[CSD]2013年5月26日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年5月26日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎震災から学ぶ包括的宣証——日本ローザンヌ委員会が3年連続シンポジウムを開始
★北朝鮮:韓国系米人旅行者に懲役15年——キリスト者として人道問題で訴え?

 = 2 面 ニュース=
★流浪の旅路から2年2か月——福島第一聖書バプテスト教会 いわき市で涙の献堂式
◎現地教会活動の後方支援へ移行——クラッシュジャパンが被災地への80カ国3千人ボランティア派遣を感謝報告
★「核兵器の人道的影響に関する共同声明」署名拒否の政府——同盟基督教団「教会と国家」委員会が抗議声明
★米国:世界で「信教の自由」が激しく脅かされている——独立組織「国際宗教の自由委員会」が発表
★<落ち穂>キリシタン論を記述した海援隊発行『閑愁録』

 = 3 面 =
★新連載<フクシマの声を聴く>[2]母たちからの声?——食べさせていいの? 記・中尾祐子
★Book:『震災復興と宗教』稲葉圭信、黒崎浩行編著(明石書店、2,625円)——「無縁社会」における社会関係資本としての宗教の意義を問う
★<オピニオン>自死遺族と悲しみを共有し 共に泣く教会 記・碓井真史
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4 面 全面広告=
☆愛と赦しと癒しの聖会~日本民族総福音化運動協議会創立10周年記念~
6月24日(月)~26日(水) 会場:JR王子駅前「北とぴあ」14Fス階ホール

 = 5 面 神学=
★「神の忍耐の時」の中で、苦難の救い主に仕える——リチャード・マウ氏講演抄録?
★「福音主義とは何か」~我々は何処から来たのか~——福音主義神学会東部部会研究会(6月17日に)
★国際:ヘロデ王の墓復元計画を撤回

 = 6 面 関西だより=
★「不可能は朝鮮となる」に倣おう——生駒聖書学院で創立者クート宣教師来日100年聖会
★キリスト教主義で学ぶ意義知って——大阪キリスト教学校フェア開催
★信仰・希望・愛語る——JMC主催宣教大会
★「心がきれいになる」——好評の聖句書道展

 = 7 面 伝道・牧会を考える=
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>?[50]EEAM・富士クリスチャンセンター鷹岡チャペル?——「受洗者は神様からのご褒美だと…」
★<憲法が変わるってホント?>[7]学校の裏の「必須科目」——体罰・イジメがなくならないわけ 記・岡田 明

 = 8 面 インサイド・ニュース=
◎中国宣教を日本で——日本初、全国規模で華人伝道大会を開催




◎震災から学ぶ包括的宣証−−日本ローザンヌ委員会が3年連続シンポジウムを開始=1305260101

 宣教と福音のホーリスティック(包括的)な理解を世界に提起してきたローザンヌ運動が提示する今日的な宣教課題を、日本にどう適用していくかを探ろうと、日本ローザンヌ委員会(金本悟委員長)が3年計画で、「包括的な日本宣教を考える」連続シンポジウムを開始した。2010年10月に南アフリカ・ケープタウンで開かれた第3回ローザンヌ世界宣教会議の『ケープタウン決意表明』は、「私たちが仕える世のために|行動への呼びかけ」として、世界の教会が直面する6つの宣教課題を挙げた。その中から、第1回シンポジウムでは「他の信仰を持つ人々の中でキリストの愛を生きる」をテーマに、伝統的宗教や習俗が根強い東日本大震災の被災地で支援に携わってきた中から問題提起を受けた。【取材協力・行本尚史】

