[CSD]2012年8月12日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年8月12日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎子どもたちを外で遊ばせたい——福島・放射能不安 県内の教会で保養プロジェクト設立
★「ママ、ボクを殺さないで」——小さないのち巡る実話を舞台化

 = 2 面 ニュース=
◎「君が代・日の丸」の何が問題?——諸教派共催で「君が代強制反対キリスト者のつどい」
◎シンガポール:14億円流用容疑のコン・ヒー牧師逮捕——「繁栄の福音」に地元教会も厳しい見方
★シリア:イラク難民キリスト教徒らも標的に
★<落ち穂>信頼関係と福音の伝達

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[22]分断と決断 記・柏木哲夫
★日曜ミサ前に教会内でフィリピン人を職務質問——警察庁が「不適切」認める
★ロンドンの教会 オリンピック中は平日も解放
★<オピニオン>日本は本当に平和なのか 記・佐々木和之
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 8・15特集/沖縄復帰から40年と反戦・平和・反核への希求=
★沖縄復帰から40年と平和——変貌していく中で見えにくくなる沖縄の光と真実 記・榎本 恵
★映画「プンサンケ」——祈りよ届け境界線上の黙示録(8月18日より公開)
★映画「夏の祈り」——次代へつながれ平和と非核への祈り(8月4日より長崎先行公開、11日より全国公開)
★映画「ソハの地下水道」——神を求めずにいられない人々
★8・15関連集会情報

 = 6 面 仕事と信仰 =
★西川岳樹さん([株]ココロ代表取締役)[下]——賛美しつつ自分の愚かしさに涙し
★新連載<首都圏大震災に備える>[1]——他教会との連携が薄い大都会の教会 記・栗原一芳

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[18]世界福音伝道会・洛西キリスト教会?——奉仕の動機付けは自発的に
★ケープタウン決意表明(39)パート?解説——私たちが仕える世のために(18)

 = 8 面 ひと・証し =
★溝口和男さん(書道家・呑空)——書で「神と人との関係」を示す


◎子どもたちを外で遊ばせたい−−福島・放射能不安 県内の教会で保養プロジェクト設立=12081201

 福島県では、放射能の不安で外出を制限する子どもたちがストレスを溜める。県内の教会、支援団体は子どもと家族のために「福島県キリスト教子ども保養プロジェクト(ふくしまHOPEプロジェクト)」(木田恵嗣代表)を設立した。保養キャンプは教会外からの参加者でうまった。

