後の『故郷』は涙の大合唱になりました」
森は東日本大震災後、宮城県、岩手県にある避難所、高齢者施設など30か所以上を慰問。「『地震でも津波でも泣かなかった。歌を聴いて初めて泣いた』との被災者の言葉に、共に涙しつつ歌い続けた」。
9月23025日は福島県で、被災者を無料招待しての慰問コンサートを音楽ホール、教会、仮設住宅の集会所で開催。75人の被災者が詰めかけた仮設でのコンサートは「歌う前は不安もあったが、歌い出すと痛みを分かち合う温かな空気に包まれた」。撮影で入った「ライフ・ライン」テレビスタッフも涙で仕事にならなかったとディレクターの山本美砂子さん。「『それでも希望がある』と伝えたかった森さんの思いを、来た方々は受け取ってくれた」と信じている。
コンサートは太平洋放送協会、モリユリ・ミュージック・ミニストリーズ、福島県放送伝道を支える会、日本国際飢餓対策機構、大阪クリスチャンセンター、大阪朝祷会、近畿福音放送伝道協力会の協力で実現した。
仙台出身の岩渕まことは「自分にできることがあれば」と、4、6月に被災地に出かけた。瓦礫の片付けをした夜、ミニコンサートをすることになった。場所は牡鹿半島の泊浜避難所と、東松島の個人宅。「コンサートではオリジナル曲のほか震災後、私の中に聴こえてきた『北上夜曲』(菊地規作詞・安藤睦夫作曲)を皆さんと一緒に涙ながら歌いました」
これらの関わりを通し「支援する側、される側ということでなく震災を通して出会った私たちなのだと思った」。「今後も新しく生まれた絆を大切にしつつ、『新しい何か』が生まれる夢を心に持ち、自分にできることをさせていただきたい」
上原令子は震災1週間後に被災地に入り、宮城県の石巻市、塩釜市、南三陸町で歌った。「言葉で傷つけないよう、何を歌ったらいいのかとても悩んだ」。そんな中、歌を聴いた30代の女性から、「ありがとう。今日ほど心癒された時はありません」と言われた。「私は一番最初の入口。そこからどんどんドアが開いていけば」と願う。
Migiwaは、9月22025日、宮城県仙台市、岩手県盛岡市、山形県酒田市の教会でコンサートを開催。9月にニューアルバムCD「PROMISED LAND」を発売。「このCDをまず東北の方々に聴いてもらいたい」と東北ツアーを企画。その中の1曲「この世界を創られた神様は」は被災地のことを思って作った曲で、神は天罰や裁きで震災を起こさず、被災者の心の痛みをすべて知った上でその手をじっと握りしめ、共に涙を流してくださる方、と歌う。
その歌を心を込め歌い始めると、会衆の表情が一変。目を真っ赤に腫らす人、ハンカチを取り出して何度も涙を拭う人、両手で顔を覆って泣き出す人が見られた。
Migiwaは「最初は不安と怖れでいっぱいだったけど喜んでいる方々の顔を見た時、私の音楽さえ神様は用い、皆さんの心に語りかけてくださっていることに胸がいっぱいになった」という。
牧師でもある小坂忠は3月28日に仙台市に行って以来、東京と大阪で賛美と祈りの集会「プレイズ・ナイト」、パリ、ロンドンなど世界でチャリティーコンサートを行いつつ、月に1度は自前で被災地の教会に赴く。「被災地の方々に『忘れてないよ』というメッセージを伝えたい」ためだ。
9月には、ハワイのフラ&ハワイアンミュージックチームと共に、塩釜聖書バプテスト教会でコンサートを行った。「被災地には娯楽がないので、音楽やダンスなどで日常と違う時間を作ってあげることも必要。被災地の教会の牧師、信徒は疲れている。音楽で少しでもホッとしてもらえれば」という配慮でもある。
◎マハカリミッション:陸前高田市に総合福祉センターを−−比人ら雇用し高齢者介護再生=11103002
