[CSD]2012年8月5日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年8月5日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎「つらい時こそ大人がそばに」——大津いじめ自殺問題 痛む地元教会に祈り
★「日本の過去の罪を赦してください」——韓国南部スタディーツアー

 = 2 面 ニュース=
◎TCU・総神大合同シンポ「震災と日韓教会」——教会は再生可能エネルギー転換への努力を
◎福音主義神学会(東部):教会は大震災にどう関わったのか?——地域再生支援で私事化に歯止め
★<落ち穂>教室でいじめが起きたとき

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[21]気配と臨在 記・柏木哲夫
★「説教の指針与えられた」——オルフォード講解説教セミナー16人修了
★<オピニオン>大津いじめ自殺 さらなる悲劇防止を 記・碓井真史
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 全面広告=
☆JTJ宣教神学校 「聖書を学びたい」が入学資格
URL http://www.jesustojapan.com/

 = 6 面 仕事と信仰 =
★西川岳樹さん([株]ココロ代表取締役)[上]——かつてはお酒、ギャンブルで借金まみれ
★<もしドラ>[21]——変化を生み出す 記・千葉雄志

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[17]世界福音伝道会・洛西キリスト教会?——ゴスペルで教会の敷居低くなった
★ケープタウン決意表明(38)パート?解説——私たちが仕える世のために(17)

 = 8 面 インサイド・ニュース =
★韓国南部スタディーツアー——殉教者の愛と信仰に学ぶ


◎「つらい時こそ大人がそばに」−−大津いじめ自殺問題 痛む地元教会に祈り=1208050101

 大津市立中学2年男子生徒が昨年10月、自宅マンションから飛び降り自殺をした問題は、同級生によるいじめとの因果関係が指摘されていることもあり、滋賀県大津市内とその近郊にある教会の牧師、信徒らに大きな痛み、悲しみを与えている。市教育委員会と学校の対応のずさんさも指摘される中、地元の教会はこの問題をどう受け止め、考え、祈り、取り組んでいるのか。地元教会の牧師、クリスチャン教師らに話を聞いた。

 近江福音自由教会(浜岡正年牧師)の牧師夫人、浜岡典子さんは「隣の学校のことでもあり、このたびの出来事は本当に心痛みます」と語る。「去年の時点で疑問をもっていた。何も明かされない現実が、当初からあった。いじめた側、市教育委員会の姿勢に憤慨する人も多いが、自分を守るためのうそやごまかしは、すべての人が神様から離れて自己中心になった罪の結果でありみんながもっているもの。私自身が悔い改めなければならない罪人であり、すべての人は神様をおそれなければならないと思いました」
 7月に入ってから、自殺した男子が通っていた中学校から2人、教会に来るようになり、話を聞いた。「報道陣がいっぱいでいろいろ質問される、学校からは何もしゃべるなと言われているがしゃべっている、と話ていました」
 教会としては、路傍伝道で「私たちは神様が造られたかけがえのない存在」「誰かがあなたを見捨てても、神様は決して見捨てられない」「きみは愛されるため生まれたのです」と語り、賛美しているという。
 日基教団・膳所教会の大山修司牧師は、「小さい子どもたちが来ているので、神様が尊いいのちをくださっていると説教している」と言う。地域の人権を考える学校関係の集まりに関わり、PTAの役員でもある大山牧師は、「事件があった学校と校区は違うが、私たちの校区にもいじめの問題はあり、重く受け止めている。子どもたちにも話を聞いたりしている」。
  ◇  ◇  ◇
 大津市内の中学校で教師をしているバプ連盟・大津バプテスト教会員のHさんは、まず「いじめ事件で命を落とされた生徒に哀悼の意を表します」と述べた上で「子どもたちとその相談相手になりうる教師、保護者などがしっかり話す時間が日常的に少なくなっているのでは。踏み込んでじっくり話を聴いてあげる関係づくりが不十分な状況も考えられる」と語る。「子どもはもう少し自分の話を聴いてほしいのに、大人はすぐ『ああすればいいんじゃないか』『お前が悪いんじゃないのか』と言ってしまう。もし、そういう状況に陥れば、子どもはつらい状態を語ろうとしない。問題の解決はとても大切だが、まずは子どもがつらい状況に陥った時に、そばにいて聴いて共感してあげること。そうされるだけで子どもはストレスが発散され、元気になれ、そこから自分の力で立ち直れる子もいます」
 「いじめはどこででも、誰にでも起こりうる」と語るH氏だが、「自分の弱さやつらい状況を話せる友人、家族、教師がそばにいれば、いじめを解決しうる糸口は見つけられるのでは」と語った。
 20年前に3年間、大津市内の中学校で教師をし、昨年まで世界福音・大津福音教会で牧会していた田中隆裕氏(世界福音・東近江キリスト福音教会牧師)は、元教師の立場から「教職員のためにぜひ祈ってほしい」と願う。「教職員は官僚体制の中でいろんなものをいっぱい抱えている。子どものことを守ろうとしてもその余裕がない。今、学校、市教育委員会が攻撃対象になっており、第2、第3の不幸な出来事が起きる可能性がある。教師やその家族を追い込むようなことは絶対に防がなければならない」
 「市教育委員会のやり方はまずかった、取り組みは不十分だったということは あったかもしれないが、教育現場が何もやっていないということは決してない」とも強調。「警察と教育現場の対応は違う。教師は子どもの発言に対して守秘義務があるので、子どもへの聞き取り調査の記録が残っていなかったことは理解できる」
 「教育現場に祝福がなければ、いじめの問題は解決しない。今は、学校や市教育委員会が加害者に見られているが、ぜひ教職員を温かく見守り、矢面に立たされている先生のため祈ってほしい」と要請した。
 大津市内にある教会の牧師、宣教師たちが週1回集まり食事をする「大津牧師ランチ」では、事件が大きく報道されてから、町の癒しのため祈っている。メンバーは大津福音自由教会、アッセンブリー・大津キリスト教会、大津バプテスト教会、福音ペンテコステ・大津コイノニア教会などの牧師、宣教師たち。
 8月5日にはクリスチャン教師の執り成しの祈り会を主催し、教師としてのつらさ、難しさを分かち合うひと時をもつ。

