[CSD]2012年6月3日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年6月3日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎エベレストの麓の村に福音は届いた——訳業40年 カリン語聖書翻訳完成
★ニュージーランド:震災で被災した大聖堂が紙の仮聖堂に——日本人建築家の坂 茂氏が設計

 = 2 面 ニュース=
◎絵描き実演ショーに子どもたち大興奮——マンガ・アニメ聖書展in東京
◎食放射能計測所「いのり」第2号をいわきに開設——線量高い福島内陸も支援
★韓国異端イベントに後援を——狭山・入間牧師会有志が大使館文化院に申し入れ
★アルゼンチン:性別選択など合法化
★<落ち穂>カリン語の聖書翻訳ことはじめ

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[12]神のなさることは美しい 記・柏木哲夫
★ミャンマーで賛美コンサートに1000人——工藤篤子さん災害支援の地を初訪問
★<オピニオン>教会への税務調査、必要な法律の知識? 記・櫻井圀郎
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 高齢者特集=
★老いは突然やってくる——いてくれてありがとうの心で 記・関根一夫
★働きの大部分は安心させること——グループホーム みくに
★一緒に過ごすことで症状進行が遅れる——デイサービスセンター さち
★昔取った杵柄で作業リハビリ——うあすらぎの介護シャローム・社労夢工房匠

 = 6 面 神学/歴史 =
★東日本大震災 国際神学シンポジウムより——大災害時におけるキリスト教的応答:教会史から学ぶ[2]
★<竜馬をめぐる人々>[80]坂本直寛の章:39——頑なな監獄職員の洗礼 記・守部喜雅

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[12]JECA・めぐみの丘チャペル?——今は変わることが楽しみ
★ケープタウン決意表明(29)パート?解説——私たちが仕える世のために(12)

 = 8 面 レビュー =
★Movie:「ソウル・サーファー」6月9日より全国ロードショー
★Movie:「道~白磁の人~」6月9日より新宿バルト9ほか全国ロードショー
★BOOK:『牧会学入門』チャールズ・V・ガーキン著(日本キリスト教団出版局、6,090円税込)
★BOOK:『イエスと洗礼・聖餐の起源』赤木善光著(教文館、3,675円税込)
★BOOK:『新版 聖書に見るドラマ』婦人之友社編(婦人之友社、1,575円税込)
★BOOK:『古教会への誘い?』伊藤龍也文・撮影(イーピックス、3,000円税込)
★CD:「臆病者の言い訳」VCF Japan(ヒューカム、全11曲、2,090円税込)
★CD:「崖の上に」VCF Japan(ヒューカム、全11曲、2,090円税込)

