[CSD]2012年6月24日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年6月24日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎教会未設置地だった南三陸町で礼拝始まる——教会と支援の働き教派を超えて協力

 = 2 面 ニュース=
◎教界外で広がる「修復的司法」——聖書が背景なのに無関心なぜ?
★世界祈りの大会[後]——一致して近隣のために祈る 記・福田 崇
★<落ち穂>中国のクリスチャンを生かす聖書の真理

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[15]つながるということ 記・柏木哲夫
◎クラッシュジャパン:那須ベース閉所し郡山へ移管——県北牧師会で感謝の報告
★国際:十字架刑は紀元33年4月3日——大規模地震の記録から算出
★<オピニオン>台湾牡丹社事件140年目の和解 記・榎本 恵
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 特集/宣教アイテム=
★伝えたい気持ちを言葉で——埼玉・らっぷ館(包装・梱包資材の店)
★若者・子ども・被災者に御言葉を——ワン・ホープ・ジャパン(伝道用小冊子・DVD制作)
★どんな状況でも失われない平安届けたい——CD付リーフレット「こころの平安」
★さまざまなギフトの使い道が——「ギフトカード」ブック

 = 6 面 関西だより =
★支え合いと賛美の共同住宅「キリスト者協働の家 湖風館」オープン——Jamの会が運営援助
★ヴォーリズの礼拝堂 献堂100周年——新たな使命へ前進
★喜び運んだゴスペルフラ——京阪グレイスチャペルが一日ハワイに
★万座温泉の泉 堅さん関西デビュー

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[15]JECA・帯広栄光キリスト教会?——神様の栄光を表す会堂のために
★ケープタウン決意表明(31)パート?解説——私たちが仕える世のために(14)

 = 8 面 ひと・証し =
◎高校生の魂に触れる——前Hi-b.a.代表 荒井恵理也さんの生涯が残すもの


◎教会未設置地だった南三陸町で礼拝始まる−−教会と支援の働き教派を超えて協力=1206240101

 東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県本吉郡南三陸町に、初めての教会が6月8日誕生した。クリスチャンセンター南三陸「愛・信望館」(同町志津川廻館117ノ3)だ。最初の礼拝が10日午後に開かれた。特定の教派に属さず、様々な教会、キリスト教団体の協力で運営される。

 「愛・信望館」は津波で流出した家屋跡地を借りて建てられた。背後には避難所になった志津川高校がある。プレハブ建築だが開放的なウッドデッキが特徴だ。内部は木目を基調とした明るいデザインの装飾がある。建物・設備は支援団体のサマリタンズ・パースが提供し、工事は日本国際飢餓対策機構が担当した。海まで更地が広がる中で、ここは輝いて見える。
 中澤竜生牧師(聖協団・仙台西教会)らは震災後から継続して南三陸町を支援で訪問し、地域との信頼関係を築いた。昨年夏にはキリスト教関係者らで超教派の「南三陸町を支えるキリスト者ネットワーク」を結成。支援で知り合った地元の人からも支持があり、センター設立が実現した。
 8日、開所式では地元の人々と、各地からのキリスト教支援関係者ら100人以上が集い、設立を祝った。ゲームも盛り込んだ賑やかな雰囲気で始まり、ゴスペルシンガー上原令子によるコンサート、中野雄一郎牧師(マウント・オリーブ・ミニストリー)による聖書のメッセージが語られた。
 10日は午後3時からの礼拝に先立ち、2時から教会学校(子どものためのフレンドパーク)が始まった。バプ教会連合・国分寺バプテスト教会の被災地子ども支援プログラム「Sola」の企画による。前日に催された風船を使った子ども向けの催し、「わくわくバルーン」に集った地元の子どもたちも参加し、ゲーム、同センターの名称の由来でもある?コリント13章13節の暗唱、メッセージがあった。最後にグループに分かれて祈り会をした。今後もSolaの企画で、平日にも催しを開く。
 礼拝では、継続的に支援に関わる兵庫県の単立・加古川バプテスト教会のスタッフ、チャーチスクールの若者らが、ゲームで場をなごませ、司会、賛美リードをした。
 礼拝冒頭では、アフロヘアーのカツラをかぶったスタッフが現れ、ゲームをした。続いて司会者兼賛美リードの梅谷力さん(同センター長)が登場し、ギター、キーボードの伴奏による現代的なスタイルで賛美を導いた。手拍子を交える元気な賛美や、静まって聖書のことばに向かう賛美に会衆は声を合わせた。賛美とともに梅谷さんは詩篇40篇1~3節を朗読し、「神様は泥沼から引き上げてくださり、私たちを救ってくれた」と語った。
 説教は中澤牧師の予定だったが、当日体調を崩したため、急きょ、同じく同ネットワーク世話人の佐藤弘司牧師(ルーテル同胞・仙台新生キリスト教会)が取り次いだ。
 復興支援を振り返りながら、マルコ2章で、天井から4人の人が病の友人をイエスの前に吊りおろした話について東北弁も交え、物語り口調で語った。罪を赦すイエスに励まされ、試練に立ち向かえること、キリストにあって1つとなって協力することを勧めた。
 礼拝には、支援関係者に加え、クリスチャンで町に嫁ぎ40年1人で信仰をもち続けた女性や、キリスト教主義の大学出身という青年も参加した。
 
