'死'と名乗る男にチェスで勝負を挑むアントーニウス。 ©1957 AB SVENSK FILMINDUSTRI
‘死’と名乗る男にチェスで勝負を挑むアントーニウス。 ©1957 AB SVENSK FILMINDUSTRI

スウェーデンを代表する映画監督、イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman:1918年7月14日 – 2007年7月30日)の代表的3作品「第七の封印」(1956年)、「野いちご」(1957年)、「処女の泉」(1959年)をデジタルリマスターした「イングマール・ベルイマン3大傑作選」が、東京・渋谷のユーロスペースにて7月20日(土)より4週間限定で開催される。イングマール・ベルイマン作品の宗教美の最高峰を連ねたともいえるベイルマン監督生誕95周年企画だ。

三大傑作選の中では、もっとも製作年数が早い「第七の封印」。ベルイマン監督の映画作家としての地位と名声を確固としたものに高めた作品としても知られている。

主人公の騎士アントーニウス(マックス・フォン・シドー)は、従者ヨンスとともに十字軍の遠征から十年ぶりに自分の領地へ帰る途中。浜辺で眠れない夜を過ごすアントーニウスの前に、黒いマントを身にまとい白い顔の「死」(ベングト・エケロート)と名乗る男が現れる。中世のこの時代、ヨーロッパは黒死病(ペスト)が蔓延し、その恐怖心は魔女狩りの横行を引き起こしていた。自分を連れて行こうとする「死」にアントーニウスは、この世相のなか本当に神はいるのか?と論争を仕掛けたり、自分が勝ったら死から解放してほしいとチェスの勝負を挑む。「死」は受けて立ったが、勝負がつかず、しばらく猶予してもらう。

故郷に帰る旅を続ける途中、旅芸人のヨフ(ニルス・ポッペ)とその妻ミア(ビビ・アンデショーン)、キリスト像を掲げ自らの体を鞭打って行進する一団、村の鍛冶屋のおやじ(オーケ・フリーデル)、アントーニウスを十字軍に誘った神学ラヴァル(ベティル・アンデルベルイ)、魔女裁判にかけられ処刑されようとしている女などとの出会いと出来事。アントーニウスはその中でも神との対話を望み、「死」とのチェスを続ける。そしてその勝負がついた。

アントーニウスの城まどたどり着いた旅の同行者たち。 ©1957 AB SVENSK FILMINDUSTRI
アントーニウスの城まどたどり着いた旅の同行者たち。 ©1957 AB SVENSK FILMINDUSTRI

この作品のタイトルは、新約聖書ヨハネの黙示録8章に登場する大患難時代の始まりからつけられている。映画の舞台は、ペストの大流行の中で迫りくる死への恐れに荒んでいく中世におかれている。

だが製作された1950年代半ばは、市街が破壊さ多くのれ市民が戦闘に巻き込まれ死傷し、原子爆弾の破壊力と核・放射能の恐怖への扉を開いた第2次世界大戦終結から10年(日本初公開:1963年11月18日)。復興と繁栄への道とともに核兵器のバランスを追求する冷戦時代の進展は、世界の最終戦争への不安を強めていた。みごとな映画美で描かれて行く黙示的メーッセージの鋭さ。軍事的力による平和の維持と経済的繁栄の追及に踊る人間の世界と愚かしさを、現代にもインパクトをもって語っている。 【遠山清一】

監督イングマール・ベルイマン 1957年/スウェーデン/97分/原題 Det sjunde inseglet 配給:マジックアワー 2013年7月20日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー。
公式サイト:http://www.bergman.jp/bergman/

1957年度第10回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作品。。