 「子どもたちの健康をどうしようか」。これが福島の多くの牧師が口にする言葉だ。すでに昨年から福島市内の教会による「ふくしま教会復興支援ネットワーク」の子ども向け保養キャンプやキリスト教関係団体が主催する保養プログラムが実施されたが、なお多くの要望が郡山や二本松、相馬、南相馬などの各地から相継いで届くようになった。これらの声に応えるべく、全県の連絡会、「福島キリスト教連絡会」代表でもある木田恵嗣牧師(ミッション東北・郡山キリスト福音教会)は県全体を対象とした継続的な保養プロジェクトに取り組む必要を訴えた。
 「ふくしまHOPEプロジェクト」は福島キリスト教連絡会の働きとして運営され、幾つかの支援団体が協力する。共同運営委員会には福島キリスト教連絡会、3・11あおもり教会ネットワーク、仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク(東北ヘルプ)、クラッシュジャパン、日本同盟基督教団が参加した。フルタイムのコーディネーターが2人いる。保養キャンプ開催とホームステイ先斡旋が働きの柱だ。
 保養キャンプ「ふくしまHOPEキャンプ第1弾 in 錦秋湖」は7月25~27日に岩手県のキリスト教キャンプ場、シオン錦秋湖で開かれた。参加者は福島市、郡山市などから7組19人.主に教会外の子ども、家族たちだ。事前に市民グループが提供する一般の保養相談会で紹介したり、ホームページを開設したりすると、続々と問い合わせがあった。事務局長の朝岡勝さん(同盟基督・徳丸町キリスト教会牧師)は「お母さんたちは日程や内容を見て熱心に保養の機会を探している。すでに同様のキャンプやホームステイに5、6回参加し、これからも参加するという子たちがいる」と現状を語る。
 今も福島の各地では放射線による低線量被曝を心配し、外で遊ばない。土も、葉も触らない。学校でプールが再開されたが、参加はそれぞれの親に任されるというストレスがある。キャンプでは子どもたちがめいっぱい遊び、親たちはリラックスして過ごせるように、時間に余裕のあるプログラムを組んだ。子どもたちはキャンプ場近くでの沢登りを楽しんだ。
 キリスト教になじみのない親子に向けて、食事のときは感謝の祈りをともにし、2日目夜にはキリスト教を題材にした物語『たいせつなきみ』のDVD鑑賞会をした。福島の牧師が帯同し、部屋の中で親たちと交わりをもった。自然な語り合いの中で、存在を通して福音が証しされた。
 「地元の教会が関わることは重要だった」と朝岡さんは振り返る。「先は長い。健康被害は5、6年先に出るかもしれない。日々ストレスを抱える親御さんたちの悩みは、ぱっと聞いただけれではとても分からないほど深い。2泊3日のキャンプで何になるのか、とも思うが、親御さんたちは『それでもこういう機会があればリフレッシュする』と言ってくださった」と意義を語る。
 ホームステイの働きでは、青森クリスチャンセンターとの協力で、自炊しながらの保養機会を提供し、福島県の家族を招いている。
 次回の保養キャンプは会津市で8月20~22日に開く。毎回新たに募集しつつ、出会った人々のフォローも課題だ。同プロジェクトは今後5年間継続の予定。放射線量が低く、毎週末行ける地域に子どもたちの家をつくることも計画する。「これからが教会が担う本当の支援の始まり。子どもたちの心、からだ、いのちを助けることは福音が語ることでもある。福島の教会の必要、地域のニーズを大事にして進めたい」
 法人化も目指し、9月4日(火)には郡山でプロジェクトの設立式をする予定だ。継続的な支援を求めている。支援会員(個人会員年額1万円以上、団体会員 年額3万円以上)。献金・カンパも随時受け付ける。
 ゆうちょ銀行口座記号番号18150・32195191、口座名称フクシマケンキリストキョウコドモホヨウプロジェクト。店名八一八(ハチイチハチ)、店番818、普通預金、口座番号3219519。携帯:080・2341・9940(事務局)、Email:office@fukushimahopeproject.com、URL:http://www.fukushimahopeproject.com/

◎シンガポール:14億円流用容疑のコン・ヒー牧師逮捕−−「繁栄の福音」に地元教会も厳しい見方=120

 シンガポールで最大のメガチャーチ、シティハーベスト教会(信徒数3万3千人)の創立者コン・ヒー牧師ら幹部5人が6月下旬に逮捕されたことが波紋を呼んでいる。容疑は、多額の教会資金を同牧師の妻でポップシンガーのホー・ヨースン氏の音楽活動のために流用したというもの。ホー氏は活動の拠点にしている米国で豪華な暮らしぶりが伝えられる。同教会の副理事長や経理責任者らも、信託義務違反を共謀した罪で起訴される、と同国メディア「アジアエックス」は報じた。最高刑は終身刑。
 内部通報に基づき、警察の商事調査局(CAD)と、チャリティー・コミッショナーが2年前から調査を進めていた。同教会は慈善団体として登録している。
 COCによると、コン・ヒー容疑者らは非キリスト教徒への働きかけのため、歌手のホー氏を利用するプロジェクトを推進、07年から10年間に少なくとも2千300万シンガポールドル(約14億円)の教会資金を流用したとされる。寄付金をマレーシアのクアラルンプール支部に移し、ホー氏およびコン・ヒー容疑者の経費を捻出するため多目的口座を設け資金を移転したことが違法とされた。
 これに対しゴスペル・イリュージョンで知られる同国の牧師ローレンス・コング氏は、まだ有罪が確定したわけではないとして、早まって断罪せずに祈るよう各方面へ要請した。
 しかし同国の福音派教会の受け止めは総じて、コン・ヒー牧師の行き方に批判的だ。同国福音派はカリスマ運動に親近感を覚える傾向が強いが、批判はコン・ヒー牧師がカリスマ派だからではなく、「繁栄の福音」を推進してきたことによる。「繁栄の福音」の考え方では常に拡大・成長することを理想とし、リーダー像は概して支配的・専制的になる。この世での成功、物欲の追求が倫理的な問題を生じることも多く、聖書的な「仕える」リーダーとは異質だと指摘される。一昨年の第3回ローザンヌ世界宣教会議でも危険性が警告された。

