[CSD]2011年12月11日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年12月11日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎石巻・亘理 被災地に新教会——地元から信仰決心者も
★被災地教会に明るい十字架を建てよう——日韓共同でLED十字架プロジェクト

 = 2 面 ニュース =
◎救世軍:女川町漁協に作業船30隻寄贈——国際的連帯生かして
★「神様の日本への愛」届ける——ヨイド純福音教会から被災地復興へ
★召天:松本まゆ子(シオン宣教団松江福音教会副牧師、54歳)
★<落ち穂>人口増加と海外宣教

 = 3 面 教界ニュース =
★<竜馬をめぐる人々>[69]坂本直寛の章:28——水害に続く 兄・直の死 記・守部喜雅
★<オピニオン>戦後補償裁判の終結と今後の課題 記・渡辺敬直
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 特集/教会教育=
★「教材、何でも貸します!」——イムマヌエル綜合伝道団CS部 CSおてつだい工房
★ネットで「いつ、どこででも」——JTJ宣教神学校でのeラーニング
★行き場のない子たちのために——イエス・キリスト教団リバイバル教会 おともだち礼拝
★教案誌「聖書の光」——聖書を物語ることを大事に
★教案誌「アパタ」シリーズ——CS教師を育てるためのテキスト

 = 6 面 仕事と信仰=
★西田清子さん(芸術造形研究所代表取締役)[下]——認知症医療に美術を応用
★<定年後の挑戦>[8]定年後は親元へ 帰郷先で野菜作り 記・星野 隆三

 = 7 面 伝道・牧会を考える=
★ケープタウン決意表明(10)——私たちが愛する主のために?
★解説:諸民族への愛
★<小さき人々のパラダイス>[9]共働学舎の挑戦?——農場に影響を与えたIさん? 記・佐原俊幸

 = 8 面 レビュー特別版=
◎Movie「ブリューゲルの動く絵」(12月17日公開)——「十字架を担うキリスト」が語りかけるもの 記・町田俊之

 = I —IV 面 別刷りカラー:日本キングス・ガーデン連合特集=
★愛と希望に溢れた介護
★愛と希望の介護 実現の秘訣
★「いのちの尊厳を支えるケア」——100歳 日野原重明氏が記念講演
★ご利用者家族と現場をつなぐ窓口で「仕える」——練馬キングス・ガーデン事務長 梅田正子


◎石巻・亘理 被災地に新教会−−地元から信仰決心者も=1112110101

 震災以来のキリスト者たちによる継続的支援を通し、新しい教会が誕生した。宮城県亘理郡亘理町荒浜では、日本国際飢餓対策機構(JIFH)のボランティアらによる住宅補修や地元漁師への復興支援活動を通し、亘理聖書キリスト教会が誕生。11月19日、同教会の開所式と熊田康之牧師の牧師任命式が開かれた。同県石巻市渡波では、同県沿岸を中心に支援を続ける保守バプ・イエスキリスト栗原聖書バプテスト教会のアメイジンググレイスネットワークミッション(代表、岸浪市夫巡回伝道師)の働きで、10月30日に渡波キリスト教会災害支援センターが設立され、礼拝も始まった。