◎TCU・総神大合同シンポ「震災と日韓教会」−−教会は再生可能エネルギー転換への努力を=120805

 東京基督教大学(TCU)、総神大学校社会教育院、在日韓国宣教師協力による合同シンポジウム「東日本大震災と日韓の教会~救援と復興のビジョン~」が7月4日、千葉県印西市のTCU国際宣教センターで開催。総神大学校社会教育院教授の宋浚仁氏が「福島原発事故を通して見た原子力に関してのキリスト教倫理に基づく考察」、徐要漢氏が「21世紀韓日両国の協力と今後の展望」と題して講演し、TCU教授の稲垣久和、山口陽一の両氏が応答した。

 宋氏は、原子力発電の問題点として、?原子力は生命にとって破壊的な有害放射性物質を大量に作り出す。?エネルギー効率が悪い。膨大な核エネルギーを直接電力に換える方法がなく3分の2は廃棄され、これが新たな環境汚染になる。?福島原発事故を見ても分かるように、原子力発電は他の電力技術にはない、巨大事故に繋がる危険性をはらんでいる、の3点を挙げた。一方、人々は原子力が「安全」「安いエネルギーを供給する」「地域発展に貢献する」「清浄エネルギーだ」といった神話を信じ込んできたと強調。高濃度の原子炉で働く労働者が?最下層民?であり、核発電所の建設地が例外なく町外れの疎外地域であるなど、原子力発電がもたらす労働者や地域社会への差別問題も指摘した。
 宋氏は福島原発事故後、2022年までに原子力発電所を閉鎖すると決め、再生エネルギー政策に転換したドイツの教訓から学ぶべきと強調。「メルケル首相の決断の背後に政府が脱原発政策を固守しその方向に進めるようアピールしてきたドイツ・プロテスタントの努力が大きい。福島以後の教会は、成功追求の神学や教会でなく、巨大な発展至上主義で差別を受ける個人や地域社会のため献身し、豊かさと便利さを捨て、再生可能エネルギー転換の努力をする『小さな教会』であるべきだ」と結んだ。
 稲垣氏は、賀川豊彦の「救貧から防貧へ」という言葉を引用し「原発が象徴するハードな産業からソフトな産業へ、日本の超高齢化社会には持続可能なサービス産業、特に対人援助サービス、すなわち福祉社会への転換が必要だ」と応答した。
 徐氏は、「両国が信仰の力で過去の傷を乗り越え、信頼関係を築き協力するならば、世界は新しい歴史を生み出すことができる」と強調。「韓国は過去、日本が現在に関心がある。日本は過去の朝鮮半島植民地支配の野蛮な行為に対する真実な謝罪が求められる。海外の文物を積極的に受容し、国の発展に活用し、今では全世界を先導している両国が単なる友邦意識、片思い意識を乗り越え、不可欠な同伴者とならなければならない」と強調した。
 それに対し山口氏は「日本の教会の悔い改めは十分ではなく、その実も十分ではないが、その姿勢は日本社会の中で先行している。韓国教会は赦しと愛を、韓国社会、日本に対して先行していると考える。東日本大震災後の日本における日韓の宣教協力が深まり、衝突の焦点である竹島(韓国名・独島)が日韓友好のシンボルとなる日を、主にあって望みたい」と応答した。
 その他、山口氏が「東日本大震災と日韓の教会」と題して基調講演を、趙南洙氏(同盟基督・招待キリスト教会牧師)が「東日本大震災と韓日宣教協力」と題して特別講演した。

