[CSD]2013年11月24日号ヘッドライン

[CSD]2013年11月24日号ヘッドライン

 = 1面 ニュース=
◎釜山で世界教会協議会(WCC)第10回総会——いのちの神に「正義と平和」巡礼
★フィリピン中部 台風直撃で壊滅——キリスト教団体も緊急支援開始

 = 2 面 ニュース=
◎TCU:ケアチャーチプロジェクトセミナー事例発表
★県人会九州:全国平均下回る九州全域の教会数——「教会づくり」への提言語り合う
★WCC議長に初の女性アグネス・アブオム氏——中央委員に西原廉太氏
★北朝鮮:スパイ容疑で韓国人牧師を逮捕
★<落ち穂>開局7年を迎えた日本CGNTV

 = 3 面 =
★<フクシマの声を聴く>[27]母たちからの声——いま福島の原発動いてるの? 記・中尾祐子
★WCC総会報告:核のない世界に向けて[1]——福島とつながるアジア太平洋
★<オピニオン>子どもの尊厳の尊重を 記・木村葉子
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 企画特集/愛のささげもの=
★他人が幸せになるために

 = 6 面 全面広告=
☆第49回教役者大会 ヘルシー・ディサイプルシップ
2014年2月11日(火)~14日(金) 会場:ヤマハリゾートつま恋
主催:日本ペンテコステ親交会
公式サイト http://www.jpf21.jp

 = 7 面 伝道・牧会を考える=
★新連載<見上げる空>[4]メッセージの公共性——何を語れるのだろうか 記・米内宏明
★<迫られる宣教と教会の再構築>[6]——世に対抗する宣教的共同体 記・石田 学

 = 8 面 レヴュー=
◎Movie:「母の身終い」(11月30日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開)
★CD:「愛の世界」Migiwa(ライフ・クリエイション、全10曲、2,100円税込)
★CD:「ちいさなかごに」和泉ちぬ 聖書朗読(太平洋放送協会、500円)
★Book:『ミッチ —隠された贈り物—』アイリス・ボルトン著(MTM、1,260円税込) 評・平山正実
★Book:『神が共におられる人生の祝福』チョン・ピルド著(いのちのことば社、1,575円税込) 評・高橋養二
★Book:『教会では聞けない「21世紀」信仰問答1 まずは基礎編』上林順一郎監修(キリスト新聞社、1,890円税込)
★Book:『それって大丈夫 いまどきクリスチャンへの24の問いかけ』水谷 潔著(いのちのことば社、1,155円税込)
★Book:『コーランの中のキリスト教』J・グルニカ著(教文館、2,310円税込)
★Book:『戦場の宗教、軍人の信仰』石川明人著(八千代出版、1,050円税込)

◎釜山で世界教会協議会(WCC)第10回総会−−いのちの神に「正義と平和」巡礼=1311240101

 「いのちの神よ、私たちを正義と平和へと導いてください」―この祈りを主題に、世界教会協議会(WCC)は10月30日から10日間、韓国・釜山にある国際会議・展示場BEXCOで第10回総会を開催した。345の加盟教会からの代表を含めて、世界100か国以上から4千人以上が参加。最終日の11月8日に発表した「WCC第10回総会のメッセージ」で、ルカ1章78―79節、詩篇106篇3節などを引用しつつ、世界の「姉妹兄弟たち」に対し、「正義と平和の巡礼に加わってください」と呼びかけた。【APEN・行本尚史】

 WCCのオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事は、11月7日に会場で行われた記者会見で、この総会は「エキュメニカル運動と世界教会協議会に重大な契機をもたらした」と語った。
 主題との関連で、南北に分断された朝鮮半島の平和と再統一を大きな特色の一つとした今回の総会には、前々回のハラレ総会(ジンバブエ)や前回のポルト・アレグレ総会(ブラジル)と異なり、北朝鮮からの参加者の姿はなかった。しかし初日の事務全体会議では、平壌にある朝鮮基督徒連盟委員長のカン・ミョンチョル牧師からのメッセージが、ウォルター・アルトマンWCC中央委員会議長(当時)によって読み上げられた。
 プログラム指針委員会は、正義と平和の巡礼により幅広いエキュメニカル運動や国際組織が関われるようにするための方法論を探究するよう中央委員会に求めることなど、合計8つの勧告を含む報告書を総会に提出し、承認された。
 10月31日の主題に関する全体会議で、エジプトのコプト教会のウェダッド・アッバス・トーフィック博士が主題講演。一部のイスラム教徒によって迫害を受ける中、「苦しみの中でいのちの神を証しすることは実に難問だが、エジプトの諸教会は真の証し人となり、忠実に祈っている。『いのちの神よ、私たちを正義と平和へと導いてください』と」と語った。
 また、国連エイズ合同計画のミシェル・シデベ事務局長が「諸教会|排除に対するバリケード」と題して演説した。
 スリランカ聖公会のデュリープ・デ・チケラ主教は同じ主題に関する全体会議で、「正義と平和は神の無償かつ、お金では買えない贈り物」であり、「総会の主題はしたがって恵みの時である。それは神の世界における様々な暴力や不正義の表れに関わるよう私たちを導いて下さるいのちの神との旅路に私たちを招いてくれる」と述べ、「そのような関わりは、水を求めて必死な時に世界の貧しい人たちがもつ強靭さをもって私たちが努力した時に初めて変化をもたらす」「私たちは両手でシャベルを持たなければならない。いのちの神が正義と平和を生ける水の流れのように流して下さり、創られた世界全体が新しくされるために」と結んだ。
 11月4日の宣教に関する全体会議では、昨年9月にWCC世界宣教・伝道委員会が提出した、宣教と伝道に関するWCCの新たな確認のための文書である「共にいのちに向けて 変動する地平における宣教と伝道」に基づく議論が行われた。5日には諸教会の一致に関する全体会議が行われ、8日には神の賜物と一致への招き、そして自らの責務・経験と、聖書的な展望の共有などが記された「一致の声明」(改訂版)が採択された。
 また、「宗教の政治化と宗教的少数者の権利」「朝鮮半島の平和と再統一」「国家のない人々の人権」「正義をともなう平和の途上にあって」など合計12件の公的諸課題に関する声明や覚え書き・決議を採択する提案が承認され、11件は採択されたが、「核のない世界に向けて進む声明」については賛否両論が残り、来年7月の中央委員会の会合で審議されることとなった。

◎TCU:ケアチャーチプロジェクトセミナー事例発表=1311240201

 東京基督教大学(TCU)主催の第3回TCUケアチャーチプロジェクトオープンセミナー「こうして始まった!教会で福祉」が11月2日、東京・新宿区の単立・東京中央教会を会場に開かれた。この日は教会で実際に活動を行っている神奈川県・カンバーランド長老キリスト教会あさひ伝道所と、愛知県・名古屋西福音自由教会の取り組みが発表された。会場には教会の牧師をはじめ地域や福祉に関心のある信徒などが約40人集まり、参加者によるディスカッションや質疑応答なども活発に交わされた。
 初めにTCU国際キリスト教福祉学科長の稲垣久和氏が、このプロジェクトを始めた経緯を説明した。「これまで福祉の分野は行政まかせになっていたところがありましたが、現在では市民や民間企業が担うよう法律が変革しています。地域の教会が新しい制度を使いながら福祉活動を行えるようになってきているのです。教会は世の中と隔絶した存在になっていないでしょうか。人の生きている現場で人々を癒していく、そのことがキリストの体と言われる教会の使命ではないでしょうか。教会の宣教は伝道と奉仕(社会的責任)の二本柱で、かつて学校や施設を創りながら宣教活動した先人たちを見習い、行動する時期に来ていると思います」
 あさひ伝道所の事例として鈴木淳牧師から「どシロウトでもできるゼロスタートの福祉宣教型開拓伝道」が発表された。あさひ伝道所では「フレンドシップあさひ」という介護サービスを行っている。鈴木氏は福祉に関しては全くのシロウトだった。開拓伝道をはじめたころ地元で歓迎される教会になるにはと考え、個人の働きでは限界があるが教会の働きとして介護事業を行えば、いつまでも宣教の役に立って行くのではと考えた。
 また、聖書に「貧しい人、体の不自由な人、足の不自由な人、目の見えない人を招きなさい。そうすればその人たちはお返しができないからあなたは幸いだ」とある。お返しのできない人によくしなさい、と言われたと思い介護事業を選んだ。2人の利用者からのスタートだったが、今では毎日15人の契約で埋まっている。5人のスタッフも17人に。5年半が経過して経営は順調という。事業とともに教会も成長した。洗礼者は今年で7人になった。
 「障害のある人や車イスの人は教会にいきづらいことがあります。対応に慣れた人がいないと大変だからです。でもわたしたちはその道のプロ。送り出す施設や家族の方も安心なんです」。今まで自分で選んでこの仕事をしてきた、と思っていたが、実は神様にやらされていた。もし失敗してもそれも神の御心なのだからとすべて神様にお任せしている、と語った。
 名古屋西福音自由教会の事例を服部真光牧師は「1人のケアから始まった教会の地域貢献」として発表した。教会に精神科を退院した1人の青年がいた。何かできないかと毎日教会に招いたが、ただ呼ぶだけでは時間を持て余してしまう。一緒に庭の掃き掃除などをしたが生産性がない。そこで野菜作りを始めたが、天気に左右されるし収穫までの間は雑草取りと虫退治となり嫌になってしまった。作業所のような働く場所を提供できないかと考え、教会の祈り会や役員会で取り上げていると、1人の兄弟から内職の仕事を紹介され、やってみようということになった。「はじめは地域貢献などまで考えていませんでした。目の前にいる神の家族を大切にしただけでした」
 同じように精神障害のある教会員など3人が加わり、作業所がスタートした。行政からも問い合わせや紹介があり、5年間続けていくうちにメンバーは2008年には13人ほどに増えた。初めはボランティアで運営していたが、行政からアドバイスを受けてNPO法人化し、この地域では初の地域活動支援センター「福祉作業所いずみ」となった。行政支援も受けスタッフの待遇改善もされた。
 「以前は教会がどこにあるのかさえ地域の人は知らない様子でしたが、いまでは毎日20人くらいの人たちが教会に出入りしていて活気があります。また教会が福祉に取り組んでいることで地元の方からはよい評判を得ています」。教会も相乗効果で成長し約120人の礼拝出席者がある。「神の国の働きは献金で、地域貢献は公的資金で」と服部氏は語っている。 【フリーライター・中尾祐子】
 今後も同プロジェクトでは情報交換の場をつくり、全国のケアチャーチの超教派によるネットワークづくりを推奨していく。問い合わせ先=TCUケアチャーチプロジェクト推進委員会Tel:0476・46・1131。