 亘理聖書キリスト教会設立のきっかけは、同地区ボランティアリーダーの熊田氏が津波で1階まで浸水した建物を、所有者の向後清次郎氏(保守バプ・塩釜聖書バプテスト教会員)に、支援活動のため活用させてほしいと頼んだことから。この建物は向後氏が「この地にいずれ教会を」と願い家庭集会を開いていた場所だった。
 この建物をJIFHスタッフらが改修。ここを拠点に支援活動をしていくうち、「ボランティアみんなの内に、ここをぜひ教会にしたいとの強い思いが湧き上がってきた」と熊田氏は言う。
 福音聖書神学校出身で、いずれ大阪か妻の実家の広島で開拓伝道を考えていた熊田氏だったが、母教会のMB・武庫川キリスト教会のメンバーやJIFHスタッフ、一緒に救援活動をしてきた仲間に励まされ、ここでの宣教を決意した。
 開所式には、建物の泥出しや補修を応援してくれた地元民はじめ県内外の牧師、ボランティアら80人が参加。経過報告で熊田氏は、「自分が牧師として神に仕え地域の方に仕えていくことが主の召しだと確信した」と思いを語った。その後、集まった牧師らで牧師任命式を行い、大友幸一(塩釜聖書バプテスト教会牧師)、川上直哉(日基教団・仙台市民教会牧師)、清家弘久(JIFH常務理事)の各氏らが激励の言葉を贈った。参加した町民からは「今後の復興のため、この教会が地元に根ざしたものとなってほしい」との声が寄せられた。
 一緒に活動したボランティア1人が信仰決心し、クリスマスに洗礼式をする。ほかにも信仰を表明した人が数人いる。
 同教会はボランティアセンターも兼ねつつ、これから亘理町民に仕えていく。同教会では支援者を求めている。問い合わせはTel.0568・97・3623(熊田康之を支える会)まで。
     ◇  
 渡波キリスト教会はまだ正式教会ではないが、地元の人々やボランティアが集い礼拝をする。
 アメイジンググレイスネットワークミッションのスタッフに渡波地区出身者がいたため、3月18日から復興支援活動を開始。救援団体のサマリタンズパースなどと協力し、直後の物資支援から始め、泥かき、ハウスリペアへの支援を続けた。
 8月頃からは津波被害で壁、床に被害を受けた2つの建物を住めるまでに修復。大家の好意で建物を物資倉庫、居住地に使えるようになった。
 支援センターとして建物を整備し、礼拝を開始。メッセージは岸浪伝道師が担当し、地元から約30人、同ミッション、サマリタンズパースのボランティア合わせて約70人が集まった。この後、午後礼拝を毎週開いている。 11月には米国のゴスペルシンガー、アルフィー・サイラス来日ツアー日程の1つを受け入れ、現地を盛り上げるためコンサートを実施した。
 同ミッションではさらに沿岸部3、4か所で同様の拠点を計画し建物も与えられた。気仙沼市蔵内では4千坪の土地を、持ち主から委ねられた。「アメイジンググレイスヒル」として、教会堂や、集会場、町の人々の家、建物のために必要な土地の無料提供を計画する。 クリスチャンが多く住む、恵みの丘ができる事を祈っている。問い合わせはEmail:agnetjapan@yahoo.co.jp(岸浪)まで。

◎救世軍:女川町漁協に作業船30隻寄贈−−国際的連帯生かして=1112110201

 東日本大震災の被災地の多くは漁業地域。町の復興には漁業の再生が不可欠だが、多くの漁師たちが船や漁具を失った。そうした中で、被災地の生活再建へ向けての支援がキリスト教関係でも始まっている。救世軍は、津波で壊滅的な被害を受けた宮城県牡鹿郡女川町の漁業協同組合に漁船30隻の贈呈を決め、11月25日、女川町塚浜で最初の1隻の贈呈式が行われた。

 救世軍では震災後、津波の被害が深刻な三陸沿岸部で、内外から寄せられた資金を用いて炊き出し、緊急物資支援、復興支援に取り組んできた。女川町の炊き出しで出会った漁師の紹介で漁協を訪ねたのは5月初頭。救援団体の来訪は初めてだった。漁業者の窮状を聞き、ライフジャケット、合羽上下、長靴、手袋など、浜や海で必要なものを、同組合の会員分550セット寄贈。続いて、瓦礫の撤去や養殖場の再建、水揚げなどに不可欠な船を、公的補助の決定に先立ち同漁協の15の浜に2隻ずつ贈ることを決めた。
 発注先は現地を知り尽くす南三陸町の造船所。この造船所も壊滅的な被害を受けたが、復興支援の趣旨からあえて地元の業者を選んだ。完成した船は1・7トン、全長約8・5メートルの10人乗り作業船。贈呈式に集まった漁師たちからは「本当にいい船だ」と好評だ。贈呈式には漁協関係者と日本の救世軍代表である吉田眞司令官、石川一由紀震災支援事務局長のほか、漁船のための資金を提供した香港の救世軍の代表らも出席。2台のキャンティーンカー(炊き出し専用車)を使い、漁師や家族らに650食の祝い膳も用意した。
 香港の救世軍は日本の震災のために多額の資金を提供している。4月に俳優のジャッキー・チェン氏が開催したチャリティーコンサートの募金を香港の救世軍を通して提供。宮城、岩手、福島での救援・復興支援に用いられている。その他米国、カナダ、豪州、シンガポール、チェコなど様々な国から資金が寄せられた。
 女川町では米国からの資金を活用し、仮設店舗街の設置と給食関連施設の建設も支援している。南三陸町、大船渡市でも仮設店舗街の建設を進める。いずれも地域社会の復興を目指した支援だ。
 その他、被災者への通勤通学用の自転車、仮設住宅や民間の賃貸住宅の入居者への布団セット、扇風機などを支援してきた。現在は、冬対策として11の市町に対して暖房器具の提供を進めている。