◎「君が代・日の丸」の何が問題?−−諸教派共催で「君が代強制反対キリスト者のつどい」=1208120

 東京・大阪の公教育の現場で「君が代」起立斉唱が処罰を伴う職務命令となる中、昨年大阪で始まった「君が代強制反対キリスト者のつどい」が今年7月13日、東京でも新宿区の早稲田奉仕園スコットホールで開かれた。
 代表の星出卓也氏(長老教会・西武柳沢キリスト教会牧師)は趣旨を、「抗議運動としてではなく、サイレント・マジョリティー(物言わぬ多数派)に向けて、何が問題なのか、ゆっくり、じっくりと知ってもらい、祈る場とした」と説明する。キリスト教史から山口陽一氏(東京基督教大学)、学生、若者伝道の働きから山崎龍一氏(キリスト者学生会総主事)、教育現場から岡田明氏(東京都立高校教諭)が講演した。
 山口氏は内村鑑三の一高不敬事件、柏木義円の臣民教育批判、南原繁と教育基本法を紹介した。この3事例から、統治のために教育に儀礼強要を持ち込む愚かさ、人のための国であり教育であること、教育への行政の不当介入を拒む思想を学ぶことができる。しかし1958年の学習指導要領改訂では学校行事での「君が代」斉唱、「日の丸」掲揚が推奨され、89年に新学習指導要領で義務化、99年には国旗国歌法が成立。06年の教育基本法改正では、「行政に従わない教員を排除する論理に逆転した」。
 かつての国家儀礼が「日の丸・君が代」に集約されている今、内村の小さなこだわりを継承する教員たちが良心を守り育てるため教育公務員としての本来の仕事をしているのであり、教会はこうした教員と共に祈り歩むべきだと山口氏は言う。
 山崎氏は、「日の丸・君が代」に対して教会が様々な恐れから「難しい問題」と表現し、「判断をあいまいにしてしまっている」と危惧する。「政府見解では『君が代』の『君』は天皇のこととする。『君が代』は『天皇の治世が永遠に続く』ことを歌うことになり、クリスチャンにとって明らかに罪」と断言した。「何が本質かあいまいにすることで、若者が本質を見極める力を失い、信仰は社会では通用しないと考え、地の塩として生きることをあきらめてしまう」と教会の将来を憂い、教会で歴史を伝えること、戦時中を知る先輩と対話することを勧めた。
 岡田氏は、昨年から最高裁で判決が相次いだ「君が代」関連裁判の経過を説明。03年に都立校に行事での国歌斉唱、国旗掲揚とそれに従わない場合の処分について通達が出されたことに対し、岡田氏は反対する教員らと共に、処分を予防する通称「予防訴訟」を起こしたが、結果は敗訴。一連の「君が代」関連裁判と同様、判決では反対意見や補足意見の中で強制への疑問や処分の行き過ぎに触れたが、「一定の歯止めはかけたと評価されるが、処分を違憲としなかった点で不当な国策判決」。また不服従教員の処分取消を求めた裁判では、原告の1人は停職取消が認められなかったことから、「狙った人物には停職も出せる恐ろしい判決」と批判した。
 学校では「右翼的な愛国心というよりは、マネージメントが主流。成果を数字で求められ、人が人格として考えられなくなる。言うことを聞かない教員は排除される」。団塊の世代が退職し、問題に関心を持つ同僚が減る中で、クリスチャン教員がこの問題について連帯していることを述べた。
 「下手すれば失職の恐れもあるピンチではあるが、チャンスでもある。告白することで、信仰が鍛えられる。保護者ならばPTAに関わり、卒業式や始業式にも参加して現状を見てほしい。牧師は『日の丸・君が代』について神学的検討をしていほしい」と願った。
 改革派西部中会世と教会に関する委員会、日本長老教会社会委員会、日本同盟基督教団「教会と国家」委員会、日本ホーリネス教団福音による和解委員会の共催で開いた。