◎Movie:「母の身終い」(11月30日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開)=131124080


 47年間連れ添った夫は先だち、自宅に独り暮らすイヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)。48歳になる一人息子のアラン(ヴァンサン・ランドン)は、長距離トラックの運転手だったが麻薬運搬に関わり、18か月の刑期を終えてイヴェットの家に転がり込んできたばかりの失業中の身だ。
 イヴェットの暮らしぶりは、ある意味坦々としている。家の掃除、洗濯、食事づくり、ゆとりのある時間はジグソーパズルなどに興じたり、ジャムを作って親しい隣人のラルエット(オリビエ・ペリエ)にお裾分けする。アランは、家で食事するがリビングとキッチンに分かれて座り、飼い犬が呼ばれる度に二人の間を行き来して食べ物をもらう。
 その打ち解けあえない生活の空気感が、みごとなまでに漂う。テーブルのゴミをかき集めるイヴェットの仕草にも、失業中の息子へのちょっとした苛立ちが垣間見られる。そんなある日。アランは、イヴェットがサインしたスイスの尊厳死を仲介する団体の書類を見てしまう。主治医からイヴェットの病が治癒不可能な末期で、ターミナルケアを拒否し、自殺ほう助による尊厳死を選択していることを知る。
 どうにか仕事に就いたが、張り合いのない毎日。その仕事を辞めて帰宅したことで母子は激しく口論し、アランは家を出てしまう。
 イヴェットとアランの少ない会話のなかに、夫が亡くなった後、イヴェットはなぜ自殺ほう助での尊厳死を選択し、遂行しようとするのか。母親の自死への決意を知ったアランの心の動きは? その人情の機微が静謐なときの流れの中で、不思議な体温を感じさせながら語られていく。
 イヴェットの選択と決意に、賛否両論が聞こえてきそうだ。だが、彼女の自律した選択と方法論を超えて、二人が最期のときに臨んでどうありたかったのか。人生を捨てたのではないことは、静かに深く心に伝わってくる作品だ。

監督:ステファヌ・ブリゼ 2012年/フランス/108分/映倫:PG12/原題:Quelques heures de printemps 配給:ドマ/ミモザフィルムズ 2013年11月30日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー。公式サイト http://www.hahanomijimai.com