世界の国々へ環境温暖化によるモルディブ消滅への危機を発信し続けるモハメド・ナシード元大統領。 ©2011 AfterImage Public Media
世界の国々へ環境温暖化によるモルディブ消滅への危機を発信し続けるモハメド・ナシード元大統領。 ©2011 AfterImage Public Media

国を憂うどころの話ではない。地球温暖化で海面が上昇し、2100年には全国土が水没すると予測される国モルディブ。30年間続いた独裁政権のなか、モハメド・ナシードは2008年に民主化の機運に乗って41歳で大統領選挙で当選した。彼が真っ先に着手したのは、長期政権下で疲弊した様々な課題ではなく、足元に迫っている海面水位上昇からどのように国土と国民を守るかだった。その打開策を求めて世界に発信したナシード大統領の就任からの1年間を追ったドキュメンタリー映画。取材クルーに対して信じられないほど自らの考えと行動を正直に追跡することを許した姿勢は、自分の国で人々と暮らしていくための未来を決してあきらめない政治家の本分と情熱を感動的なほど表している。

モルディブは、インドの南西部およそ340Kmに浮かぶ1200のサンゴ島が、赤道をまたいでネックレスのように連なっている国。その島々のうち200の島に人々が暮らしているイスラム教スンニ派国。青い海面に浮かぶ環礁を撮った航空写真などをどこかで目にしている観光立国だが、平均海抜高度は1.5m。現状のまま地球温暖化が進むと2050年から2100年の間に2m海面が上昇しモルディブの島々が海面下に消滅する可能性が高い。

©2011 AfterImage Public Media
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ナシード大統領は、公的声明で「どこか新しい土地を探さなければならない状況」になっていることを40万人の国民に告げて、祖国の危機的状況を訴えた。一方、世界の国々に対しては、二酸化炭素排出ゼロを目指す公約を発表し、大国であれどこの国であれロビー交渉を積極的に進め、ついには2009年デンマーク・コペンハーゲンで開かれた気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)での合意に向けて全精力を傾けて臨んでいく。

地球温暖化を防ぐための具体的指針を提案し、現実的交渉で合意まで漕ぎ着けた人口40万人の将校の大統領の軌跡。それは、1年間の活動の記録にとどまらず、民主化を求め訴え続けて20回は逮捕され、トタン屋根の狭い独房に閉じ込められ、2度の拷問を経験して培われた、しなやかで粘り強い不屈の精神性をも浮かび上がらせる。

「自分の国を消滅させず、ここで生き残りたいだけだ」。そのひとことに、ビジョンを抱いてどのような困難に直面しても、あきらめることなく、やれることをやり続け、努力する政治家としての本分が見て取れる。 【遠山清一】

監督:ジョン・シェンク 2011年/アメリカ/英語、ディベヒ語/110分/原題:The Island President 配給:浦安ドキュメンタリーオフィス 2013年8月10日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショーほか全国順次公開。
公式サイト:http://www.urayasu-doc.com/minaminoshima/

2011年トロント国際映画祭ドキュメンタリー映画観客賞、2012年サンダンス映画祭ヒルトンワールドワイド・ライトステイ・サステイナビリティ賞受賞作品。第25回東京国際映画祭naturalTIFF部門正式出品作品。