[CSD]2013年2月10日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年2月10日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎テロも暴動鎮圧も?神の名?で——アルジェリア人質事件の舞台 北アフリカの危機
★キリスト者迫害がアフリカで強まる

 = 2 面 ニュース=
◎マンガで自殺予防 被災地にキャンペーン——心の傷痕ケアする中で イエス様に触れる
★震災で壊れたヴォーリズ建築 福島新町教会の会堂修復完了——多くの祈りと献げ物で往年の姿を保全
★エジプト コプト教徒への襲撃が激化に
★<落ち穂>来年の大河ドラマ主人公 黒田官兵衛の信仰

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[43]聞くと聴く 記・柏木哲夫
◎隣国で実を結ぶ福音宣教がなぜ日本でうまくいかぬ?——KJ法で読み解く好対照
★<オピニオン>体罰を問う|「忍耐・説明・対話不要」の落とし穴 記・水谷 潔
★<情報クリップ>催し情報

 = 4・5 面 2・11特集/憲法「改正」で信教の自由どうなる?〈後篇〉=
★迫る「憲法改正」どこが危険か——改憲潮流の根本問題 記・城倉 啓
★各地の2・11集会

 = 6 面 仕事と信仰 =
★加藤 孝子さん([株]ミクシィ常勤監査役公益社団法人日本監査役協会理事)[上]——「いつも笑顔でいよう」と心掛け
★<もしドラ>[26]メガチャーチ(1):——ドラッカーはなぜメガチャーチを支援したのか? 記・千葉雄志

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>?寄り添う[38]JBBF・港北ニュータウン聖書バプテスト教会?——弱い者への愛から福祉の実践
★<神の宣教>神のことばを神の世界へ[16]—— クリストファー・ライト講演抄録

 = 8 面 インサイド ニュース =
★世界宣教に用いられるアート——神は想像性を求めている バイロン・スプリランド氏来日



◎テロも暴動鎮圧も?神の名?で−−アルジェリア人質事件の舞台 北アフリカの危機=1302100101

 アルジェリアの悲報を東アフリカ・タンザニアにおいて心を痛めながら聞いています。故郷から遠く離れたアフリカ灼熱の地で懸命に生き、働いておられた方々が、道半ばで全く思いがけなく暴力により働きに終止符を打たれる。仲間の命までも奪われる。何ということでしょう。残されたご家族、近しい方々の悲しみはどれほどでしょうか。主が慰めてくださるようにと祈ります。
 イスラム武装勢力と呼ばれる彼らの行動の背景は多様です。直接的には隣国マリでの反政府武力行為にフランス軍が介入したことがあげられています。民主政治のマリをイスラム国家に変えようと北部から繰り広げられていた殺戮と破壊行為に対し、助けを求めたマリ政府への応答でした。しかし、介入中止を求め、他国で人質を取るとはお門違いもはなはだしい。亡くなられた人々を思うと強い憤りを覚えます。
 そして諸国の武装勢力が事件を起こすために容易に結託することも原因でしょう。武器が巷にあふれ、実際に銃を手にし、使用する機会があることも大きな問題です。しかし、これは北アフリカ諸国に限らず、政情不安定なアフリカ諸国ではみな同じです。また先進国アメリカでも銃を使った事件は後を絶ちません。さらに耐え難い貧困や欧米企業による「搾取」への怒りも武力勢力へ若者たちが引き寄せられる大きな要因でしょう。
 『オペレーション・ワールド』によると、事件のあったアルジェリアは97%がイスラム教徒(ムスリム)で、クリスチャンは0・28%です。実は近隣の北アフリカ諸国も軒並みに圧倒的にムスリムが多いのが現状です。今回の事件の要因の一つと言われるマリが87%、ご存知のリビアで97%、チュニジアでは99・37%、モーリタリアが99・75%、そしてモロッコに至っては99・88%です。もちろん、信奉度合は人それぞれで、名前だけムスリムという人々も少なからず存在するでしょう。しかし、徒党を組めば構成メンバーは皆ムスリムということになります。そして自分たちの行為を正当化させるために、また求心力と結束力を高める効果を出すために、共通の信仰対象であるアラーの名を掲げるのです。
 多くのムスリムにとってイスラム教は金曜日の礼拝だけの信仰ではありません。教えにそって衣食を選び、習慣的に日常会話の端々にコーランの一節を引用します。生活・文化・社会のあらゆる面で大きく影響を与えているのです。一部の狂信的集団(ムスリム)によるテロ行為で一般住民(ムスリム)も巻き添えを受け、住む家を追われ、仕事を奪われていきます。
 内戦の続く中東シリアでは攻撃を加える政府軍兵士は「アラーは偉大なり」と叫びつつミサイルを発射し、反政府勢力や住民は「アラーは偉大なり」と叫んで逃げまどい、死んでいくのです。アメリカで作られた映画がイスラム教の預言者ムハマドを侮辱するものだと中東、北アフリカを中心に起こった暴動はまだ記憶に新しいですが、暴動を起こしている人々をなだめて解散させている警官や一般市民たちの姿がありました。両者ともにムスリムです。
 昨今私たちの住むタンザニアでは以前にはなかったような暴動が各地で起きています。昨年10月には2人の少年が「コーランに放尿すると蛇に変わる」ことを試そうとしたのをきっかけに、警察署と5つの教会が焼かれました。貧富の差、政府への不満がくすぶり、外国で権力の象徴が倒され、
建物が壊される映像を見て、機会があれば自分もやってみたいという程度の動機が人々を動かしているように思います。非常に熱しやすい性質を人々のうちに見ます。
 アルジェリアにも9万9千人のクリスチャンがいます。北アフリカ諸国にもそれぞれ主を信じる民がいます。彼らが厳しい迫害においても主に守られ、主を見上げ、個人的に証ししていくことができるように祈ります。また、マリやナイジェリア等西アフリカ諸国は北部にムスリム、南部にクリスチャンと極端なまでに分かれ、中間地域は常に厳しい攻撃にさらされています。中間地域にある諸教会が主に守られ、御国の福音が前進しますように祈ります。熱しやすい人々が主にとらえられ、平和の主のために生きる人々と変えられていくように祈ります。

