[CSD]2013年7月28日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年7月28日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎参院選挙前に「この国のための緊急祈祷会」——JEA社会委員会主催 世界・アジア福音連盟にも祈り要請
★震災契機に福島の若者クリスチャンネットワークブレスド・ジェネレーション始動——僕らは祝福されたジェネレーション

 = 2 面 ニュース=
◎「他の国にない組織的戦時性暴力」——「慰安婦」問題に動かぬ証拠と林博史氏が講演
★横浜福音喫茶メリー50年——夜の街に福音の灯をともして
★エジプト:コプト教徒はモルシ政権崩壊を歓迎
★イスラエル:「エルサレム神殿再建を」——イスラエル閣僚が発言
★<落ち穂>

 = 3 面 =
★<フクシマの声を聴く>[11]母たちからの声?——もしフクシマが自分の町で起きていたら 記・中尾祐子
★<逝去>笹井大庸氏(ささい・ひろやす:月刊「ハーザー」創刊編集者、63歳)
★<オピニオン>エジプト政変に学ぶ経済と社会危機 記・高橋秀典
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4 面 全面広告=
☆第45回記念 日本伝道の幻を語る会 「切り拓け! 日本伝道 Part3」
8月19日(月)~21日(水) 会場:市川サンシティ
講師は、池田 博(本郷台キリスト教会主任牧師)、石田 学(日本ナザレン教団理事長)、守部善雅(元・クリスチャン新聞編集長)
主催:日本キリスト伝道会 Tel.03-3804-1765

 = 6 面 カウンセリング特集=
★聖書の人間観と心理学による人間理解——どちらも人間は自己中心とみるが… 記・斉藤善樹

 = 7 面 伝道・牧会を考える=
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>?[58]単立・藤野福音キリスト教会?——無力さ認め、自分を超える神を知る
★<憲法が変わるってホント?>[14]緊急事態宣言で起きること——国家の枠内に置かれる「基本的人権」 記・片岡 輝美

 = 8 面 レビュー=
◎Movie:「楽園からの旅人」エルマンノ・オルミ監督(8月17日より岩波ホールほか) http://www.alcine-terran.com/rakuen/
★CD:「Remember」横山大輔(ROUTE OF SOUL、全7曲、1,575円税込)
★DVD:「イエスと二人のマリアー選ばれる愛の生涯ー」(ライフ・クリエーション、個人観賞用5,040円税込、団体上映用10,290円税込)
★BOOK:『女・生きる~「女生神学塾」運動』キリスト教女性センター編(かんよう出版、1,575円税込) 評・稲垣緋紗子
★BOOK:『夫婦の未来に希望を抱いて』安藤能成箸(いのちのことば社、945円税込) 評・安藤理恵子
★BOOK:『女と男のドラマ 現代における愛の源泉』宮本久雄、武田なほみ編箸(日本キリスト教団出版局、1,940円税込)
★BOOK:『新・親との関係をみつめる』近藤由美箸(いのちのことば社、1,200円税込)
★BOOK:『我はまことの葡萄の木』川田靖子箸(教文館、1,575円税込)

 = ?—?面 保存版:世界宣教・国際協力2013祈りと支援のガイド=
★世界宣教の理念と実際がわかるガイド——アンテオケ宣教会編『マケドニアの叫びに応えて』
★国別:派遣宣教師・国際スタッフ一覧
★宣教師連絡機関・国際協力団体一覧
★国別:派遣宣教師・国際スタッフ一覧





◎参院選挙前に「この国のための緊急祈祷会」−−JEA社会委員会主催 世界・アジア福音連盟にも祈り要請

 「憲法改正」が争点の一つとなっている7月21日の第23回参議院選挙。選挙後の改憲派勢力の伸び次第では、憲法改正は加速度的に進むことが予測される。そんな危機感を覚えたクリスチャンたちが集まり、参院選前に共に祈ろうと7月12日、「この国のための緊急祈祷会~憲法改正の危機に際して~」(日本福音同盟〔JEA〕社会委員会主催)が、東京・千代田区神田駿河台のお茶の水クリスチャン・センターで開催、教団教派を超え、47人が祈るために集まった。