 第1回シンポジウムは5月11日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで行われ、教団教派、神学校、伝道団体、一般から教職・信徒60人が参加。南三陸町を支えるキリスト者ネットワーク世話役の中澤竜生氏(基督聖協団牧師)が支援の現場から、福音伝道教団の支援グループイザヤ58ネット代表で同教団牧師の鈴木真氏が被災地支援の経験から地域宣教の問題を、インターナショナルVIPクラブ代表の市村和夫氏が世界宣教の現場で提起されている他宗教の文化の中に入って証しする宣教運動「インサイダームーブメント」について発題した。
 中澤氏、鈴木氏が震災支援で関わってきた宮城県南三陸町は、沿岸部一帯が津波で壊滅的な被害を受けた。漁業の町で竜神信仰が根付いている。過去にキリスト教の伝道所が始まったことはあるが撤退し、教会がなかった。震災後、多くの教会関係者が支援に入り、その親身な姿勢が評価され地元の要請でプレハブのクリスチャンセンターができた経緯がある。
 だが中澤氏は、「(南三陸町に)教会を建てるのは非常に難しい。その地にずっとなじんできた宗教があり、講というしくみがある」という。あるクリスチャンが仮設でトラクトを配り「お祈りさせて下さい」と言ったら、
「けっこうです。ひざを交えて話したことのない人に祈ってほしくない」と断られた例を紹介。「相手の心を見て地域と関わって良い関係を築き上げなければ関係が続かない」と語った。
 センターが祭りへの協力を頼まれて賛否が分かれ、偶像礼拝に関わらない範囲で協力すると決めたこともある。「自分がイエス様を信じているその志は決して譲らない。だが、イエス様の愛をできるだけの表現で表す」という姿勢だ。
 「自分たちの宗教を伝え南三陸町に教会を建てるということよりも、私たちが神様から与えられた良いものをもって地域の共同体に働きかけていきたい」と結んだ。
 鈴木氏は、「震災支援の経験を通して考える足元の宣教 |『よき業』を通して文化への浸透をはかる福音提示の提言」と題して発題。南三陸町に江戸時代からの伝統として今も残る、相互扶助と地域の宗教行事が絡んだ仲間ネットワーク「講」について説明した。講に入らない者は生涯よそ者扱いされるという。
 そこで同氏は、「(南三陸町で)伝道をするという時、個人を決心させるだけでは済まない。個の確立に基づく従来の欧米型の伝道論には限界がある」と指摘。震災でコミュニティーの再創造が求められている中で「ソーシャルキャピタリズム(社会関係資本)としての教会の役割に注目すべきだ。それが包括的福音の実践の場ではないか」と問題提起した。
 また、異教社会の日本で教会が世に対して断罪的分離型になっていることに再考を促し、「よき業を通して宣証する、生き方を示していく伝道」を提唱。「震災で多くの教会が社会貢献に関わった経験を自分の足元の宣教に生かすことが、よき業につながる」と述べた。
 市村氏は、「宗教を替えないでその宗教の中に留まったままイエスを信じ、
中の人々に福音を伝えている例が日本にもある」と指摘。「私たちは注意してこのムーブメントを見ながら日本の今後の宣教を考えていく必要がある」と語った。
 発題を受け、参加者らは小グループで討論。「教会に合う人を集めてきた体質をどうしたら変えられるか」「教会が講になっている壁を破れない」「日本的キリスト教になろうとして教会がナショナリズムに加担した負の歴史がある。譲れない線をどこに引くか」「強烈な個の確立がないとインサイダー運動はシンクレティズム(宗教習合主義)にのみ込まれるのでは」といった発言があった。
 第2回は今年11月9日、テーマは「分断され、損なわれた世界にあって、キリストの平和を築き上げる」。今後のテーマは、▽多元的でグローバル化した世界にあって、キリストの福音を証しする、▽世界宣教のためにキリストのみこころを見分ける、▽キリストの教会を謙遜と誠実と質素へ呼び戻す、▽宣教における一体性を目指す、キリストの体の内部における協力。

◎現地教会活動の後方支援へ移行−−クラッシュジャパンが被災地への80カ国3千人ボランティア派遣を感謝

 5月11日で東日本大震災から2年2か月を迎えたクリスチャンの緊急支援ネットワーク「クラッシュジャパン(以下クラッシュ)」(ジョナサン・ウィルソン代表)は10日、感謝報告会を東京・東久留米市新川町の松川プレイスで開いた。
 クラッシュは震災発生3日後から支援活動を開始。遠野、一関、仙台、那須(12年6月から郡山)、日立(12年6月からいわき)の5か所にベースを設けた。献金送付者とボランティアは日本を含め世界80か国に上り、これまで3千人超のボランティアを送ってきた。
 緊急支援が落ち着いた半年後からは「心のケア」「希望」を届けるプログラムへと移行し、現在は仙台と東京のオフィスを残し、各ベースの働きは各地域の教会ネットワークや震災支援ミニストリーに引き継がれた。
 ジョナサン氏は、被災地域の教会をローカルチャーチ、外からの教会、キリスト教支援団体の働きをグローバルチャーチと位置づけ、「震災時は外からの助けが必要。だが、外からの援助が長びくとローカルチャーチが支援を頼りすぎて弱くなる。私たちの働きは小さくならなければならない」と語った。
 一方、心のケアはまだまだ必要だとし、13年の活動として▽ボランティアの募集と派遣、▽ローカルチャーチや教会ネットワークが行うトラウマ対処プログラム『オペレーションセイフ』と心のケアの企画、実行をサポートする、▽東北の被災活動の様子、課題を国内外に広報する、など、被災地の教会ネットワークや震災支援ミニストリーの活動を後方支援していくと語った。
 一方、「首都圏に住む私たちがローカルチャーチになる場合がある」とも指摘。「災害により立場は代わる。近い将来、首都圏はじめ東海、東南海の都市を襲うであろう大震災に備え、教会、クリスチャン同士がいい関係をもち続け、お互い助け合えるようにしていきたい」と、次期災害準備活動にも力を入れていくと語った。
 http://www.crashjapan.com/

◎中国宣教を日本で−−日本初、全国規模で華人伝道大会を開催=1305260801

 中国が1949年に共産党政権の「大陸」、国民党政権の「台湾」に分かれて64年が経つ。天安門事件からは6月4日で24年目だ。大陸でも、世界中に離散した中国人からも多くのクリスチャンが生まれている。日中の外交関係に緊張が走る一方、日本各地の華人教会は協力して、初の中国人伝道大会を5月11、12日に東京で開いた。2日間3集会で、のべ2,910人が参加、うち241人が信仰決心のカードを提出した。

