5月5日号紙面:書評 世と歴史支配する神にのみ従う 『キリスト者から見る〈天皇の代替わり〉』
天皇の代替わりを目前に控えて出された本書は、「『教会と政治』フォーラム」の活動にかかわる6人の牧師が、歴史、憲法、儀式、元号など、様々な視点から天皇制や代替わり問題を考察し、教会がとるべき姿勢、進むべき方向性を明確に示している。
6本の論考には多くの重複があり、特に目新しい知見や新しい解釈が提示されているわけではない。しかし本書を通して私たちは、すでに指摘されていることを何度も語り再確認することこそが重要であると気づかされる。
“時代の変化に応じた新しい皇室の姿”にも、もちろん新しい元号にも惑わされることなく、教会とそこに連なる主の民は、繰り返し「この世を支配し、歴史を導きたもう、唯一、絶対の神であるイエス・キリストのみに従う」ことを確認するのである。
本書所収の朝岡勝の論考で引用されている上記カッコ内の一文は、1979年の元号法制化に際し、日本基督教団が教職と信徒に呼び掛けた文書の一部である。同文書が発表されてから40年、朝岡はこの意識が希薄になっているのではないかと指摘する。
教団がこの文書を出してから約10年後、前天皇の病気、死去、そして代替わりと続く88年から90年にかけて、現在の私の勤務先である明治学院大学は、自粛ムードに疑問を呈する学長声明(88年)と、他の3つのキリスト教系大学の学長とともに発表した大嘗祭に反対する四大学長声明(90年)で人々の注目を集めていた。だがあれから30年たった今、当時の記憶は薄れ、学内にはかつてのような動きはない。
このままでいいはずがないと、ようやく教職員有志が集まり、学内に議論の波を起こそうと小さな試みを始めている。「私たちの歴史の意識を研ぎ図まし」「小さなことをおろそかにしない」(122頁)ように、と本書は勧める。そう、私たちができることは確かに小さい。けれどそれらの小さな一つ一つの試みを通して、私たちは主イエス・キリストを証しするのである。 (評・渡辺祐子=明治学院大学教授)
「教会と政治」フォーラム編『キリスト者から見る〈天皇の代替わり〉』
いのちのことば社、1,512円、四六判
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