[CSD]2012年9月16日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年9月16日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎相馬・南相馬 福島原発30キロ圏で続ける礼拝——長引く閉塞感と不安

 = 2 面 ニュース=
★植民地時代に朝鮮を愛したキリスト者官吏 浅川巧——説教を真剣に聴き 皇国の教会を批判
★9・1集会:関東大震災時の朝鮮人虐殺 史実に迫る——「新在留管理制度は人権後退」と警鐘
◎高倉健主演「あなたに」が モントリオール世界映画祭エキュメニカル賞特別賞を受章
★<落ち穂>俳優・高倉健の『沈黙』への思い入れ

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[26]主流と本流 記・柏木哲夫
★豪ヒルソング教会B・ヒューストン主任牧師迎えカンファレンス——創立10周年記念にジーザスライフハウスインターナショナルチャーチ主催
★国際:ロシア正教とポーランド・カトリックが和解の共同声明
★<オピニオン>沖縄返還40年に思うこと 記・渡辺敬直
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 全面広告=
☆2012 世界食料デー(10月16日) ハンガーゼロの世界を目指して…平和と飢餓
公式サイト http://www.jifh.org/

 = 6 面 仕事と信仰 =
★山本精一さん([株]石俊 山本石材店社長)[下]——「信仰、希望、愛…これしかない」
★<首都圏大震災に備える>[2]——いつ起きても不思議ではない東京大震災 記・栗原一芳

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[22]同盟基督・那須高原教会?——世界宣教につながる宿泊施設
★ケープタウン決意表明(44)パート?解説——私たちが仕える世のために(22)

 = 8 面 ひと =
◎玉真友紀子さん(Tamama Music Ministries代表)——福音を歌に乗せて伝えたい


 = ?—?面 別刷クリスチャンライフガイド =
★キリスト教学校の礼拝説教と聖書の学び――聖書のことばがいかに語られるか=1209160901
★卒業後の生き方に関わる聖書教育=1209161002
★「神のことば」を取り次ぐための教育=1209161003
☆神学校案内

◎相馬・南相馬 福島原発30キロ圏で続ける礼拝−−長引く閉塞感と不安=1209160101

 福島県相馬市・南相馬市や双葉郡(いわゆる相双地域)は南を福島第一原子力発電所、西を放射線量の高い山間部、東を海に囲まれる。放射能問題による不安とともに、支援も少ない。自宅に帰れず仮設住宅に住む人、避難先から戻った人、避難先にとどまった人など状況は様々だ。この地域の教会は複雑な思いを抱えつつ礼拝を続ける。

相双支援の拠点で
イエスの香り放つ
  相馬市の同盟基督・相馬キリスト福音教会で3月まで同教会牧師だった後藤一子氏は、本格的な支援活動の必要から、福島県キリスト教支援連絡会(FCC)と日本同盟基督教団より要請を受けて専任で支援コーディネーターを務める。代わって原町で牧会経験があった葛西清蔵氏が相馬キリスト福音教会と南相馬市の同・原町キリスト福音教会の牧師を兼務しつつ協力している。
 震災後、相馬キリスト福音教会は信徒で県外へ避難する人がいた一方、原町キリスト福音教会から13人の信徒とその家族の宿泊を受け入れた。
 相双地域は三方に交通の難があり、放射能の不安があるため支援は少なめだ。後藤氏はFCCと仙台キリスト教協議会被災支援ネットワーク(東北ヘルプ)に支援を呼びかけた。福音歌手の森祐理のコンサートを昨年9月に実施すると、小さな仮設住宅の集会所は人で埋まった。これをきっかけに支援が加速し、様々なボランティアが協力し、仮設住宅訪問をした。現在は7か所で毎月慰問イベントを行っている。
 苦労もある。支援団体から大量の水が送られたものの、配る人材がいなかったということがあった。ある宣教師が「伝道活動」をしてしまったため、仮設住宅から拒絶されたこともあった。後藤氏はその後、謝罪と説明をした。それまでの信頼もあったため関係は回復している。
「エホバの証人が神のさばきを強調して恐怖を煽る小冊子を配布している。住人から質問があるが、聖書の正しい理解を伝えると、安心してくれる」と葛西氏。また「何回か支援をしていると、向こうから話しかけてくれる。支援はキリストの香りを放つ機会。人が人を救うことはできない。聖霊が働いてくれる」と実感している。
 相馬・南相馬両市内42
の仮設住宅団地には主に原発近くの町村から人々が移り住む。だが期限は3年。内陸だが放射線量が高く全村避難をした飯舘村の男性は「除染や補償が未定で計画を立てられない。農地は荒れたままで、貸すか、山にするしかない。高齢者は農業をあきらめ、若者は会社勤めを希望して流出するだろう」と将来の不安を漏らす。