  教会と支援の働き
教派を超えて協力
 「愛・信望館」には支援活動、教会活動という2つの働きがある。支援活動では被災者のニーズを聞き、必要な情報の提供、ボランティアと協力し、相談、炊き出し、茶話会、各種イベントを開催する。教会活動ではゴスペルタイム、聖書タイム、教会学校を予定している。教会学校は日曜日の午後2時から。礼拝は午後3時から開かれる。日曜日以外の午前10時から午後8時まではイベント利用を申し込める。宿泊は24畳と8畳のプレハブに男4人、女3人まで可能。諸費は1日1人千円(寝袋などは持参)。教会代表者は中澤牧師が担当し、西仙台教会と兼牧。センター長で加古川バプテスト教会から1年長期スタッフとして来た梅谷さん、副センター長で西仙台教会の中澤義道さんが常駐する。土地提供者の鈴木豊和さんが管理人を務める。
 志津川高校の通学路が目の前にあり、高校生と挨拶を交わすこともある。音楽に造詣があるスタッフがいることから、ギター教室などで若者との交流を考えている。
「愛・信望館」の連絡先はEmai:minamisanriku0608@gmail.com、URL http://christiancenter.p2.bindsite.jp/ 「南三陸町を支えるキリスト者ネットワーク」も情報発信をしている。http://www.yorisou.net/

◎教界外で広がる「修復的司法」−−聖書が背景なのに無関心なぜ? 1206240201

 犯罪被害者が正直な気持ちを加害者に伝え、加害者はその声に動かされて心から謝罪する|そうした損なわれた関係を修復し、応報的な刑事司法を補う「修復的司法(Restorative Justice=RJ)」の考え方と実践が、法律家や社会学者、実務家たちの間で注目され、広がっている。もとはキリスト教会から提起され、正義の回復や和解、赦しといった聖書的な理念が背景にあるが、なぜか日本のキリスト教界ではあまり知られていない。研究者や実務家らが6月3日、東京・新宿区の早稲田大学で開いた第8回RJ全国交流会で、隣の韓国ではキリスト者が活発にRJに関与し、被害者|加害者調停が進んでいることなどが報告された。