◎エベレストの麓の村に福音は届いた−−訳業40年 カリン語聖書翻訳完成=1206030101

 日本ウィクリフ聖書翻訳協会の鳥羽季義・イングリット夫妻が、40年にわたり取り組んできたカリン語(ネパール)の新旧約聖書翻訳が完成したのを記念して、5月19日、東京・杉並区のJECA・浜田山キリスト教会で感謝会が開かれた。そこで映し出された、昨年11月にネパールのカリン村で行われた現地献書式の様子に、聖書翻訳宣教の苦闘と豊かな恵みが浮き彫りにされていた。
     ◇
 険しい山道を印刷されたばかりのカリン語聖書を背負ったラバの隊列が黙々と歩いている。1970年、鳥羽氏がこのエベレストを望む村に入った時、村には1人のクリスチャンもいなかった。文字のないカリン語に聖書を翻訳する作業は、まず言葉をネパール文字に起こし、現地のカリン族の人々の協力で続けられてきた。これまで国際ウィクリフ聖書翻訳協会の取り組みにより、千223言語で新約聖書が翻訳されたが、聖書全巻が翻訳されたのは471言語。カリン語は全巻翻訳が完成した472番目の言葉となった。
 聖書翻訳の最終目的は聖書によってすべての人がキリストの福音を知り救いにあずかること。カリン村では、聖書翻訳作業を続ける中で福音は広がっていった。キリスト教の伝道が公には認められていない地域で苦闘の日々が続いたという。カリン村に最初のクリスチャンが生まれたのは、鳥羽氏が入村して10年以上も経ってからのこと。村に入って42年の現在は、11の教会堂が建ち、500人を超える村人がクリスチャンになった。
 現地での献書式のDVD画面には、自分たちの言葉で聖書が読めるようになった人々のはちきれるような笑顔があった。鳥羽氏はその様子を次のようにレポートしている。
 「カリン語聖書の献書式は、当初2011年11月19日に予定されていたが、悪天候で飛行機が遅れたため、20日に延期された。私たち夫婦と浜田山教会の津村誠宣教師は、19日に何とかカンク村に到着した。疲労困憊でその夜は下の教会まで歩くことが出来なかった。翌20日、重い足を引きずって、ずっと下の集落にある教会堂に到着。既に大勢の人々が会堂のなかで賛美しており、会場は盛り上がっていた。会堂の外にいた人たちと短く挨拶を交わし中へ入ると、皆は床の上に座っていた。私たちは招かれて大勢の人の間をぬって壇上に進んだ。壇上から見ると会場はすでに一杯で、700~800人はいたと思う。外にも天幕を張って座っており、会堂の横に立っていた人までいれると千人を超えていたのではないだろうか。
 献書式は、サイモン兄の司会で始まった。皆、カリン語で、ネパール語で声高らかに賛美した。主をあがめつつカリン語聖書翻訳の経緯を報告、イサク主任牧師が、感謝の祈りをささげてから、12の教会堂の代表者たちに私たち夫婦から聖書を渡した。彼らは会衆の前で、その聖書を持ち上げ『これから、この聖書を使い、主を証し0する』と誓った。その瞬間、私たちの目に涙が溢れたことを記しておく。私たちがカリンの村に入って40年、最初の十数年間何の反応もなかったこの地でこういう光景を目の当たりにしたのだから…」
 完成したカリン語聖書は千200冊。1冊が重さ1キロを超える大きなものだが、印刷製本ともネパールで行った。
 東京での感謝会で鳥羽氏が語った言葉が心に響いている。「みなさん、これまでネパールのために祈って下さいましたが、今はカリンの人々が日本のために祈っています」。今年74歳の鳥羽氏だが、ネパールには自分たちの言葉で聖書を読むことができない民族がまだまだいるという。その働きのために、あと1、2年はネパールで働きたい意向だ。イングリット夫人も語る。「働きはこれで終わりではありません。村の人がこの聖書で伝道できるよう識字教育が必要ですし、聖書を読むための手引書を作らなければなりません。最初の火が燃え続けるよう祈って下さい」

◎絵描き実演ショーに子どもたち大興奮−−マンガ・アニメ聖書展in東京=1206030201

 聖書物語やキリスト教文学、信仰偉人伝、信仰エッセイなどをマンガ、劇画、イラスト、アニメーションで描くクリスチャン作家たちが一堂に会して「マンガ・アニメ聖書展in東京」(同実行委員会主催)が5月12日、東京・中央区銀座の教文館ウェンライトホールで開催。当日はマンガ好きの大人、子ども延べ400人が来場するにぎわいとなった。

