原語担当・日本語担当翻訳者 詩文の魅力語る 「格調高い日本語」目指し二人三脚 『聖書協会共同訳』発行記念対談

一般財団法人日本聖書協会(JBS)=渡部信総主事=は、5月24日、「聖書事業懇談会・東京」を東京・中央区銀座の教文館ウェンライトホールで開催、昨年12月に発行された『聖書 聖書協会共同訳』を記念して「対談『聖書協会共同訳・詩文の魅力を語る』Part2―詩編、コヘレトの言葉、雅歌を中心として─」を行った。対談者は、同志社大学神学部教授で今回の翻訳の原語担当翻訳者の石川立氏と、歌人で日本語担当翻訳者の春日いづみ氏。会場には定員を上回るおよそ140人が参加した。【髙橋昌彦】
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対談は、JBS編集部主事島先克臣氏の司会で進行した。詩書担当の編集委員としても関わった今回の翻訳作業全体を振り返って石川氏は「今回は最初から原語担当者と日本語担当者がチームで翻訳した。実際に顔を合わせて、合宿も行った。それは豊かな時間で、言葉の大切さを再認識させられた」、同じく春日氏は「研究の第一線にいる原語担当の方からは、普段自分が聖書を読んでいるのとは違う視線での話に教えられた。1週間から10日の合宿が9回、毎朝礼拝を持ち、互いに理解を深めながら、翻訳作業では激論を交わした。みな、一つの目標に向かって日本全国から呼び寄せられたという気概を持っていた」と語った。
今回採用した「主な読者と使用目的を明確にする」というスコポス理論は詩文の翻訳にどんな影響が、との質問に、石川氏は「『礼拝での朗読にふさわしく格調高い日本語』を目指すことからは、日本語担当者が最初から加わり、日本語の美しさを最初から吟味したことは、詩文にとっては大きなこと」、春日氏は「前回の新共同訳の時は翻訳があらかた終わった段階での日本語チェックだった。文体も統一され、一か所の修正が他にも影響を及ぼし、手をつけるのが難しかった。今回は最初から躊躇(ちゅうちょ)なく大胆に意見を反映させてもらった。原語担当者も日本語担当者の意見を真摯に受け止めてくれた。二人三脚の作業だった」と答えた。
「詩編はリズムが良い」という声が届いている、ということに関して、春日氏は「必要以上の敬語を省き、代名詞も整理し、リズムを整えた。何度も声に出して読んだ」、石川氏は「新共同訳は説明的だった。例えば、詩編5・9の『恵みの御業』は『義』に戻した。なるべく短く引き締まったことばを選んだ」と応答。
その他、「詩編」「コヘレト」「雅歌」の具体的な箇所を比較する中で、石川氏は「声に出して読み、耳で聞いてほしい。まず“味わう”こと。言葉が身体にしみ込めば、それが自分の祈りの言葉になる」、春日氏は「人間の脳は余計な言葉を受け付けない。吟味された言葉は胸にしまわれて、ある時ふっと立ち上がるもの。それが文学の力」と語った。