(寄稿=清水 担 福音交友会派遣SIMタンザニア宣教師)

◎マンガで自殺予防 被災地にキャンペーン−−心の傷痕ケアする中で イエス様に触れる

 「マンガで伝道のきっかけづくりを」と、心のケアや自殺予防を視野に入れ制作されたマンガ小冊子『リスクライド(RR)』。これを被災地で用いようと昨年8月、リスクライドキャンペーン(RRC)プロジェクト実行委員会が発足。8月から12月まで5か月間RRをアピールし、それに応答した被災地の諸教会がRRを注文。RRを用いるためのトレーニングも実施された。

物語から質問通し 神のすばらしさ証し
 RRはケンジとシンという2人の青年の物語。会社をクビになり、ガールフレンドにも振られるケンジ。少年の頃、両親に拒絶された思いも彼を襲う。自殺を決心した同じ頃、人生を楽しく自由に生きているシンと出会う。シンはケンジを海岸のバイク旅行に連れ出し、3つの質問をする。この質問が奥底に秘められた傷に気づかせ、ケンジを救うことに…。原作者は著述家、カウンセリングトレーナーで同プロジェクトリーダーのアンディ美湖氏、画はマンガ家のケリー篠沢氏だ。制作理由について美湖氏は「私の体験では日本では傷跡から入り、ケアする中でイエス様に触れてもらうのが効果的なアプローチと考えた。物語には実際にあったエピソードを盛り込んだ」。
 キャンペーンでは、RRを被災地の人々に読んでもらい、「ケンジのような気持ちになったことは?」「消えることのない喜びを体験したいか?」など7つの質問をする。必要に応じ、神様のすばらしさに関する個人的証を1分間分かち合う。
 5か月にわたるプロジェクトでは?仙台でRR紹介セミナーイベント実施、?札幌や東京でライブイベント開催、?石巻、気仙沼、南三陸の牧師会でアピール、?日本福音同盟(JEA)の集会、All Nations Returnees (ANR)カンファレンスでアピール、?福島、岩手の諸教会でRRトレーニングを実施。12月には和歌山県白浜町で三段壁を訪れる自殺志願者を保護し自立支援の活動をする藤藪庸一氏(NPO法人白浜レスキューネットワーク理事長)を招き、「自殺予防の現状と課題」と題し仙台市の日基教団・東北教区センター・エマオで講演会を開いた。
 福島でのトレーニングでは、RRが一人の男性に触れたと美湖氏。「彼は3度自殺未遂をした。そんな彼の心にRRは触れた。特にすべての苦しみを受けとめてくれる存在を知ったケンジが、別れた彼女のアパート前に一輪のバラを置いていくラストシーンが、心に残ったそうです」
 これらの活動を通じ、「被災者の心のケアに用いたい」と4,600部の注文があった。
 だが、活用の意思はあるものの具体的な実践例の報告は少なく、活用はこれからの段階だ。保守バプ・塩釜聖書バプテスト教会の大友幸証牧師は「自殺志願者に出会った時のためのリソースの一つとしてRRを用いたい」と語る。
 2月には英訳のRRもでき、英語圏の国々でも活用していく。美湖氏は「東北での心のケアと自殺予防の必要性を痛感している。ぜひ被災地の教会が被災者の方のケアのためRRを用いてほしい。被災地だけでなく日本各地、世界で用いていただきたい」と願う。 http://www.riskride.net/