戻りつつある日常
放射線不安の中で
 相馬市の日基教団・中村教会は震災で牧師館の柱がゆがんだ。放射能汚染の心配もあり、建て替えをする。中庭のブランコや滑り台は近所の子どもたちの遊び場だったが、放射線量が高めで使用不可となった。
 生野碩保牧師は「震災直後は多感な高校生らが教会を訪ねたこともあった。今は相馬市・南相馬市に震災復興のため工場職員や大工として来たらしい中国や韓国の若い人が礼拝に参加され、主をともに賛美し、楽しい賑やかな時を持っています」と現状を話す。
 南相馬市の日基教団・鹿島栄光教会は震災で天井が崩落。屋根・壁も損傷した。教会に集う5家族のうち2家族が家を建て直した。2家族がまだ改築が必要だ。
 佐々木茂牧師は不安の中で信徒と地域の人々に向き合う思いを語った。「単に信者を増やすだけではなく、あなたは愛されている、造られた存在というメッセージを伝えていきたい。礼拝では言葉で、それ以外の場では行動で。普通の人間として神様に愛されている姿を見てもらい、同じようにあなたは愛されていると伝えていきたい」
 原発から20030キロ圏内の同市原町区は昨年4月末に屋内退避が解除、10月1日に緊急時避難準備区域が解除されて日常が戻ったが、町に子どもや若者は減っている。
 単立・原町聖書教会は震災後、大部分の信徒が避難したが、認知症や障がいの家族を抱える信徒たちは避難できない状況だった。石黒實・素枝牧師夫妻は、信徒とともにとどまる決心をする。現在は、避難先に住む20代の信徒2人を除き全員が戻り、礼拝が続く。
 石黒牧師はセルフサポートでブライダル、病院の夜間当直の仕事をしていたが震災後、職を失った。だが「多くの教会の尊い献金で支えられている。カラスをもってエリヤを養った主は私たちをも養ってくださっていることを感謝しています」と語る。
 日基教団・原町教会の朴貞蓮牧師は元々昨年4月に就任予定だった。震災後、周囲には赴任に反対する人もいた。迷いながら韓国へ一時帰国。祈り、両親と相談する中で赴任を決意する。
 原町教会では当初信徒2人以外は避難。3月末には前任牧師を送別し、その後信徒のみで礼拝を続けた。朴牧師は4月末のイースターから着任した。現在は幼い子を持つ家族など8人が県外に移住。一方、子どもがいても仕事のためにとどまる信徒もいる。隣接する付属の聖愛保育園は震災前は園児が約100人いた。震災後は30人ほどに減ったが、公立の保育園が閉じたので、子どもが転入して今は68人が通う。
 放射能問題については「大丈夫だ」「不安だ」と意見が分かれオープンに話せない。「とどまって頑張るべきとは強要しない。だがもしとどまるのだったら、自分、家族を護るため、しっかり生活してほしい」と朴牧師は心遣いをする。説教についても「希望は必要だが、とどまることを促す希望と信徒が受け止めていないか不安だ。それぞれで考え、神様が示す道筋を見いだしてほしい。神のことばを取り次ぐ私の考え方も流されないようにしたい」と思案する。 

◎高倉健主演「あなたに」が モントリオール世界映画祭エキュメニカル賞特別賞を受章=120916020

 【CJC=東京】第36回モントリオール世界映画祭(カナダ)で9月3日、高倉健主演の映画「あなたへ」(降旗康男監督、英語題名は「デアレスト」)が、キリスト教関係の審査員が選ぶ「エキュメニカル賞」特別賞を受賞した。コンペ部門のグランプリはトルコ映画「ホエア・ザ・ファイア・バーンズ」。高倉は1999年に「鉄道員(ぽっぽや)」で最優秀男優賞を受賞して以来の同映画祭での受賞。
 「エキュメニカル賞」は1974年の「カンヌ映画祭」から、公式審査のほかにキリスト教映画製作者、批評家などの関係者の働き掛けで実現した審査制度。「人間の神秘的な深みを、その希望だけでなく傷、失敗なども含めて表現するフィルムの力を示す芸術的な質を持った作品を顕彰する」ことを目的としている。今回、本賞はドイツ・イスラエル合作の「季節の終わり」(仮題、フランチスカ・シュロッテラー監督)が受賞した。
 「エキュメニカル賞」審査員は6人。カトリック側はSIGNIS、プロテスタント側は「インターフィルム」が指名する。カンヌのほか、ベルリン、ロカルノ、モントリオール、カルロビバリの映画祭でも「エキュメニカル賞」が設定されている。
 SIGNISは2001年、メディアを使って、キリストの福音を広めようと活動しているカトリック2団体が合併設立された。
 「インターフィルム」は1955年、独、仏、蘭、スイスのプロテスタント映画関係者によって設立された。今日では聖公会、正教会、ユダヤ教関係者も参加、世界教会協議会(WCC)の関係団体になっている。