 のべ3,000人参加 241人が決心
 東京中国人伝道会(東京華人伝道会[tokyo-jcc.com]主催)は東京新宿区の単立・東京中央教会で開かれた。講師で世界的な華人伝道者の遠志明牧師(神州伝播協会総監督)は昨年に続き日本で伝道集会の講師を務めたが、「日本は宣教が困難な地だが、日本の中国人はキリスト教に心を開いている。最近の米国の中国人ではこうはならない。日本でストレス、問題が多いからこそ彼らは休み、慰めが欲しいのだ」と語った。
 集会では中国語の賛美が歌われ、会場を埋め尽くす参加者が声を合わせた。諸教会合同の聖歌隊も結成。東京芸術大学で交換留学生として学ぶ声楽家の陳金?さん、香港の歌手の鍾舒漫さんが独唱した。
 北京出身の女優で中華圏を代表する映画賞の金馬賞を受賞するなど活躍する呂麗萍さんと夫で映画監督の孫海英さんが夫婦揃って壇上に上がると、大きな拍手がわき起こった。
 呂さんは93年に東京国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞したことに感謝しつつ、今回の集会について「この場に来られたことはこの世のどんな栄華よりうれしい」と語った。孫さんは息子を病気で亡くし絶望にうちひしがれたが、新しい子どもが生まれたエピソードを涙ながらに話し、神に感謝した。
 河南省の農村出身で、中国各地で歌われる歌集「カナンの賛美」を作った小敏さんは自身が作詞作曲した賛美を歌いながら、その賛美にまつわるエピソードを語った。
 遠牧師は北京出身で、大学ではマルクス・レーニンの哲学を学び、30年間無神論で生きていた。89年の天安門事件後にパリで難民となり、福音を聞き、そのときは信じなかったが聖書を読み続けた。プリンストン大学に留学した際、教会に通い、信徒の姿を通して神の愛を知った。
 3回の説教では夫婦関係や人間関係、生きる意味など人生で直面する具体的な話しから、魂が幸せであることの大切さ、人間の視点と神の視点の違い、福音の与える喜びなどを伝えた。クリスチャンには「日本の中国人の心が開かれている。ぜひイエスの話をしてください。話をしたら、きっと信じます」と勧めた。

 福音が日中関係の平和に
 政府の登録外国人統計によると、在留外国人の総数は約207万人、うち中国および台湾出身者は約67万人、さらに日本国籍を取得している人は100万人前後いる。「日本における外国人でもっとも大きな民族でありながら、その中のキリスト教信者はたったの2千人強で、すなわち0・3パーセント(教会礼拝統計による数値) 。日本で華人向けの伝道会や集会がまれなので、いまだに多くの人々は福音を聞く機会すらありません」と日本東京伝道会準備委員会代表の朴樹民牧師(東京日暮里国際教会 tokyo-nic.com)は大会開催の動機を話す。 
 昨年5月に遠牧師がビザの都合で急きょ来日し、東京日暮里国際教会主催のキャンプ大会、2つの臨時の小型伝道会で講師を務めた。このとき参加者は計280人を超えて決心者は約30人となった。集会の中で在京の中国人教会のクリスチャンらが協力して自発的に月1回の連合祈祷会を開き、昨年の11月には「東京華人伝道会準備会」を成立し、今回の集会の開催が決まった。大会パンフレットには全国41の教会の名が記され、奉仕者は150人。香港など海外の宣教チームも協力した。
 協力のために心懸けていたことがあったと朴牧師は言う。「教会の名前ではなく、一人ひとりが神の前で、日本にいる中国人のために召されたかどうか、働きのために時間をささげられるかを大切にした。準備のための献金も教会の名よりは個人での献金が大部分を占めた。上からではなく下からの草の根の協力を大事にしました」。連合祈祷会では交わりを重視した。「食事を一緒に持ってから祈ります。友だちになることが大事。みなが互いに愛し合った。会議は日曜礼拝が終わって疲れた夜に開かれたが、楽しくて、終わる頃には、むしろ行く前よりも力を得ました」
 さらに「奉仕者が神様の導きと愛を感じたことも大きなこと。大会は午後8時で終わったが、奉仕の青年たちは11時過ぎても帰りたくないと思うほどでした」と振り返る。
今後は決心者のフォローとともに、大会を1年に1回、日本中から、中国人を誘える機会となるよう期待する。連合祈祷会も続く。
 「神からの愛、メッセージが日本でよりはっきり見えるように、日本の教会の祝福となるよう願います。周りに伝道したい中国人がいたら集会に誘ってほしい。中国に行かなくても、みなさんのいる場で中国宣教になる。もし中国人が日本で信仰を得たら、日本人の友人となるでしょう。個人的なものかもしれませんが福音を通して日中関係が平和になるのです」