 当日は、マンガ聖書シリーズ(日本聖書協会発行)執筆者でメインゲストのあずみ椋、ケリー篠沢両氏ほか、さとうまさこ(マンガ家)、青木みぎわ、泉ゆうあ、しずか(以上マンガ作者)、まどかまこ(劇画家)、みなみななみ(イラストレーター)、日下秀憲(マンガ原作者、ポケモン作家)、山守博昭(アニメーター)の各氏がゲストとして参加。前日の晩餐会にはマンガ作家のみやしたはんな、金成孝悟両氏も出席した。
 会場にはゲストの作品ほか、みやしたはんな、青山むぎ、YURIKO、山形ポン、八代和子、ゆきホタル、Grace Kwon Kim、主野聖二、安斎恵美(以上マンガ作家)の各氏の原画作品も展示。訪れた人たちは食い入るように作品を見ていた。
 作品鑑賞と並行し、ゲストによるトークショー、サイン会、パネルディスカッション、絵描き実演ショー、マンガ家らによる旧・新約聖書被災地応援のためのドローイングショーなどを開催。特にあずみ、ケリー両氏による絵描き実演ショーでは、子どもたちがマンガが描かれていく過程を、前のめりになって興味深そうに眺めていた。
 パネルディスカッションでケリーさんは、マンガ聖書の影響力に驚いたと語る。「マンガ聖書シリーズは現在22か国語に訳され、28か国で出版されている。 海外のイベントに参加し現地の人々と話したり交流をもったが、その時の海外の子どもたちの食いつき方がすごい。『マンガ大好き!』『この本で人生変えられた』との証しもたくさん聞いた。宣教が公にできない所にも行き渡っていると聞き、心入れ替えて作品作りをしたい」
 一方、まどかまこさんは劇画家としての苦労についても触れた。「35年前にマンガを細密にした劇画という手法で聖書を描きたいとビジョンをもったが、当時は『マンガでイエスが描けるのか?』『マンガで福音を伝えるのは不謹慎では?』と言われた。だが『マンガを描きたい』と祈っていたら、ある時、一人の宣教師が『イエスの時代にマンガがあったらイエスは当然それを用いられた』と言われ、マンガトラクトを描く仕事が与えられた。今ではこのような催しが開かれるようになり時代が変わったと思った」
 菅野直基実行委員長(新宿福興教会牧師)は「今回の目的はクリスチャンマンガ家、アニメーター、イラストレーターが一堂に集まりネットワークを作ること、1千万人の日本のマンガ読者にマンガ・アニメを通して聖書を知ってもらうこと」と挨拶。「これを機に日本全国にマンガ・アニメ宣教の輪を広げていきたい」と抱負を語った。

◎食放射能計測所「いのり」第2号をいわきに開設−−線量高い福島内陸も支援=1206030202

 地域教会が協力して震災復興支援に当たる宮城県の「仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク(東北ヘルプ)」と福島県の「いわきCERSネット」が共同運営する食品放射能計測所「いのり」の第2号が、福島県いわき市内に開設された。5月12日の開所式には、市内や県内の教会はじめ支援のキリスト教諸機関から来賓が出席。共同運営委員会副委員長の住吉英治氏が経過説明した。
 放射線による不安が大きい福島県では、家族が県外に避難した人、避難したくてもできない人、乳幼児を抱えた人、原発周辺から県内各地に避難してきた人など、様々な事情の違いがある。反原発運動に取り組む人がいる一方で、原発や放射線の問題には触れたくないという声もあるなど、温度差が大きい。
 そうした中で教会が食品計測所を立ち上げた意味について、東北ヘルプ事務局長で共同運営委員会委員長の川上直哉氏は「原発に関しては言いたくても言えない人、言いたくない人もいる。私たちは決して政治運動に利用されない。どんな人にも寄り添い、同じ場所で生きていきたい。NCC(日本キリスト教協議会)やJIFH(日本国際飢餓対策機構)などの協力で開いたこの活動は、教会ネットワークの果実。教会に隣接しているすべての人々、世界の人々につながっている」と説明する。
 昨年12月、仙台市内に設置した第1号の計測所は2か月後に本稼働し、最近は毎日20件ほどの利用がある。福島県内では中通りと呼ばれる福島、郡山、二本松の各市で放射線量が高く、食品計測の要望は多いが器機が敏感で設置が難しい。このため共同運営委員会では北の仙台と南のいわきに計測所を設け、南北から中通りの支援もしていきたい考えだ。
 郡山から駆けつけた福島県キリスト教連絡会委員長の木田恵嗣氏は、「市の計測所もあるが、結果がインターネットで公開される。近所からもらった野菜を測れば角が立つし、地域が特定されると風評を恐れる。そういう心配がない計測所ができたことはどれだけありがたいか」と話す。
 同計測所では、測定結果を依頼者以外に公表しない。食品のほか母乳や尿も計測し、不安な気持ちに寄り添うことを主眼にしている。計測料金は無料。所内に泣きたい人のための場所も設けるなど心のケアに対応する。
 いわき食品放射能計測所所長に就任した金成孝悟氏は、開所式の礼拝で箴言3・27、28から「善を行う力」と題して説教。
「手の中に助けになるものがあるならば行うことが、私たちが神に近付くことにもなる」と奨めた。
      
 計測実施日は祝日を除く月~金曜日の10~15時。予約はホームページhttp://www.foodbq.com から。 所在地は福島県いわき市小名浜住吉字折返2ノ8。