◎玉真友紀子さん(Tamama Music Ministries代表)−−福音を歌に乗せて伝えたい=

 6月8日夜の港区高輪区民ホール。ソプラノ歌手・玉真友紀子さんは日本でのファーストリサイタルを開催した。英文学を専攻し九州大学大学院を修了した後、フランスのソルボンヌ大学などに留学した才女が、パリで学び、そして得たものは賛美歌・聖歌、オペラ、フランス歌曲などの歌と、夫・義雄さんとの出会いだった。そして何よりもイエス・キリストとの個人的な出会い。先日、Tamama Music Ministriesを起ち上げて、人生の進路を決定づけた出会いの一つ、「福音を歌に乗せて伝える」働きへと確実な一歩を踏み出した。

 白地に金糸で刺繍したドレスで登場。初リサイタルのオープンニング曲は、日本語で「人生の海の嵐に」(聖歌472番)。1曲ごとに退場し、司会者が御言葉や彼女の証しと曲との触れ合いなどを語っていく。前半の最後に歌ったウェッバーの「ピエ・イエス」では透き通るような高音と優しさを含んだ玉真さんらしい味わいのピュアなソプラノが会堂に響く。


フランスで出合った
?歌?と主イエス様
 先にフランスに留学していた先輩声楽家の紹介を得て、ラジオフランスソリストのジェラール・ケネとパリ・オペラ座ソリストのエンツォ・ラセルヴァに師事。「本格的に歌と出合いました。お二人とも素晴らしいクリスチャンで、いつも祈りを大切にされ、敷居の低い謙遜な先生で、ほんとうに感謝な出会いでした」
 14歳の時に受洗していたが、「人格的にイエス様と出会い、救い主として受け入れたのもフランスでした。それからは、ほんとうに御言葉に導かれて歩むという経験の日々でした」。
 もう一つ、人生での大きな出会い、夫の義雄さんと出会ったのもフランス。「夫は、5代目のクリスチャンでお互いにパリの教会では顔見知りでしたが、個人的に出会ったのは声楽のレッスン教室でした」
 この出会いにも、賛美と音楽がつながりを導いている。留学の日々や帰国してからの出会いと進路の節目でも、御言葉と賛美の花車が導いてきた轍の跡のように恵みの深みを感じさせられる。
 07年に帰国し主の導きを祈り求める。その翌年、詩篇33篇105節の御言葉を通して賛美で福音を伝える働きへの召しと賛美を主に献げて仕えていくビジョンを受け取った。10年に日基教団・霊南坂教会チャペルコンサートで日本でのデビューの機会が与えられた。


出て行って福音
を伝えなさい
 一般の芸能プロダクションに所属していた。「テレビや映画、舞台などで様々な表現の仕方や人前に出て演技することを随分厳しく鍛えられました。実力に対して正直な世界でしたので、とてもいい勉強と経験になりました」。だが、昨年末に「出て行って福音を伝えなさいとの御言葉を示されて、『福音を音楽に乗せて伝える働きをしたい』と、プロダクションには正直に言って」辞めた。
 6月のファーストリサイタルへの準備を通して、改めて「神様は私だけの声を造ってくださり、歌に福音を乗せて伝えようとしていますが、聴いてくださる人の心に届けているのは、主の御霊の力。何かスパイスのような大切なものを込めて届けてくださっている。私のDoingではないなぁ。主が造ってくださった私はBeingでよいのだ。主が私だけに造られた声を使っていただきたいと、主にお委ねすることができた」。その開放感が、様々なプレッシャーから解き放ち、リサイタルに臨むことができた。初リサイタルとミニストリーの起ち上げへのビジョンと具体的な準備は、「徹底的に私を主に明け渡す決断をする」ことを経験させ、いまも「主よ。私を御元に引き受けてください。私は、あなたに全てを委ねます」という祈りを献げて日々が始まる。
 Tamama Music Ministries(タママ・ミュージック・ミニストリーズ)は、産声を上げたばかり。これから宗教曲や賛美歌、フランス歌曲などの演奏活動を展開する。また「リビングプレイズに励まされてもいますので、クラシカルな歌での聴けばデボーションになるようなCDを作らせていただければ。声楽を教えさせていただければ、歌うこと、呼吸法がほんとうに人の心に解放と喜びを与えることを伝えたい」と願っている。
 「正しい者たち。主にあって、喜び歌え。賛美は心の直ぐな人たちにふさわしい」(詩篇33・1)。この御言葉から与えられた、歌に福音を乗せて主を伝えていく働き。「歌うことは、私にとっては神様に従うことであり、イエス様に従うことなのです。それがないと、毎日の練習やさまざまな準備を続けていくことは、チョットできないと思います」。さり気なく、賛美と歌で主に仕える働きの厳しさを語りながら心からの笑顔が絶えない。「心の直ぐな人たちにふさわしい」働きだからなのだろう。