◎福音主義神学会(東部):教会は大震災にどう関わったのか?−−地域再生支援で私事化に歯止め=1208

 福音主義神学会東部部会が「震災とキリスト者」をテーマに開いた公開研究会で、復興支援活動に携わった教会・教団のリーダーに聞き取り「教会は大震災にどう関わったのか」を探った渡辺聡氏(東京バプテスト教会ミニストリー牧師、青山学院大学総合文化政策学部非常勤講師=宗教社会学)の調査結果の後半|。
 渡辺氏は今回の調査で福音派の中に従来型の宣教への反省が見られたことに注目する。「宣教活動と支援の関係について、それが別々のものなのか重なっているのかずっと考えながら走ってきた。どちらかをどちらかの手段として使うのはやめようと思った。神、罪、救いという従来の伝道の枠を超えたものを目指して行きたい」「公共に対し自分たちはどんな役に立つのかということを考えた時、救済論のフレームをどう見直すのかが大切になる」といった声だ。
 福音派を含む多くの教派が、支援活動を通じて伝道はしない方針を採った。しかし福音派の中に伝統として刻まれている「言葉による福音伝道」を保持しつつ、社会的なニーズに応えていく方向を共に模索することが福音派に求められているのではないかと投げかける。
 インタビューの傾向を見ると、日本においても宗教社会学でいう「私事化(privatization)」のプロセスが進んでいるのが確認できるという。私事化とは、「宗教を含む特定の制度領域が公共領域から影響力を弱められ排除されていくプロセス」。行政と自分たちの行っていることを切り分けて、個人的な信仰と心のケアに活動の中心を絞っていくことによって、自らの活動領域を狭めてしまう。伝道的な活動が社会福祉協議会から受け入れられない場合、行政の関与する領域から身を引いて、より伝道に受容性の高い領域に活動を集中せざるを得ないが、それはプライベートな領域であり、社会全体に対するインパクトという観点から見ればその影響力は限られたものとなってくる。
 他方、他宗教を含む多元化した大きな社会の中に適応しようとすることによって、自らの主張を薄めていき、結果的に社会において自分たちを透明化させていってしまう。これは、被災地のあらゆる領域の人々に関わる機会を与えてはくれるが、支援活動の内容は一般のボランティア団体と同じものになる傾向があるから、キリスト教としてのアイデンティティを社会に対して印象づけることは困難になる。
 宗教グループとしての自己主張を躊躇しつつ社会に受け入れられていこうとする点においては、透明化による私事化のプロセスを推し進めてしまい、さらにマクロレベルの社会的参与を避けパーソナルな関係に重点を置く傾向によっても私事化のプロセスに加担してしまう傾向を持つ。私事化はとめどもなく進み、キリスト教の持つ役割は社会の中で縮小していくことを危惧する。
 そうした中で被災地の人々に内職を提供することでコミュニティーの再生を目指し、支援する側・される側の垣根を越え仲間として受け入れられた実践例を紹介。「パーソナルな関係を大切にし、自分たちのアイデンティティを明確に示しながら人々の生活の基盤を支えるコミュニティそのものをマクロなレベルで支援していく統合が、支援活動をより実り深いものとし、私事化というキリスト教の矮小化に歯止めをかけていく鍵となる」と分析した。