東日本大震災の被災各地では、老人ホームなども津波で流された。避難所や仮設住宅での疲れがたまっているお年寄りも多く、高齢者介護の必要が高まっている。一方、東北地方で働いていて震災後に帰国したフィリピン人の多くが、再び東北で働きたいと希望しているという。在日フィリピン人の支援やクリスチャンコミュニティー形成などの活動をしてきたマハリカミッションの大岡潤代表は、両者のニーズを結びつけようと、「総合福祉センター」を岩手県陸前高田市に設置する計画を進めている。大岡氏は内閣府主催の「ISB公共未来塾」に参加、その学びの成果を生かす。
マハリカミッションの本部がある名古屋市は震災後、陸前高田市に応援職員を派遣するなど協力関係にある。大岡氏は民間で初めて名古屋市から陸前高田市支援に赴くもので、11月から同市に隣接する一関市大東支所の世話で貸家を確保、そこを拠点に一般社団法人の立ち上げ準備に入る。行政と連携してボランティア活動の拠点「たすけあいセンター」、高齢者の入居介護施設やデイサービス、グループホームなどを置く「総合福祉センター」を建設する計画だ。
フィリピン人は介護士や看護師などとして海外で働くケースも多いが、言葉の壁があり日本ではなかなか国家資格が取れない。「総合福祉センター」ではボランティアおよび介護職員として50人を募集するうち、フィリピン人30人の雇用を目指す。併せて在日フィリピン人コミュニティーセンター(教会)を設立し、日本語教育を兼ねた2級介護ヘルパー講習を開講するなど、言葉のハンディを克服する環境を整え、職員の育成にあたる。
介護・看護の就労ビザ発給や施設の資金援助を得やすくする「福祉特区」の創設も働きかけていくという。被災地では施設が壊滅し職を失った介護職の日本人も少なくないといい、それら日本人専門職を中核職員として雇用する予定。「総合福祉センター」構想は地元の雇用活性化につながることも期待され、地元住民・高齢者と在日フィリピン人による多文化共生事業のビジョンを掲げる。
大岡氏は、「教会をコミュニティーの中心に置いて、毎週の日曜礼拝やバイブルスタディで色々なことを決断するのが自然なフィリピンスタイル。それを生かして東北地方の高齢者や住民が元気を出せるように、教会を中心とした国際協力による復興と再生のビジネスモデルを創出したい」と夢を描いている。
11月3日に一関市大東町のマハリカミッション岩手で、ボランティア団体などと意見交換し今後の計画を話し合う。大岡氏は、この計画に関心のある教会関係者の参加と献金を呼びかけている。詳細はTel.052・710・3861、maharlikamission@yahoo.co.jp (大岡)。
◎創造を土台としてビジョンに生きる−−第1回Vision & Creation Camp in 韓東
「第1回Vision&Creation Camp in 韓東大学」(主催:いのちありがとうの会、後援:韓東大学校)が、8月24日(水)から28日(日)にかけて、韓国浦項市にある韓東大学校(金泳吉総長)で開催された。いのちありがとうの会と韓東大学校との交流が深まるなかで実現した今回のキャンプには、北海道から沖縄に至る9道府県から42名が参加。聖書の価値観、創造を土台とする人材育成を掲げる韓東大学校の実際の姿に接しながら、創造やビジョンに関する8つの講義を学んだ。
8月24日(水)午後、集合場所に指定された釜山・金海国際空港ロビーに、日本各地から参加者たちが次々と到着。教会単位や一人きりでの参加、前日に韓国入りした人、仁川空港から国内便に乗り換えて駆けつけた人などさまざまだ。不安そうな顔つきも、互いに挨拶を交わす中で安堵と期待の表情に変わっていく。
韓東大学校が提供したスクールバスに乗り、浦項市にあるキャンパスに向かう。空港から車で約2時間。到着すると、金泳吉総長自ら、バスを降りる一人ひとりと握手や笑顔で歓迎してくれた。歓迎晩餐会の心づくしの韓国料理で、参加者の心も一気にほぐれる。スケジュール説明の後、宿所として開放された学生宿舎に分かれて旅の疲れを癒した。