 「牧師になって43年経つが、選挙のための緊急祈祷会は初めて。これはただごとではない」。説教の冒頭で渡部敬直氏(JEA社会委員会委員長、福音バプテスト連合・高岡バプテスト教会牧師)は開口一番、こう語った。
 渡部氏は、エステル記4章から「この時のために」と題して説教した。「ユダヤ民族絶滅の危機に際し、神様はモルデカイとエステルの信仰を用いてユダヤ人絶滅から救ってくださった。『もし、あなたがこのような時に沈黙を守るなら、別の所から、助けと救いがユダヤ人のために起ころう』(14節)、『私は王のところにまいります。私は死ななければならないのでしたら、死にます』(16節)との2人の言葉に信仰と命がけの覚悟を感じる」
 今年になって自民党改憲草案を読んだ時、日本国憲法をすべて否定しているのに驚いたという。「安倍政権が目指すところは、まさに戦前の富国強兵。戦後日本の成果をすべて否定し、戦前の日本に戻すことだと思った」
 渡部氏はこれまで、岩手靖国違憲訴訟などの社会問題に関わってきたが、「その土台には必ず日本国憲法があった。だから、たとい人数が少なくても勝利できた」。しかし、「その踏ん張りどころが失われてしまう」と危機感を募らせる。
 渡部氏は、「まさにモルデカイ、エステルのように信仰、命をかけて戦うべき時が来ている」と強調。「今、生かされているのは『この時のため』(14節)と迫られている。クリスチャンとしてまずなすべきことは神様に訴え祈ること、示されたことを示された場所で精いっぱい行っていくことではないか」と語りかけた。
 学習会「憲法が変わると何が変わるの? その時教会は…」では、JEA社会委員の星出卓也氏(長老教会・西武柳沢キリスト教会牧師)が自民党改憲草案について解説した。「どんな改正を目指しているのか? 『個人のための国家』から『国家のための個人』に、『国民一人ひとりの人権を守るために国が存在する』から、『国家体制を守るために国民が存在する国』に変わるということです」
 憲法そのものの役割を根本的に変えてしまう点も指摘。「現憲法が憲法を守るようにと規制する相手は政府や権力に対して。だが、改正草案102条では国民に対し憲法尊重義務が課せられている」
 「この事態に対して教会は何をなすべきか? 神のかたちとしての人間の尊厳、個人の権利を守るためにも、国に憲法を守らせ、権力の暴走を常に見張ることではないか」と語りかけた。
 参加者は二人一組になり、「少しでも改憲の動きにストップがかかるように」「クリスチャンが真の神を恐れ、社会的な役割を果たしていけるように」と熱心に祈り合い、吉村弘司氏(改革長老・東京教会名誉長老)が「戦前の日本に戻ろうとするこの危機的な時に、それぞれの場で主の御栄えのため祈ることができるように」、辻浦信生氏(同盟基督・東御キリスト教会牧師)が「主よ、後の時代に生きる人たちのためにも今、私たちになすべきことを示してください。心を一つにし、あなたに期待し信頼して祈ることができるようにしてください」と代表祈祷をささげた。
 JEA社会委員会は同日、「日本国憲法改正・日本再軍備化の危機に際して緊急の祈祷要請」を世界福音同盟・アジア福音同盟理事会、加盟諸教会宛てに送った。