Movie「ブリューゲルの動く絵」(12月17日公開)−−「十字架を担うキリスト」が語りかけるもの 

 「バベルの塔」などフランドル絵画の巨匠ピーテル・ブリューゲルの作品「十字架を担うキリスト」中に入り込み、絵画の世界を旅する感覚を味わえる体感型アートムービー「ブリューゲルの動く絵」が近く公開される。この絵画の作者ブリューゲルと映画の魅力を、町田俊之のガイドで紹介する。

 「ブリューゲルの動く絵」は、16世紀フランドルの代表的画家であるブリューゲルの描いた「十字架を担うキリスト」を題材にした映画作品である。それは、静止している絵をそのまま俳優によって再現するのではなく、描かれた時代の風景や農民の姿、また社会の出来事を物語のように演じていく中で、ブリューゲルがどのような思いを込めてこの絵を描いたのかを観客は知ることになる、ちょっとかわった映画なのだ。

当時の農民社会と
イエスの存在
 「十字架を担うキリスト」は、拙書『巨匠が描いた聖書』(2009年、いのちのことば社)の中に掲載した1枚であるが、どうしても読者に覧ていただきたかったものである。なぜなら、この作品は聖書の中心メッセージをブリューゲル独自の農民社会の背景とキリストの十字架刑に至る姿を見事に重ね合わしている秀作だからだ。
 一見、農民の秋祭りの風景か、あるいはフランドル地方の民話が描かれているようであるが、じっと目を凝らして画面の中央に目を向けると、驚くことに、そこには十字架を背負い、そのまま倒れ込んでいるイエスの姿が描かれている。しかし、周りに目を転じれば、当時の農民たちが商売をしたり、喧嘩をしたりして、イエスの存在には目もくれず、何事もなかったような生活に明け暮れているのだ。
 ブリューゲルの言いたかったのは、まさにそこである。神がこの罪深い世界にひとり子イエス・キリストを送り、人類がその罪から救われるために十字架にかかろうとしている歴史的重大事にも関わらず、多くの者たちは実に鈍感であったのだ。

いまキリストが
ここに来られたら
 映画ではフランドル地方の農村の夜明けから始まる。最初の30分は台詞が一切なく、様々な音(風車の音、子供たちのはしゃぐ声、ハエの飛ぶ音…)によって、当時の農民の姿を映しだしていく。背後にそびえ立つ岩山の風車小屋の帆がゆっくり回り始め、この風車がこの絵の物語の一部始終を知っている神のような存在であると、後で気づく。映像は、特殊効果と撮影技術を駆使することによって大自然の迫力と美しさを際立たせている。
 やがて、画家ブリューゲルが登場し、フランドルの雄大な自然とともに、そこに生活する人々、その地域を支配する馬にまたがったスペインの赤い服の兵士たちの姿を印象的に配置していく。彼らは無力な若者を力の暴力で取り押さえ、鳥の餌食とさせてしまう。そのような権力者の下で十字架を背負うキリストが登場するのだ。ブリューゲルにとって、自分の生きている時代に、もしもキリストがやって来たら、人々はどんな反応をするのだろうか、に大きな関心を寄せていたに違いない。そして、それは現代にも通じることではないだろうか。
 現代は、ハイテクの時代、情報の時代である。しかし、現代人は将来の情報にこそ最大の関心を払っていても、古(いにしえ)の時代に、イエス・キリストが人類の罪に対する罰の身代わりとして十字架につかれたことを知識として知ってはいても、一向に無関心なのだ。我々も自分の生活を守ることに忙しく、権力者たちはこの世界を支配することに忙しいのだ。
 しかし、それでも、キリストは十字架を担い、ゴルゴダの丘に向かって歩みを進める。それは、神から生まれた人類が、ご自分のところにもう一度戻ってくることを切に願っておられるからだ。
 クリスマスを迎えようとしているこの時、死ぬためにこそ生まれて来られたキリストに思いを馳せるために、ぜひこの映画をご覧になられることをお薦めします。 原題は「The Mill and the Cross」〈水車小屋と十字架〉