 犯罪者は裁判によって相応の刑罰が科せられるが、それで回復されるのは犯罪によって不均衡が生じた国家の正義と加害者との関係であり、被害者の傷は回復されない。修復的司法はそうした刑事司法の限界を補うものだと、06年に来日したRJの第一人者で『修復的司法とは何か』(新泉社)の著者ハワード・ゼア氏は説明した。RJはゼア氏の背景である北米のメノナイトのクリスチャンたちが中心に進め、国際的に注目されてきた。
 加害者の責任度合いを低くするために弁護が展開される刑事裁判では、犯罪被害者は裁判の過程で加害者から事件の真相や心からの悔悟を知らされにくく、さらに傷ついてしまう。被害者と加害者が直接出会う場がない従来の刑事司法だけでは、被害者のやり場のない気持ちを回復に向けたり、加害者が真に罪の責任を引き受けて心から謝罪したりするすべがない。
 RJでは加害者と被害者を対面させて犯罪によって生じた害悪の解決方法を話し合うための被害者|加害者和解プログラム(Victim Offender Mediation=VOM)や、被害者|加害者カンファレンス(Victim Offennder Conference=VOC)などがある。近年ようやく、日本でも犯罪被害者の回復の観点が注目されるようになってきつつある。RJ全国交流会では法律学、社会学、社会福祉などの研究者や、保護司、臨床心理、ソーシャルワーク、受刑者の社会復帰や、犯罪被害者を支援するNPOなどから約50人が参加し、それぞれの現場から報告した。
 韓国におけるRJの現状と課題を、韓国刑事政策研究院副研究委員の安成訓氏が報告した。安氏は韓国の聖潔(ホーリネス)教会員で、明治大学留学中に日本のRJ研究会のメンバーになり、帰国後、韓国に同様のRJフォーラムを作った。
 安氏によると、韓国ではRJが過去10年で徐々に拡大する傾向にあり、被害者を含め一般社会、学界、刑事司法の実務においても議論が活発に行われている。RJの理念と制度が韓国に本格的に導入されたのは2000年代。刑事司法の実務に適用するための様々な方策が具体的に模索され、RJ実践プログラムが試みられてきたという。
 07年には少年法が改正され、少年保護事件において被害者との和解を勧告することができる和解勧告制度が導入された。また10年には犯罪被害者保護法が改正され、検察で内部規則に基づいて行われてきた刑事調停制度が法的根拠をもつ制度として正式に導入されるなど、RJプログラムを活用することができる法的根拠が整ってきた。学界でも犯罪被害者学会や社会福祉学会などを中心に多様な分野でRJに関する論文が出されている。
 実務面では、警察における家族会合プログラムや、学校暴力で自主申告した加害学生に対し善導を条件に立件しないなどの試みにRJが反映している。裁判所では判事を対象に研修教育が実施され関心が高まっている。刑務所の一部では、クリスチャンが中心になって受刑者を対象に被害者への謝罪の手紙の送付や、「父の学校」による家族関係の修復プログラムなどが行われ、刑務官も注目しているという。
 安氏は、プログラムと専門家の不足などからほとんどの実践が単発的であることを挙げ、刑事司法機関における研修・教育の活発化などを今後の課題として指摘した。だがそれにもかかわらず、RJプログラムの手続きに基づいた調停と和解が被害者と加害者および共同体の社会的関係を修復するのに寄与することを確認したという。これに対し日本の研究者からは「日本は韓国に10年遅れている」「もう追いつけないほど大きな差だ」「やはり韓国はキリスト信者の層が厚いからか」などの感想が聞かれた。
 それでも日本国内からは、官民協働運営の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」での実践、少年院内での被害者の視点を取り入れた教育プログラム、少年による傷害致死事件における修復的対処(和解)の実例、子ども育成支援における厳罰主義への反省・修復的問題解決の試み、スクールソーシャルワークの観点から学校での修復的対話プログラムの導入などについて報告があった。
 06年にゼア氏来日講演を招請した東京ミッション研究所に対し、今回のRJ全国交流会で「RJの提言を日本のキリスト教会はどう受け止めたか」を報告するよう要請があった。そのため同研究所の設立母体の一つである日本ホーリネス教団から、ゼア氏のセミナーに参加した人権対策室の数人が感化を受け、同教団内での元牧師による性加害事件検証と再発防止の取り組み、被害者との交流にRJが反映したことなどを報告した。だが、キリスト教界全体としてはRJはほとんど知られていないのが実情。研究者らからは「キリスト教界でRJが普及しないのはなぜか?」と疑問の声が上がっていた。
 RJ研究会は2、3か月に1回行われ、次回は7月14日(土)午後2時から早稲田大学早稲田キャンパス8号館219号室で。

◎クラッシュジャパン:那須ベース閉所し郡山へ移管−−県北牧師会で感謝の報告=1206240302

心のケアに傾注
 東日本大震災被災地域への支援物資中継倉庫を管理運営していたクラッシュジャパン(CRASH Japan、ジョナサン・ウィルソン代表)那須ベースと倉庫が閉所された。5月26日行われた閉所式には、高久勝氏(那須町町長)はじめ倉庫の土地を提供していたナスハウス工業(株)の原田時近氏(代表取締役)や小坂忠氏(ゴスペル・アーティスト、牧師)らも出席。高久町長は自身のフェイスブックに「今後の支援は物資の配給ではなく、心のケアをするための『カフェ』的なものが、重要になるため、形を変えて支援していくそうです。神の教えを忠実に実行している皆さんでした」と、感謝の気持ちを書き添えている。
 那須ベースとして事務所・スタッフ宿泊施設に用いられてきた那須高原ハウス・オブ・レスト(近藤秀夫オーナー、同盟基督・那須高原教会牧師)で6月4日に開かれた県北牧師会では、那須ベースリーダーのセオ・ジョニさんが参集した牧師夫妻らに「倉庫の土地が提供され、このハウス・オブ・レストでたくさんの方たちとの出会いがあり、とても感謝しています」と、1年間に及ぶ支援と協力に感謝しクラッシュジャパンの東北各地のベースの働きについて報告した。セオさんら那須ベースの外国から来たスタッフたちは8日までには帰国。日本在住のスタッフたちは、福島県郡山市を拠点に心のケアや子どもプロジェクトなどの働きに合流する。
 那須ベースであった那須高原ハウス・オブ・レストは6月中旬からペンションの宿泊受け入れを再開する。
 ▽那須高原ハウスオブレスト=〒325- 0303那須郡那須町高久乙586ノ889 Tel:0287・78・1247。