◎「他の国にない組織的戦時性暴力」−−「慰安婦」問題に動かぬ証拠と林博史氏が講演=130728020

 橋下徹・大阪市長(日本維新の会共同代表)の「従軍慰安婦は必要だった」発言に対し、国内外で非難や抗議の声が高まる中、1886年創設以来、公娼制度廃止や売春防止法制定に力を注ぐなどキリスト教精神に基づき女性の人権を守る活動をしてきた(公財)日本キリスト教婦人矯風会(以下・矯風会)は、「慰安婦」問題を研究する歴史学者の林博史氏(関東学院大学教授、日本の戦争責任資料センター研究事務局長)を招き、講演会「日本軍『慰安婦』問題と女性の人権」を7月6日、東京・新宿区百人町の同所で開いた。
 林氏は、日本の慰安婦問題で重要な時期が、軍が南京に入る1937年12月から38年初めにかけてだと指摘する。「南京に入る頃から、日本軍はあちこちに慰安所をつくり始め、業者を使って女性を中国に送ろうとした。だが警察文書によると、その行為は刑法226条で国外移送誘拐罪にあたるため、取り締まることになった。だが、業者は軍からの依頼でしていると証明書を出す。警察はどう対処すればよいか困る。38年2月、内務省警保局は『現地に於ける実情に鑑みるときには蓋し必要已むを得ざるもの』とし、『黙認』の通達を出した。犯罪行為と知りながら軍と警察が一体となって黙認した」
 同年11月には、警保局が大阪府など5府県の知事に対し、計400人の女性集めを支持した文書も残されており、しかも「業者が自発的に行ったように装え」と書いていると指摘。「軍、警察だけでなく知事も、犯罪であることを分かってやっている。まさに国家犯罪だ」と語った。
 日本の裁判では、04年12月の中国人「慰安婦」一次訴訟の東京高裁判決で「日本軍構成員によって、駐屯地近くに住む中国人女性(少女も含む)を強制的に拉致・連行にて強姦し、監禁状態にして連日強姦を繰り返す行為、いわゆる慰安婦状態にする事件があった」と、事実認定していることを挙げた。
 林氏は、「ヨーロッパでは19世紀後半から公娼制度廃止の方向に向かい、日本も1930年代から公娼制度廃止へと向き始めていた。ところが、日中戦争以降、世界の潮流に逆行するかのように慰安婦制度が導入された」と指摘。しかも、慰安所設置計画の立案、業者選定・依頼・資金斡旋、女性集め、女性の輸送、慰安所の管理などすべての課程において軍の管理に置かれ、さらに外務省、内務省、朝鮮総督府・台湾総督府など国家機関が深く関与していたと言う。「これだけの組織的な戦時性暴力は他の国には見られない。世界はこの問題に対し公式に認めるよう求めているが、強制連行を示す文書がないと繰り返す安倍首相の発言は、深刻な被害を受けた女性たちに、さらにむち打つ行為だ」と批判した。
 矯風会は、1991年に韓国人の金学順さんが慰安婦を名乗り出る前から、この問題に取り組んできた。今回の講演会も橋下発言以前からすでに準備されていたもの。業務執行理事の寺岡シホ子さんは「『従軍慰安婦』に対する政府見解を覆すほどの証拠を発表された先生から、直接お話を聞けたことで本当に力づけられた。矯風会では現在、韓国から発信されている日本軍戦時性暴力問題解決のための国際署名への協力も全国的に展開している。橋下発言で注目を集めている時なので、この問題が一気に解決へと向かうことを願っています」と語った。

◎Movie:「楽園からの旅人」エルマンノ・オルミ監督(8月17日より岩波ホールほか)=130728

 取り壊しが決まった教会堂に逃げ込んできたアフリカからの難民と老祭司の2日間の物語。オルミ監督は、前作「ポー川のひかり」(06年)のように今の時代を生きる者にとってのキリストの人間像を、観るものそれぞれの心に思い描かせてくれる映画美に溢れた作品に仕上げた。
 イタリアのある町の小さな教会堂。すでに取り壊しが決まっている。この教会で祭司任職のときから務めてきた老祭司は、取り壊される最後の日まで教会堂に居残る決意をしている。
 祭壇用具や聖画などの荷造りをする業者が、聖壇の上部の十字架にかけられたキリスト像を下ろし丁寧に箱に収める。業者が去り、取り壊しを待つだけの教会堂。
 その夜、一人の技師が、アフリカから来た不法入国者グループを、教会に連れてきた。恋人のようなカップル、親子連れ、身重の女性、イスラム原理主義のリーダーなどさまざまな人たち。傷を負った男は、彼の子どもと共に老祭司の部屋にかくまわれた。
 聖堂の長椅子をベッドにしてその周りを段ボールで囲み、布切れを屋根代わりに暖をとる不法入国者たち。ほどなく、保安員らが不法入国者の捜索で教会にやってきた…。
 荘厳できらびやかな聖壇用具が取り去られた聖堂。そこに段ボールと布切れで作られた不法入国者たちの寝床は、さながら荒野を旅する天幕のようだ。老祭司は、自ら祭司の務めを終える時が来て、キリストが取り去られた聖堂に逃れてきた旅人たちを友として受け入れ、保安員たちに引き渡さず守ろうとする。
 オミル監督は、あるインタビューに答えて言う。「私は隣人の顔のなかにキリストを見出します。人は苦悩し死んでゆくのであり、それは非難されながら死んだキリストと同じです」
 自らを支え行動を規制していたものを失い、キリストを信じるだけのものになったとき、がらんどうの聖堂は老祭司にとって神の家となった。 

監督・脚本:エルマンノ・オルミ 2011年/イタリア/87分/映倫区分:G/原題:il villaggio di cartone 英題:The cardboard village 配給:アルシネテラン 2013年8月17日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー。http://www.alcine-terran.com/rakuen/