◎隣国で実を結ぶ福音宣教がなぜ日本でうまくいかぬ?−−KJ法で読み解く好対照=1302100302

 文化人類学者の川喜田二郎氏が考案した手法である「KJ法」という研究方法を採用し、5人の現役伝道者(代表・鈴木崇巨・日本基督教団牧師、聖隷クリストファー大学教授)が「日本ではなぜ福音宣教が実を結ばなかったか」という研究テーマをまとめて小冊子にしてくださいました。この論文は研究者自らの自己反省を目的とした研究であることを前提としており、とても興味深いものです。長年日本宣教における1%の壁を超えることの難しさに苦しんでいる日本国内外の宣教関係者に新たな参考資料として用いられると期待します。
 5人の研究者によって出された393個のデータ・カードは、「日本ではなぜ福音宣教が実を結ばなかったか」という問いについて、3つの結論にまとめられました。「日本の教会がキリストの心を具体化していない教会であった」「教師・指導者が未熟であった」「クリスチャンを含めた日本人が島国的劣等感の束縛から解放されていなかった」
 この3つの結論について5人の研究者はそれぞれの補足的な論文も提示し、読者の興味を引き起こしています。「日本の教会にある律法的要素を排し、福音の真理の総合理解による新しい皮袋の創造が必要である」「福音の魅力を真にホーリスティック(包括的)なものとして人々に提供すべきである」「真剣に祈るための命賭けの聖書の学び、牧師・指導者の継続教育、IT革命のような外圧が求められる」「悪循環を好循環に変える牧師像の転換が求められる」「キリスト教世界観に立つ教会の刷新が求められる」|以上のような提言がされており、日本宣教を考える人であるなら、ぜひ一読いただきたい内容です。
 また非常に対照的ですが、儒教の国と言われていた韓国が、わずか30年の間になぜキリスト教国になったかを取り上げ、現場取材と膨大な資料を分かりやすくまとめてくださった本『韓国はなぜキリスト教国になったか』も同時に出版されました。この本は日本宣教の課題を「KJ法」でまとめた鈴木崇巨氏が、その課題の答えを韓国教会から学ぼうとする思いが感じられる力作であると言えます。
 著者は韓国のキリスト教徒が急増した背景にはそれなりの要因があるとし、そのデータを50の項目に分け、その主な内容を次のようにまとめました。「キリスト教徒の熱心な祈りがあった。過去の殉教者の流した血がよい証となった。医療や社会福祉、教育の分野でキリスト教徒がよい影響を与えてきた。牧師たちが熱心に働いた。信者たちが熱心に聖書を学び、熱心に伝道した。ネヴィアス方式の伝道がよい効果をもたらした。韓国民族は高潔な精神を持つ民族であり、キリスト教を受け入れやすかった」
 また、50項目のキリスト教徒急増の要因を「KJ法」によって調べた結果として次の3つの結論にまとめています。「キリスト教という宗教そのものが韓国の人々を惹きつけた」「純粋な心を持った韓国人の民族性がキリスト教に合致した」「殉教の歴史から来るキリスト教徒への国民の信用があった」
 著者はこの3つの結論を、歴史的なデータと現場取材を通して確かめる論法で執筆しています。未信者には韓国社会の理解に大いに役立ち、またキリスト教信者には日本宣教の突破口を見いだすよい参考書になるのではないかと思います。ぜひ多くの方々に熟読してほしいと願います。
(評・趙南洙=日本同盟基督教団招待キリスト教会牧師)