翌25日(木)午前中、韓東大学校生命科学部教授による2つの講義。玄昌騎教授が「科学と信仰」、都明述教授は「進化論の分析と生命の起源」というタイトルで話した。玄教授は、今回のキャンプの受け入れを中心になって準備してくれた。かなり専門的で高度な内容だが、参加たちはノートを取りながら真剣に講義に耳を傾けていた。
昼食後、韓東大学校キャンパスを見学し、学生たちと交流の時間を持つ。1995年に創立、わずか16年の歴史とは思えない充実した教育環境とグローバル時代に即した建学理念、かかげるビジョンの迫力に息を呑む。キャンパスのあちこちに、聖書のみことばやスローガンが目につく。Why not Change the World!Hangdong God’s Universityなどといったチャレンジが、キャンパス全体に脈打っている。
大学を紹介する映像を鑑賞した後、現役の学生たちから話を聞く。この大学を選んだ動機、大学生活の中身、将来の夢など、自信感あふれるスピーチに圧倒される。
夜、いのちありがとうの会理事長の堀越暢治牧師から「日本宣教のカテーテル法」について講義を聴く。長年の実践から産み出された日本オリジナルの宣教戦略に、「こんな宣教方法があるとは驚いた」「ぜひ、取り組んでみたい」などの感想が聞かれた。講義の後、いのちありがとうの会理事の三橋恵理哉牧師(札幌キリスト福音館)のリードで、今回のキャンプ開催の目的を確認し、班別に分かれての分かち合いの時間を持った。
26日(金)午前は、諸良圭教授よる「知的デザインについて」と玄昌騎教授による「クリスチャン青年のビジョン」の二つの講義。諸教授は知的デザインが成立する理論的根拠についてわかりやすく整理し、玄教授はクリスチャン知識人として社会や職場でどのように生きるべきかについて、自身の証を交えながら語った。
昼食後、バスで慶州市に移動、「慶州・世界文化エキスポ」を観覧。新羅時代の風俗や世界の文化を体験、躍動感あふれるレーザー・ショーに喚声を上げる。夜が更けるなか、浦項の迎日湾の海岸散策。かつて浦項製鉄所とよばれたPOSCOの工場群が、色鮮やかにライトアップされていた。
27日(土)午前、徐炳宣教授よる「ノアの箱舟と大洪水」と、金泳吉総長による「韓東大学校が目指すもの」というタイトルの講義があった。徐教授は、ノアの箱舟の歴史的事実性を説得力ある根拠によって論証した。また、韓国の理工系研究機関として最高の権威を持つKAIST(韓国科学技術院)教授の地位を捨ててまで韓東大学校設立を志し、苦難と試練を乗り越えながら今日の姿にまで導いた金総長の証は、信仰によって生きることの意味と喜びを実感させて感動的だった。
昼食後、ユネスコ世界文化遺産に登録された韓国伝統家屋集落「ヤンドン・マウル」を見学した後、大型スーパーに寄って買い物タイム。送り出してくれた教会や家族へのおみやげに、韓国の特産品などを買い込む。夜、堀越牧師が「病気の治る仕組みと人間の復活について」と題して2回目の講義。病気が治る仕組みが死後の人間の復活に関係していることを、聖書から解き明かす。
翌日28日(日)午前5時から、主日礼拝をささげる。堀越牧師が、マタイ9・27030から「あなたの信仰のとおりになれ」と題してメッセージ。「創造主と救い主を深く知りながら、信仰のとおりにしてくださるという約束を信じて生きよう」と締めくくった。
午前8時30分、金海国際空港に到着。4泊5日のキャンプで学んだ創造主の知恵とビジョン、再会の期待を胸に、充実感あふれた顔でそれぞれが仕える地へと散っていった。第2回目のキャンプは、来年夏も韓東大学校で開催される予定だ。